TAIS+モジュール (tais_plus)
オープンソース
はじめに
介護業界では、福祉用具の管理は業務の要となります。しかし、従来の手作業による管理では 情報のばらつき や 入力ミス が発生しやすく、業務負担が大きいという課題がありました。
さらに、令和6年7月4日付の介護サービス計画書の様式改正 により、居宅サービス計画書の様式に 「用具名称(機種名)」と「TAISコード・届出コード」 の項目が追加されました。これらの追加項目により、福祉用具貸与事業所とのデータ連携をより効率的に行うことが可能になります。
つまり、ケアマネにもケアプラン作成時には、福祉用具貸与サービスの利用において、TAISコードの記載が必要になりました。
TAISコードとは
TAISコードは、以下の形式で構成されています:
例: 00001-000010
このコードを使用することで、登録された福祉用具を簡単に検索・閲覧することができます。1つの製品には1つのTAISコードが付与され、検索画面でコードを入力することで該当製品の詳細情報を確認できます。また、企業コードのみを入力することで、その企業が提供する全製品を一括で調べることも可能です。
次のページで検索することができます。
福祉用具情報システム(TAIS)- https://www.techno-tais.jp/
TAIS+モジュール (tais_plus) は、この新しい様式に対応し、Odooを介して 福祉用具の運用を統一・最適化 することができるアドオンモジュールです。本記事では、その特徴や導入のメリットについて解説します。
用語の定義
誰かが「TAISコード」または「届出コード」のことを「商品コード」と呼んでしまったので、少し混乱するかと思います。用語の定義を関連図に示します。
「商品コード」は、広義の「TAISコード」であり、多くの文脈において「TAISコード」とした場合、「届出コード」も含んでいると考えても良いかと思います。
※ 福祉用具情報システム(TAIS)で、「届出コード」の検索はできません。
TAIS+モジュールとは?
概要
TAIS+モジュール (tais_plus) は、介護事業者向けに最適化されたOdooアドオンモジュール であり、以下のような特徴を備えています。
- TAISコード管理:福祉用具情報システム(TAIS)に基づき、正確な製品識別と管理が可能
- 貸与価格の上限管理:全国平均貸与価格および貸与価格の上限を自動取得・更新
- エクセルインポート機能:大量の価格情報を一括登録でき、業務の負担を軽減
- CSVデータによる標準化されたデータ連携:福祉用具貸与事業所と居宅介護支援事業所の効率的な情報交換を支援
- API連携機能:外部システムやEXCEL VBAから貸与価格の上限を取得可能
- Odooのワークフロー統合:既存のOdooモジュールとの連携がスムーズ
odooとは
オープンソースのERPです。
居宅サービス計画書の改正とTAIS+モジュールの役割
令和6年7月4日に厚生労働省から発表された通知(老認発0704第1号)では、居宅サービス計画書の様式に 「用具名称(機種名)」と「TAISコード・届出コード」 の項目が追加されました。
新様式の目的
この改正の目的は、
✅ 居宅介護支援事業所と福祉用具貸与事業所間で扱う情報を統一
✅ CSVデータによる効率的な情報連携を可能にする
ことです。
ただし、データ連携を行わない場合は、当面の間、当該項目を空白のままとしても問題なし とされており、導入時の柔軟な対応が認められています。
TAIS+モジュールは、この新様式に準拠し、居宅介護支援事業所と福祉用具貸与事業所のシステム間連携をスムーズにする役割を果たします。
CSVデータ連携の標準仕様と現状の課題
介護業界では ケアプランデータ連携標準仕様 Q&A(令和5年10月版) に基づき、福祉用具の情報がデータ連携されるべき理想像として、以下の課題が認識されています。
既存の課題
- 福祉用具貸与事業所が 居宅介護支援事業所から受け取る居宅サービス計画書には商品コードが含まれていない ため、手入力が必要
- CSVデータ連携を行っても 再度商品コードを入力しなければならず、業務負担が大きい
- 転記ミスが発生しやすく、返戻のリスクが高まる
改善策
介護保険最新情報Vol.1177によれば、令和6年度の標準仕様改訂 により、以下の改善が期待されています。
✅ 介護支援専門員が作成する「居宅サービス計画書」と福祉用具専門相談員が作成する「福祉用具サービス計画書」の両方で商品コードを統一
✅ データ連携の強化により、転記・計算し直しが不要になり、業務負担軽減と返戻防止に貢献
商品コードと統計
ここでの「商品コード」は、「TAISコード」もしくは「届出コード」のことを指します。
商品コード(TAISコードまたは届出コード)に対して、全国平均貸与価格および貸与価格の上限に関する統計が行われています。
TAIS+モジュールによるデータ連携強化
TAIS+モジュールをOdooに導入することで、TAISコードによる商品の統一管理が可能になります。
- 福祉用具貸与事業所と居宅介護支援事業所間で統一されたTAISコードデータを共有
- CSVデータの自動インポートに対応し、手入力を最小化
- エクセルファイルの処理を強化し、標準仕様改訂にスムーズに適応
これにより、事業所間の業務効率が向上し、介護保険請求の正確性が担保されます。
単位数の試算
「居宅サービス計画書」を介護支援専門員が作成する段階で、その福祉用具が適正な価格で貸与されるかどうかを事前に確認することができ、正確で適正な単位数を試算することができます。
EXCELでのデータ利用(システム間連携)
Excel VBAを用いれば、TAIS+モジュールに登録した商品データをExcelシート上で利用することができます。これは、odooプラットフォームが、RPC(XML-RPCまたはJSON-RPC)を提供しているからです。ここではExcel VBAを例にしていますが、RPCを実装可能な多くの外部システムからのデータ利用が可能です。詳しくは、Odoo公式ドキュメントのExternal APIを参照してください。
External API
福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限一覧のインポート
公表されている価格情報のデータ(Excel形式版)をダウンロードし、Odooアプリで取り込みます。
※ 「平成30年10月貸与分」からのすべてのデータが必要です。
ダウンロード
<<テクノエイド協会版>>
https://www.techno-aids.or.jp/tekisei/index.shtml#tab3_detial
Odooでの取り込み
福祉用具(TAIS+) > マスタ管理 > 貸与価格リストのインポート
Excelツールの取得(odoo-json-rpc-vba)
Excel VBAを用いてTAIS+モジュールのAPIにアクセスするために、odoo-json-rpc-vbaを取得し、JSON-RPC Blank.xlsmファイルを作成します。
odoo-json-rpc-vba
README.mdに従って、次の手順で、JSON-RPC Blank.xlsmを作成します。
手順1. git clone
コマンドプロンプトで、githubからソースコードを取得します。
git clone --recursive https://github.com/jp-rad/odoo-json-rpc-vba
手順2. create_blank_workbook.vbs
エクスプローラーで、odoo-json-rpc-vba/toolsフォルダを開き、create_blank_workbook.vbsファイルを実行します。
手順3. JSON-RPC Blank.xlsm
odoo-json-rpc-vbaフォルダ内に、JSON-RPC Blank.xlsmファイルが作成されていることを確認します。
Excel VBAによる商品データ取得
Excel VBA から商品データを取得するために、OdooのTAIS+モジュールにアクセスするための接続情報が必要です。
Odoo接続情報
| # | 項目 | 内容 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 1 | BaseUrl | ベースURL | OdooサーバーのURLのベース部 |
| 2 | DbName | Odooデータベース名 | 接続するOdooのデータベース名 |
| 3 | Useraname | Odooユーザー名 | Odooを使用するユーザー名 |
| 4 | Password | 個人設定のAPIキー | 各ユーザーの個人設定で生成したAPIキー |
ソースコード例
ある日付における商品コード(TAISコードまたは届出コード)の貸与価格の上限を取得する例です。
JSON-RPC Blank.xlsmファイルを開き、モジュールに次のコードを記述して、GetPriceCapを実行します。
Sub GetPriceCap()
Dim cl As New OdWebClient
Dim args As New Collection
Dim ret As OdResult
Dim dic As Dictionary
cl.SetInsecure True ' 自己証明書対策
' 接続情報
cl.BaseUrl = "https://localhost"
cl.DbName = "dev_odoo"
cl.Username = "admin"
cl.Password = "a123...999z" ' 個人設定のAPIキー
' 認証
cl.Common.Authenticate
' 取得
args.Add "01234-012345" ' TAISコード
args.Add "2023-10-01" ' 日付(文字列)
Set ret = cl.Model("taisplus.api.service").ExecuteKw("get_tais_price_cap_json", args)
Debug.Print ret.JsonResult
' JSON文字列をDictionaryへ変換
Set dic = JsonConverter.ParseJson(ret.JsonResult)
' 貸与価格の上限
If IsNull(dic("target")) Then
Debug.Print "貸与価格の上限:", "(なし)"
Else
Debug.Print "貸与価格の上限:", dic("target")("price_cap")
End If
End Sub
ExecuteKwでの引数の渡し方
ExecuteKwの名前の由来は、「キーワード(Kw)で実行する(Execute)」です。
第2引数に空のリスト([])を指定し、第3引数にDictionaryオブジェクト(kws)を指定します。
Dicitonaryオブジェクトには、引数名をキーとした引数の値を代入します。
ソースコード例で呼び出されるdef get_tais_price_cap_json(self, tais_code: str, date_string: str):の場合、tais_code引数の値とdate_string引数の値をDictionaryオブジェクトに代入します。
Dictionaryオブジェクトですので、引数を代入する順序は問われません。また、Collectionオブジェックとを使った場合に比べると、引数の値を設定しやすくなります。
Dim kws As New Dictionary
Dim taisCodeList As New Collection
Dim v As Variant
' TAISコードのリスト
With taisCodeList
.Add "11111-222222"
.Add "aaaaa-bbbbbb"
.Add "33333-444444"
.Add "xxxxx-yyyyyy"
.Add "99999-zzzzzz"
End With
kws("date_string") = "2025-10-01" ' 日付(文字列)
For Each v In taisCodeList
kws("tais_code") = v ' TAISコード
Set ret = cl.Model("taisplus.api.service").ExecuteKw("get_tais_price_cap_json", "[]", kws)
Debug.Print ret.JsonResult
Next v
まとめ
TAIS+モジュール (tais_plus) を Odooに導入することで、介護業界の福祉用具管理が劇的に改善されます。 特に、新様式に対応したデータ連携強化・貸与価格の透明化・業務効率化 の観点から、導入メリットは大きいといえるでしょう。
介護事業者の皆さんは、TAIS+モジュール を導入することで、新たな標準仕様に対応した業務フローの構築を進めることが可能です。ぜひOdooとTAIS+モジュールを活用し、介護業務のDXを推進していきましょう! 🚀✨