Kubernetes × GPU Operator × Knativeで実現するGPUaaS
〜AIエージェント時代にGPUを「占有しない」インフラ設計〜
はじめに
近年、LLMを中心とした AIエージェント が急速に発展しています。
- 対話型AI
- 自律エージェント
- マルチエージェントによる業務自動化
- 推論APIを中心としたサービス提供
これらを支える基盤として、GPUは必須の計算資源になりました。
一方でGPUは、
- 非常に高価
- 常時100%使われるとは限らない
- ベアメタル前提だとスケールしづらい
という課題も抱えています。
本記事では、
Kubernetes × NVIDIA GPU Operator × Knative
を組み合わせた GPUaaS(GPU as a Service) という考え方について、
- 技術的観点
- SRE / インフラ設計視点
- CI/CD・運用
- ビジネスモデル
- そして少し先の未来
まで含めて整理します。
背景:AIエージェント時代にGPU基盤はどう変わるか
AIエージェント系のワークロードには、次の特徴があります。
- GPU使用は断続的
- バースト的に負荷がかかる
- 常時GPUを使い切るケースは少ない
それにもかかわらず、
GPUを1ユーザ・1アプリで占有する設計
を続けると、
- GPU利用率が伸びない
- コスト効率が悪い
- 小規模ユーザを大量に収容できない
という問題が顕在化します。
ここから、
GPUを「占有する資源」ではなく
**「共有・スケールするサービス」**として扱えないか
という発想が生まれます。
ベアメタルGPU運用の限界(SRE視点)
ベアメタルGPUの特徴
- GPUは1台のサーバに直結
- 1ユーザ or 1アプリが占有
- スケールはノード追加のみ
問題点
- GPUがアイドルでも他に使わせられない
- キャパシティプランニングが難しい
- バースト負荷に弱い
- ROIが伸びない
👉 AIエージェントの特性と相性が悪い
KubernetesによるGPUの抽象化
Kubernetesを使うことで、GPUは
- ノード固有の物理資源
→ Podから利用できる論理リソース
として扱えるようになります。
ここで重要になるのが NVIDIA GPU Operator です。
NVIDIA GPU Operator(公式)
GPU Operatorは、GPU利用に必要な
- NVIDIA Driver
- CUDA Toolkit
- Device Plugin
- DCGM(監視)
を Kubernetesネイティブに管理します。
- 公式ドキュメント
https://docs.nvidia.com/datacenter/cloud-native/gpu-operator/latest/overview.html - 公式GitHub
https://github.com/NVIDIA/gpu-operator
SRE視点の価値
- GPUノードのセットアップを自動化
- ノード入替・増設の再現性向上
- GPUも「コードで管理できるインフラ」になる
MIG(Multi-Instance GPU):ハードウェア分割
MIGは、GPUをハードウェアレベルで分割し、
独立したGPUインスタンスとして扱う仕組みです。
特徴
- 各インスタンスは独立した計算・メモリ領域
- 推論・小規模処理に最適
- マルチテナント設計と相性が良い
Time Slicing:時間共有(オーバーサブスク)
Time Slicingは、GPU時間を複数Podで共有する仕組みです。
注意点(重要)
- GPUが増えるわけではない
- ワークロードによって性能が変動
- 監視・SLO設計が重要
👉 用途を選べば強力だが万能ではない
MIGとTime Slicingの使い分け
| 観点 | MIG | Time Slicing |
|---|---|---|
| 分離性 | 高 | 低 |
| 予測性 | 高 | 低 |
| 向く用途 | 推論 / マルチテナント | バースト / 開発用途 |
KnativeによるGPUのオンデマンド化
Knativeを使うことで、
- リクエスト時のみPod起動
- リクエストがなければ Scale to Zero
が可能になります。
GPU × Knative の価値
- GPUを「使わない時間は完全に解放」
- AIエージェントの断続利用に最適
- GPUをON/OFFする発想から脱却
GPUaaS 全体アーキテクチャ
構成要素
- Kubernetes Cluster
- NVIDIA GPU Operator
- MIG / Time Slicing
- Knative Serving
- 推論・エージェントPod
動作フロー
- リクエスト到達
- KnativeがPod起動
- GPU割当
- 処理完了後Scale to Zero
SRE・インフラ設計思想
- GPUもCPU/メモリと同列に扱う
- 利用率をKPIにする
- 常時利用系とバースト系を分離
- 障害時は自動復旧前提
👉 GPU込みでSREできる世界
CI/CD・運用
- 推論コンテナをGitOps管理
- GPU Operator設定もコード化
- Canary / Blue-Greenでモデル更新
- GPUメトリクスをDCGMで監視
ビジネスモデルとしてのGPUaaS
| 観点 | ベアメタル | GPUaaS |
|---|---|---|
| 利用効率 | 低 | 高 |
| 収容ユーザ | 少 | 多 |
| スケール | 手動 | 自動 |
| AIエージェント適性 | 低 | 高 |
👉 GPU単価あたりの価値を最大化
GPUは「電力」に近いインフラ資産になるのではないか(未来)
少し妄想も含みますが、
GPUは今後 電力と同じレベルの重要インフラ資産になると考えています。
- 一家に一台GPUを持つのではなく
- 地域単位でGPUセンターが整備され
- 必要なときにGPUを“引き込む”
これは、
一家に一台発電機を持たず、電力会社から電気を引く
という構造と非常によく似ています。
この世界ではGPUは、
- 占有するハードウェアではなく
- 共有される社会インフラ
になります。
GPUaaSは、その未来に向けた
現実的で実装可能な第一歩だと考えています。
まとめ
今までのまとめとしてGPUaaSの簡単な構成図を添付します。(ツッコミどころが多いのはご容赦)

- AIエージェント時代にはGPUaaSが合理的
- KubernetesでGPUを抽象化
- GPU Operatorで運用を自動化
- MIG / Time Slicingで収容効率向上
- Knativeでオンデマンド化
- 技術・SRE・ビジネスすべてで成立する
GPUは、
占有する資源から、共有・スケールするサービスへ
進化していきます。