はじめに
Claude CodeやCursorがAIでコーディングを「補助」するなら、Google AntigravityはAIエージェントを「指揮する」ことに特化したIDEだ。
Googleが2025年11月にGemini 3と同時に発表し、現在パブリックプレビューとして個人向けに無料公開されている。VS Codeのフォークとして構築されており、エージェントを並列実行・監視するための新しいUIを追加している。
この記事で学べること
- Google Antigravityの概要と他AIコーディングツールとの違い
- Manager Surfaceを使った複数エージェントの並列オーケストレーション
- Artifactsシステムによるエージェント作業の可視化
- Rules / Workflows / Skills によるカスタマイズ方法
- セキュリティ設定と始め方
対象読者
- Claude Code / Cursor を使っているAIコーディングツールユーザー
- 複数のAIエージェントを並列実行したいエンジニア
- Gemini APIを活用した開発に興味のある方
TL;DR
- Google Antigravityは、VS Codeフォーク上に構築されたエージェントファーストなIDE
- Manager Surfaceから複数のAIエージェントを並列実行・監視できる(Googleエンジニアの例示では5並列)
- エージェントはタスクリスト・コードdiff・スクリーンショットなどのArtifactsを生成して作業を可視化
- Gemini 3.1 Pro・Claude Sonnet・GPT-OSS 120Bなど複数モデルをサポート
- 個人向けに無料公開中(パブリックプレビュー)
Google Antigravityとは
GoogleがGemini 3の発表とともに2025年11月にリリースしたエージェントファーストなIDE。現在v1.22.2まで達しており(2026年4月時点)、パブリックプレビューとして個人向けに無料で利用できる。
VS Codeのフォークとして構築されているため、既存の拡張機能やキーボードショートカットをそのまま使えるのが特徴。ただし、エージェント操作のための新しいUI(Manager Surface)が追加されており、使い方の考え方が従来のIDEとは根本的に異なる。
Build with Google Antigravity, our new agentic development platform designed to help you operate at a higher, task-oriented level.
— Google Developers Blog
Claude Code / Cursor との比較
| 機能 | Google Antigravity | Claude Code | Cursor |
|---|---|---|---|
| 並列エージェント数 | 複数(5並列の例示あり) | 1つ | 1つ |
| コンテキスト長 | 1M(Gemini) | 200K | 200K |
| Manager / 監視画面 | ✅ | ✗ | ✗ |
| Artifacts生成 | ✅ | ✗ | ✗ |
| MCP連携 | ✅ | ✅ | ✅ |
| 料金 | 無料(プレビュー) | $20/月〜 | $20/月〜 |
| ベースモデル | Gemini / Claude / GPT-OSS | Claude | Claude / GPT |
Antigravityが最も差別化しているのは「並列エージェント数」と「Manager Surface」の組み合わせだ。
2つの操作画面
Editor View(コーディング画面)
VS Code互換のエディタ画面。従来のIDEと同様にファイルの編集ができる。
- インラインコマンド(Cmd+I / Ctrl+I): カーソル位置で直接AIに命令
- サイドパネルチャット(Cmd+L / Ctrl+L): コンテキストを保ちながらエージェントと会話
- タブ補完・インポート提案など従来のAIアシスト機能
Manager Surface(ミッションコントロール)
Cmd+E(macOS)または Ctrl+E(Windows/Linux)でEditor Viewと切り替えられる画面。複数エージェントを監視・制御する司令塔として機能する。
並列エージェントの動作例
Manager Surface で以下を並列実行:
┌──────────────────────────────────────────────────┐
│ Agent 1: 認証モジュールをJWT方式にリファクタリング │ 実行中 ●
│ Agent 2: UIコンポーネント(LoginForm)を新規作成 │ 実行中 ●
│ Agent 3: ユニットテストを追加 │ 計画中 ○
└──────────────────────────────────────────────────┘
各エージェントは独立したワークスペースで作業し、進行状況をArtifactsとしてリアルタイム更新する。開発者は1つの画面から全エージェントを監視し、フィードバックを送れる。
Artifactsシステム
エージェントの作業結果を「レビュー可能な成果物」として出力する仕組み。ログのスクロールではなく、構造化されたドキュメントとして確認できる。
| Artifact種類 | 内容 |
|---|---|
| Task List | 実行予定タスクの一覧(承認/却下可能) |
| Implementation Plan | 実装方針の詳細説明 |
| Code Diff | 変更内容のdiff表示 |
| Screenshot | ブラウザの実行結果キャプチャ |
| Browser Recording | ブラウザ操作の録画 |
| Walkthrough | 変更内容のサマリー動画 |
Artifactsにはコメントをインラインで書き込める(Googleドキュメントのコメント機能と同様の操作感)。エージェントはそのフィードバックを受け取って、実行を停止せずに作業を修正する。
2つの実行モード
| モード | 動作 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Planning | コード変更前に実装計画を作成してレビューを求める | 複雑な機能追加・大規模リファクタリング |
| Fast | 確認なしで直接実行する | 単純な修正・素早い確認 |
複雑なタスクはPlanningモードで設計を確認してから、単純な修正はFastモードで素早く実行するという使い分けが推奨されている。
対応AIモデル
| モデル | 用途 |
|---|---|
| Gemini 3.1 Pro(High) | 複雑な推論・大規模コードベースの把握 |
| Gemini 3.1 Pro(Low) | 高速・軽量なタスク |
| Claude Sonnet 4.6(通常 / Thinking) | Anthropicモデルの選択肢 |
| GPT-OSS 120B Medium | OpenAIオープンソース版 |
Gemini 3.1 Proの1Mトークン文脈窓は、Claude CodeやCursorの200Kと比較して5倍のコンテキストを一度に処理できる。大規模なモノレポ全体を把握しながら作業させる場面で有効だ。
カスタマイズ機能
Rules(ルール)
エージェントへの常時適用指示。Claude CodeのCLAUDE.mdやCursorの.cursorrulesに相当する。
- グローバルルール:
~/.gemini/GEMINI.md(全ワークスペース共通) - ワークスペースルール:
.agent/rules/(プロジェクト固有) -
AGENTS.mdもv1.20.3以降でサポート
# GEMINI.md(グローバルルール例)
- コードはPEP 8に従うこと
- 関数には型ヒントを必ず追加すること
- テストはpytestで書くこと
- コメントは日本語で書くこと
Workflows(ワークフロー)
よく使うプロンプトを/コマンド名で呼び出せる保存プロンプト。Claude Codeのスラッシュコマンドに相当する仕組み。
/refactor-auth → 認証モジュールをリファクタリング
/add-tests → 既存コードへのテスト追加
/code-review → コードレビューと改善案の提案
/document → ドキュメントの自動生成
グローバルとワークスペースのスコープで管理できる。
Skills(スキル)
専門知識パッケージを必要時にだけロードする仕組み。全スキルを常時ロードすると「ツールの膨張」とレイテンシ増加が起きるため、Progressive Disclosureで解決している。
my-skill/
├── SKILL.md # スキルのメタデータ(必須)
├── scripts/ # 補助スクリプト(任意)
├── references/ # 参考資料(任意)
└── assets/ # アセット(任意)
SKILL.mdのフォーマット:
---
name: django-rest-api
description: Django REST frameworkでAPIを構築するためのスキル
---
# Django REST API スキル
## Goal
Django REST frameworkを使って安全なAPIを実装する。
## Instructions
- Serializerには必ず型チェックを追加する
- ViewSetはModelViewSetを基底クラスとして使う
- ページネーションを全エンドポイントに設定する
## Constraints
- 認証なしのエンドポイントは作成しない
Knowledge Items
会話をまたいで永続する「パターンと洞察」の自動収集機能。繰り返し修正したバグパターンやプロジェクト固有の規約をエージェントが自動的に学習・記録していく。
MCP(Model Context Protocol)連携
$HOME/.gemini/antigravity/mcp_config.jsonでMCPサーバーを設定できる。
{
"servers": {
"firebase": {
"type": "remote",
"url": "https://your-firebase-mcp-server.example.com"
},
"github": {
"type": "remote",
"url": "https://your-github-mcp-server.example.com"
}
}
}
Firebase・GitHub・カスタムリモートサーバーなど、MCP準拠のサーバーを接続できる。Claude Codeと同じMCPエコシステムが使える点は互換性の面で有利だ。
セキュリティ設定
エージェントの自律性レベルを3段階で制御できる。
ターミナル実行ポリシー
| ポリシー | 動作 | 向いているケース |
|---|---|---|
| Off(許可リスト方式) | 明示的に許可したコマンドのみ実行 | 本番環境・高セキュリティ要件 |
| Auto | エージェントが判断し、必要時に確認を求める | 通常の開発作業(推奨) |
| Turbo(拒否リスト方式) | 拒否リスト外のコマンドをすべて自動実行 | 開発・検証環境 |
# Offモード: 許可コマンドの例
ls -al
npm run test
pytest
git status
git diff
# Turboモード: 拒否コマンドの例
rm
del
rmdir
sudo
curl
wget
ブラウザ自動化の制限
エージェントがブラウザを操作できるドメインを~/.gemini/antigravity/browserAllowlist.txtで制限できる。
Artifact Review設定
Artifactsを承認するタイミングも設定可能:
-
Always proceed: 自動実行 -
Agent decides: エージェントが重要度を判断して確認 -
Request review: 常にレビューを求める
インストールと始め方
1. ダウンロード・セットアップ
antigravity.google/download からOS版をダウンロード。macOS・Windows・Linuxに対応。
セットアップ手順:
1. インストーラを実行
2. テーマを選択(ダーク/ライト)
3. 自律性レベルを選択:
- Agent-driven(最高自律性)
- Agent-assisted(バランス型、推奨)
- Review-driven(最高制御性)
- Custom(細かく設定)
4. Googleアカウント(Gmail)でサインイン
5. Chrome拡張機能をインストール(ブラウザ操作を使う場合)
2. プロジェクト設定
既存プロジェクトを開いて、ルートにAGENTS.md(またはGEMINI.md)を作成:
# AGENTS.md
このプロジェクトはPythonのFlaskアプリです。
## コーディング規約
- テストにはpytestを使用する
- コードスタイルはPEP 8に従う
- 型ヒントを必ず追加する
- 日本語コメントを使用する
## ディレクトリ構成
- app/: アプリケーションコード
- tests/: テストコード
- docs/: ドキュメント
3. Manager Surfaceで最初のタスクを実行
Cmd+E でManager Surfaceを開き、タスクを指示:
「認証システムをJWT方式にリファクタリングして、
対応するユニットテストも作成してください。
変更後は既存のテストがすべてパスすることを確認してください。」
Planningモードで実行すると、エージェントが実装計画をArtifactsとして提示。計画を承認すると、実際のコード変更が始まる。
4. 並列エージェントを使う
Manager Surfaceで「+」ボタンをクリックすることで、新しいエージェントタスクを追加できる。Googleエンジニアの事例では5つの並列実行が紹介されている。
並列実行の例:
- Agent 1: ログインAPIのバリデーション強化
- Agent 2: ユーザー一覧画面のUIリファクタリング
- Agent 3: 既存テストの網羅率レポート作成
まとめ
Google Antigravityは、エージェントの「並列実行」と「可視化」に特化したIDEだ。
| 機能 | 詳細 |
|---|---|
| 並列エージェント数 | 複数(5並列の公式事例あり) |
| コンテキスト長 | 最大1Mトークン(Gemini 3.1 Pro) |
| Artifactsによる可視化 | タスクリスト・コードdiff・スクリーンショット等 |
| カスタマイズ | Rules / Workflows / Skills / Knowledge Items |
| MCP連携 | Firebase、GitHub、カスタムサーバー |
| 料金 | 個人向け無料(パブリックプレビュー) |
| 対応OS | macOS / Windows / Linux |
Claude Codeが「ひとりのAIと深く対話する」体験なら、Antigravityは「複数のAIチームを管理する」体験だ。大規模なコードベースの並列リファクタリングや、UI・ロジック・テストを同時進行させる開発スタイルには特に有効な選択肢となる。
Google I/O 2026(2026年5月19〜20日)ではさらなる機能強化も予告されており、今のうちにパブリックプレビューで試しておきたいツールだ。


