32
12

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

TOPPERSAdvent Calendar 2023

Day 24

C言語で作ったドローン物理モデルをUnityでビジュアライズ&制御する!TOPPERS/箱庭のドローン・シミュレーション構想と現在の開発状況

Last updated at Posted at 2023-11-12

前回、Unity+Python+箱庭で自作ドローンを動かしてみる!では、Unityで作成したドローンをPythonで制御しました。

image.png

ただ、この方法にはいくつか課題があります。

  • 物理モデルの精度
    • Unityの物理エンジンはシンプルなシミュレーションには適していますが、高度なドローンの飛行動作を再現するには限界があります。
  • リアルタイム制御とパフォーマンス
    • Pythonは手軽に使える言語で、様々なライブラリを使ってスピーディに試作することがができますが、リアルタイム性や計算パフォーマンスの面で課題があります。特に複雑な計算が必要な場合、遅延やパフォーマンスの問題が生じる可能性があります。また、組み込みOS上でPythonプログラムを動かすことは至難の技だと言えます。

現在検討中のドローン・シミュレーション構成

そこで、こういう構成のドローン・シミュレータを検討してみました。

スクリーンショット 2023-11-12 18.14.54.png

ドローン物理モデル(C/C++)

ドローンの物理モデルは、数式をベースにオイラー法やルンゲクッタ法などで数値計算できるようにします。こうすることで、必要な精度のシミュレーションが可能になります。

ドローン制御モデル(C/C++)

ドローンの制御モデルもC/C++言語で作成します。C/C++言語で作成しておけば、組み込みOSへの適用も容易になると思いますし、PX4への適用も可能になります。

MATLAB/Simulink

上記の物理モデルと制御モデルは、モデルベース開発として、MATLAB/Simulinkで作成することができます。

さらに、エンベデッドコーダーを使用すれば、物理モデルと制御モデルを、Cコードとして生成することができます。

外部環境/ビジュライズ(Unity)

Unity側では、ドローンの物理モデルが出力する「位置・姿勢情報」を入力してビジュアライズします。また、ドローンの外乱等のイベントはUnity上でシナリオ化して発生させます。

詳細アーキテクチャ

これらの内容をより具体的にアーキテクチャ検討したものがこちらです。

スクリーンショット 2023-11-12 18.52.56.png

中核となるのはドローン物理モデルとドローン制御モデルです。これらはC/C++で開発されます。

ドローン制御モデルは、PX4のAPIで開発されますので、箱庭のシミュレーション環境で動作チェックできたものを、そのまま Pixhawk上でデプロイし、動作確認ができる所が優れています。

物理モデルはドローンの動的な挙動を数値計算し、より精度の高いシミュレーションが可能となっています。

シミュレーションの世界では、PX4 は SITL (Software In The Loop) 環境上で実行されます。

Unityはこのシステムのビジュアライゼーションと外部環境を担当しています。シミュレーションからの「位置・姿勢情報」はUnityに送られ、リアルタイムでの視覚フィードバックが得られます。また、Unity内で発生させた外乱やその他のイベントは、物理モデル側にフィードバックされます。

このアーキテクチャにより、開発からテスト、デプロイまでの一貫したフローが実現し、PX4フライトスタックを使用する開発者にとって、現実の条件下でのドローンの挙動を正確に評価することが可能になります。

現在の開発状況

箱庭ラボでは、このドローン・シミュレータを、TOPPERS/箱庭ベースで、誰でも使えるように、オープンソースとして開発しています。

現時点で、以下の対応ができ、その成果を一般公開しました。

  1. ドローン物理モデルをC言語で実装
  2. ドローン制御モデルをC言語で実装
  3. Unity上でのビジュアライズ
  4. ドローン制御モデルを PX4 on SITL に組み込んで実行

ドローン物理モデルをC言語で実装

ドローン物理モデルは、以下の数式をオイラー法でC言語にしました。

image.png

image.png

コード断片:推力の計算

double u = \
       phys.param.p * ( propeller.w[0] * propeller.w[0]) \
     + phys.param.p * ( propeller.w[1] * propeller.w[1]) \
     + phys.param.p * ( propeller.w[2] * propeller.w[2]) \
     + phys.param.p * ( propeller.w[3] * propeller.w[3]) \
     ;

コード断片:X軸の速度と位置の計算

phys.next.vec.x = ( phys.delta_t /  phys.param.m ) * u 
                * 
                  ( 
                      cos(phys.current.rot.x)
                    * sin(phys.current.rot.y)
                    * cos(phys.current.rot.z)
                    +
                      sin(phys.current.rot.x)
                    * sin(phys.current.rot.z) 
                  ) 
                  + phys.current.vec.x;

phys.next.pos.x = (phys.current.vec.x * phys.delta_t) + phys.current.pos.x;

コード断片:Y軸の速度と位置の計算

phys.next.vec.y = ( phys.delta_t /  phys.param.m ) * u 
                * 
                  ( 
                      cos(phys.current.rot.x) 
                    * sin(phys.current.rot.y) 
                    * sin(phys.current.rot.z) 
                    - 
                      sin(phys.current.rot.x) 
                    * cos(phys.current.rot.z) 
                  ) 
                  + phys.current.vec.y;

phys.next.pos.y = (phys.current.vec.y * phys.delta_t) + phys.current.pos.y;

コード断片:Z軸の速度と位置の計算(境界条件として、Z軸は位置が0で止まるようにしています)

phys.next.vec.z = ( phys.delta_t /  phys.param.m ) * u 
                * 
                  ( 
                      cos(phys.current.rot.y) 
                    * cos(phys.current.rot.x) 
                  ) 
                  - (phys.param.gravity * phys.delta_t )
                  + phys.current.vec.z;

phys.next.pos.z = (phys.current.vec.z * phys.delta_t) + phys.current.pos.z;
/*
 * 境界条件:地面から下には落ちない
 */
if (phys.next.pos.z < 0) {
  phys.next.pos.z = 0;
  phys.next.vec.z = 0;
}

コード断片:X軸の角速度と角度φの計算

double torque_phi = - phys.param.l * phys.param.p * propeller.w[1] * propeller.w[1]
                    + phys.param.l * phys.param.p * propeller.w[3] * propeller.w[3];
phys.next.rot_vec.x = torque_phi * phys.delta_t + phys.current.rot_vec.x;
phys.next.rot.x     = (phys.current.rot_vec.x * phys.delta_t) + phys.current.rot.x;

コード断片:Y軸の角速度と角度θの計算

double torque_theta = - phys.param.l * phys.param.p * propeller.w[0] * propeller.w[0]
                      + phys.param.l * phys.param.p * propeller.w[2] * propeller.w[2];
phys.next.rot_vec.y = torque_theta * phys.delta_t + phys.current.rot_vec.y;
phys.next.rot.y     = (phys.current.rot_vec.y * phys.delta_t) + phys.current.rot.y;

コード断片:Z軸の角速度と角度ψの計算

double torque_psi   = phys.param.k * propeller.w[0] * propeller.w[0]
                    - phys.param.k * propeller.w[1] * propeller.w[1]
                    + phys.param.k * propeller.w[2] * propeller.w[2]
                    - phys.param.k * propeller.w[3] * propeller.w[3];

phys.next.rot_vec.z = torque_psi * phys.delta_t + phys.current.rot_vec.z;
phys.next.rot.z     = (phys.current.rot_vec.z * phys.delta_t) + phys.current.rot.z;

ドローン制御モデルをC言語で実装

制御モデルの方は、Z軸の位置と、ロール、ピッチ、ヨーの姿勢をPID制御しています。詳細は、箱庭ラボのブログで説明予定です。

Unity上でのビジュアライズ

今回Unityで実現したドローンは、全部、Unityのプリミティブなオブジェクト(キューブ等)で作りました。機体やプロペラの色もUnity標準のものを組み合わせて作りました。

image.png

ドローン中心部から、等距離で4つのローターを配置しています。今回のドローンでは、計算を単純化できるように、各ローターは座標系の軸方向に配置しています。

ドローン制御モデルを PX4 on SITL に組み込んで実行

こちらをご参照ください。

PX4と接続可能な箱庭ドローン・シミュレータのファーストリリースしました!

公開中の github URL

以下で一般公開中です!

箱庭ラボの開発風景

これらの取り組み風景をもっと詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

デモ

最後に、デモ動画をお見せします。

画面左側が箱庭環境です。画面右側が、Unity環境です。
箱庭環境で箱庭を起動し、UnityのSTARTボタンでシミュレーション開始します。

シミュレーション開始すると、上昇の推力が与えられて、地上6mまで浮上してホバリングします。

  • キーボードで、左に移動するコマンド(j)を発行すると、機体が左に傾いて、左に移動します。
  • 逆に、キーボードで、右に移動するコマンド(l)を発行すると、機体が右に傾いて、右に移動します。

今度は、視点を少し変えて、前後方向です。

  • キーボードで、前に移動するコマンド(i)を発行すると、機体が前に傾いて、前に移動します。
  • キーボードで、後ろに移動するコマンド(m)を発行すると、機体が後ろに傾いて、後ろに移動します。

最後は、ヨー方向です。

  • キーボードで、左回転するコマンド(f)を発行すると、機体が左回転します。(ちょっとオーバーな動きですが・・)
  • キーボードで、右回転するコマンド(g)を発行すると、機体が右回転します。

これで、機体の動きを箱庭のシミュレーションで確認できました!

32
12
6

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
32
12

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?