はじめに
2026年3月26日、Anthropicは Claude モバイルアプリへの業務ツール統合を発表しました。スマートフォンから Figma のデザインファイルを取得し、Amplitude の分析ダッシュボードを確認し、Canva でプレゼン資料を作成する——これらをすべて Claude との会話の中で完結できます。
この機能の基盤は、2026年1月26日に発表された MCP Apps(Model Context Protocol Apps)です。MCP の拡張として策定されたオープン標準で、MCPサーバーがAIチャット内にインタラクティブなUIを提供できるようになりました。
本記事では、Claude Apps の概要・技術アーキテクチャ・開発者向けの実装方法までを公開情報をもとに解説します。
この記事で学べること
- Claude Apps(MCP Apps)の仕組みと主要な9つのサービス統合
- モバイルからの業務ツール操作(2026年3月26日発表の最新機能)
- MCPサーバーにインタラクティブUIを追加する実装手順
- セキュリティモデルと企業利用時の注意点
対象読者
- Claude / MCP を活用した開発者向けツールを構築したい方
- Figma・Canva・Slack などの業務ツールをAIチャットに統合したい方
- MCPエコシステムの最新動向を把握したい方
TL;DR
- Claude Apps = MCP の拡張で、AIチャット内にインタラクティブUIを埋め込む仕組み
- 対応サービス: Slack・Canva・Figma・Box・Clay・Asana・Amplitude・Hex・monday.com(9社)
- 2026年3月26日にモバイル対応が発表。ラップトップ不要でFigma・Amplitude等を操作可能
- 開発者は
@modelcontextprotocol/ext-appsでカスタムMCP Appを構築できる - Claude, ChatGPT, VS Code Insiders, Goose など複数クライアントに対応するオープン標準
Claude Apps(MCP Apps)とは
従来の課題
従来のAIアシスタントは「テキストを返す」だけでした。Figma のデザインを確認したい場合、ユーザーはファイルURLを手動でコピーしてAIに渡し、結果を別ウィンドウで確認する必要がありました。業務の実態は「AIとツールの間で情報を転記する作業」になりがちでした。
MCP Appsによる解決
2026年1月26日、Anthropicは MCP Apps を発表しました。これは Model Context Protocol(MCP)の公式拡張で、MCPサーバーがテキスト応答に加えて インタラクティブなUIコンポーネント を返せるようにする仕組みです。
"We open sourced MCP to give the ecosystem a universal way to connect tools to AI. Now we're extending MCP further so developers can build interactive UI on top of it, wherever their users are."
— Anthropic(2026-01-26)
ツールはダッシュボード・フォーム・ビジュアライゼーション・マルチステップワークフローなど、あらゆるインタラクティブUIをチャット内に表示できます。
仕様策定の背景
MCP Apps の仕様は Anthropic・OpenAI・MCP-UI コミュニティのメンテナーが共同策定しました。オープン標準のため、Claude 以外のクライアント(ChatGPT・VS Code Insiders・Goose など)でも実装可能です。
9つの統合サービス
2026年1月26日のリリース時点で、以下の9サービスが統合されています(claude.ai/directory で有効化可能)。
| サービス | カテゴリ | 主な活用例 |
|---|---|---|
| Slack | コミュニケーション | メッセージ下書き・フォーマット確認・送信前プレビュー |
| Canva | デザイン | プレゼン構成作成→デザイン編集→出力 |
| Figma | UX設計 | テキスト・画像からフローチャート・ガントチャートを生成 |
| Box | ファイル管理 | ファイル検索・ドキュメントインライン表示・内容への質問 |
| Clay | 営業/データ | データエンリッチメント・リードリストの構築 |
| Asana | プロジェクト管理 | 会話からタスク・タイムライン自動生成 |
| Amplitude | プロダクト分析 | インタラクティブな分析チャート構築・パラメータ調整 |
| Hex | ビジネスインテリジェンス | データクエリ・可視化 |
| monday.com | ワークフロー | ワークフロー自動化・プロジェクト調整 |
Salesforce の統合も近日公開予定とされています1。
利用料金と必要プラン
Claude Apps の利用に追加料金はかかりませんが、Pro・Max・Team・Enterprise プランが必要です2。
2026年3月26日: モバイル対応発表
発表内容
Anthropicは2026年3月26日、Claude モバイルアプリへの業務ツール統合を発表しました3。デモでは以下の操作をスマートフォン単体で完結しています。
- Amplitude でアナリティクスダッシュボードを確認
- Figma からデザインファイルを取得
- Canva でプレゼン資料を生成
1月のデスクトップ版リリースから約2ヶ月でモバイルにも展開されたことになります。
展望: "Orbit"
今後の機能として「Orbit」が計画されています4。スマートフォンのカレンダー作成・メッセージ作成・電話・ブラウザ操作など、スマートフォン機能へのより深いアクセスが提供される予定です。
技術アーキテクチャ: MCP Appsの仕組み
2つのMCPプリミティブ
MCP Appsは以下の2つの概念を使います5。
-
UIメタデータ付きツール: ツールのレスポンスに
_meta.ui.resourceUriフィールドを追加し、UIリソースのURLを指定 -
UIリソース:
ui://スキームで提供される bundled HTML/JavaScript
通信の流れ
1. ユーザーがClaude でツールを呼び出す
2. MCPサーバーがツール結果 + ui://リソースURIを返す
3. Claudeクライアントがui://リソースを取得
4. サンドボックス化されたiframeにHTMLをレンダリング
5. UIとホスト間でJSON-RPC over postMessageによる双方向通信
6. ユーザーのUI操作はモデルにフィードバックされる
ツール呼び出しに「テキスト応答(AIモデル向け)」と「HTMLインターフェースへのポインタ(ユーザー向け)」の両方が含まれる設計です。
MIMEタイプと標準
UIリソースの MIME タイプは text/html;profile=mcp-app で、URIは ui:// スキームを使用します(例: ui://my-tool/widget-01)。
開発者向け: MCP Appsの構築
以下のコードサンプルは、MCP Apps公式ドキュメント および MCP Apps ブログ に基づく実装例です。実際のAPIは変更される可能性があるため、最新の公式ドキュメントを参照してください。
セットアップ
npm install @modelcontextprotocol/ext-apps @modelcontextprotocol/sdk
ext-apps パッケージには React・Vue・Svelte・Preact・Solid・バニラJSのスターターテンプレートが含まれています。
MCPサーバーへのUIメタデータ追加
既存のMCPサーバーにUIを追加する場合、registerAppTool と registerAppResource を使います6。
import { McpServer } from "@modelcontextprotocol/sdk/server/mcp.js";
import {
registerAppResource,
registerAppTool,
RESOURCE_MIME_TYPE,
} from "@modelcontextprotocol/ext-apps/server";
const server = new McpServer({ name: "my-analytics-tool", version: "1.0.0" });
const RESOURCE_URI = "ui://analytics-chart/dashboard";
// UIリソース(HTML)をMCPリソースとして登録
registerAppResource(
server,
RESOURCE_URI,
"Sales Dashboard UI",
{ mimeType: RESOURCE_MIME_TYPE },
async () => {
// HTMLファイルの内容を返す
const html = await readFile("./dist/index.html", "utf-8");
return { contents: [{ uri: RESOURCE_URI, text: html }] };
}
);
// UIリソースへのポインタを含むツールを登録
registerAppTool(
server,
"get_sales_dashboard",
{
description: "Get interactive sales dashboard",
inputSchema: { region: { type: "string" } },
// ツール結果をこのUIリソースと関連づける
ui: { resourceUri: RESOURCE_URI },
},
async ({ region }) => {
const data = await fetchSalesData(region);
return {
content: [{ type: "text", text: JSON.stringify(data) }],
};
}
);
クライアント側(TypeScript/ブラウザ)
iframe 内のUIから MCPツールを呼び出すには App クラスを使います。
import { App } from "@modelcontextprotocol/ext-apps";
const app = new App({ name: "sales-dashboard-ui", version: "1.0.0" });
// ツール実行結果を受け取るハンドラ
app.ontoolresult = (result) => {
const data = JSON.parse(result.content[0].text);
renderChart(data);
};
// サーバーのMCPツールを呼び出す
async function handleRegionChange(region: string) {
await app.callServerTool({
name: "get_sales_dashboard",
arguments: { region },
});
}
// ホスト(Claude等)との接続を確立
app.connect();
ローカルテスト
# テストホストでローカル確認
npm start # localhost:8080 でレンダリング
# MCP インスペクターでの検証
npx @mcpjam/inspector@latest
# cloudflared で外部公開(Claudeの設定でカスタムコネクタとして追加)
npx cloudflared tunnel --url http://localhost:3001
セキュリティモデル
MCP Appsは多層的なセキュリティを実装しています7。
sandboxed iframe の制限
すべてのMCP App UIはサンドボックス化されたiframe内で動作し、以下のアクセスが制限されています。
- 親ウィンドウのDOMへのアクセス
- ホストのCookieやlocalStorageの読み取り
- 親ページのナビゲーション
- 親コンテキストでのスクリプト実行
通信の監査可能性
ホストとUI間の通信はすべて postMessage API を通じた JSON-RPC メッセージ として処理され、監査が容易です。
ユーザー同意
Slack へのメッセージ送信・Canva デザインの公開などの重要操作には、実行前に プレビューと確認要求 が表示されます。企業向けには、Enterpriseプランでテンプレートの事前レビューが可能です。
まとめ
- Claude Apps(MCP Apps) は、MCPサーバーがAIチャット内にインタラクティブUIを提供できるオープン標準
- Slack・Figma・Canva・Amplitude など 9サービス が統合済み(
claude.ai/directoryで有効化) - 2026年3月26日の モバイル対応 により、スマートフォンだけで業務ツールをシームレスに操作可能
- 開発者は
@modelcontextprotocol/ext-appsパッケージで カスタムMCP Appを構築 し、Claude・ChatGPT・VS Code など複数クライアントで動作させられる - セキュリティは sandboxed iframe + JSON-RPC + ユーザー同意 の多層設計
エンジニアリングチームの内部ツールや分析ダッシュボードを Claude チャット内に統合することで、「AIとツールの間で情報を転記する作業」から解放される可能性があります。
参考リンク
- MCP Apps - Bringing UI Capabilities To MCP Clients — 公式ブログ(2026-01-26)
- Claude Apps Directory — Claude公式ディレクトリ
- MCP Apps Extension API Docs — 公式APIドキュメント
- MCP-UI Guide — MCP-UI公式ドキュメント
- Anthropic launches interactive Claude apps — TechCrunch(2026-01-26)
- Anthropic upgrades Claude mobile app to handle work tasks without a laptop — Storyboard18(2026-03-26)
-
Anthropic launches interactive Claude apps, including Slack and other workplace tools — TechCrunch(2026-01-26) ↩
-
Claude expands tool connections using MCP — Help Net Security(2026-01-27) ↩
-
Anthropic upgrades Claude mobile app to handle work tasks without a laptop — Storyboard18(2026-03-26) ↩
-
Anthropic Expands Claude Mobile Capabilities, Bringing Work Tools to Smartphones — The Hans India(2026-03-26) ↩
-
MCP Apps - Bringing UI Capabilities To MCP Clients — Model Context Protocol Blog(2026-01-26) ↩
-
MCP Apps Quickstart — Model Context Protocol Apps 公式ドキュメント ↩
-
MCP Apps Guide: Build Interactive UI Inside Claude, ChatGPT, and VS Code — Bytebot(2026) ↩