はじめに
2026年4月22日、Google Cloud Next '26でGoogleはGoogle Workspace MCPサーバーをプレビューリリースしました。
これにより、Claude・Gemini CLI・その他のAIエージェントがGmail・Google Drive・Google Calendar・Google Chat・People APIの30以上の操作をMCP(Model Context Protocol)経由で実行できるようになりました。
この記事で解説すること
- Workspace MCPサーバーの全体像と対応サービス
- APIの有効化からOAuth認証・設定ファイルの記述まで
- 各サービスで使用できるツール一覧と実用例
- Claude・Gemini CLIへの組み込み方法
対象読者
- AIエージェントにGoogleのデータを連携させたいエンジニア
- MCPサーバーをプロジェクトに組み込んでいる開発者
- Google Workspace APIの利用経験がある方
前提条件
- Google Cloudプロジェクト(課金有効)
- Google Workspaceアカウント(Business/Enterprise)
-
gcloudCLIのインストール・認証済み - Claude Code または Gemini CLI のセットアップ済み
TL;DR
- Workspace MCPサーバー(Preview)はGmail・Drive・Calendar・Chat・Peopleの5サービス対応
- 計30のMCPツールを提供し、メール検索・ファイル操作・予定管理などをAIエージェントから実行可能
- 認証はOAuth 2.0(デスクトップアプリまたはWebアプリクレデンシャル)
- Gemini CLI・Claude・その他のMCPクライアントから接続可能
-
gcloud services enableでAPIを有効化後、設定ファイルにエンドポイントとOAuthを記述するだけ
Workspace Intelligence とは
Workspace MCPサーバーは、GoogleがCloud Next '26で発表したWorkspace Intelligenceの開発者向けエントリーポイントです。
Workspace Intelligenceは、Gmail・Docs・Sheets・Drive・Chatを横断するAIセマンティックレイヤーです。メールスレッド・ファイル・プロジェクト・コラボレーターなどの複雑な関係性をリアルタイムで理解し、エージェント型ワークフローを実現するために設計されています。
従来のGoogle Workspace APIとの違いは、MCPサーバーがこのセマンティックレイヤーを介して動作するため、単純なAPI呼び出しではなくコンテキストを持ったAI操作が可能になる点です。
| 機能 | 従来のAPI | Workspace MCPサーバー |
|---|---|---|
| 認証 | OAuth 2.0(同様) | OAuth 2.0 |
| アクセス方法 | REST/gRPC | MCP(HTTP streaming) |
| AIとの統合 | 手動実装が必要 | MCPクライアントから直接利用 |
| コンテキスト共有 | 個別 | Workspace Intelligence経由 |
| ガバナンス | APIごと | 統一された管理コントロール |
Workspace MCPサーバーの全体構成
対応しているサービスとエンドポイントは以下の通りです。
| サービス | エンドポイント | ツール数 |
|---|---|---|
| Gmail | https://gmailmcp.googleapis.com/mcp/v1 |
10 |
| Google Drive | https://drivemcp.googleapis.com/mcp/v1 |
7 |
| Google Calendar | https://calendarmcp.googleapis.com/mcp/v1 |
8 |
| Google Chat | https://chatmcp.googleapis.com/mcp/v1 |
2 |
| People API | https://people.googleapis.com/mcp/v1 |
3 |
| 合計 | 30 |
セットアップ手順
ステップ1: Workspace APIの有効化
Google CloudプロジェクトでWorkspace APIを有効化します。
gcloud services enable \
gmail.googleapis.com \
drive.googleapis.com \
calendar-json.googleapis.com \
chat.googleapis.com \
people.googleapis.com
ステップ2: Workspace MCPサービスの有効化
MCPサービスを別途有効化する必要があります。
gcloud services enable \
gmailmcp.googleapis.com \
drivemcp.googleapis.com \
calendarmcp.googleapis.com \
chatmcp.googleapis.com
ステップ3: OAuth 2.0クレデンシャルの作成
Google Cloud ConsoleでOAuth 2.0クライアントIDを作成します。
- Gemini CLI向け: 「デスクトップアプリ」タイプ
-
Claude(Web)向け: 「Webアプリケーション」タイプ
- リダイレクトURI:
http://localhost
- リダイレクトURI:
クレデンシャルを client_secrets.json としてダウンロードしておきます。
必要なOAuthスコープ(Gmail例)
https://www.googleapis.com/auth/gmail.readonly https://www.googleapis.com/auth/gmail.compose https://www.googleapis.com/auth/gmail.labels各サービスのスコープは公式ドキュメントで確認してください。
設定ファイルの記述
Gemini CLI 向け設定
~/.gemini/settings.json に以下を追記します。
{
"mcpServers": {
"gmail": {
"httpUrl": "https://gmailmcp.googleapis.com/mcp/v1",
"oauth": {
"enabled": true,
"clientId": "YOUR_CLIENT_ID",
"clientSecret": "YOUR_CLIENT_SECRET",
"scopes": [
"https://www.googleapis.com/auth/gmail.readonly",
"https://www.googleapis.com/auth/gmail.compose"
]
}
},
"drive": {
"httpUrl": "https://drivemcp.googleapis.com/mcp/v1",
"oauth": {
"enabled": true,
"clientId": "YOUR_CLIENT_ID",
"clientSecret": "YOUR_CLIENT_SECRET",
"scopes": [
"https://www.googleapis.com/auth/drive"
]
}
},
"calendar": {
"httpUrl": "https://calendarmcp.googleapis.com/mcp/v1",
"oauth": {
"enabled": true,
"clientId": "YOUR_CLIENT_ID",
"clientSecret": "YOUR_CLIENT_SECRET",
"scopes": [
"https://www.googleapis.com/auth/calendar"
]
}
}
}
}
初回接続時は認証が必要です。Gemini CLI上で以下のコマンドを実行します。
/mcp auth gmail
/mcp auth drive
/mcp auth calendar
Claude(Claude Code)向け設定
Claude Codeの場合、プロジェクトの .claude/settings.json またはグローバル設定に記述します。
{
"mcpServers": {
"workspace-gmail": {
"type": "http",
"url": "https://gmailmcp.googleapis.com/mcp/v1",
"oauth2": {
"clientId": "YOUR_CLIENT_ID",
"clientSecret": "YOUR_CLIENT_SECRET",
"redirectUri": "http://localhost",
"scopes": [
"https://www.googleapis.com/auth/gmail.readonly",
"https://www.googleapis.com/auth/gmail.compose"
]
}
}
}
}
各サービスのツール一覧と活用例
Gmail(10ツール)
| ツール | 説明 |
|---|---|
search_threads |
メールスレッドを検索 |
get_thread |
スレッドの詳細を取得 |
create_draft |
下書きを作成 |
list_drafts |
下書き一覧を取得 |
create_label |
ラベルを作成 |
list_labels |
ラベル一覧を取得 |
label_message |
メッセージにラベルを付与 |
label_thread |
スレッドにラベルを付与 |
unlabel_message |
メッセージのラベルを削除 |
unlabel_thread |
スレッドのラベルを削除 |
活用例: 「今週のプロジェクト関連メールをすべて検索して、アクションアイテムをリストアップして」という指示でエージェントが自律的にメール検索・解析・下書き作成を実行できます。
Google Drive(7ツール)
| ツール | 説明 |
|---|---|
search_files |
ファイルを検索 |
list_recent_files |
最近のファイル一覧 |
get_file_metadata |
ファイルメタデータを取得 |
read_file_content |
ファイル内容を読み取り |
download_file_content |
ファイルをダウンロード |
create_file |
ファイルを作成 |
get_file_permissions |
権限情報を取得 |
活用例: 「先週更新された仕様書をすべて読んで変更点をまとめて」という指示でエージェントが最近のファイルを検索・読み取り・要約を実行できます。
Google Calendar(8ツール)
| ツール | 説明 |
|---|---|
list_calendars |
カレンダー一覧を取得 |
list_events |
イベント一覧を取得 |
get_event |
イベント詳細を取得 |
create_event |
イベントを作成 |
update_event |
イベントを更新 |
delete_event |
イベントを削除 |
respond_to_event |
出欠を返答 |
suggest_time |
会議時間を提案 |
活用例: suggest_time ツールを使い、参加者全員の空き時間を確認して最適な会議時刻を自動提案できます。
Google Chat(2ツール)
| ツール | 説明 |
|---|---|
search_conversations |
会話を検索 |
list_messages |
メッセージ一覧を取得 |
People API(3ツール)
| ツール | 説明 |
|---|---|
get_user_profile |
ユーザープロフィールを取得 |
search_contacts |
連絡先を検索 |
search_directory_people |
組織ディレクトリを検索 |
Workspace Skills(エージェント自動化)
Cloud Next '26では、Workspace MCPサーバーと連携するSkills(Workspace Studioで定義できるエージェント自動化コンポーネント)も発表されました。
SkillsはWorkspace Studioで構築できる再利用可能な自動化コンポーネントで、MCPツールを組み合わせてより複雑なワークフローを定義できます。
例えば、「請求書レビュー」のSkillを定義すると:
- GmailでPDF添付メールを検索(
search_threads) - Driveからテンプレートを取得(
read_file_content) - Calendarに確認ミーティングを登録(
create_event) - 担当者へ返信下書きを作成(
create_draft)
という一連のフローをエージェントが自律実行できます。
セキュリティと管理者設定
Workspace MCPサーバーはGoogleのエンタープライズセキュリティ基準に準拠しています。
データプライバシー
- Workspaceデータは広告や外部モデルの訓練に使用されない(明示的な同意なし)
- クライアントサイド暗号化(CSE)に対応
- 米国・EU地域でのデータ処理・保管をロック可能(ドイツ・インドも対応予定)
管理者コントロール
- AIコントロールセンター: エージェントのデータアクセスを監視
- エージェント管理: 組織内で動作するエージェントを一元管理
- Studioコントロール: Skillsの使用・共有の制御
プレビュー期間中の注意
Workspace MCPサーバーは現在Developer Preview Program経由での提供です。本番環境での利用には、Googleのプレビュープログラムへの参加が必要な場合があります。
今後の展開
Googleは以下のリリースを予告しています:
- Workspace CLI(近日公開): コマンドラインからWorkspace機能をエージェントに組み込むためのツール
- Sheets Canvas: ダッシュボード・ヒートマップ・かんばんボードをSheetsに直接作成
- ドイツ・インドのデータリージョン: 対応予定
まとめ
Google Workspace MCPサーバーのポイントをまとめます。
- Google Cloud Next '26で発表された5サービス・30ツールのMCPサーバー群
- Gmail・Drive・Calendar・Chat・People APIをAIエージェントから標準MCP経由で操作可能
- 認証はOAuth 2.0で、Gemini CLI・ClaudeなどのMCPクライアントから利用できる
- Workspace Intelligenceのセマンティックレイヤーにより、コンテキストを持ったAI操作が実現
- Skillsとの組み合わせでクロスサービスの複雑なワークフローを自動化できる
MCPがWorkspaceのデータに標準インターフェースを提供したことで、AIエージェントとGoogleの業務ツールを組み合わせた自動化の可能性が大きく広がりました。