はじめに
Google Antigravityは、Googleが2025年11月にGemini 3と同時に発表したエージェント型開発プラットフォームです。従来のAIコーディングツールがオートコンプリートを起点にエージェント機能を後付けしたのに対し、Antigravityは「マルチステップの自律タスク実行」を前提にゼロから設計されています。
2026年3月にはAgentKit 2.0がリリースされ、16種類の特化エージェント、40以上のドメイン固有スキル、MCP(Model Context Protocol)統合が追加されました。この記事では、Antigravityの全体像からAgentKit 2.0の活用法、MCP統合のセットアップまでを解説します。
この記事で学べること
- Antigravityのアーキテクチャと従来のAI IDEとの設計思想の違い
- AgentKit 2.0の16特化エージェントと40以上のスキルの概要
- MCP統合によるツール連携のセットアップ手順
- カスタムスキルの作成方法(SKILL.md)
- 料金体系とレートリミットの実態
対象読者
- AIコーディングツール(Cursor、Claude Code、Codex等)を使用中のエンジニア
- エージェント型開発の導入を検討しているチーム
- MCP統合でAIの外部ツール連携を拡張したい開発者
TL;DR
- Google Antigravityはエージェントファーストのアーキテクチャで、Editor View(同期的コーディング)とManager Surface(非同期エージェント管理)の二面構成
- AgentKit 2.0(2026年3月)で16特化エージェント・40+スキル・11プリセットコマンドが追加され、フロントエンド〜テスト〜DB管理まで対応
- MCP StoreからワンクリックでMCPサーバーを追加でき、
mcp_config.jsonでカスタムサーバーも接続可能 - 無料プレビューでGemini 3 Pro・全機能を利用可能。Pro($20/月)とUltra($249.99/月)で上位レートリミットを提供
Antigravityのアーキテクチャ
エージェントファーストの設計思想
Antigravityの最大の特徴は、エージェントとサブエージェントがファーストクラスの存在として設計されている点です。エディタ、ターミナル、ブラウザの3領域にまたがって自律的にタスクを実行します。
CursorやGitHub Copilotがオートコンプリートツールとして出発し、段階的にエージェント機能を追加してきたのに対し、Antigravityは「複数ステップの自律タスク実行」を根本から想定しています。
二面構成のインターフェース
Antigravityは2つの操作面を持ちます。
| 画面 | 用途 | 操作スタイル |
|---|---|---|
| Editor View | コード編集、タブ補完、インラインコマンド | 同期的・ハンズオン |
| Manager Surface | エージェントの起動・監視・成果物確認 | 非同期・タスク委譲 |
Editor Viewは従来のAI IDEに近い体験を提供し、タブ補完やインラインコマンドで即座にコードを書きます。一方、Manager Surfaceでは複数のエージェントを異なるワークスペースで並列実行し、進捗をリアルタイムで観察できます。
Artifact(成果物)によるエージェント検証
エージェントはタスク完了時にArtifact(成果物)を生成します。Artifactには以下が含まれます。
- タスクリスト(何を実行したかの記録)
- 実装計画(どの手順で進めたかの構造化ドキュメント)
- スクリーンショット(UI変更のビジュアル証跡)
- ブラウザ録画(Webアプリ操作のリプレイ)
Artifactにより、エージェントの判断過程をブラックボックスにせず、ロジックの妥当性を一目で確認できます。
対応モデル
Antigravityはマルチモデル対応で、以下のモデルをサポートしています。
| モデル | 提供元 | 特徴 |
|---|---|---|
| Gemini 3 Pro | デフォルトモデル、SWE-bench Verified 76.2% | |
| Gemini 3 Flash | 高速・低コスト向け | |
| Claude Sonnet 4.6 | Anthropic | 1Mトークンコンテキスト |
| Claude Opus 4.6 | Anthropic | 最高性能モデル |
| GPT-OSS-120B | OpenAI | オープンソース派生 |
全プランでGemini 3 Proがデフォルトで利用可能であり、無制限のタブコード補完とAgent Managerへのアクセスが含まれます。
AgentKit 2.0 — 16特化エージェントと40+スキル
2026年3月にリリースされたAgentKit 2.0は、Antigravityのエージェント機能を大幅に拡張するアップデートです。
16種類の特化エージェント
AgentKit 2.0には、開発ワークフローの各段階をカバーする16種類の特化エージェントが含まれます。
| カテゴリ | エージェント例 | 対応タスク |
|---|---|---|
| フロントエンド | Frontend Design Agent | UIコンポーネント設計、レスポンシブレイアウト |
| バックエンド | Backend Logic Agent | API設計、ビジネスロジック実装 |
| テスト | Testing Agent | ユニットテスト生成、E2Eテスト |
| デバッグ | Debug Agent | エラー診断、パフォーマンス分析 |
| データベース | Database Agent | スキーマ設計、クエリ最適化 |
| SEO | SEO Agent | メタデータ最適化、パフォーマンス改善 |
| モバイル | Mobile Layout Agent | モバイル対応レイアウト |
| UX | UX Agent | ユーザー体験設計、アクセシビリティ |
各エージェントはAgent MD(Markdown形式の運用ルール定義)に従い、タスクを解釈・実行します。
40以上のドメイン固有スキル
スキルはエージェントの能力を拡張するモジュールです。AgentKit 2.0では40以上のスキルが標準搭載されており、11のプリセットコマンドでフロントエンド、バックエンド、テストの各領域をカバーします。
カスタムスキルの作成(SKILL.md)
独自のスキルを作成するには、プロジェクト内にスキルディレクトリを作り、 SKILL.md ファイルを配置します。
my-project/
├── .antigravity/
│ └── skills/
│ └── deploy-staging/
│ ├── SKILL.md # スキル定義(指示とルール)
│ ├── scripts/
│ │ └── deploy.sh # 自動化スクリプト
│ └── resources/
│ └── config.yaml # 静的/動的リソース
SKILL.md にはメタデータと、エージェントが従うべき具体的な手順を記述します。
---
name: deploy-staging
description: ステージング環境へのデプロイ手順
trigger: "deploy to staging"
---
## 手順
1. `npm run build` でプロダクションビルドを作成
2. `scripts/deploy.sh` を実行してステージングにデプロイ
3. デプロイ後のヘルスチェックURLにアクセスして確認
## 制約
- mainブランチからのみデプロイ可能
- テストが全件パスしていること
スキルの重要な特徴は オンデマンドローディング です。システムプロンプト(常にロードされる)とは異なり、スキルはエージェントがユーザーのリクエストに関連すると判断した場合にのみコンテキストにロードされます。これにより、コンテキストウィンドウの効率的な利用が可能になります。
MCP統合 — 外部ツール連携のセットアップ
AntigravityはModel Context Protocol(MCP)をネイティブサポートしており、エディタと外部サービスの間をシームレスにつなぎます。
MCP Storeからのインストール
最も簡単な方法は、MCP Storeを利用する方法です。
- Editor View内で
...メニューを開く - MCP Servers を選択
- MCP Storeから目的のサーバーを検索(例: "BigQuery", "GitHub", "Firebase")
- Install をクリック
- 必要な認証情報を入力して有効化
Google Cloudの主要サービス(BigQuery、AlloyDB、Cloud SQL等)のMCPサーバーは、MCP Storeから直接インストール可能です。
カスタムMCPサーバーの追加
MCP Storeにないサーバーを接続する場合は、 mcp_config.json を直接編集します。
- MCP Storeで Manage MCP Servers を選択
- View raw config をクリック
-
mcp_config.jsonに以下の形式でサーバーを追加
{
"mcpServers": {
"my-custom-server": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@myorg/mcp-server"],
"env": {
"API_KEY": "your-api-key"
}
}
}
}
Firebase MCP Serverとの連携も公式にサポートされており、Firebase Hosting、Firestore、Cloud Functionsの操作をエージェントから直接実行できます。
他のAI IDEとの比較
Google Antigravityは、CursorやClaude Codeと異なるポジションを取っています。公開情報に基づく主要な違いを整理します。
| 項目 | Antigravity | Cursor | Claude Code |
|---|---|---|---|
| 設計思想 | エージェントファースト | IDE拡張 | ターミナル中心 |
| 並列エージェント | 最大5(Proで5、Freeでも対応) | 最大8(Pro) | 逐次実行 |
| SWE-bench Verified | 76.2% | 非公開 | 公式スコアあり |
| デフォルトモデル | Gemini 3 Pro | 複数選択可 | Claude Sonnet/Opus |
| MCP対応 | MCP Store + カスタム | 設定ファイル | MCP対応 |
| ブラウザ統合 | 内蔵ブラウザ | なし | なし |
| 料金(月額) | 無料〜$249.99 | $20〜 | 従量課金 |
Antigravityはエージェントを複数並列実行する「委譲型」の開発に向いています。一方、Cursorは慣れ親しんだVS Code体験で高速なフィードバックを得たい場合に、Claude Codeはリポジトリ全体の深い理解に基づく推論タスクに適しています。
料金体系とレートリミット
プラン構成
| プラン | 月額料金 | レートリミット更新 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 週単位 | 全機能利用可、Gemini 3 Pro対応 |
| Pro(AI Pro) | $20 | 5時間ごと | 優先アクセス、上位レートリミット |
| Ultra(AI Ultra) | $249.99 | 5時間ごと | 高ボリューム利用向け |
追加クレジットは$25/2,500クレジットで購入可能です。
クォータの仕組み
使用量はエージェントの「作業量」に相関します。単純なタスクは消費量が少なく、複雑な推論を伴うタスクは多くのクォータを消費します。全プランで以下が共通して利用可能です。
- Gemini 3 Proモデルへのアクセス
- 無制限のタブコード補完
- Agent Managerとブラウザ統合
- MCP統合
レートリミットに関する注意
2026年3月時点で、需要増加に伴うレートリミット制限が報告されています。Googleは2026年3月11日に「AI Plans の進化」を発表し、AIクレジットシステムと段階的アクセスモデルを導入しました。Pro/Ultra加入者には優先アクセスが提供され、Free tier は週単位のレートリミットに移行しています。日常的に集中して利用する場合はProプラン以上の契約が推奨されます。
セットアップ手順
インストール
Antigravityはクロスプラットフォーム対応で、macOS、Windows、Linuxで動作します。
- antigravity.google にアクセス
- OSに対応したインストーラをダウンロード
- インストーラの指示に従いセットアップ
- Googleアカウントでサインイン
初回設定
サインイン後、プロジェクトを開いてEditor Viewを使い始めます。
# プロジェクトディレクトリでAntigravityを起動
antigravity open ./my-project
Google Codelabsの「Getting Started with Google Antigravity」チュートリアルでは、初回セットアップからエージェントへのタスク委譲、Artifactの確認までをステップバイステップで案内しています。
ADKスキルとの連携
Google Agent Development Kit(ADK)で構築したエージェントスキルをAntigravityに統合することも可能です。ADKのエージェントをAntigravityのスキルとして登録し、開発ワークフロー内で呼び出せます。
まとめ
Google Antigravityは、エージェントファーストの設計思想により、従来のAI IDEとは根本的に異なる開発体験を提供します。
- エージェントファースト設計: 複数エージェントの並列実行、Artifactによる透明性確保
- AgentKit 2.0: 16特化エージェント・40+スキルで開発ワークフロー全体をカバー
- MCP統合: MCP StoreとカスタムMCPサーバーで外部ツール連携を拡張
- マルチモデル対応: Gemini 3 Pro(デフォルト)に加え、Claude、OpenAIモデルも利用可能
- カスタムスキル: SKILL.mdでプロジェクト固有のエージェント動作を定義
エージェント型開発は2026年のメインストリームに入りつつあり、Antigravityはその中でも「タスク委譲」と「並列実行」を最も積極的に推し進めるプラットフォームです。CursorやClaude Codeとは競合ではなく補完関係にある場面も多いため、用途に応じた使い分けが有効です。



