はじめに
量子コンピュータの学習をしていて、量子ビットの状態式が何を表しているのか分からなくなるので、復習として自分の言葉で説明してみる。
量子ビットの位相について。
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対象読者
自分用。自分の中で整理したり、誰かに説明するときの手助けに。
量子ビットの確率振幅
量子ビット$|\psi\rangle$は量子の状態を表す。
$|\psi\rangle$は以下の式で表される。
|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + \beta|1\rangle, |\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1 \\
または \\
|\psi\rangle = \cos(\theta)|0\rangle + \sin(\theta)|1\rangle, 0 \leq \theta \leq \pi \\
$|0\rangle$の係数$\alpha$は$|0\rangle$の確率振幅と呼ばれ、$|\psi\rangle$を測定したとき$|\alpha|^2$の確率で0が観測される。$\beta$も同様。
前置き
量子は波と粒子の両方の性質がある。
量子ビットも波の性質があるので、式にも波の位相が出てくる。
波と位相
ある波の状態を式で表す場合、波の振幅と位相が必要になる(あと波長も)。
振幅は波の振り幅。$\sin(\theta)$は振幅1の波。$2\sin(\theta)$は振幅2の波。
位相は、いまの波が周期のどの時点にあるかを表す。$\sin(\theta)$の$\theta$のこと。波は周期的なので位相は一般的には$0 \leq \theta \leq 2\pi$で考える。
位相差
波Aと波Bがあったとき、波の位相の差を位相差と言う(言わないかも?)。
たとえば$\sin$波と$\cos$波は、位相差が$\frac{\pi}{2}$で、$\cos$波の方が位相が$\frac{\pi}{2}$進んでいる。
\cos(\theta) = \sin(\theta + \frac{\pi}{2})
位相差を考える時は、両方の波が同じ位相分ずれている部分は考慮する必要がない。
上記の式で言うと、$\theta$が0でも$\pi$でも、位相差は$\frac{\pi}{2}$。
このような位相差に影響しない位相のことをグローバル位相と言う(合ってる?)
位相差と波の重ね合わせ
水面上の2点を指で叩くと、叩いた2点から波が発生し、波が重なったところは波の形が変わる。
どんな風に変わるのかというと、位相が同じところは強め合い、位相が$\pi$ずれたところは打ち消しあう。それ以外のところも位相差によって強めあったり弱めあったりする。
位相差が$\phi$の2つの$\sin$波が重なった波$\psi$を考えてみる。
\psi(\theta) = \sin(\theta) + \sin(\theta + \phi)
$\phi = 0$
→ $\psi(\theta) = \sin(\theta) + \sin(\theta + 0) = 2\sin(\theta)$
$\phi = \frac{\pi}{2}$
→ $\psi(\theta) = \sin(\theta) + \sin(\theta + \frac{\pi}{2}) = \sin(\theta) + \cos(\theta)$
$\phi = \pi$
→ $\psi(\theta) = \sin(\theta) + \sin(\theta + \pi) = \sin(\theta) - \sin(\theta) = 0$
重なり合う波はその位相差によって形が変わることがわかる。
特に重要なのは符号が逆の波が来ると、波が打ち消されること。
量子ビットの位相差
量子ビットは$|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + \beta|1\rangle$で表されるが、量子は波なので、実は$|\psi\rangle, |0\rangle, |1\rangle$は全て波だ。
なので$|\psi\rangle$は$|0\rangle$と$|1\rangle$の位相差の影響を受ける。
今、$|0\rangle$と$|1\rangle$の位相差を$\phi$とすると、$|\psi\rangle$はどのように書けるのだろうか。
案1
|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + \phi\beta|1\rangle, |\alpha|^2 + |\phi\beta|^2 = 1, 0 \leq \phi \leq 2\pi
おかしい。
元々$|\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1$だったのに、位相差$\phi$によって$\beta$の大きさが変わってしまうことになる。
位相差を表すことが出来るけど、大きさには影響を与えないようなものが欲しい。
実は丁度いいものがある。オイラーの公式だ。
e^{i\theta} = \cos(\theta) + i\sin(\theta)
これは複素平面上で原点を中心とした大きさ1の円を描く。絶対値を2乗しても1だ。
$\theta$ | $\cos\theta$ | $i\sin\theta$ | $e^{i\theta}$ | $|e^{i\theta}|^2$ |
---|---|---|---|---|
0 (=$2\pi$) | 1 | 0 | 1 + 0$i$ | 1 |
$\frac{1}{4}\pi$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}$ | $\frac{i}{\sqrt{2}}$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}(1 + 1i)$ | 1 |
$\frac{1}{2}\pi$ | 0 | $i$ | $0 + 1i$ | 1 |
$\pi$ | -1 | 0 | $-1 + 0i$ | 1 |
$\frac{3}{2}\pi$(=$-\frac{1}{2}\pi$) | 0 | -$i$ | $0 - 1i$ | 1 |
という訳で位相差を$e^{i\phi}$として以下のように表せる。
|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + e^{i\phi}\beta|1\rangle, |\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1, 0 \leq \phi \leq 2\pi
1量子ビットの(Z軸)測定への位相差の影響
位相差$e^{i\phi}$の絶対値の2乗は1なので、上記の式を(Z軸で)$|0\rangle, |1\rangle$の振幅を測定して0, 1を観測する場合は、位相差は観測確率に全く影響しない。
(X, Y軸測定だと位相差が測定結果に影響するはず。まとまらないので保留)
まとめ
量子ビット$|\psi\rangle$は$|0\rangle$と$|1\rangle$が確率振幅$\alpha, \beta$と位相差$\phi$をもって重なっていると考えられる。
|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + e^{i\phi}\beta|1\rangle, |\alpha|^2 + |\beta|^2 = 1, 0 \leq \phi \leq 2\pi
確率振幅$\alpha$は、$|\psi\rangle$を測定したとき$|\alpha|^2$の確率で0が観測されることを表す。$\beta$も同様。
位相差$\phi$は(Z軸)測定したときに観測される0, 1の確率には影響しない。
最後に
位相差の説明は書けそう。でも基底変換したときの説明がまだできない。
確率振幅の打ち消しを書こうと思ったが、わからなくなった。2量子ビットのもつれになるのか?