プラクティス名(別名)
デリゲーションポーカー (デリゲーションボード、7 Levels of Authority)
プラクティスの目的・狙い
- 権限移譲のレベルについて認識合わせする
- お互いの役割分担や責任範囲を明確にする
どんな時に使うか
- 権限移譲された方が実際にどこまで自分で決めてしまってよいのか判断に迷う時
- 上位職者と下位職者の間に発生している期待値のズレを解消したい時
実施手順
デリゲーションポーカーはマネジメント3.0に登場するプラクティスの1つで、権限移譲する方/される方の認識合わせを行うためのツールです。専用カードもありますが、1~7と書かれたカードセットが人数分あれば代用可能です。
一口に権限移譲といっても、「指示通りにやってね」から「全て任せた」まで段階があり、実行アクションによっても変わるかもしれません。デリゲーションポーカーでは移譲レベルを7段階に分け、実行アクション毎にお互いの認識を一つ一つ確認していきます。
Lv | スタイル | 説明 | ボスのセリフ |
---|---|---|---|
1 | 命令する | ボスが決めて、メンバーに指示する | こうしろ! |
2 | 説得する | ボスが決めて、メンバーに売り込む | こうしたい |
3 | 相談する | ボスが提案し、メンバーに相談する | これでどう? |
4 | 同意する | ボスとメンバーが合意して決める | どうする? |
5 | 助言する | メンバーが提案し、ボスが助言する | こうしたら? |
6 | 尋ねる | メンバーが決めた後で、ボスが尋ねる | ここは大丈夫? |
7 | 委任する | 完全にメンバーが決める | 全て任せた! |
Lv1~3はボス側に、Lv5~7はメンバー側に最終決定権があります。
Lv4は中立で双方に決定権があります。
- デリゲーションポーカーに参加する人数分、1~7と書かれたカードを用意する
- 検討テーマ(実行アクション/判断領域など)を1つ挙げる
- それぞれが思う移譲レベル(1~7)のカードを裏返しにして場に出す
- 全員のカードが出揃ったら、カードをオープンにする
- 数字にズレがあれば、話し合って最終的な結論(1~7)を決める
- 次のテーマを挙げ、同じように認識合わせを行う(以降、手順2~5を繰り返す)
- 最終結論は表などにまとめ、いつでも参照できる場所に掲示する
アレンジ例
- オンライン会議で実施する場合、5カウントで一斉に1~7の数字をチャットに投稿する
- オンラインボード上で実施する場合、1~7のエリアを用意しておき、5カウントで一斉に自アイコンを移動させる
- 5分話し合っても結論が出ない時は再度ポーカーを行い、最も人数が多い数字を結論とする
- 職務範囲が被る2つのロール(とくに上下関係は無い)で役割分担を明確にするためデリゲーションポーカーを行う
アンチパターン
- 思いつく限りの実行アクションを挙げ、網羅的に明確化しようとする(=キリが無い)
参考情報
マネジメント3.0の提唱者(Jurgen Appelo氏)のスライド資料
日本語版のカードを自作された広木さんの記事(めっちゃ分かりやすいです!)
miroでデリゲーションポーカーする際のテンプレート
こぼれ話(私的コメント)
スクラムの原則から言えば、チーム内でロールを固めすぎると、自分の役割以上のことをしなくなる危険性があるため、かえって望ましくありません。スクラムメンバーとしては定義された役割にこだわらずにお互いをサポートできる関係が理想です。
とはいえ、現実的にはある程度、役割分担がはっきりしていた方がお互いに動きやすいというケースもあるでしょう。またこのワークを行うことで、そもそもお互いの期待値ズレにも気づけるので、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまっていた、という事態を回避することもできます。
もちろん役割を定義すれば万事解決というわけでもないのですが、少なくともお互いの認識を擦り合わせる術を学ぶことには意義があると思います。