GPT-5.2の変更点とGPT-5.1からの違いをわかりやすく総まとめ(公式情報ベース)
公開日:2025年12月11日(OpenAI公式発表)
公式情報:https://openai.com/ja-JP/index/introducing-gpt-5-2/
GPT-5.2 は GPT-5.1 と比べて、推論・コーディング・長文理解・画像理解・ツール呼び出しが大きく強化された最新フロンティアモデルです。(OpenAI)
この記事では、公式ブログと System Card をもとに、GPT-5.2 の変更点を「GPT-5.1からの違い」にフォーカスして整理します。
🔰 この記事でわかること
- GPT-5.2 が GPT-5.1 と比べて何が変わったか(性能・ベンチマーク)
- Instant / Thinking / Pro の違いと、どのモデルを使えばいいか
- GPT-5.2 の 料金・APIモデル名・ChatGPTでの提供状況
- 画像理解・長文コンテキスト・ツール呼び出しなどの実務的な改善ポイント
🚀 1. GPT-5.2 のモデル構成とポジション
GPT-5.2 は、用途ごとに最適化された 3 つのバリエーションで提供されています。(OpenAI)
| モデル名 | 概要・用途イメージ |
|---|---|
| GPT-5.2 Instant | 高速・低レイテンシの汎用モデル。調査、文章作成、軽いコーディング向け |
| GPT-5.2 Thinking | 推論・長文・ツール呼び出しに強い「思考プロセスあり」のモデル |
| GPT-5.2 Pro | 最高性能モデル。科学・高度数学・大規模エージェント運用など向け |
- ChatGPT:Plus / Pro / Go / Business / Enterprise で順次ロールアウト
- API:
gpt-5.2(Thinking),gpt-5.2-chat-latest(Instant),gpt-5.2-pro(Pro)で利用可能 (OpenAI)
📈 2. GPT-5.2 と GPT-5.1 の主な違い(ベンチマーク視点)
2-1. 推論(GDPval)― 実務レベルの「知的労働」がかなり強くなった
- GPT-5.2 Thinking は、GDPval と呼ばれる「実務タスク」を測る指標で
70.7% のタスクで人間の専門家と同等以上の評価を獲得。(OpenAI) - スプレッドシート作成、資料作成、スケジュール設計など、実際のホワイトカラー業務に近いタスクで大幅にスコアが向上。
従来の GPT-5 / GPT-5.1 と比べて、「アウトプットの質 + 速度 + コスト効率」がまとめて改善しているのが特徴です。(OpenAI)
2-2. コーディング(SWE-bench)― リポジトリ単位の修正が強い
- SWE-bench Pro:55.6%
- SWE-bench Verified:80.0% (OpenAI)
いずれも GPT-5.1 Thinking を上回る新ベストスコアで、
- 既存リポジトリのバグ修正
- 新機能の追加
- 大規模リファクタリング
といった、実務レベルのコードベース操作が安定してこなせるようになっています。
2-3. 長文コンテキスト(最大 256K トークン)― 「長い資料をちゃんと読んでくれる」感がアップ
- GPT-5.2 Thinking は、OpenAI MRCRv2 などの 長文理解ベンチマークで SOTA を更新。(OpenAI)
- 4-needle MRCR(256K トークン)では ほぼ 100% に近い精度を達成。
→ 実務的には、数百ページ規模の資料・契約書・議事録・コードベースを食わせても前後関係を崩しにくくなっており、
「読み込ませたのに、肝心なところを見落としてる…」
というストレスがかなり減りそうです。
2-4. Vision(画像理解)― UI・チャート・図表に強くなった
- Tau2-bench Telecom で 98.7% を記録し、長いマルチターンでのツール利用+画像理解の組み合わせでも高い精度を発揮。(OpenAI)
- ダッシュボード、UI スクリーンショット、チャート画像などの読み取りがさらに安定。
🧠 3. 実務での「できること」がどう変わるか
GPT-5.2 で特に伸びているのは、「現実の知的労働をそのまま投げる」ケースです。(OpenAI)
例:
- 資料作成:営業資料・社内提案書・研修スライドなどを、プロレベルの構成で一気に草案作成
- スプレッドシート作成:財務モデル・採用計画・予実管理などのシートを、数式込みで生成
- リポジトリ修正:Issue ベースで「該当ファイルの特定 → 修正パッチ生成」まで
- ドキュメント解析:要件定義書・契約書・研究論文などの要約+論点整理
- 画像+テキストの組み合わせタスク:UI レビュー、グラフ解説、図面の読み取り補助
「LLM に丸ごと仕事を渡す」のではなく、人間のレビュー前提で下準備をまるっと任せるスタイルと相性が良さそうです。
⚡ 4. 新機能・周辺アップデート
4-1. /compact エンドポイント:長文ワークフローの実効コンテキストを拡張
- Responses API に追加された
/compactエンドポイントにより、
GPT-5.2 Thinking の「実効コンテキスト」をさらに拡張可能。(OpenAI) - 長時間のエージェント実行や大量ツール呼び出しを伴うワークフローで、
コンテキスト制約の影響を受けにくくなります。
4-2. ツール呼び出し(エージェント)の信頼性向上
- Tau2-bench Telecom で 98.7% を達成し、
「マルチターンのカスタマーサポート+複数ツール呼び出し」タスクで高スコア。(OpenAI) - DB、外部 API、SaaS などを組み合わせた 長いワークフローの最後までやり切る力が向上。
🔬 5. 科学・数学分野での進化
公式発表では GPT-5.2 Pro / Thinking を 「世界最高レベルの科学者支援モデル」 と位置づけています。(OpenAI)
代表的なベンチマーク:
| ベンチマーク | GPT-5.2 の結果(抜粋) |
|---|---|
| GPQA Diamond | Pro 93.2%, Thinking 92.4% |
| FrontierMath(Tier 1–3) | Thinking 40.3% |
| AIME 2025 | Thinking 100%(満点) |
| ARC-AGI-2 Verified | Thinking 52.9%, Pro 54.2% |
また、統計学習理論の未解決問題の証明を提案し、研究者が検証した事例も紹介されており、「研究者のアイデア出し・証明探索を加速する相棒」という立ち位置がより濃くなっています。(OpenAI)
💰 6. GPT-5.2 の料金と API モデル名
6-1. API 料金(100万トークンあたり)
OpenAI の公式 Pricing ページ時点では、テキストトークンの料金は以下の通りです。(OpenAI Platform)
| モデル | 入力 | キャッシュ入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| gpt-5.2 / gpt-5.2-chat-latest | $1.75 | $0.175 | $14 |
| gpt-5.1 / gpt-5.1-chat-latest | $1.25 | $0.125 | $10 |
| gpt-5.2-pro | $21 | – | $168 |
| gpt-5-pro | $15 | – | $120 |
ポイントはここ:
- 単価は GPT-5.1 より高いが、
- キャッシュ入力は 90% 割引になっており、
- 実務タスクをこなすための 必要トークン数が減る(トークン効率が上がる)ため、 「同じ品質を出すのにかかる総コストは下がりうる」 と公式が説明しています。(OpenAI)
6-2. ChatGPT での扱い
- GPT-5.2(Instant / Thinking / Pro)は、有料プランから順次ロールアウト。(OpenAI)
- ChatGPT 上では、GPT-5.1 は 約 3 か月間「レガシーモデル」として併存した後、サンセット予定。
- API では GPT-5.1 / GPT-5 / GPT-4.1 の廃止予定は現時点で明示されておらず、将来サンセット時には十分な事前告知を行うとしています。(OpenAI)
🧪 7. 安全性・メンタルヘルス関連の改善
System Card のアップデートでは、特に以下が強調されています。(OpenAI)
- 自殺・自傷・メンタルヘルス関連のプロンプトへの応答品質が向上
- 感情的依存(emotional reliance)を抑えつつ支援的に応答する調整
- 18歳未満ユーザーを保護するための 年齢予測モデルの段階的導入
メンタルヘルス関連の評価指標では、GPT-5.2 Instant / Thinking ともに、
GPT-5.1 系モデルよりも高スコアを記録しています。
🧩 8. どの GPT-5.2 モデルを選べばいい?
自分のユースケースに最適なモデル選びは、検索ニーズも多いポイントなので簡単に整理しておきます。
Instant が向いているケース
- Qiita 記事・ブログ・社内ドキュメントの草案作成
- 仕様書の要約・整理
- 基本的なコード補完・リファクタの相談
- 日々の調査・技術メモづくり
→ 「普段 ChatGPT を使っている感覚の延長」で、サクサク使いたい人向け。
Thinking が向いているケース
- 大きなリポジトリを触るコーディング・デバッグ
- 長い要件定義書・契約書・論文の精読+要約
- S3・DB・外部 API を組み合わせたエージェントワークフロー
- 難しめのアルゴリズム・数学・設計の相談
→ 「時間は多少かかってもいいので、深く・正確に議論したい」ケースならこちら。
Pro が向いているケース
- 研究開発(数学・物理・機械学習など)の補助
- 高難度の意思決定支援(金融・法務など)
- 会社のコア業務に組み込む大規模 AI システム
→ コストは高いが、最も高精度なアウトプットが必要な場面向け。
🧾 9. インフラとトレーニング環境
- NVIDIA の H100 / H200 / GB200-NVL72 などの GPU と Microsoft Azure のインフラ上でトレーニングされたことが明記されています。(OpenAI)
→ モデルの巨大化・エージェント化を見据えた、かなりヘビーなトレーニング環境が前提になっており、長期的にも「エージェント + ツール活用」路線を強化していく方向性が見えます。
✅ まとめ:GPT-5.2 は何がすごいのか(ざっくり一言で)
GPT-5.2 のポイントを一文でまとめると:
「GPT-5.1 より 実務タスク・コーディング・長文・画像・エージェントのすべてが底上げされた、“仕事でガチで使う前提”のフロンティアモデル」
キーとなる強みを整理すると…
- ✅ 推論能力:GDPval で人間専門家と同等以上のスコアを実現
- ✅ コーディング:SWE-bench など実務寄りベンチマークで SOTA
- ✅ 長文 / 複雑文書:256K トークン規模で一貫した理解が可能
- ✅ Vision:UI・チャート・図表を絡めたタスクに強い
- ✅ ツール呼び出し:長期マルチターンのエージェントタスクが安定
- ✅ 価格:単価は上がったが、トークン効率向上+キャッシュ 90% オフで「目的達成コスト」は下げやすい設計
GPT-5.1 からのアップグレードを検討している人にとっては、
- 「普段使いは Instant で OK」
- 「重めの仕事・開発は Thinking」
- 「研究・コア事業は Pro も検討」
という使い分けを前提に、自分のワークフローにどう組み込むかを考えるフェーズに入った、と言えそうです。