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LF Energyセミナー:エネルギー業界におけるオープンソース活用の最新トレンドに参加しました

Last updated at Posted at 2025-12-05

はじめに

2025年11月27日、Lumada Innovation Hub Tokyoで開催されたLF Energyセミナー:エネルギー業界におけるオープンソース活用の最新トレンドに参加しました。本記事では、イベントの概要と、OSSがエネルギー業界にもたらすインパクトについて、技術的な視点から考察します。

LF Energyとは

LF Energyは、The Linux Foundation傘下で2018年に設立されたオープンソース推進団体です。目的は、電力・エネルギー業界のデジタル化と脱炭素化を加速するために、オープンソース技術を活用することです。

  • 中立的な開発環境を提供し、業界全体で共有できるソフトウェア、データ、標準を構築
  • 電力系統のデジタル化、再生可能エネルギーの統合、EV充電インフラなど、幅広い課題に対応
  • 世界中の企業・研究機関・政府が参加するグローバルコミュニティ

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イベント概要

オープニング 福安徳晃氏 (Linux Foundation)

福安氏は、LF Energyセミナーのオープニングスピーカーとして、LF Energyの概要について説明していただいた。エネルギー業界における共通課題をオープンソースとオープンコラボレーションによって解決し、業界全体のDXを推進する必要性を述べました。LF Energyは、その中でもエネルギー業界にフォーカスした団体であり、エネルギー分野におけるデジタル化とカーボンニュートラルを推進するために設立されたことが紹介された。

OSSのトレンドとLF Energy 中村雄一氏 (日立製作所)

中村氏は、日立製作所のOSPO(Open Source Program Office)をリードしている方で、OSSとは何か、その成り立ち(OSS歴史)、OSSコミュニティと日立の関わりなどを中心に紹介していただいた。この中で興味深かったのが、OSSコミュニティ継続の難しさである。自身の経験からSELinux Policy Editorプロジェクトが更新されなくなった経験を語っていただいた。Linux Foundationの台頭により、OSSが商用品の代替 → 新技術のベース → 社会課題や規制への対応にOSSが活用されることで発展してきた。業界全体で70%の共通部分を標準化し、残り30%に各社が独自投資することで効率的な開発が可能になることが紹介されました。

日立が主要機能の開発にメンテナーとして携わっているKeycloakとCNCF(Cloud Native Computing Foundation)の日本支部であるCloud Native Community Japan立ち上げやミートアップ開催、ワーキンググループの活動など、国内外でのコミュニティ活動の拡大と成果について説明されました。

日立OSPOがエンジニアの技術力強化と顧客への価値提供を循環させる取り組みについて、OSPOの4つのステージと日立の戦略的なOSS活用(貢献含む)の推進を使って説明していただいた。特に戦略的なオープンソース活用と積極的なコントリビューションを推進していることがわかる内容であった。

最後に、エネルギー分野のトレンドとして、フランスの大手配電会社を中心に設立されたエネルギー業界向けオープンソース団体 LF Energyが、ヨーロッパやアメリカの事業者を中心に活発に活動していること、日立がLF Energryのメンバー企業の1つであることが紹介されました。また、LF EnergyはOSPOの概念を積極的に取り入れ、メンバー企業がオープンソース戦略を強化するための場やリソースを提供しているとLF EnergyとOSPOの関係を紹介していた。

LF Energy Deep-Dive 西島直氏 (日立製作所)

西島氏は、LF Energyの活動内容とエネルギー業界におけるOSSの役割について詳しく説明していただいた。LF Energyセミナーのメインスピーカーとして、LF Energyのプロジェクト、Special Interest Groups (SIGs)、LF Energy Summit、OSPO for Energy Sectorついて紹介があった。

LF Energyでは、特定のテーマに焦点を当てたプロジェクトや活動を行うためのSpecial Interest Groups (SIGs)が設立されている。 北米の送電事業者など向けの仕様策定やSDKなどのライブラリを提供するワーキンググループの1つであるLF Energy TROLIE、電力グリッドの短期負荷予測を行うオープンソースを提供するAIをベースにしたSIG OpenSTEF、IEC61850に準拠したデジタル変電所向けに設計られたオープンソースのリアルタイムハイパーバイザーを提供するDigital Substations SIGのLF Energy SEPATH、EV充電ステーション向けのオープンソースファームウェアスタックを提供するEVerest SIGなどが紹介された。
特にOpenSTEFは、負荷予測の可視化をGrahanaとPythonで実現している話があり、興味深かったです。

LF Energy Summit は、エネルギー業界におけるオープンソースの最新動向を共有し、業界全体でのコラボレーションを促進するための重要なイベントであることが紹介されました。9月にドイツで開催されたLF Energy Summit EUについての報告もありました。

LF Energyは、エネルギー業界におけるオープンソースの推進を目的としており、その活動の一環としてOSPOの設立や運営を支援することが重要である。OSPOは、企業や組織がオープンソースを効果的に管理・活用するための仕組みであり、LF Energyのメンバー企業にとっても重要な役割を果たすと説明された。

参加者からの質問で、近年のデータセンターの電力消費増加に対するLF Energyの取り組みについて尋ねられました。西島氏は、AIを活用した需要予測やスマートメーターの導入、データ連携の仕組み構築などが進められていることを答えていました。特に、電力の安定供給や効率化に向けたAI技術の応用が重要視されているとのことです。

東京ガスグループのクラウド化への挑戦 杉山祐介氏 (東京ガス)

冒頭、福安氏からの紹介で、杉山氏がCNCFエンドユーザーケーススタディコンテストで優勝したことが紹介されました。

杉山氏は、東京ガスグループにおけるクラウドネイティブ技術の導入とその成果について紹介していただいた。東京ガスグループは、エネルギー業界におけるデジタル化を推進するために、クラウドネイティブ技術を積極的に採用している。具体的なプロジェクト事例や導入の背景、得られた効果について詳しく説明があった。

エネルギー業界におけるGX, DX, CXの推進について、国内外の事例や自社の取り組みを交えて、家庭向けのバリューチェーン変革、電力市場の自動化や取引管理の拡大などの説明があった。

電力需給が逼迫する中で、デマンドレスポンスの導入が業界全体で進められていることや、顧客がエネルギー育成に参加する仕組みや、報酬を通じてエネルギー消費を調整する取り組みが紹介された。東京ガスは、myTOKYOGASというWeb会員サービスを展開しており、杉山氏がこのアプリを開発したとのことです。 毎月、ガス、電気の使用量を確認するだけで100ポイントが付与されるらしく、PayPayポイント、dポイントなど、10社のポイントに交換可能とのことで、お得感を強調していました。500ポイントから交換可能なので、つまり5ヶ月間、使用量を確認すると交換が可能ということでした。

東京ガスは、エコシステムへの貢献を目的に2024年10月 CNCF End User Supporter Programに参加したとのことです。ただし、End User Supporterは廃止となり、新プログラムとして End User Contributor Programが2025年6月に開始されたと紹介がありました。参加費が無償になった代わりに、KubeConへの参加費のディスカウントチケットの配布がなくなったとのことで残念がっていました。

持続可能な社会インフラを築くOSS基盤:Civil Infrastructure Platform 小林良岳氏 (東芝)

小林さんは、Civil Infrastructure Platform (CIP)プロジェクトの概要とその重要性について説明していただいた。CIPは、持続可能な社会インフラを支えるためのオープンソースソフトウェア基盤を提供することを目的としている。小林氏は、CIPの技術的な特徴や利点、そしてエネルギー業界における具体的な適用事例について詳しく紹介があった。

CIPは、超長期サポートカーネル、リアルタイムなサポート、CIP Core、テストの自動化、セキュリティ、ソフトウェアの更新などを強化し、産業レベルの品質持続可能性セキュリティという価値を提供し続けていることを強調していました。

詳しくは、小林さんが明日、東芝 Advent Calendar 2025 の記事を投稿しますのでそちらをご覧ください。

まとめ

今回初めてLF Energyのセミナーに参加しましたが、エネルギー業界におけるOSSの重要性とその最新トレンドについて深く理解することができました。特に、クラウドネイティブ技術や生成AIの活用が進む中で、OSSがどのようにエネルギー分野の課題解決に寄与しているかを学べたことは有益でした。また、LF Energyがメンバー企業にOSPOの設立・運営を支援している点も興味深かったです。

LF Energy は、どちらかというとクラウド技術が範囲にしている感じを受けました。例えば、CIPと連携することで、エネルギー分野の上位層から下位層までシームレスでLF Energyの範囲になると良いと思いました。

日立OSPOは、トヨタ・日立が挑む無償ソフトへの貢献 「デジタル下手な国」返上をという記事で、現在、OSPOメンバーが約60人で、3,4年後、OSSに貢献するエンジニアを30コミュニティ、1,000以上にすることが目標と言っており、今回の中村氏、西島氏の発表ではその勢いを感じることができました。

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Lumada Innovation Hub Tokyoに初めて訪れましたが、東京駅に直結しており、交通の便が非常に良い場所にあります。施設内はワークショップやプロトタイピングを用意に行える設備が整っており、技術者同士の交流やコラボレーションが促進される環境が整っています。

今後もこのようなイベントに参加して、最新の技術動向をキャッチアップし続けたいと思います。

掲載内容は、個人の見解です。コメント等は広くご意見を頂ければ幸いです。もし、記述について、誤りや気になることがあれば、編集リクエストやコメントでフィードバックしていただけると助かります。

参考情報

商標について

  • Linuxは、Linus Torvalds 氏の米国およびその他の国における登録商標です。
  • Linux Foundationは,The Linux Foundationの登録商標です。
  • 本ページに記載されている社名及び商品名はそれぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。本ページでは、商標「™」、登録商標「®」マークは原則として明記しておりません。
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