0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Ox Alpha を無料で試す4つの経路と、正体を推測するための材料の集め方

0
Last updated at Posted at 2026-08-23

30.9 秒でした。

バグを 1 個仕込んだ Python を渡して「テストが通るように直して」と頼んだら、ファイルを 2 つ読んで、1 文字だけ書き換えて、自分でテストを走らせて、7/7 で戻ってきた。使ったモデルの名前は Ox Alpha です。誰が作ったのかは分かりません。値段は 0 円です。

続きを書きました。正体の確認と、無料期間に手元で使ったトークン量です。

続編: Ox Alpha の正体は Z.AI の GLM だった。無料期間に手元で使ったトークン量

記事の要約(インフォグラフィック)

先に結論。今どこで無料で触れるのか

2026-08-23 時点で、Ox Alpha に無料で触れる経路は 4 つあります。手元で 2 つは実際に動かしました。

経路 モデル ID 課金 備考
OpenRouter stealth/ox-alpha 無料 API と Playground。データは提供者側が保持(学習には使わない)
OpenCode Zen x-preview-f-free 無料 ゼロ保持を明記。利用には請求情報の登録が必要
OpenCode Go ox-alpha-free 無料 Go は初月 $5・以降 $10/月だが、Ox Alpha 分は Go の枠を消費しない
Felo API ox-alpha 無料(ローンチ期間) 終了日の記載なし

OpenRouter のモデルページはこちらです(https://openrouter.ai/stealth/ox-alpha)。OpenCode Zen のモデル一覧は https://opencode.ai/docs/zen/ 、Go の料金は https://opencode.ai/go にあります。Felo は https://openapi.felo.ai/models/stealth/ox-alpha です。

いちばん手数が少ないのは OpenRouter の Playground です。ブラウザだけで終わります。API から叩くならこれだけです。

curl https://openrouter.ai/api/v1/chat/completions \
  -H "Authorization: Bearer $OPENROUTER_API_KEY" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{
    "model": "stealth/ox-alpha",
    "max_tokens": 8000,
    "messages": [{"role": "user", "content": "こんにちは"}]
  }'

max_tokens を大きめに置いているのには理由があります。後で書きます。

ターミナルのコーディングエージェントから使うなら OpenCode が速いです。インストール済みなら 1 行です。

opencode run -m opencode-go/ox-alpha-free "この関数のバグを直して"

モデルが一覧に出るかは、これで確かめられます。

opencode models | grep -E 'ox-alpha|x-preview'

無料で使える4経路の比較

4 経路のうち、データの扱いだけは横並びになっていません。OpenCode Zen は「ゼロ保持・学習に使わない」と書いてあり、OpenRouter は「提供者が保持する。ただし学習には使わない」と書いてあります。同じモデルでも入口で条件が違うので、業務のコードを流す前にここだけは見てください。

そもそも Ox Alpha とは何なのか

2026-08-20 に OpenRouter と OpenCode へ同時に載った、開発元非公開のモデルです。この手のものは「ステルスモデル」と呼ばれます。

公式に出ている仕様はこのあたりです。

  • コンテキスト 1,048,576 トークン(約 1M)
  • 最大出力 131,072 トークン
  • 入力はテキスト・画像・動画、出力はテキスト
  • function calling 対応、response_format による JSON 出力対応(スキーマ強制はなし)
  • 価格は入力も出力も $0

OpenRouter の説明文は「Ox Alpha is a reasoning model designed for coding, sustained agentic work, and production workloads」の 1 行だけです(https://openrouter.ai/stealth/ox-alpha)。作った会社の名前はどこにも書いてありません。OpenRouter 自身も「自分は開発元でも所有者でも提供者でもなく、リクエストを中継しているだけ」と明記しています。

告知は OpenCode 側が先に出しています。「Ox Alpha(ステルスモデル)は次の 1 週間無料」「1 日あたり 100 兆トークンの処理能力がある、あなたができることを試してみましょう」という挑発的なものでした(https://x.com/opencode/status/2090544355824038300)。OpenRouter 側の告知も同じ日です(https://x.com/OpenRouter/status/2090544970923184269)。

翌日には OpenCode Go にも入りました。ここで「次の 6 日間」と期限が具体化しています(https://x.com/opencode/status/2090758645499728234)。8/21 から数えて 6 日なので、8/27 前後には閉じる計算になります。ただしこれは告知文からの逆算で、終了日時そのものは公表されていません。

手元で試したら、GLM-5.3 より速かった

読んだだけだと分からないので、同じ課題を 3 通りで走らせました。

課題は区間マージ関数です。(1,3)(3,5) のように端点が接する区間をマージしない、という境界バグを 1 個だけ仕込んであります。テストは 7 ケースで、素の状態では 5/7 しか通りません。

def merge_intervals(intervals):
    """区間のリストを受け取り、重なる区間と隣接する区間をマージして返す。
    例: [(1,3),(3,5)] -> [(1,5)]  /  [(1,2),(4,5)] -> [(1,2),(4,5)]
    """
    if not intervals:
        return []
    intervals = sorted(intervals)
    result = [intervals[0]]
    for start, end in intervals[1:]:
        last_start, last_end = result[-1]
        if start < last_end:          # ここが原因
            result[-1] = (last_start, max(last_end, end))
        else:
            result.append((start, end))
    return result

指示は「test_intervals.py が全件通るように intervals.py だけを修正してください。テストファイルは変更しないでください」の 1 行です。結果はこうなりました。

モデル 所要 結果 修正内容
Ox Alpha(OpenCode Go) 30.9 秒 7/7 start < last_end<=
Ox Alpha(OpenCode Zen) 48.5 秒 7/7 同上
GLM-5.3(OpenCode Go) 84.5 秒 7/7 同上

同じ課題を3通りで走らせた実測

3 つとも同じ 1 文字にたどり着いて、3 つとも自分で python test_intervals.py を実行して 7/7 を確認してから報告してきました。テストファイルを書き換えて通す、みたいなズルもしていません。

ただしこれは 1 回ずつの計測です。速度差を実力差と読むには全然足りません。時間帯の混雑でも簡単に前後します。分かるのは「この難度なら 3 つとも普通に解ける」ということと、「無料枠なのに待たされる感じはない」ということくらいです。

面白かったのは自己申告です。GLM-5.3 は報告の末尾に「使用モデル: GLM 5.3 (opencode-go/glm-5.3)」と正確に書いてきました。Ox Alpha は「使用モデル: ox-alpha」でした。正体を直接聞くと、こう返ってきます。

モデル名は「ox-alpha」です。開発元は非公開(undisclosed organization)のため、
企業名等はお答えできません。

学習データのカットオフ時期については、確実な情報を持っていないため
「分からない」とお答えします。

「知らない」ではなく「非公開なので答えられない」と言っています。隠すよう指示されている側の言い方です。

名前を伏せた相手に素性を尋ねる場面

名札のところだけ黒く塗られた相手に素性を尋ねている、みたいな絵になります。答えを持っていないのではなく、答えないと決められている側の応対です。

正体は誰なのか。証拠の集め方が面白い

ここからが本題かもしれません。作った会社が黙っているので、界隈が総出で外側から指紋を採っています。

現時点で優勢なのは Zhipu(Z.ai)の GLM 系という説です。決め手っぽいものが 3 つあります。

1 つ目は、サーバーが吐いたスタックトレース。 top_p に数値ではなく文字列を渡して壊れたリクエストを送ると、バリデーションで落ちたときに内部クラス名が漏れます。出てきたのが com.wd.paas.api.domain.v4.chat.ChatCompletionRequest でした。この paas/v4/chat という並びは Zhipu の公開 API パス /api/paas/v4/chat/completions とそのまま一致します。

2 つ目は、エラーコード。 不正な role を投げると {"code":"1214","message":"Incorrect role information"} が返ります。同じコードが Z.AI がホストしている GLM 群でも出て、別事業者がホストしている GLM では出ませんでした。つまりこれはモデルの指紋ではなく「誰が API を運用しているか」の指紋です。切り分けとして筋がいい。

3 つ目は、トークナイザー。 14 種類の文字体系・絵文字・コード・SQL にまたがる 30 個の入力で、トークン数が GLM-5.3 と 30/30 一致しました。差分は毎リクエストに乗る +75 トークンの固定分だけで、これはシステムプロンプトやルーティングのラッパーで説明がつきます。

この検証の詳細は explainx がまとめています(https://www.explainx.ai/blog/ox-alpha-what-we-know-mystery-ai-model-august-2026)。音声入力を拒否する挙動が GLM-5V と同じで MiMo とは違う、といった消去法も併せて載っています。

Google 説も出ている。こちらは計算資源からの逆算

日本語圏では別の角度からの推測が出ていて、これが個人的にいちばん面白かった。

OpenCode が言っている「1 日 100 兆トークン」を額面どおり受け取ると、それを捌くのに必要な計算量が見積もれます。アクティブパラメータを控えめに 20B と置くと、3ND から 1 日あたり 6e24 FLOPs 以上。毎日 Llama 3 70B を事前学習するのと同じ規模で、そんな資源を遊ばせておける会社は Google くらいだろう、という筋です(https://x.com/kyo_takano/status/2090787696423952442)。

計算そのものは筋が通っています。ただ前提が 1 個弱い。「100 兆トークン」は OpenCode が告知で出した数字で、実測でも SLA でもありません。プロモーション上の上限として書かれた値なので、これを実際の消費量とみなすと逆算が丸ごとずれます。

ステルスモデルの正体当ては、だいたいこの構図になります。運用層の指紋(スタックトレース・エラーコード・トークナイザー)は再現実験ができて、第三者が同じ手順で確かめられる。一方で規模からの推論は、前提に置いた数字が公称値だと足元から崩れる。前者のほうが強い証拠だと思っています。

GLM説とGoogle説の根拠を並べた図

図にすると、2 つの説の性質の違いがはっきりします。GLM 説は運用層に残った痕跡から積み上げていて、誰でも同じ手順で追試できます。Google 説は公称のスループットから必要な計算量を割り出す形なので、出発点の数字が広告用だと全部が動きます。

とはいえ、どちらも当事者は何も言っていません。Zhipu も OpenRouter も OpenCode も、2026-08-23 時点で肯定も否定もしていません。

ステルスモデルは、だいたい後で正体が分かる

この形式自体は初めてではありません。

2025-04 に OpenRouter へ現れた Quasar Alpha と Optimus Alpha は、後日 OpenRouter 自身が「OpenAI の GPT-4.1 の初期版だった」と公表しています(https://openrouter.ai/announcements/quasar-alpha-and-optimus-alpha-reveal)。無料で大量に投げさせて実戦のフィードバックを集め、正式発表で名前を明かす。プレビュー版の実戦投入としては合理的なやり方です。

なので Ox Alpha も、そのうち誰かの正式モデルとして名前が付く可能性が高い。無料期間が閉じるタイミングと発表が重なるなら、8/27 前後がその日になります。

触る前に知っておくと損しない落とし穴

無料だからといって、そのまま本番のワークフローに差し込むと引っかかる箇所がいくつかあります。

max_tokens を小さくすると本文が空で返ることがあります。 推論モデルなので思考分のトークンが出力枠を食います。日本語の検証記事では 4000 以上が目安とされていました(https://data-engineering.jp/ox-alpha/)。上の curl で 8000 を置いたのはこのためです。

生成コードは見た目で通ったと判断しないでください。 OpenRouter 経由で 1 ファイル完結の HTML アプリを書かせた検証では、画面は完成しているように見えるのに、window.confirm() に渡す文字列の中で改行がエスケープされておらず、JavaScript が丸ごと動いていなかったそうです(https://www.fukuro-ai.tech/ox-alpha-openrouter-coding-test/)。静かに死ぬタイプの壊れ方がいちばん厄介です。

「無料枠のレート制限」の適用範囲がはっきりしません。 OpenRouter の無料モデルは 20 リクエスト/分、1 日 50 リクエスト(生涯クレジット $10 以上で 1000)という制限が文書化されていますが、これは「ID が :free で終わるモデル」に適用されると書かれています(https://openrouter.ai/docs/api-reference/limits)。Ox Alpha の ID は stealth/ox-alpha:free が付きません。同じ枠に入るのかどうか、公式には明示されていません。

ベンチマークの数字は小さすぎるサンプルから来ています。 DeepSWE の 10 タスクで 80% を出して GPT-5.6 や Claude Fable 5 を上回った、という話が出回っていますが、元は 10 件で試行回数もモデルごとに揃っていません(https://x.com/AGTPinsights/status/2090720619083989328)。別の人が opencode-go の 25 タスクで回した表では、Ox Alpha は 100% 通過したものの、所要時間では grok-4.5 や deepseek-v4-flash の後ろで 3 位でした(https://x.com/gosrum/status/2091121214312046720)。「万能で最強」ではなく「無料の割にちゃんと戦える」が実態に近いと思います。

閉じかけの窓と、試しかけのターミナル

窓が細くなっていく感じは、触っていると分かります。試したいことはまだ残っているのに、期限のほうが先に来る。

おわりに

正体が誰であっても、手元でやることは変わりません。無料のうちに自分の課題を投げて、自分のところで速いか正しいかを見る。それだけです。

面白いのは、正体を突き止めた手口のほうでした。スタックトレースを吐かせる、エラーコードを他社ホストと比較する、トークナイザーの分割数を 30 個の入力で照合する。どれも特別な設備は要らなくて、壊れたリクエストを 1 回投げるところから始まっています。ブラックボックスの外側からでも、ここまで削れるものなんだな、と。

自分の実測のほうは 1 回ずつしか回していないので、速度についてはまだ何も言えていません。もう少し投げてみます。窓が閉じるまで、あと数日。

あわせて読みたい


📎 図解版・関連リンクをまとめたページがあります:
https://ishizakahiroshi.com/articles/2026/2026-08-23_ox-alpha-free-routes/

※ ヘッダー画像とインフォグラフィックは AI(画像生成)で作成しています。

※ 本文の挿絵も AI(画像生成)で作成しています。

書いた人: ishizakahiroshi
群馬の北部で、保護猫2匹と暮らす、在宅エンジニア(何でも屋)
https://ishizakahiroshi.com/
https://github.com/ishizakahiroshi
X(業務委託・各種相談はこちら):
https://x.com/ishizakahiroshi

バックエンド・インフラ・AI連携まわりで、業務委託のご相談を受け付けています。フルリモートです。スポットや週2〜3時間からでも歓迎で、いろんな案件に携われたらうれしいです。こんな相談、歓迎です。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?