新しいClaude、また出ちゃいました、、。今回は「結局なにが変わったの?」をサクッとキャッチアップしていきます。
はじめに
こんにちは!前回は「出たてほやほやのClaude Opus 4.8を整理してみた」を書きました。ありがたいことに、これまで書いた記事のなかで一番多くのリアクションをいただきました。読んでくださった方、ありがとうございました。
2026年6月10日(日本時間)、Anthropicが Claude Fable 5 と Claude Mythos 5 を発表しました。
ところで「Fable」と聞いて、僕が最初に思い浮かんだのは漫画の『ザ・ファブル』でした(小声)。伝説のkし屋のほうです。
fable は「寓話・おとぎ話」のこと。じつは mythos(神話)も、もとをたどれば同じく「語られるもの=おはなし」を指す言葉です。Anthropicいわく、だから対の名前にしたとのこと。つまり FableとMythosは"兄弟"的なネーミングになってます。じゃあ、同じ日に出た2つのモデルに、なぜわざわざ兄弟の名前を付けたのか——ここが今回の内容に直結しています。
前回はOpus 4.8の「正直さ」を主役に据えましたが、今回はその上をいく新世代モデルです。結論から言うと、今回いちばん面白いのは性能の話ではないです。「すごく賢いモデルを安全に世に出すために、どんな仕組みを発明したか」のほうが内容としてはあります。
その仕組みが 「フォールバック」。危ないテーマを聞くと、Fable 5ではなく一段下のOpus 4.8が代わりに答えるという、あまり聞いたことのない方式です。これが今回のAnthropicの発想です。
この記事でわかること
- Claude Fable 5 / Mythos 5 で何が変わったのか
- 主役の「フォールバック」とは結局なに? なぜそんな仕組みにしたのか
- 能力の目玉(コーディング・ビジョン・メモリ)
- 開発者が知っておくべき使い方の勘所(ここ地味に大事)
まず結論(要点だけ)
Mythosクラスという最上位モデルを史上はじめて一般公開しました。ただし危ないテーマは賢いまま答えさせず、Opus 4.8に"フォールバック"させる新方式になってます。
| ざっくり | 中身 |
|---|---|
| 主役 | Mythos級を初の一般公開(=Fable 5) |
| 新方式 | 危険トピックは拒否でなくOpus 4.8が代打 |
| 価格 | 入力$10 / 出力$50(per 1M tokens) |
| 注意点 | サブスクは段階展開(6/22まで無償同梱→6/23以降クレジット制) |
Claude Fable 5 とは
- 公開日:2026年6月9日(米国)/6月10日(日本)
- 位置づけ:Opusクラスのさらに上に新設された「Mythosクラス」。第1弾は4月にGlasswing限定で出た Mythos Preview で、今回が一般向けの第2弾。
- Fable 5 と Mythos 5 の関係:中身は同一モデル。違いはセーフガードの有無だけ。安全策ガッチリ版がFable、外した版がMythos(こちらは限定提供)。
- 名前の由来:冒頭で触れたとおり、Fable はラテン語 fabula(「語られるもの」)由来で、mythos に通じる言葉。中身が同じなのに安全装備が違うから、対になる別名を付けたというわけです。
Its capabilities exceed those of any model we've ever made generally available.
── Anthropic公式(@claudeai)
「これまで一般提供したどのモデルより高性能」と言い切っています。えらい強気だな。
フォールバックについて(今回の主役)
仕組み
普段、AIに危ない質問(爆弾の作り方など)をすると「お答えできません」と拒否してきます。Fable 5には、この拒否とは別にもう一つの動きが足されました。
サイバー・生物化学・蒸留に関連するクエリを検知すると、Fable 5ではなく一段下のClaude Opus 4.8が代わりに応答(フォールバック)するんです。画面には以下の表示になります

- 引き金は「危険かどうか」ではなく「話題」。セキュリティ業務や生物の研究のような真っ当な質問でも、この3ジャンルに触れるとOpusに回されることがあります(公式も「無害なリクエストが引っかかることがある」と認めています)。
-
フォールバックは拒否の置き換えではない。本当に危険な要求なら、代打のOpus 4.8がこれまでどおり拒否します。「Fableなら何でも答えてくれる」わけではないです。
ちなみに、このセーフガードを一部解除した版が Mythos 5。こちらは引き続き、サイバー防御の関係者など一部にのみ限定提供で、一般ユーザーは触れません。
なぜフォールバックさせるのか(調べてみた)
公式ドキュメントとannouncementを読むと、検知対象は 3カテゴリ でした。
Fable 5's safeguards detect requests related to cybersecurity, biology and chemistry, and distillation.
── Anthropic公式(@claudeai)
| カテゴリ | 中身 |
|---|---|
| ① サイバーセキュリティ | エクスプロイト/マルウェア作成、偵察・横展開などエージェント的ハッキングまで広く |
| ② 生物・化学 | 実験手法や分子メカニズム。当面、ほとんどの生物系要求が対象 |
| ③ 蒸留(distillation) |
モデルの思考の抽出。docs上は reasoning_extraction という拒否カテゴリ |
注目したいのが③です。これは「Fableの中身を抜き取られないようにする」ための枠で、ざっくり2方向あります。ひとつは競合モデルを育てるための大規模な能力の抜き取り(蒸留)、もうひとつは「内部の推論を全部書き出して」系の指示で発動する reasoning_extraction。どちらも狙いは同じで、Fableの賢さをコピーされないようにする、というものです。
では「なんでそこまでするんや」ということですが、答えは能力が高いからです。公式によると、AAV(アデノ随伴ウイルス)の外殻組成を予測するタスクで、Mythos級が専用のタンパク質特化モデルを「生物学的な推論だけ」で上回ったそうです。創薬を10倍速にする力は、裏を返せば悪用リスクにもなる。いわゆるデュアルユース問題ですね。だから「賢いまま誰にでも答えさせる」のではなく、危ない領域だけ賢さを絞る、という判断です。
能力ざっくり3つ
① ソフトウェアエンジニアリング
Stripeが5,000万行のRubyコードベースの全体移行を、たった1日で完了したそうです。人手だとチームで2か月超かかる規模です。SWE-Bench Proは80.3%。
↑ Agentic coding(SWE-Bench Pro / FrontierCode)。
※これらはコーディング系なのでフォールバックの対象外=Fable 5の素の実力(後述の*の話とは別枠)。
② ビジョン(視覚)
ここが個人的に一番驚いたところ。ポケモン(FireRed)を、画面のスクショだけ=ビジョンのみでクリアしています。旧モデルは補助ツール(ハーネス)を与えてもクリアに苦戦していた領域です。
去年(2025年)のAWSサミットに参加した時に、Anthropicが展示で同じようなことを行っていたのを思い出しました。(Anthropicのメモとエンジニアにサインをもらったのが懐かしい)
③ メモリ/ロングコンテキスト
数百万トークンを横断しても集中が切れません。ローグライクの名作 Slay the Spire で、持続メモリの効果がOpus 4.8の3倍、最終章への到達率も3倍だったとのこと。
ほかにも「遊び心」デモが公式から出ていたので良ければ、見てください。
物理の第一原理から太陽系の軌道を導いて、日食まで予測するシミュレーション
工場ゲーム Factorio を自力で戦略を立てて自動化
ブラウザCADで3Dプリント可能モデルを設計(しかもCADエディタ自体もAIコパイロットもFable製)
流体シミュレーションをベートーベンのEDMリミックスに同期(その曲もコードで生成、"音楽を聴いたことがない"のに)
使い方(開発者向け)
まず切替方法から。Claude Codeなら:
/model claude-fable-5
Opus 4.8から何が変わったかを表にするとこうなります。
| 項目 | Opus 4.8 | Fable 5 |
|---|---|---|
| effortデフォルト | high | high(low/medでも旧xhigh超えることが多い) |
| thinking | adaptive(オフ可) | 常時オン・要約出力のみ |
| 体感の応答時間 | 普通 | 長め(数分〜、自律実行は数時間) |
| 危険トピック | 自分で応答 | Opus 4.8 にフォールバック |
| 価格(入/出 per 1M) | $5 / $25 | $10 / $50 |
ざっくり要点:
思考が常時オンで、応答が長め。1リクエスト数分〜、自律実行なら数時間に伸びることも。クライアント側のタイムアウト・ストリーミング・進捗表示は見直しておいたほうがいいです(公式も「移行時の最大の変化点」と言及)。
Thinking is always on, and responses can take longer.
── Anthropic公式(@ClaudeDevs)
effortはhighが既定でOK。Fableのlow/mediumが旧モデルのxhighをしばしば上回るので、xhighは本当に難しい問題だけ温存。
In our evals, even low/medium often beat previous models at xhigh
── [Anthropic公式(@ClaudeDevs)]
(https://x.com/ClaudeDevs/status/2064394925358366821)
↑ FrontierCode(最難のDiamondサブセット)。精度 vs コスト。FableはどのeffortでもOpus 4.8の上にいる。
プロンプトはむしろシンプルでいいらしいです。旧モデル用に作り込んだプロンプトやskillは、Fableには過剰指定で、かえって性能が落ちることすらあるそうです。一度素のままで試してみるのをおすすめします。
Existing prompts or skills developed for prior models are often too prescriptive for Fable.
── Anthropic公式(@ClaudeDevs)
「自分の推論を本文に全部書き出して」系の指示はNG。さきほどの reasoning_extraction を踏んでフォールバックが増えます。推論を見たいならadaptive thinkingの構造化thinkingブロックを使いましょう。
内部の推論を応答テキストとして書き出させる指示は
reasoning_extractionを発動させ、Opus 4.8へのフォールバックを増やす(要旨)
── 公式docs:プロンプティングガイド
長時間タスクは「進捗はツールの結果に照らして報告して」と指示すると、捏造ステータスがほぼ消えるとのこと。…これ、前回Opus 4.8で推した「正直さ」路線がちゃんと続いているんですよね。シリーズを通して一本筋が通っています。
進捗報告をツールの実行結果に照らして行わせると、捏造された進捗ステータスがほぼ解消された(要旨)
── 公式docs:プロンプティングガイド
ベンチマークについて
公式のベンチ表がこれです。ただし読み方に注意点があるので先に言っておきます。
その1:数値は「Mythos 5 と Fable 5 の高い方」を載せています。
その2:* 付きの項目(サイバー・Terminal-Bench・Health など)は、あくまでMythos 5の数字です。 一般人が触るFable 5だと、ここはフォールバックが効いてOpus 4.8並みに落ちます。たとえばサイバーの78.0%ではあるが、Fableはそこを40%(Opus 4.8)にフォールバックします。
逆に * なしの項目(SWE-Bench Pro、Computer use、空間推論など)は、素直にFable 5の実力として読んで大丈夫です。
テスターの声も出ていて、Cursorは「長期タスクで扱える幅が一気に広がった」、Replitは「一年前なら百回プロンプトが要ったアプリを一発で作れた」といった評価。全14社が早期テストに参加しています。
今後の見通し
限定版の Mythos 5 は、サイバーの安全策を外した版で、まずはGlasswingのサイバー防御パートナー向けです。
For a small group of cyber defenders and critical infrastructure providers, we are also launching Claude Mythos 5.
── Anthropic公式(@claudeai)
今後は米政府とも協議しながら、信頼アクセスプログラムで段階的に対象を広げる予定とのこと。さらに生物医学の研究者向けにも、生物・化学の安全策だけ外した版(サイバーは維持)を開放していくそうです。
あと重要なのが、Mythosクラスは全トラフィックで30日のデータ保持が必須化されたこと。学習には使わず安全目的限定で、原則30日後に削除。プライバシー的にはここは注意で、実務などでは一旦使えないですね。
まとめ
- Fable 5 = Mythosクラスを史上はじめて一般公開したモデル。中身はMythos 5と同一で、違いは安全策の有無だけ。
- 主役は性能ではなく 「フォールバック」 という新方式。サイバー/生物・化学/蒸留(=思考の抽出)の3カテゴリを検知したら、Opus 4.8が代打する。
- 能力は本物。Stripeの1日移行、ポケモンをビジョンのみでクリア、Slay the Spireでメモリ3倍。
- ベンチ表の
*には注意。Fableで素直に出ない数字がある。 - 価格は$10/$50。サブスクは6/22まで無償同梱→6/23以降クレジット制。
能力競争のニュースは見飽きるくらい出回ってますが、「賢すぎるモデルをどう安全に届けるか>>>拒否ではなく代打」という発想がこれから浸透していきそうですね。前回の「正直さ」とあわせて、Anthropicが何を大事にしているのかが、だんだん見えてきた気がします。




