はじめに:なぜ「CLI」なのか?
エンジニアの皆さん、技術記事の執筆、続けていますか?
知識のアウトプットは重要ですが、正直なところ、結構な手間がかかりますよね。
- Web UI(ブラウザの画面)を開くのが面倒
- コードのコピペが手間
- ローカルのメモとブラウザの行き来がつらい
そんな悩みを解決するのが、Gemini CLI です。
普段使い慣れたターミナルから直接AIと対話し、ローカルファイルを読み込ませ、実行結果をファイルに書き出す。この一連の流れが、エンジニアの執筆体験を劇的に変えます。
ちなみに、この記事もGemini CLIに下書きを手伝ってもらいながら作成しています。 本稿では、AIと共同作業で記事を仕上げていく具体的なフローと、CLIだからこそ活きるプロンプト術を解説します。
準備:Gemini CLIのインストール
Gemini CLIを使い始める方法はいくつかあります。ご自身の環境や好みに合わせて選択してください。
方法1: npm
を使った標準インストール(推奨)
最も一般的な方法です。Node.jsのパッケージマネージャー npm
を使って、CLIをグローバル環境にインストールします。
-
Node.jsの準備
npm
を利用するため、もしPCにNode.jsがインストールされていない場合は、公式サイトからインストールしてください。 -
Gemini CLIのインストール
ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。npm install -g @google/gemini-cli
方法2: npx
を使った一時的な実行
「PCにあまりグローバルなパッケージを入れたくない」という方には npx
が便利です。インストール不要で、常に最新版のGemini CLIを一時的に実行できます。
# `gemini` コマンドの代わりに `npx @google/gemini-cli` を使う
npx @google/gemini-cli [サブコマンド]
例えば、認証は npx @google/gemini-cli auth login
のように実行します。
方法3: Homebrew
を使ったインストール(macOSユーザー向け)
macOSユーザーであれば、Homebrewを使ってインストールすることも可能です。
brew install gemini-cli
認証
どの方法でインストールしても、初回利用時にはGoogleアカウントでの認証が必要です。以下のコマンドを実行し、ブラウザの指示に従ってログインしてください。
# npm/Homebrewでインストールした場合
gemini auth login
# npxの場合
npx @google/gemini-cli auth login
これで準備は完了です。ターミナルから gemini
コマンド(または npx @google/gemini-cli
)で、いつでもAIアシスタントを呼び出せます。
Tip:
この後の作業に備え、mkdir gemini-article
のように専用のフォルダを作成し、そこで作業を始めると、ファイルが散らからず管理がしやすくなるのでおすすめです。
Gemini CLIを使った基本の執筆フロー
まずは、アイデアの断片から記事の下書きを完成させるまでの一連の流れを見ていきましょう。
Step 1: read_file
で既存のメモを読み込む
アイデアは、普段からメモ帳やMarkdownファイルに書き溜めていることが多いはず。まずはそのファイルをGeminiに読み込ませ、文脈を伝えます。
# ideas.txt の内容をAIに読み込ませる
gemini read_file ideas.txt
Step 2: プロンプトで記事の骨子を作成させる
次に、読み込ませたメモを元に、Qiita記事の構成案を作成させます。
# プロンプトの例
先ほど読み込んだメモの内容を元に、Qiita記事の構成案をMarkdown形式で作成してください。
- 想定読者は、Web開発経験が1〜3年の若手エンジニアです。
- 各セクションで伝えたい要点も箇条書きで含めてください。
Step 3: write_file
で下書きをファイルに書き出す
AIが生成した構成案が良さそうなら、それを新しいMarkdownファイルとして保存します。
# AIの返信を draft.md という名前で保存
gemini write_file draft.md
これで、記事の土台が完成しました。もう真っ白なエディタに悩む必要はありません。
Step 4: 対話で記事をブラッシュアップ
あとは、生成されたdraft.md
をベースに、対話を通じて記事の完成度を上げていくだけです。
- 「このセクションをもっと詳しく説明して」
- 「この表現は、もっと初心者向けに書き換えて」
- 「このコード例に解説を加えて」
replace
ツールを使えば、特定の箇所をピンポイントで修正することも可能です。
GEMINI.mdでプロジェクトルールを定義する
毎回同じような指示(ペルソナ設定、文体、出力形式など)をプロンプトに含めるのは少し面倒ですよね。
そんなときは、プロジェクトのルートディレクトリに GEMINI.md
というファイルを作成します。
Gemini CLIは、コマンド実行時にカレントディレクトリから親を遡って GEMINI.md
を探し、その内容を**指示コンテキスト(カスタム指示)**として自動で読み込みます。
GEMINI.md
の記述例:
# 指示コンテキスト
あなたは、日本のIT企業に所属する経験豊富なソフトウェアエンジニアです。
## あなたのタスク
ユーザーの技術的な質問や依頼に対し、以下のルールに従って、明確かつ簡潔な回答を生成すること。
## ルール
- **文体:** 丁寧語(ですます調)を基本とし、専門用語は避け、初心者にも分かりやすい言葉で説明してください。
- **コード:** コードスニペットを含める場合は、必ず言語名を明記し、適切なインデントを付けてください。
- **出力形式:** 特に指定がない限り、Markdown形式で回答してください。
- **ペルソナ:** 常に協力的で、ポジティブな姿勢を保ってください。
このファイルを一度作成しておけば、同じプロジェクト内で作業する際は、プロンプトで毎回同じ指示を繰り返す必要がなくなり、より効率的に対話を進められます。
CLI時代の高度なプロンプト術
CLIの真価は、ローカルファイルとプロンプトを自在に組み合わせられる点にあります。ここでは、より実践的なプロンプトの書き方を紹介します。
プロンプトを「テンプレート化」する
[]
(角括弧)を使ってプロンプトをテンプレート化し、read_file
と組み合わせると、作業を大幅に効率化できます。
テンプレートの例:
# 依頼
あなたは[ペルソナ]です。
以下の`[ファイル名]`の内容を元に、[想定読者]向けの解説記事を[文体]で書いてください。
# ファイル名
[読み込ませるファイル名]
# 含める要素
- [要素1]
- [要素2]
このテンプレートを使えば、例えば「main.py
を読み込んで、初心者向けに丁寧な解説記事を書く」といった定型作業を、毎回同じ品質で実行できます。
コードファイルから解説文を生成する
# まずはコードを読み込ませる
gemini read_file src/utils.js
# 次に、解説を依頼する
# プロンプト
あなたは経験豊富なJavaScript開発者です。
先ほど読み込んだ`src/utils.js`のコードについて、以下のフォーマットで解説ブログを書いてください。
## この関数の目的
(ここに解説)
## 主要なロジック
(ここに解説)
## 使用例
` + '```javascript' + `
// ここにコード例
` + '```' + `
エラーログを読み込んで解決策を探る
# エラーログを読み込ませる
gemini read_file error.log
# 解決策を尋ねる
# プロンプト
このエラーログの原因と、考えられる解決策を3つ、箇条書きで挙げてください。
まとめ:CLIで、エンジニアの技術発信は新たなステージへ
Gemini CLIは、単なるAIチャットツールではありません。それは、ローカル環境とクラウド上の強力な知性をシームレスに繋ぐ、エンジニアのための新しい道具です。
これまで執筆のハードルとなっていた多くの障壁を取り払い、私たちが本来集中すべき「技術的な知見の探求と共有」を加速させてくれます。
ぜひ、あなたのターミナルから、新しい執筆体験を始めてみてください。
参考
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