はじめに
私が実感したなぜなぜ分析のポイントをまとめておく。
私の考えは、小倉仁志さんの書籍などからの影響が大きいと思われる。
ちなみに、私はなぜなぜ分析が嫌いではありません。
用語説明
要因と原因
鵜沼宗郎さんが「要因」と「原因」の違いについて、以下の記事で解説されている。
真の原因(真因)と根本原因、問題解決と再発防止
鵜沼宗郎さんが「真の原因(真因)」と「根本原因」の違い、「問題解決」と「再発防止」の違いについて、以下の記事で解説されている。
プロセスネットワーク分析法(PNA)
金子龍三さんが「プロセスネットワーク分析法(PNA)」について、以下の記事で解説されている。
なぜなぜ分析のポイント
『”分析”をする前に十分な”調査”をする』
分析をする前に、分析対象の問題と前提を明らかにする。
問題と前提は、現物確認をして明らかにする。
現物確認をするときに、PNAを作ることも有効である。
『原理・原則をもとに要因を洗い出し、前提をもとに要因を絞り込む』
思いつきで要因を洗い出すのではなく、原理・原則から要因を洗い出す。
問題に関わった当事者への質問と回答のみに頼って要因を洗い出すわけではない。
MECEに漏れなくダブりなく要因を洗い出すという考え方も重要。
また、要因すべてが原因というわけではないため、前提をもとに原因となる要因を絞り込む。意見ではなく事実をもとに絞り込みをする。
原理・原則の例
例えばヒューマンエラーについては、以下の記事にある「ヒューマンエラーの分類」をもとに、要因を洗い出したりした。
■人間の行動から見たヒューマンエラーの分類
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認知
-
無知・理解していない
知らない、又は理解していないため、認知できない。 -
誤認識
事実を誤って認識してしまう。
-
無知・理解していない
-
判断
事実に対して誤った判断をしてしまう。 -
行動
-
スリップ
本人の意思とは違う行動をしてしまう。 -
故意
手抜きなどで意図的に不適切な行動をとる。 -
できない
能力が不十分で適切な行動ができない。
-
スリップ
『ソフトウェア開発に関連する原理・原則を知っている人が参加する』
原理・原則から要因を洗い出そうとしたら、原理・原則を知っている必要がある。
そのため、ソフトウェア開発に関連する原理・原則を知っている人が参加する必要がある。
『関係者全員が納得する』
最後は関係者全員が分析結果を納得できることが重要。
納得できたら分析を終わる。
これがほんとに大事。
参考文献・記事
小倉仁志,「なぜなぜ分析」
以下が本当に重要だと思う。
なぜなぜ分析に入る前に勝負は決まる?!
事前チェック① 原因追求と対策を要する課題の抽出
事前チェック② モノゴトを見極めて絞り込む
事前チェック③ 分析する事象の表現に気をつける
事前チェック④ 原因追求すべき対象をしっかり把握する
事前チェック⑤ 前提条件を確認する
分析に入る前に4つステップがある。
なぜなぜ分析の進め方
1.課題の抽出と事象の絞込み
2.分析目的の明示
3.分析対象の理解・把握
4.前提条件の確認
5.分析と検証の実施
6.再発防止策案の立案と評価
7.再発防止策の実施と効果の確認
8.総点検と横展開
「【なぜなぜ分析】事例と5つのポイント~注意点」,2019
以下のポイントが本当に重要だと思う。
分析する課題を抽出して明確にする
なぜなぜ分析を進める前に~その問いは本当の問題か確認する
鵜沼宗郎,「なぜなぜ分析 事例 製造 真因 作業ミス トヨタ 思い込み 練習問題」
管理システムの欠陥を突き止めて是正することを目的に、なぜなぜ分析をすることを提唱されている。
この考え方も重要。
金子龍三,「原因分析「なぜなぜ問答」の勘所」,Quality One Vol.7 2009年8月号,2009
以下の考え方も重要。
プロジェクト関係者がその要因が解消されたら、同じことは起きないと確信を持てるか。分析者や管理者が「真の原因がわかった」と納得することではありません。
柏原一雄, 岡本晃, 鈴木裕一郎, 田村光義, 東久保理江子, 保栖真輝, 細川宣啓, 永田敦,「ソフトウェア欠陥予測アルゴリズム ~欠陥混入メカニズムのモデリング手法を利用した欠陥予測方法の提案~」,ソフトウェア品質シンポジウム2015,2015
以下の考え方も重要。
"人は誤る"ことを前提に、メカニズムを明らかにする
「そりゃ、バグも入り込むなぁ」と、納得できるか?
「なぜなぜ分析のなぜなぜ議論」,2016
akiyama924さんが述べていたなぜなぜ分析の問題
1つ目の問題はよく言われる回数の件です。なぜ5とか何で5回なんだよってやつです。
一般的に言えば結果から因果関係を遡り原因探しをするのは良いのですが、遡ったものが手を打つべき原因なのかそれともさらになぜなぜを続けるべきなのかの判定方法がいい加減な点です。
2つ目の問題は、遡らなくても分かっていることに対して無理やり何故?と聞かれることです。
「だからぁ、さっき出たのが対処すべき原因だろうが。それすらも分からないなら技術者辞めちゃえ!」って言いたくなるタイプの問題です。時間の無駄を強く感じて嫌になります。
3つ目の問題は「原因を見つけて対応しただけでは足りないことが多い」点です。
再発防止はできても未然防止は出来ないというやつです。
kitanosirokumaさんが述べていたなぜなぜ分析を使う条件
1.分析する方や判断する方のバイアスがかかること、2.手段の裏返しを出し始めた時点から原因ではなく暗に手段をゴリ押ししているにすぎないこと、3.結果として一部の声高の人などの自己満足で終わることが多いこと、がクリアしないと使いません。
安達裕哉,「なぜ「事実」と「意見」を区別して話せない人がいるのか。」,2019
なぜなぜ分析では、「事実」と「意見」を区別し、「事実」を明らかにすることが必要であるが、意外とこれが難しい。
安達裕哉の記事では、「事実」と「意見」の切り分けができない理由について、見解が述べられている。
「人は、出された質問が難しいと、それを簡単な質問に置き換えてしまう」
これが「ヒューリスティックス」と呼ばれる、脳の働きだ。
「事実」と「意見」を区別できていない人は、無意識にこれを行ってしまっている。
その他関連記事
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羽田裕,「プロセスネットワークに着目した原因分析」,ET/IoT2016,2016
https://www.ipa.go.jp/files/000055826.pdf -
@k47,「なぜなぜ分析(問題を改善しよう) まとめ」
https://qiita.com/k47/items/2b1e37e74d999adac528 -
@kaizen_nagoya,「たかたか分析:鉄道(9)」
https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/1c848e8c71edb34c2f3f -
@kaizen_nagoya,「仮説・検証 べからず集試作」
https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/db888b134bd76c1e5a67