はじめに:AWS re:Invent 2025 Opening Keynote にみるAWSのAI戦略
この記事では、日本時間12/3(水) 深夜1時に
「AWS re:Invent 2025 Opening Keynote with Matt Garman (KEY001)」
をライブ視聴したので、主要な発表をまとめていきます!
こんにちは。アジアクエスト株式会社 の足立です!
2025 Japan AWS Jr. Champions として活動しています。良かったらアドベントカレンダーもどうぞ。まだ3日目なのでこれからお楽しみに!
AWS re:Invent とは?
AWS社が毎年ラスベガスで開催する世界最大級のテックカンファレンスです。
街全体がAWS一色となり、
- 主要サービスの新発表
- アーキテクチャ設計・運用のベストプラクティス共有
- 大規模なハンズオンやコミュニティ交流
などが行われます。私は現地参加は難しかったため、日本から視聴しました。
今年の re:Invent Opening Keynote を一言で言うと
「AIエージェントによってインフラ自体が再構築された日」 でした。
単なるサービスとしてのAIではなく、AWSインフラの中心に深く統合されているのを感じました。AIを使わないことや上手く活用できない状況には、「Why Not?(なぜそうしないのか?)」 というキーワードを繰り返し、「AIを使わない方が不自然」 という点を強調していました。
Opening Keynote with Matt Garman (KEY001) の概要
この大規模なイベントで最も注目度の高いのが、AWSのCEOである 「Matt Garman」 によるOpening Keynote(開幕の基調講演)です。
Matt Garmanは、なんと2005年(AWSがまだAmazonの社内ベンチャーだった頃)からのメンバーであり、AWSの理念や歴史、顧客の声を理解した人物の戦略展開が期待されます。
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主要な発表
1. AWSの長期ビジョンと現在地
以下のような数字を挙げながら、AWSの著しい成長が強調され、「AIエージェント」の時代における基盤が盤石になってきた旨が語られました。
- 総売り上げ1320億ドル(前年比+20%)
- S3は500兆以上のオブジェクトを保存
- Amazon Bedrockは10万以上の顧客を獲得
そして、「未来は開発者の手にある」 と告げ、創業以来変わらない 「発明することの自由」 こそが最も重要だと語りました。
2. AI革命を支える基盤インフラの進化
ここから具体的なアップデート内容を紹介していきます。
まず紹介されたのは、基盤インフラ(AIチップ、データセンターなど)の進化です。
1. NVIDIA との協業
NVIDIA Blackwell を搭載した 「P6e-GB200/GB300 UltraServers」 が発表されました。NVIDIA GB200 BVL72 を大規模クラスターとして展開したインスタンスです。AI推論における非常に高い性能だけでなく、15年以上にわたる協業により、「AWSは NVIDIA のGPUを動かすのに最も適した場所だ」 と信頼性の高さを語ります。
2. 第3世代のAWS独自AIチップ
「Trainium 3」 の GA(一般提供)を発表しました。これは前世代の「Trainium 2」と比べて 4.4倍のコンピューティング性能を持ち、電力効率は5倍に向上しています。また、AWS初の3nmチップであり、AI推論に非常に適しています。
さらに、次世代の 「Trainium 4」 も開発中とのことで、こちらは「Trainium 3」と比べてコンピューティング性能が6倍、メモリが4倍に向上する予定だろうです。
3. AWS AI Factories
「AWS AI Factorieis」 は企業や政府機関が 既存のデータセンター内にAWSの専用AIインフラストラクチャを直接配備できる サービスです。
高性能なAI環境を構築するためのGPUの調達、電源管理、複雑なネットワーク構築、ソフトウェアライセンスの交渉などが不要になります。
3. モデル拡充と選択の自由
1. Amazon Nova 2 ファミリーの発表
AWSの開発したLLMモデルである 「Amazon Nova」 の第2世代が発表されました。
- Nova 2 Lite: 処理が速く安価
- Nova 2 Pro: 最高精度の推論モデル
- Nova 2 Sonic: リアルタイム音声対話
- Nova 2 Omni: マルチモーダル対応
重要なのはこれらのモデルが、SOTA(ベンチマークでの最高性能)を誇るGPTやClaude、Geminiの最新モデルと肩を並べるレベルだということです。価格以外でも勝負ができるようになった点で、非常に楽しみなモデルです!
また、「Nova Act」 というWebブラウザ上のタスクを自動化するモデルも紹介されました。
2. Nova Forge による企業独自モデルの構築
企業独自のドメイン知識を活用しなければ、AIの性能を十分に引き出すことはできません。
「Nova Forge」 を使うことで企業の独自知識を使ってカスタムモデルをトレーニングして使うことができます。
従来のファインチューニングとは異なり、Novaモデルのトレーニングプロセスの各段階(事前学習、中間学習、事後学習)のチェックポイントにアクセスし、学習の初期段階へ介入し、透明性高くトレーニングを進められる点が魅力です。
3. Bedrock モデルの拡充
Amazon Bedrockで、Ministral / Google Gemma / NVIDIA Nemotron などのオープンウェイトのモデルが新たに18個使えるようになりました!
具体的な対応モデルは以下のブログをご確認ください。
4. Frontier Agents によるソフトウェア開発 / 運用の再定義
新しく 「Frontier Agents」 として、ソフトウェア開発チームの一員として機能するAIエージェントが3種紹介されました。
AWSではKiroを全社の標準ツールとして活用しているそうです。その中で、 「もっと並列で稼働させられないか?」「人間のボトルネックを解消し長時間稼働させられないか?」 という課題を抱えていたとのことです。そこで生まれたのがこれから紹介するサービスです。
AWSでの学びの過程
フェーズ3: 人間ボトルネックになり長時間稼働への要求が増加

【伏線回収】 個人的にはここが最も重要だと感じました。なぜなら概要説明欄にて 「ビルディングブロックの再構築」 という言葉を使っており、まさにそのことに触れていたためです。
He explores how we are reinventing foundational building blocks as well as developing brand new experiences, all to empower customers and partners with what they need to build a better future.
1. Kiro Autonomous Agent
「Kiro」 はこれまで仕様駆動開発によって開発者の指示を実現するIDEでした。しかし、これからは 人間の介入を最小限に、独立して作業を進める ことができます。
「Kiro Autonomous Agent」 は、チーム全体のコードベースや標準規約(コーディングルールなど)を理解し、PR(プルリクエスト)やコードレビュー、アーキテクチャの決定が行われるたびに、その知識を深めていきます。
また、GitHub、Slackなどのツールと接続し、作業の進行に合わせてコンテキストを維持・適応させます。
2. AWS Security Agent
「AWS Security Agent」 は設計からデプロイまで、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通じてセキュリティを担保します。
具体的には、設計レビュー/コードレビューの各段階で仕様書やPRをレビューし、セキュリティ要件に準拠しているか、脆弱性がないかを確認します。また、ペネトレーションテストも即座に実行できます。
アプリケーションの設計や要件を理解した上で、上流工程の段階からセキュリティリスクを特定できる点 が大きな特徴です。
3. AWS DevOps Agent
「AWS DevOps Agent」 はシステムの障害対応(インシデントレスポンス)を加速し、将来の問題を未然に防ぐための運用エージェントです。
具体的には、チケットなどをトリガーに自動でエージェントが起動し、メトリクス、ログ、最近のデプロイ履歴(GitHub)、トレース情報などを自動で分析し根本原因を特定・ユーザーに通知を行います。
また、システムの構成要素とその相互関係、デプロイ履歴を含むマップを自動構築し、影響範囲を正確に把握することが可能になります。
5. AgentCore で実現するエンタープライズ向けAIガバナンス
大規模なエンタープライズ向けのAIエージェント基盤である 「Amazon Bedrock AgentCore」 に新しく2つのガバナンス強化機能が追加されました。
1. AgentCore Policy
「AgentCore Policy」 は、AIエージェントにおける認可を「推論ループの外から」制御し、ツール呼び出し(APIやLambdaの実行など)が発生する「直前」にリクエストを検証することができます。オープンソースのポリシー言語であるCedarを使用して、きめ細かいアクセス許可ルールを定義します。
これにより、あらかじめ定めたルールの範囲内でAIエージェントを自律的に稼働させることが可能 となります。
2. AgentCore Evaluations
「AgentCore Evaluations」 とは、AIエージェントのパフォーマンスと品質を継続的に監視・評価するサービスです。
「正確性」「有用性」「安全性」「ツールの選択精度」など、13種類の組み込み評価指標を利用できる ほか、独自のプロンプトとLLMを使用したカスタム評価指標も作成可能です。
CloudWatchと連携してリアルタイムにスコアを可視化・アラートを発するなどの運用もできます。
6. ビジネスサイドへのAIエージェントの浸透
1. Amazon Quick Suite
「Amazon Quick Suite」 は従来のBIツールに留まらず、幅広いデータソース(SharePoint、Jira、Webサイトなど)から包括的なリサーチを実施し、自然言語での指示のもと自動で分析・可視化を行うことができます。
また、分析ワークフローを組むことができるため、繰り返しのデータ分析作業にかかる時間を短縮します。
2. Amazon Connect
コンタクトセンターを提供する 「Amazon Connect」 にも大幅に機能が追加されました。例えば、 「Agentic Self-Service」 ではAIエージェントが顧客の意図を理解し、推論し、問い合わせ対応を自動化します。
また、人間との協同にも力を入れていて、AIが通話中の感情を分析して次のアクションを提示したり、バックグラウンドで書類作成を行ったりすることで人間オペレーターの負担を軽減できます。
7. その他の主要アップデート概要
「その他」と言いつつ、割と大事なアップデート25個がラスト10分に詰め込まれていました。Keynote2,3個分に匹敵する中身の濃いLTでした。
1. コンピューティング
メモリ最適化
コンピューティング最適化
汎用
Apple ハードウェア(Mac)
Lambda durable functions
サーバーレスの 「Lambda」 が、複雑な処理を伴う長時間かつ多段階のワークフローを信頼性高く処理を実現できる 機能です。
人間の承認待ちや外部APIの応答待ちなどで処理を一時停止している間は 「課金が一切発生せず」「最大1年間」 待機できるという辛抱強い機能です。
2. ストレージ
- S3の最大オブジェクトサイズが5TB→50TBに10倍増
- S3 Batch Operations が10倍速に
- Intelligent-Tiering for S3 Tables
- Automatic replication for S3 Tables
- S3 Access Points for FSx for NetApp ONTAP
- S3 Vectors GA(一般提供)
- OpenSearch Service のベクトルインデックスのGPUアクセラレーションにより、10倍速でコストは1/4に
3. データベース
- RDS for SQL Server | Oracle のストレージが64TB→256TBに4倍増
- RDS for SQL Server の vCPU数を指定可能に
- RDS for SQL Server Devloper Edition
- Database Savings Plans
4. セキュリティ
- GuardDuty Extended Threat Detections for EC2(追加費用なし)
- Security Hub GA(一般提供)
- Unified data store in CloudWatch
まとめ:
いかがだったでしょうか。この記事では 「AWS re:Invent 2025 Opening Keynote」 の発表をもとに主要なアップデートなどを解説しました。
私自身は深夜にこの発表を聞いてから、新サービスの数々にワクワクが止まらず夜通しこの記事を書いていました。早く触ってみたいサービスがたくさんあり、AWSにもAIエージェントにとっても未来の可能性を感じる発表だったと感じています!
来年は現地でこの熱狂を感じたいですね! ラスベガスに届け!























