Akamai App Platform とは
Akamai App Platform for LKE は、Akamai Cloud の Linode Kubernetes Engine 上に構築することができる、クラウドネイティブアプリケーションの導入・運用を劇的に簡素化できるプラットフォームです。Kubernetes のライフサイクル全体を最適化し、特に プラットフォームエンジニアリングの課題を大幅に軽減 します。
また、Akamai App Platform はRed Kubesが開発したOtomiを買収した製品であり、無料のオープンソース・ソリューションになります。
※執筆時点ではベータ提供中
プラットフォームエンジニアリングが抱える課題
プラットフォームエンジニアリング とは、開発者の「体験の最適化」や「生産性向上」を目的として、セルフサービス型の開発者向けプラットフォームを設計・構築・運用するための手法を指します。
近年では、この取り組みを専門に担うプラットフォームエンジニアリングチームを社内に設ける企業が欧米を中心に増えており、プラットフォームを通じた開発者支援がソフトウェア開発の重要な戦略のひとつとされています。
これは近年注目されているトレンドであり、Gartnerのインフラと運用に関する2025年トレンドでも最適インフラストラクチャを選択する際に必要な要素としても取り上げられています。
従来、開発チームごとに異なるツールチェーンが使われており、標準化されていない環境での開発は生産性や運用性の面で大きな課題でした。
プラットフォームエンジニアリングの導入により、専門チームがこうしたツール群を統一・標準化したプラットフォームを、システム開発需要に応じて社内に提供することで、開発チームは本来の価値創出であるアプリケーション開発に専念することができます。
その中核を担うことができるのが、Akamai App Platform です。
ゴールデンパス(Golden Path)とは
Cloud Native Computing Foundation Platforms White Paper によれば、ゴールデンパス(Golden Path) は「迅速なプロジェクト開発のために統合されたコードと機能のテンプレート構成」とされています。
つまり、開発初期に必要な構成要素をテンプレート化し、再利用性の高い形で提供することで、セットアップ時間を削減しつつ生産性と品質を両立 するアプローチです。
しかし、CNCF Landscape にあるように、120以上のプロジェクトの中から最適なツールを選定・構成するのは容易ではありません。
Kubernetes の導入には、多くの組織が共通して直面する課題があります。特に、学習コストと初期構築の難易度がよく指摘されています。
学習コストの高さ
Kubernetes の基本的な運用スキルを習得するまでに、経験や学習時間に応じて 3〜6か月 を要するケースもあり、その習得曲線は「急峻」と表現されています。参考
また、この「Kubernetesの学習期間に約3,200万円を費やしている」とRed Kubesの主張もあります。参考
構築期間の長さ
Kubernetes クラスターの構築では、CI/CD、監視、ストレージ、ネットワーク、セキュリティの統合が必要であり、それらの整備に 数週間〜数ヶ月 かかるとされています。参考
Akamai App Platform では、CI/CD、ビルド、セキュリティスキャン、監視など、Kubernetes 活用時に必要な一連のワークフローをあらかじめ統合。導入までの期間と運用コストの大幅な削減 を実現します。
Akamai App Platform for LKE の特徴
このプラットフォームはオープンソースとして提供され、さまざまな Kubernetes 環境に構築可能です。Akamai Cloud では、Linode Kubernetes Engine (LKE) 上に ワンクリックで展開可能な機能 が用意されています。
さらに、Akamai の Object Storage とも連携し、バケットの自動作成やバックアップ用途での統合利用 も可能です。
執筆時点で以下のソリューション群が提供されています。(詳細な一覧はGithub参照)
Alertmanager | Argo CD | Cert-Manager |
Cloudnative Postgresql | ExternalDNS | Falco |
Gitea | Grafana | Harbor |
Ingress-nginx | Istio | Jaeger |
Keycloak | Knative | Kiali |
Kyverno | Kured | Loki |
Minio | Open Telemetry Operator | Prometheus |
RabbitMQ | Sealed Secrets | Grafana Tempo |
Trivy Operator | Tekton | Velero |
これらのツールはランダムに選ばれたものではなく、以下の基準で選定されています:
- 実運用の知見:2019年以降の顧客プロジェクトを通じた実践からの選定
- コミュニティの活性度:活発であり継続的にメンテナンスされているか
- 成熟度:CNCFの「Graduated」または「Incubating」、またはそれに相当するプロジェクトであるか
- 統合性:OIDC、メトリクス、Helm、設定管理などの連携が可能であるか
- ライセンス:商用利用に支障のないOSSライセンスであるか
また、将来的に選定が変更された場合でも、移行プランが提供されるため、安心して長期運用が可能 です。
全体像のイメージは以下の通りです。
Akamai App Platform for LKE の構築方法
利用を開始するには、まず Linode Kubernetes Engine(LKE)でクラスターを作成します。その際、「Akamai App Platform を有効化」にチェックを入れるだけで、初期構築が完了します。
数分後、Akamai App Platform へアクセスするための URL が発行されます。アクセス方法はこちらの手順をご参照ください。
ダッシュボードは以下の 2 つに分かれています:
- Platform:App Platform 全体の管理
- Team:開発者向けのアプリ構築・デプロイ
Team 画面では、サービス構築に必要なテンプレートが用意されており、Kubernetes上でのアプリケーションデプロイを迅速に行えます。
導入からアプリ構築までの詳細な手順は、ハンズオンラボをぜひご参照ください。
おわりに
Akamai App Platform for LKE は、Kubernetes における複雑なツールチェーンや初期構築の課題を解決し、開発者が本来の価値であるアプリケーション開発に集中できる環境を提供します。
特に、プラットフォームエンジニアリングの整備に悩む組織にとって、「選定済み」「統合済み」「拡張可能」な Golden Path を提供するこのプラットフォームは、大きなアドバンテージとなるはずです。
もし、Kubernetes の導入や運用に課題を感じている方、またはプラットフォームエンジニアリングの取り組みをこれから始めたい方がいれば、まずは Akamai Cloud 上でのLinode Kubernetes Engineのクラスター構築と Akamai App Platform の利用から始めてみてはいかがでしょうか。
ハンズオンラボも用意されているので、ぜひ実際に触れてその価値を体感してみてください。
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