💡 はじめに

「部下に仕事を任せても、指示待ちでなかなか動いてくれない…」
「良かれと思ってアドバイスしているのに、どうも響いていない気がする…」
「チームメンバーがもっと主体的に、自分で考えて行動してくれたらいいのに…」

リーダーや先輩社員として、部下や後輩の育成、チームのマネジメントに関わる中で、このような悩みを抱えた経験はありませんか？一生懸命「教えよう」「導こう」としても、なかなか相手の行動が変わらず、空回りしてしまうこともあるかもしれません。

もしかしたら、その原因は「教え方」や「指示の出し方」にあるのではなく、相手との「関わり方」そのものにあるのかもしれません。

今回ご紹介する谷口貴彦さんの著書『目からウロコのコーチング: なぜ、あの人には部下がついてくるのか?』は、一方的に答えを与えるのではなく、対話を通じて相手の中から答えと行動を引き出す「コーチング」 というアプローチを、非常に分かりやすく、そして実践的に解説してくれる一冊です。

本書を読めば、なぜ「教える」だけでは人が育たないのか、そしてどうすれば相手の主体性を引き出し、自ら考え行動する「自走する人材」を育てることができるのか、そのための具体的なコミュニケーションスキルと考え方が、「目からウロコ」が落ちるように理解できるはずです。「部下や後輩の育成に悩んでいる」「チームのパフォーマンスを高めたい」「メンバーから信頼されるリーダーになりたい」と願うすべてのビジネスパーソンにとって、明日からの関わり方を変える大きなヒントが得られるでしょう。

📚 書籍の概要

本書の中心的なメッセージは、人の潜在能力を引き出し、自発的な成長と行動を促すためには、従来の「指示・命令型」や「ティーチング（教える）」中心のマネジメントだけでは限界があり、「コーチング」的な関わり方が不可欠である、ということです。

「コーチング」とは、答えは相手の中にあるという前提に立ち、傾聴と質問を主体とした対話を通じて、相手自身の気づきを促し、目標達成や問題解決に向けた自発的な行動を引き出すコミュニケーションスキルです。

本書では、

コーチングとは何か？なぜ必要なのか？（基本的な考え方、ティーチングとの違い）
コーチングの土台となる信頼関係の築き方
相手の話を深く聴く「傾聴」のスキル
気づきと行動を促す「質問」のスキル
相手の意欲を高める「承認」のスキル
成長を支援する「フィードバック」の方法
といった、コーチングの核心となる要素が、具体的な会話例や実践的なテクニックと共に、非常に分かりやすく解説されています。

著者の谷口貴彦氏は、プロコーチとして多くのビジネスパーソンや組織を支援してきた経験を持ち、その豊富な事例に基づいた解説は、理論だけでなく、現場ですぐに使えるものばかりです。「コーチングは特別な才能が必要」という思い込みを解き、誰でも学び、実践できるスキルであることを教えてくれます。

✨ 重要なポイント/学び

本書で解説されている「目からウロコのコーチング」の考え方とスキルの中から、特に重要であり、日々のコミュニケーションで意識することで大きな変化をもたらす可能性のあるポイントを4つご紹介します。

1. すべての始まり：「答えは、相手の中にある」と信じる力

コーチングの最も根源的で、かつ最も重要な前提が、「その問題に対する答えや、成長のための可能性は、本人自身の中に必ず存在する」と心から信じることです。

コーチの役割は、自分の知識や経験に基づいて 「正しい答え」を教えることではありません。そうではなく、相手が自分自身の力で考え、気づき、最適な答えを見つけ出し、そして自ら行動を起こせるように、寄り添い、サポートすることなのです。

なぜこれが重要か？
この 「相手を信じる」というスタンスが、コーチング的な関わりの全ての土台となります。このスタンスがあるからこそ、私たちは一方的に指示したり、アドバイスを押し付けたりするのではなく、相手の話に真剣に耳を傾け、相手の考えを引き出すような質問を投げかけることができるようになります。これは、相手の主体性とオーナーシップを尊重し、「やらされ感」ではなく「自らやりたい」という意欲を引き出すための、最も基本的な条件と言えるでしょう。

あなたならどう考えますか？：あなたが部下や後輩の相談に乗るとき、「自分が解決してあげなければ」という気持ちが先に立ちますか？それとも、「この人ならきっと自分で答えを見つけられるはずだ」と信じて、まずはじっくり話を聴くことができますか？

2. 関係性の土台を築く：「聴く」ことの本当の意味（傾聴スキル）

コーチングにおいて、「話す」こと以上に重要とされるのが 「聴く」こと、すなわち「傾聴」 です。単に相手の言葉を耳に入れるだけでなく、相手の言っていること、そしてその言葉の裏にある感情や意図、価値観までをも深く理解しようと努める姿勢が求められます。

本書では、効果的な傾聴のための具体的なスキルとして、

相手の話を遮らず、最後まで注意深く聴く
適切な相槌やうなずきで、関心を示す
相手の言葉を繰り返したり、要約したりして、理解を確認する
言葉だけでなく、表情や声のトーンといった非言語情報にも注意を払う
といったことが挙げられています。

なぜこれが重要か？
人は、「この人は自分の話を真剣に、否定せずに聴いてくれる」と感じると、安心して心を開き、普段は口に出さないような本音や、自分でも気づいていなかったような深い考えを話し始めます。この心理的な安全性と信頼関係こそが、コーチングが機能するための基盤となります。また、深く聴くことで、問題の本質や相手の真のニーズを的確に捉えることができ、より効果的なサポートに繋がります。

あなたならどう考えますか？：あなたが誰かの話を聴いているとき、頭の中では次に何を言おうか考えたり、相手の話を「正しいか間違っているか」と評価したりしていませんか？一度、自分の考えを脇に置いて、ただひたすら「相手を理解しよう」という気持ちで聴くことに集中してみると、どんな発見があるでしょうか？

3. 気づきと行動を促す魔法：「質問」の力

相手の中から答えを引き出し、自発的な行動を促す上で、「質問」は極めて強力なツールとなります。ただし、どんな質問でも良いわけではありません。

本書では、過去の原因を追求したり、相手を追い詰めたりするような 「詰問（例：「なぜできなかったんだ？」）」 ではなく、未来志向で、相手の思考を広げ、具体的な行動や選択肢を引き出すような質問が推奨されています。

具体的には、

「どうすれば～できるだろうか？」（解決策を探る）
「何が～を妨げているのだろうか？」（課題を特定する）
「もし～だとしたら、どうする？」（視点を変える）
「他にはどんな可能性があるだろうか？」（選択肢を広げる）
「それを実現するために、まず何から始める？」（行動を促す）

といった、「開かれた質問（オープン・クエスチョン）」 が有効です。

なぜこれが重要か？
良い質問は、相手に一方的に答えを与えるのではなく、相手自身の頭で考えさせ、内側から気づきが生まれるプロセスをサポートします。自分で見つけ出した答えや、自分で決めた行動は、指示されたものよりもはるかに高いモチベーションと責任感を伴います。効果的な質問は、相手の持つ潜在能力を引き出し、主体的な成長を加速させるための、まさに「魔法の杖」となり得るのです。

あなたならどう考えますか？：部下や後輩から「〇〇がうまくいきません」と相談されたとき、すぐに解決策を教える代わりに、例えば「うまくいかない原因は何だと思う？」「これまで試したことは？」「他にどんなやり方が考えられるかな？」といった質問を投げかけることで、相手の反応はどう変わると思いますか？

4. 成長のガソリン：「承認」で意欲と自信を引き出す

人は誰でも、自分のことを見ていてほしい、認めてほしいという欲求（承認欲求）を持っています。コーチングにおいて 「承認」 とは、相手の存在そのものや、日々の努力、小さな変化や成長、そして持っている強みや可能性を、具体的な言葉で認め、伝えることを指します。

これは、単に結果だけを「褒める」のとは少し違います。

結果だけでなくプロセスを承認する: 「目標達成おめでとう！」だけでなく、「目標達成のために、粘り強く頑張っていたね」
存在そのものを承認する: 「〇〇さんがいるとチームが明るくなるよ」
強みや良い変化を具体的に伝える: 「△△の資料、構成がすごく分かりやすかった。以前より格段に良くなったね」

なぜこれが重要か？
承認の言葉は、相手の自己肯定感を高め、モチベーションを刺激し、さらなる挑戦への意欲を引き出す、いわば「心のガソリン」です。また、「自分のことを見てくれている」「評価してくれている」という実感は、コーチ（上司や先輩）との信頼関係を深め、心理的に安全な（＝安心して挑戦や失敗ができる）環境を作り出す上でも不可欠です。「ダメ出し」や批判ばかりでは、人は萎縮してしまいます。相手の良い点や可能性に光を当て、それを言葉にして伝えることが、人材育成において驚くほど大きな効果を発揮します。

あなたならどう考えますか？：あなたは、日々の業務の中で、部下や後輩、あるいは同僚に対して、「ありがとう」「助かるよ」「すごいね」「良くなったね」といった承認の言葉を、どれくらい意識的に伝えていますか？最後に誰かを具体的に承認したのはいつですか？

🚀 具体的アクションプラン

本書『目からウロコのコーチング』で学んだスキルを、明日からのコミュニケーションで実践するための具体的なアクションプランを3つ提案します。まずは小さな一歩から、相手との関わり方を変えてみませんか？

【まずは「聴く」に徹してみる】
次に部下や後輩、あるいは同僚と1対1で話す機会があれば、自分の意見やアドバイスを言いたくなるのをぐっとこらえ、まずは相手の話を最後まで、評価や判断をせずに「聴く」ことに集中してみましょう。相手が7割、自分が3割くらいの会話バランスを目指し、相槌、うなずき、短い質問（「もう少し詳しく教えてくれる？」など）で、相手が話しやすい雰囲気を作ることを意識します。
【アドバイスを「質問」に変換してみる】
相手から相談を受け、「こうすればいいのに」というアドバイスが頭に浮かんだら、それをそのまま伝えるのではなく、「〇〇について、あなたはどう考えてる？」「もし△△してみたら、どうなりそうかな？」といった「質問」の形に変換して投げかけてみましょう。相手に自ら考えてもらう機会を作る練習です。
【1日1回、誰かを具体的に「承認」する】
チームメンバーや後輩、あるいは家族でも構いません。相手の良いところ、頑張っているところ、以前より成長した点などを具体的に見つけ、それを言葉にして伝えることを、1日1回、意識的に行ってみましょう。「〇〇さん、今日の会議での発言、的確だったね！」のように、具体的な行動に言及すると、より相手に響きやすくなります。

✅ まとめ

谷口貴彦さんの『目からウロコのコーチング』は、部下や後輩の育成、チームマネジメントに悩むリーダーや先輩社員にとって、まさにタイトル通り 「目からウロコ」が落ちるような、多くの気づきと実践的なスキルを与えてくれる素晴らしい一冊でした。

答えは相手の中にあり、それを信じて引き出すというコーチングの基本スタンス。そして、それを実現するための 「傾聴」「質問」「承認」 といった具体的なコミュニケーションスキル。これらを学ぶことで、私たちは一方的な指示やアドバイスだけでは決して引き出せなかった、相手の持つ無限の可能性と主体性を開花させることができるようになるのかもしれません。

本書は、単なるマネジメント手法ではなく、人との信頼関係を築き、共に成長していくための、より本質的で、温かいコミュニケーションのあり方を示唆してくれます。

部下や後輩の育成に本気で取り組みたい方、メンバーの主体性を引き出し、チームの力を最大化したいリーダーの方、そして、より良い人間関係を築きながら、自分自身も成長していきたいと願うすべての人に、自信を持っておすすめできる、実践的な知恵が満載の良書です。

この記事が、皆さんのコミュニケーションや人材育成に対する考え方を見直し、より良い関係性を築くための一助となれば幸いです。

あなたは、コーチング的な関わり方について、どのような可能性を感じましたか？また、本書で紹介されているスキルの中で、特に明日から実践してみたいと思ったものは何でしょうか？ぜひ、皆さんのご意見や感想などをコメントで共有していただけると嬉しいです。

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