なぜエンジニアは「賢く見せる」ことが重要なのか?
それっぽいことを言ってるだけで評価されるなんてイヤだ。
―そう思う気持ちはもっともですが、現実のIT業界では「中身」よりもまず「それっぽさ」が求められる場面が確実に存在します。
エンジニアの仕事は、コードを書くことだけではありません。
むしろこんなことが多くの時間を占めます:
- 提案書を書く
- 会議で意見を述べる
- 非エンジニアに説明する
- 他部署と調整する
- 仕様をまとめる
つまり、「頭の中をどう“それっぽく”外に出すか」 が評価に直結します。
どれだけ中身があっても、伝わらなければ 「なんか頼りない人」 になってしまうのです。
TL;DR
- 抽象度を上げ、横文字にし、フレームワークに当てはめるとそれっぽくなる
- 断定を避け、「仮説」「示唆」「示唆に富むファクト」で反論が飛んでこないように予防線を設置する
- 最後に「アラインメント」「スコープ」「クイックウィン」で締めると完成
注意:本記事は半分ジョークです。実務でここに書かれたテクニックを乱用すると、信頼とキャリアを溶かす恐れがあります。逆に「相手が使ってきたときに見抜く目」を養う用途でご活用ください。
この記事は、私自身が”それっぽいこと”を言うことが多く、それを同僚に指摘されて、自分を戒めるために書いています。
目次
- なぜ「中身がないのに賢そう」に見えるのか (思い込み)
- 10の基本テクニック
- すぐ使える“それっぽい”言い換え辞書 20選
- 会議でのサバイバル台詞テンプレ
- バズワード自動生成器(JavaScript)
- こうなるとバレる:アンチパターン
- 健全な活かし方(=本質に戻るチェックリスト)
1. なぜ「中身がないのに賢そう」に見えるのか (思い込み)
- 抽象語・横文字は検証しにくい:検証困難=ツッコミ困難
- フレームワークを当てると“体系立ってる感” が出る
- 曖昧なまま意思決定を先送りする構文が確立されている
- “まだ考えてません”を直接言わずに“探索フェーズです”と言える便利さ
ただ、「賢そう」に見えてると思ってるのは自分だけかも(おそらく)
見抜いてる人からみれば、「あ、また、はじまったよ⋯」と呆れられてるかもしれません。。。
2. 10の基本テクニック
01. 抽象度を一段上げる
「A案とB案、どっち?」
→ 「まず意思決定のレイヤーを整理しましょう。戦略・戦術フェーズ・実装フェーズに分けると…」
02. 横文字化する
「やる気ないです」
→ 「まだモチベーションのスパイクに反応しないですね」
03. フレームワークに当てはめる
「ただの感想です」
→ 「これはPESTのS観点での示唆です」
04. "失敗した"と言い切らない
「失敗しました」
→ 「仮説検証の結果、示唆が得られました」
05. “一次情報”を強調する
「ネットで見ました」
→ 「プライマリーデータとしてユーザー10名にヒアリングしたところ…(n=10)」
06. 結論をぼかす“両論併記”
「A案でいきましょう」
→ 「A案はコスト面で優位ですが、B案は長期的なスケーラビリティが示唆されます。トレードオフですね」
07. “スコープ外”で逃げる
「その質問、答えられません」
→ 「この議論のスコープからは外れますね。一旦Ice Boxに置きましょう」
08. 即答しないで“宿題化”する
「今決めてください」
→ 「ここは次回までに精緻化して持ち帰らせてください」
09. “整合性”でマウントを取る
「よくわかりません」
→ 「そのロジック、上流のKGIとのアラインメントが取れてない気がします」
10. “As-Is / To-Be / Gap / Action”の4点セット
「今これで、次にこうしたい」
→ 「現状とこういうGapがあるね、打ち手(Action)で整理すると…」
3. すぐ使える “それっぽい” 言い換え辞書 20選
| 素の表現 | 賢そうに言い換える |
|---|---|
| とりま、適当にやってみます | 仮説検証フェーズを進めます |
| よくわかってません | まだ仮説の精度が担保されていない段階です |
| まだ考えてません | エクスプロレーションのフェーズです |
| 忙しくて無理です | リソースがひっ迫しています |
| やりたくない | スコープ外です |
| 何も選びたくない | 要はバランスですね |
| たまたまです | 偶発的に得られたインサイトです |
| 思いつきです | トップダウンでの仮説出しです |
| やらかしました | デグレが発生しました |
| それは違うと思います | ファクトベースで再整理しませんか? |
| 反対です | 合理性の観点で再検証が必要です |
| 成果出てません | クイックウィンは得られませんでした |
| 責任取りたくない | 意思決定プロセスにコミットしていません |
| どうでもいいです | ビジネスインパクトが限定的です |
| 決められません | 意思決定のアラインが揃っていないですね |
| それ後でやりましょう | Ice Boxに置きましょう |
| 議論それてます | スコープがドリフトしています |
| わかりやすく言ってください | 抽象度を一段下げてもらっていいですか |
| つまり? | 要はどこにレバレッジをかける話ですか? |
| なんでそれやるの? | KGI/KPIとの整合を明確にしてください |
| とりあえずやってみましょう | スモールスタートで検証しましょう |
| それ古いです | 市場環境の変化に対するアップデートが未反映です |
4. 会議でのサバイバル台詞テンプレ
- 「まずは仮説ドリブンでファクトを取りにいきましょう」
- 「そこはAs-Is / To-Be / Gap / Actionでブレイクダウンしましょう」
- 「抽象度を上げると、議論の土台は“提供価値”と“実装手段”の2レイヤーに分解できます」
- 「スコープの切り方を再定義しないと、議論が閉じません」
- 「その論点、プライオリティの観点で言うと今は下げたいですね」
- 「クイックウィンを狙うならB案ですが、スケーラビリティの観点ではA案です」
5. バズワード自動生成器(JavaScript)
const buzz1 = ["仮説ドリブン", "ファクトベース", "レイヤー化", "抽象度を上げる", "整合性の担保"];
const buzz2 = ["アラインメント", "レバレッジ", "スコープ定義", "スケーラビリティ", "ROI最大化"];
const buzz3 = ["As-Is/To-Be整理", "ギャップ分析", "ベンチマーク", "クイックウィン", "ナレッジシェア"];
function genSentence() {
const a = buzz1[Math.floor(Math.random() * buzz1.length)];
const b = buzz2[Math.floor(Math.random() * buzz2.length)];
const c = buzz3[Math.floor(Math.random() * buzz3.length)];
return `まずは${a}で${b}を行い、${c}していきましょう。`;
}
console.log(genSentence());
6. こうなるとバレる:アンチパターン
- ファクトゼロで「ファクトベースで」と言い続ける
- “仮説”と言い続けて永遠に検証しない
- フレームワークに当てはめただけで“考えた気”になる
- “スコープ外”を多用して問題を永遠にIce Boxへ
- 横文字を使うほど、図と数字が減っていく
7. 健全な活かし方(=本質に戻るチェックリスト)
- これは「誰の」「どんな課題」を解いている話?
- それは測定可能な指標(KPI/KGI) に紐づいてる?
- 具体例(Example) と言い換え可能?(できないなら曖昧)
- 「なぜ今やるのか」「やらない理由は?」に答えられる?
- 意思決定者は誰? いつ、何を判断する?
- データ(n, 期間, 手法) は明示した?
- 「結局どうするの?」を最後に1行で言える?
まとめ
- 「中身のないことを賢く言い換える」テクニックは、知っていると“見抜ける” ようになります。
- 実務で本当に効くのは、具体・事実・数字・再現可能性。
- 「抽象→具体→検証→学習」のループを回し、言葉よりアウトプットで勝ちましょう。

