はじめに
Anthropicが2026年1月に発表した Claude Cowork は、Claude Codeのエージェント機能をコーディング以外の知識労働へ拡張するデスクトップAIエージェントです。エンジニアがコードを書かずとも、自然言語で指示するだけで複雑なマルチステップタスクを自律実行できる仕組みを提供します。
2026年2月にはWindowsへも完全フィーチャーパリティで展開され、ProプランからMaxプランまで幅広いユーザーが利用できるようになりました。
この記事で学べること
- Claude Coworkの仕組みとアーキテクチャ(隔離VM・MCPの役割)
- Skills・Connectors・Pluginsの3つのコアコンセプト
- 初期セットアップから実際のタスク実行までの手順
- MCPカスタムコネクターの構築方法
- スケジュール実行・定期タスクの設定
対象読者
- Claude Coworkの概要と実用性を把握したいエンジニア
- MCPを活用して独自コネクターを構築したい開発者
- AIエージェントによるワークフロー自動化に関心がある方
前提環境
- macOS または Windows(デスクトップアプリ必須、Web/モバイル不可)
- Claude Pro・Max・Team・Enterpriseプランのいずれか
TL;DR
- Claude Coworkは Claude Codeの知識労働版 — コードを書かなくてもドキュメント作成・ファイル整理・リサーチ合成をAIが自律実行
- 隔離されたLinux VM(Ubuntu 22.04)上で動作し、指定フォルダのみにアクセス
- Skills(再利用ワークフロー)・Connectors(外部サービス連携)・Plugins(コマンド拡張)の3コンセプトを組み合わせて活用
- MCPでカスタムコネクターを構築可能
- Proプラン($20/月)から利用可能
Claude Coworkとは
Claude Coworkは、Claude Desktopに組み込まれたエージェントモードです。Anthropicの公式サイトでは「Claude Codeのパワーを知識労働へ(Cowork: Claude Code power for knowledge work)」と説明されています。
通常のClaudeチャットとの最大の違いは 実行環境 です。Coworkは会話の中でテキストを返すだけでなく、ローカルファイルを読み書きし、外部サービスへAPIコールを発行し、複数ステップを自律的にこなします。
アーキテクチャの概要
Coworkの実行基盤は、Apple Virtualization Framework(VZVirtualMachine)を利用した隔離Linux VM(Ubuntu 22.04)です。
Claude Desktop(macOS/Windows)
└─ Coworkモード
├─ 隔離Linux VM(VZVirtualMachine)
│ ├─ 指定フォルダのみマウント(スコープ限定)
│ ├─ Bashスクリプト実行
│ └─ ファイル読み書き(Word, Excel, PPT, PDF生成)
└─ MCP(Model Context Protocol)
├─ 組み込みConnectors(Slack, Google Drive, Notion...)
└─ カスタムMCPサーバー(独自拡張)
エージェントループの基本サイクルは「観察 → 計画 → 実行 → 反省 → 繰り返し」です。MCPが外部ツールとの通信を担い、VM内でのファイル操作と組み合わせることで複雑なタスクを完遂します。
Claude CodeとCoworkの違い
| 項目 | Claude Code | Claude Cowork |
|---|---|---|
| 主な用途 | コーディング・リファクタリング | ドキュメント作成・リサーチ・ファイル整理 |
| 実行環境 | ターミナル(CLI) | Claude Desktop(GUI) |
| 対象ユーザー | エンジニア | エンジニア + 非エンジニア |
| 必要スキル | コマンドライン操作 | 自然言語のみ |
利用プランと価格
公式サイト(claude.com/pricing)に基づく2026年3月時点の情報です。
| プラン | 月額 | Coworkへのアクセス | 使用量 |
|---|---|---|---|
| Pro | $20 | ✅ | 標準 |
| Max 5x | $100 | ✅ | Pro の5倍 |
| Max 20x | $200 | ✅ | Pro の20倍 |
| Team | $30/ユーザー | ✅ | Pro 相当 |
| Enterprise | 要問い合わせ | ✅ | カスタム |
使用量(レートリミット)は5時間のローリングウィンドウでリセットされます。Coworkタスクは通常チャットに比べて多くのコンピュートを消費するため、複雑なタスクを頻繁に実行する場合はMaxプランを検討する価値があります。
Coworkは デスクトップアプリ専用 です。Web版(claude.ai)やモバイルアプリからは利用できません。
初期セットアップ
1. Claude Desktopのインストール
Claude Desktop(claude.com)からmacOSまたはWindows版をダウンロードしてインストールします。
2. Coworkモードへの切り替え
Claude Desktopを起動し、左サイドバーの 「Cowork」タブ をクリックします(「Chat」と切り替え可能)。
3. フォルダスコープの設定
Coworkが読み書きを許可するフォルダを指定します。Settings → Cowork → Folder Access から対象フォルダを追加します。隔離VM内でマウントされるのは指定フォルダのみです。
フォルダスコープは必要最小限に絞ることが推奨されています。Coworkは自律実行するため、広すぎるスコープはリスクを高めます。
4. スタンディングインストラクションの設定
Settings → Cowork → Instructions に常時適用するルールを記述します。例:
あなたは日本語で作業する技術ドキュメント作成アシスタントです。
- ファイル操作の前に必ず計画を提示すること
- 既存ファイルを上書きする前に確認を取ること
- 出力ドキュメントはMarkdown形式を基本とすること
5. 最初のタスク実行
タスク入力欄に自然言語で指示を入力します。
/workspaceフォルダ内の全PDFをスキャンし、
それぞれの要点を200字以内でまとめた
research-summary.md を作成してください。
Coworkはまず実行計画を提示します。確認後に「Run」を押すと自律実行が始まります。
3つのコアコンセプト
Skills — 再利用可能なワークフロー
Skillsは繰り返し使う手順や業務ルールを保存しておく仕組みです。インストールしたSkillはClaude のシステムプロンプトに自動注入されるため、毎回同じ指示を入力する手間が省けます。
公式のSkillsマーケットプレイスには 7,000以上のSkill が登録されており、品質スコアとワンクリックインストールに対応しています。
Skillsのインストール手順:
- 左サイドバーの 「Customize」 メニューをクリック
- 「Browse skills」 をクリック
- 一覧から目的のSkillを選択して 「Install」
インストール済みSkillはタスク入力欄で / を入力すると一覧表示されます。
カスタムSkillの作成例:
# 週次レポート作成Skill
## トリガー
ユーザーが「週次レポート」と入力したとき
## 手順
1. /workspaceフォルダからその週のログファイルを収集
2. 各ログのサマリーを生成
3. weekly-report-YYYY-MM-DD.md を作成
4. Slackの#weeklyチャンネルに投稿(Slack Connectorを使用)
## 出力形式
- ファイル: Markdown(H2見出しで各プロジェクト)
- Slack: 3行サマリー + ファイルリンク
Connectors — 外部サービス連携
ConnectorsはCoworkを外部サービスに接続する仕組みです。ファイルシステムアクセスと組み合わせることで「外部サービスからデータを取得→ローカル保存→加工→別サービスへ送信」というエンドツーエンドの自動化が実現します。
組み込みConnectors(一例):
| サービス | 主な操作 |
|---|---|
| Slack | チャンネル読み書き、メンション検索 |
| Google Drive | ファイル取得・更新 |
| Notion | ページ作成・データベース更新 |
| Figma | デザインデータ取得 |
| GitHub | Issue・PR操作 |
| Gmail | メール取得・送信 |
Connectorの設定手順:
- Settings → Connectors を開く
- 接続したいサービスを検索
- 「Add」 をクリックしてOAuth認証を完了
Plugins — コマンド拡張
PluginsはSkillsと似ていますが、タスク実行中に /コマンド名 で呼び出せる即時コマンドを追加します。
Pluginのインストール手順:
- 「Customize」 メニュー → 「Browse plugins」
- 目的のPluginをインストール
- タスク入力中に
/または+ボタンで呼び出し
MCPカスタムコネクターの構築
標準Connectorsにないサービスや社内ツールとの連携には、MCPカスタムサーバー を構築します。
設定ファイルの場所
# macOS
~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json
# Windows
%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json
設定例(ローカルMCPサーバー)
{
"mcpServers": {
"my-internal-api": {
"command": "node",
"args": ["/path/to/my-mcp-server/index.js"],
"env": {
"API_BASE_URL": "https://internal.example.com/api",
"API_KEY": "your-api-key"
}
}
}
}
MCPサーバーの最小実装例(TypeScript)
import { McpServer } from "@modelcontextprotocol/sdk/server/mcp.js";
import { StdioServerTransport } from "@modelcontextprotocol/sdk/server/stdio.js";
import { z } from "zod";
const server = new McpServer({
name: "my-internal-api",
version: "1.0.0",
});
// ツール定義: 社内チケットシステムの検索
server.tool(
"search_tickets",
"社内チケットシステムを検索する",
{
query: z.string().describe("検索クエリ"),
status: z.enum(["open", "closed", "all"]).default("open"),
},
async ({ query, status }) => {
const response = await fetch(
`${process.env.API_BASE_URL}/tickets?q=${encodeURIComponent(query)}&status=${status}`,
{
headers: { Authorization: `Bearer ${process.env.API_KEY}` },
}
);
const data = await response.json();
return {
content: [
{
type: "text",
text: JSON.stringify(data.tickets, null, 2),
},
],
};
}
);
const transport = new StdioServerTransport();
await server.connect(transport);
Claude Desktopを再起動すると、CoworkがこのMCPサーバーのツールを自動認識します。あとは「社内チケットシステムから今週クローズされたバグを取得して、週次レポートに追記して」と自然言語で指示するだけです。
スケジュール実行(定期タスク)
Coworkではタスクのスケジュール実行が可能です。毎日・毎週など定期的に繰り返すワークフローを自動化できます。
設定手順:
- タスクを実行後、右上の 「Schedule」 ボタンをクリック
- 実行頻度を選択(毎日・毎週・毎月・カスタム)
- 実行時刻を設定して保存
スケジュールタスクの活用例:
【毎朝9時】
/notesフォルダのtodo.mdをスキャンし、
今日期限のタスクをSlack #morning-standupに投稿する。
【毎週金曜17時】
今週のgit commitログを取得し、
weekly-dev-summary.mdを生成してNotionのWeekly Logページを更新する。
スケジュールタスクの実行にはClaude Desktopが起動している必要があります。バックグラウンド実行を継続するには、アプリを終了しないようにしてください。
セキュリティと留意点
隔離環境の境界
CoworkはVMによる隔離環境で動作しますが、指定フォルダはVM内にマウントされます。フォルダスコープは必要最小限に絞る ことが公式から推奨されています。
公式ガイドライン(Use Cowork safely)では以下が推奨されています。
- 機密情報を含むフォルダはスコープから除外
- タスク実行前に必ず計画を確認
- 本番環境への直接アクセスは避け、ステージング環境を使用
現時点の制限事項
公式のリサーチプレビューとして、以下の制限があります(2026年3月時点)。
- セッション間のメモリ(記憶)なし
- チャットやアーティファクトの共有非対応
- デスクトップアプリ専用(Web/モバイル非対応)
APIとの違い
Claude APIでは開発者が自前でエージェントループを実装する必要がありますが、Coworkはループ・VM・ファイルアクセスをすべて内包した マネージドエージェント環境 です。プロトタイプを素早く試す場合はCowork、本番グレードの高度なカスタマイズが必要な場合はAPIという使い分けが有効です。
まとめ
Claude Coworkは、Claude Codeのエージェント能力をコーディング以外の知識労働へ拡張した製品です。公式情報をもとに整理すると、以下の点が特に重要です。
- 隔離VM(VZVirtualMachine) によりセキュアな実行環境を提供
- Skills・Connectors・Plugins の3コンセプトでワークフローを段階的に自動化
- MCPカスタムサーバー により社内ツールや独自APIとの連携が可能
- スケジュール実行 で定期タスクを完全自動化
- Proプラン($20/月) から利用可能(デスクトップアプリ必須)
設定に30分程度を投じることで、毎日の定型作業を大幅に削減できます。まずは1つのConnectorと1つのSkillを組み合わせたシンプルなタスクから始めることが推奨されています。
参考リンク
- Claude Cowork 公式ページ
- Get started with Cowork | Claude Help Center
- Use Cowork safely | Claude Help Center
- Use plugins in Cowork | Claude Help Center
- Schedule recurring tasks in Cowork | Claude Help Center
- Building custom connectors via remote MCP servers | Claude Help Center
- Anthropic launches Cowork | VentureBeat


