はじめに
2026年4月15日、Salesforceは年次開発者カンファレンス**TrailblazerDX 2026(TDX 2026)**で「Salesforce Headless 360」を発表しました。
一言で言えば「Salesforceプラットフォームのすべての機能を、API・MCPツール・CLIコマンドとして外部AIエージェントに開放する」宣言です。Claude Code・Cursor・Codex・WindsurfといったAIコーディングエージェントから、SalesforceのCRMデータ・ワークフロー・ビジネスロジックに直接アクセスできるようになりました。
この記事では、Headless 360のアーキテクチャ・60個のMCPツール・Claude Codeとの接続方法・無料で始めるための手順を解説します。
この記事で学べること
- Salesforce Headless 360の全体像と3つの柱
- 60個超のMCPツールがカバーする機能範囲
- Claude CodeをSalesforce MCPサーバーに接続する設定方法
- Developer Editionを使った無料スタートアップ手順
- AgentExchangeによる統合マーケットプレイスの活用
対象読者
- AIエージェントをSalesforceと連携させたい開発者
- Claude Code・Cursor等のAIコーディングツールを業務に活用しているエンジニア
- Salesforce開発を効率化したい Apexエンジニア
TL;DR
- Salesforce Headless 360 = Salesforceプラットフォーム全体を API / MCP / CLI として公開するアーキテクチャ
- 60個超のMCPツール + 30個超のコーディングスキルで、Claude Code / Cursor / Codex から Salesforce を直操作できる
- Developer Edition は Agentforce Vibes IDE + Claude Sonnet 4.5 + Hosted MCP Servers が無料
- AgentExchange では 10,000 本超のアプリが一元検索・即時有効化できる
Salesforce Headless 360 とは
Salesforceがここ2年半取り組んできた「エージェントファーストへの全面刷新」の総仕上げが Headless 360 です。
"We made a decision two and a half years ago: Rebuild Salesforce for agents."
— Salesforce Headless 360 公式発表(2026-04-15)
従来のSalesforceは「ブラウザで操作するCRM」でした。Headless 360 はその前提を解体し、ブラウザを介さずにすべての機能をプログラマブルに呼び出せる構造に変えます。
| 従来モデル | Headless 360 |
|---|---|
| ブラウザUI主体 | API / MCP / CLI が一等市民 |
| 人間がメニューを操作 | AIエージェントが直接ツールを呼ぶ |
| 統合はカスタム開発が必要 | 60+ MCPツールが標準装備 |
| Developer Editionは最小機能 | Vibes IDE + Claude + MCP 込みで無料 |
3 つの柱
柱 1: Build Any Way — どんな方法でも構築
最初の柱は「開発者の自由」です。
60+ MCP ツール と 30+ コーディングスキル が即時利用可能になりました。これにより、外部のAIコーディングエージェント(Claude Code、Cursor、Codex、Windsurf 等)から Salesforce Org の全機能へライブアクセスできます。対象範囲はデータ・ワークフロー・ビジネスロジックを含む全体です。
MCPツールの代表例(公開情報ベース):
| カテゴリ | MCPツール例 |
|---|---|
| Data 360 | Query Records、Upsert Records、Bulk Data Import |
| CRM (Sales Cloud) | Get Account、Update Opportunity Stage、Create Lead |
| Flows & Automation | Trigger Flow、List Active Flows |
| Apex | Execute Anonymous Apex、Deploy Apex Class |
| Agentforce | Create Agent、Deploy Agent、Test Agent |
| Admin | Query Setup、Manage Users、Enable Features |
ツール定義はSalesforceのメタデータAPIをMCP準拠のJSONスキーマでラップしており、フィールドレベルセキュリティ・共有ルール・暗号化はアクセスパターンに関わらず維持されます(The Register 報道)。
柱 2: Deploy on Any Surface — どこにでもデプロイ
Agentforce Experience Layer がこの柱を担います。「エージェントが何をするか」と「どこに表示するか」を分離する設計です。
対応サーフェス:
- Slack(ネイティブインタラクティブコンポーネント)
- モバイルアプリ
- Microsoft Teams
- ChatGPT / Claude / Gemini(MCPアプリとして)
- 音声インターフェース
Agentforce Vibes 2.0 は Salesforce 内蔵の AI 開発環境です。Claude Sonnet 4.5(デフォルト)と GPT-5 のマルチモデルサポート、Plan Mode / Act Mode の2フェーズ実行、Salesforce Org 全体のコンテキスト認識が特徴です。
柱 3: Control After Launch — 本番後も制御
エージェントのライフサイクル全体をカバーするガバナンス機能です。
| フェーズ | 機能 |
|---|---|
| ローンチ前 | Testing Center(ロジック欠陥・ポリシー違反検出)、Custom Scoring Evals(判断の正しさをスコアリング) |
| 本番後 | Observability(何が起きたか)、Session Tracing(なぜそうなったか)の可視化 |
Claude Code から Salesforce に接続する
公式ドキュメント(Agentforce Vibes MCP Tools Guide)に基づく手順を紹介します。
1. Developer Edition Org を取得
無料の Developer Edition Org は Salesforce 公式サイトで作成できます。TDX 2026 以降、すべての Developer Edition に以下が含まれます。
- Agentforce Vibes IDE(ブラウザベース VS Code)
- Agentforce Vibes(Claude Sonnet 4.5 デフォルト)
- Salesforce Hosted MCP Servers
セットアップはビルトイン:Setup → "Agentforce Vibes" を検索して有効化するだけです。
2. Claude Code の MCP 設定ファイルを作成
Claude Code のプロジェクトルートに .mcp.json を作成します。これは Claude Code 側の設定ファイルで「どのMCPサーバーを使うか」を定義します(Salesforce 側の設定ファイルとは別物です)。
{
"mcpServers": {
"salesforce-dx": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@salesforce/mcp-server"],
"env": {
"SFDX_TARGET_ORG": "your-org-alias"
}
}
}
}
必要な OAuth スコープ:
api(REST APIアクセス)、refresh_token(トークン持続)、sfap_api(Salesforce API Platform)。Agentforce 機能を使う場合はeinstein_gpt_apiも追加してください。
3. 認証と接続確認
# Salesforce CLI で Org にログイン
sf org login web --alias my-org
# Claude Code を起動し MCP サーバー接続を確認
claude
接続後、Claude Code のチャットから自然言語で Salesforce を操作できます。
> Salesforceの未クローズの商談リストを取得して、今月末までのものを優先順に表示して
4. VS Code / Cursor での接続
Cursor・Windsurf・VS Code Copilot も同様の .mcp.json 設定で接続できます。詳細は Salesforce Developers Blog を参照してください。
「No code verifier saved for session」エラーが発生した場合は、
rm -rf ~/.mcp-auth/でキャッシュをクリアしてから再起動してください。
AgentExchange:統合マーケットプレイス
TDX 2026 でもう一つ注目された発表が AgentExchange の大幅拡張です。
従来バラバラだった Salesforce AppExchange(10,000+ アプリ)、Slack App Directory(2,600+ アプリ)、Agentforce エージェント/ツール/MCPサーバー(1,000+)を一元検索・ワンクリック有効化できる統合マーケットプレイスになりました。
AI 検索でニーズに合ったコンポーネントを検索し、プライベートオファー・統一課金・自動プロビジョニングでそのまま購入・有効化できます。
Salesforce $50M Builders Initiative
パートナーがAgentExchangeでビジネスを展開するための$50Mの支援プログラムも発表されました。GTMアプリ、技術支援、マーケティング支援が含まれます(VentureBeat 報道)。
Developer Edition で今すぐ始める
| ステップ | 内容 | コスト |
|---|---|---|
| 1. Org 作成 | developer.salesforce.com で無料登録 | 無料 |
| 2. Agentforce Vibes 有効化 | Setup → "Agentforce Vibes" | 無料 |
| 3. MCP Servers 接続 | .mcp.json 作成 + 認証 | 無料 |
| 4. AI コーディング開始 | Claude Code / Cursor から Salesforce を操作 | 無料 |
Developer Edition の Agentforce Vibes には使用量上限があります(月 110 リクエスト / 150 万トークン)。2026-05-31 まで毎月リセットされますが、以降は一回限りの割り当てになる予定です(公式 Dev Blog より)。
企業向けの有料プランでは Agentforce Vibes に Sales Cloud・Service Cloud などのフル機能が追加されます。
まとめ
Salesforce Headless 360 のポイントを整理します。
- 60+ MCPツール により Claude Code・Cursor・Codex・Windsurf から Salesforce 全機能をプログラマブルに操作できる
- 3つの柱(Build Any Way / Deploy on Any Surface / Control After Launch)でエージェント開発のライフサイクル全体をカバー
- Developer Edition が大幅強化:Agentforce Vibes + Claude Sonnet 4.5 + Hosted MCP Servers が無料で利用可能
- AgentExchange が 3 つのカタログを統合し、AI 検索・ワンクリック有効化を実現
- Salesforce は「エージェントインフラ」への転換を2年半かけて完遂しつつある
Salesforceを活用している開発者であれば、まずは無料の Developer Edition で Agentforce Vibes と Hosted MCP Servers を有効化し、Claude Code との連携を確認することからスタートできます。
参考リンク
- Introducing Salesforce Headless 360 — 公式発表 — 全体像と発表内容
- Salesforce launches Headless 360 — VentureBeat — 詳細技術解説
- Agentforce Vibes MCP Tools | Salesforce Developer Docs — MCP設定の公式ガイド
- New in Developer Edition: Agentforce Vibes, Claude, MCP | Salesforce Blog — Developer Edition の詳細
- Headless 360 — The Register — Headless 360 発表の詳細報道
- TDX 2026 全発表まとめ | Salesforce Trail — Agentforce Vibes 2.0 / AgentExchange