30.9 秒でした。
バグを 1 個仕込んだ Python を渡して「テストが通るように直して」と頼んだら、ファイルを 2 つ読んで、1 文字だけ書き換えて、自分でテストを走らせて、7/7 で戻ってきた。使ったモデルの名前は Ox Alpha です。誰が作ったのかは分かりません。値段は 0 円です。
続きを書きました。正体の確認と、無料期間に手元で使ったトークン量です。
続編: Ox Alpha の正体は Z.AI の GLM だった。無料期間に手元で使ったトークン量
先に結論。今どこで無料で触れるのか
2026-08-23 時点で、Ox Alpha に無料で触れる経路は 4 つあります。手元で 2 つは実際に動かしました。
| 経路 | モデル ID | 課金 | 備考 |
|---|---|---|---|
| OpenRouter | stealth/ox-alpha |
無料 | API と Playground。データは提供者側が保持(学習には使わない) |
| OpenCode Zen | x-preview-f-free |
無料 | ゼロ保持を明記。利用には請求情報の登録が必要 |
| OpenCode Go | ox-alpha-free |
無料 | Go は初月 $5・以降 $10/月だが、Ox Alpha 分は Go の枠を消費しない |
| Felo API | ox-alpha |
無料(ローンチ期間) | 終了日の記載なし |
OpenRouter のモデルページはこちらです(https://openrouter.ai/stealth/ox-alpha)。OpenCode Zen のモデル一覧は https://opencode.ai/docs/zen/ 、Go の料金は https://opencode.ai/go にあります。Felo は https://openapi.felo.ai/models/stealth/ox-alpha です。
いちばん手数が少ないのは OpenRouter の Playground です。ブラウザだけで終わります。API から叩くならこれだけです。
curl https://openrouter.ai/api/v1/chat/completions \
-H "Authorization: Bearer $OPENROUTER_API_KEY" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "stealth/ox-alpha",
"max_tokens": 8000,
"messages": [{"role": "user", "content": "こんにちは"}]
}'
max_tokens を大きめに置いているのには理由があります。後で書きます。
ターミナルのコーディングエージェントから使うなら OpenCode が速いです。インストール済みなら 1 行です。
opencode run -m opencode-go/ox-alpha-free "この関数のバグを直して"
モデルが一覧に出るかは、これで確かめられます。
opencode models | grep -E 'ox-alpha|x-preview'
4 経路のうち、データの扱いだけは横並びになっていません。OpenCode Zen は「ゼロ保持・学習に使わない」と書いてあり、OpenRouter は「提供者が保持する。ただし学習には使わない」と書いてあります。同じモデルでも入口で条件が違うので、業務のコードを流す前にここだけは見てください。
そもそも Ox Alpha とは何なのか
2026-08-20 に OpenRouter と OpenCode へ同時に載った、開発元非公開のモデルです。この手のものは「ステルスモデル」と呼ばれます。
公式に出ている仕様はこのあたりです。
- コンテキスト 1,048,576 トークン(約 1M)
- 最大出力 131,072 トークン
- 入力はテキスト・画像・動画、出力はテキスト
- function calling 対応、
response_formatによる JSON 出力対応(スキーマ強制はなし) - 価格は入力も出力も $0
OpenRouter の説明文は「Ox Alpha is a reasoning model designed for coding, sustained agentic work, and production workloads」の 1 行だけです(https://openrouter.ai/stealth/ox-alpha)。作った会社の名前はどこにも書いてありません。OpenRouter 自身も「自分は開発元でも所有者でも提供者でもなく、リクエストを中継しているだけ」と明記しています。
告知は OpenCode 側が先に出しています。「Ox Alpha(ステルスモデル)は次の 1 週間無料」「1 日あたり 100 兆トークンの処理能力がある、あなたができることを試してみましょう」という挑発的なものでした(https://x.com/opencode/status/2090544355824038300)。OpenRouter 側の告知も同じ日です(https://x.com/OpenRouter/status/2090544970923184269)。
翌日には OpenCode Go にも入りました。ここで「次の 6 日間」と期限が具体化しています(https://x.com/opencode/status/2090758645499728234)。8/21 から数えて 6 日なので、8/27 前後には閉じる計算になります。ただしこれは告知文からの逆算で、終了日時そのものは公表されていません。
手元で試したら、GLM-5.3 より速かった
読んだだけだと分からないので、同じ課題を 3 通りで走らせました。
課題は区間マージ関数です。(1,3) と (3,5) のように端点が接する区間をマージしない、という境界バグを 1 個だけ仕込んであります。テストは 7 ケースで、素の状態では 5/7 しか通りません。
def merge_intervals(intervals):
"""区間のリストを受け取り、重なる区間と隣接する区間をマージして返す。
例: [(1,3),(3,5)] -> [(1,5)] / [(1,2),(4,5)] -> [(1,2),(4,5)]
"""
if not intervals:
return []
intervals = sorted(intervals)
result = [intervals[0]]
for start, end in intervals[1:]:
last_start, last_end = result[-1]
if start < last_end: # ここが原因
result[-1] = (last_start, max(last_end, end))
else:
result.append((start, end))
return result
指示は「test_intervals.py が全件通るように intervals.py だけを修正してください。テストファイルは変更しないでください」の 1 行です。結果はこうなりました。
| モデル | 所要 | 結果 | 修正内容 |
|---|---|---|---|
| Ox Alpha(OpenCode Go) | 30.9 秒 | 7/7 |
start < last_end を <= に |
| Ox Alpha(OpenCode Zen) | 48.5 秒 | 7/7 | 同上 |
| GLM-5.3(OpenCode Go) | 84.5 秒 | 7/7 | 同上 |
3 つとも同じ 1 文字にたどり着いて、3 つとも自分で python test_intervals.py を実行して 7/7 を確認してから報告してきました。テストファイルを書き換えて通す、みたいなズルもしていません。
ただしこれは 1 回ずつの計測です。速度差を実力差と読むには全然足りません。時間帯の混雑でも簡単に前後します。分かるのは「この難度なら 3 つとも普通に解ける」ということと、「無料枠なのに待たされる感じはない」ということくらいです。
面白かったのは自己申告です。GLM-5.3 は報告の末尾に「使用モデル: GLM 5.3 (opencode-go/glm-5.3)」と正確に書いてきました。Ox Alpha は「使用モデル: ox-alpha」でした。正体を直接聞くと、こう返ってきます。
モデル名は「ox-alpha」です。開発元は非公開(undisclosed organization)のため、
企業名等はお答えできません。
学習データのカットオフ時期については、確実な情報を持っていないため
「分からない」とお答えします。
「知らない」ではなく「非公開なので答えられない」と言っています。隠すよう指示されている側の言い方です。
名札のところだけ黒く塗られた相手に素性を尋ねている、みたいな絵になります。答えを持っていないのではなく、答えないと決められている側の応対です。
正体は誰なのか。証拠の集め方が面白い
ここからが本題かもしれません。作った会社が黙っているので、界隈が総出で外側から指紋を採っています。
現時点で優勢なのは Zhipu(Z.ai)の GLM 系という説です。決め手っぽいものが 3 つあります。
1 つ目は、サーバーが吐いたスタックトレース。 top_p に数値ではなく文字列を渡して壊れたリクエストを送ると、バリデーションで落ちたときに内部クラス名が漏れます。出てきたのが com.wd.paas.api.domain.v4.chat.ChatCompletionRequest でした。この paas/v4/chat という並びは Zhipu の公開 API パス /api/paas/v4/chat/completions とそのまま一致します。
2 つ目は、エラーコード。 不正な role を投げると {"code":"1214","message":"Incorrect role information"} が返ります。同じコードが Z.AI がホストしている GLM 群でも出て、別事業者がホストしている GLM では出ませんでした。つまりこれはモデルの指紋ではなく「誰が API を運用しているか」の指紋です。切り分けとして筋がいい。
3 つ目は、トークナイザー。 14 種類の文字体系・絵文字・コード・SQL にまたがる 30 個の入力で、トークン数が GLM-5.3 と 30/30 一致しました。差分は毎リクエストに乗る +75 トークンの固定分だけで、これはシステムプロンプトやルーティングのラッパーで説明がつきます。
この検証の詳細は explainx がまとめています(https://www.explainx.ai/blog/ox-alpha-what-we-know-mystery-ai-model-august-2026)。音声入力を拒否する挙動が GLM-5V と同じで MiMo とは違う、といった消去法も併せて載っています。
Google 説も出ている。こちらは計算資源からの逆算
日本語圏では別の角度からの推測が出ていて、これが個人的にいちばん面白かった。
OpenCode が言っている「1 日 100 兆トークン」を額面どおり受け取ると、それを捌くのに必要な計算量が見積もれます。アクティブパラメータを控えめに 20B と置くと、3ND から 1 日あたり 6e24 FLOPs 以上。毎日 Llama 3 70B を事前学習するのと同じ規模で、そんな資源を遊ばせておける会社は Google くらいだろう、という筋です(https://x.com/kyo_takano/status/2090787696423952442)。
計算そのものは筋が通っています。ただ前提が 1 個弱い。「100 兆トークン」は OpenCode が告知で出した数字で、実測でも SLA でもありません。プロモーション上の上限として書かれた値なので、これを実際の消費量とみなすと逆算が丸ごとずれます。
ステルスモデルの正体当ては、だいたいこの構図になります。運用層の指紋(スタックトレース・エラーコード・トークナイザー)は再現実験ができて、第三者が同じ手順で確かめられる。一方で規模からの推論は、前提に置いた数字が公称値だと足元から崩れる。前者のほうが強い証拠だと思っています。
図にすると、2 つの説の性質の違いがはっきりします。GLM 説は運用層に残った痕跡から積み上げていて、誰でも同じ手順で追試できます。Google 説は公称のスループットから必要な計算量を割り出す形なので、出発点の数字が広告用だと全部が動きます。
とはいえ、どちらも当事者は何も言っていません。Zhipu も OpenRouter も OpenCode も、2026-08-23 時点で肯定も否定もしていません。
ステルスモデルは、だいたい後で正体が分かる
この形式自体は初めてではありません。
2025-04 に OpenRouter へ現れた Quasar Alpha と Optimus Alpha は、後日 OpenRouter 自身が「OpenAI の GPT-4.1 の初期版だった」と公表しています(https://openrouter.ai/announcements/quasar-alpha-and-optimus-alpha-reveal)。無料で大量に投げさせて実戦のフィードバックを集め、正式発表で名前を明かす。プレビュー版の実戦投入としては合理的なやり方です。
なので Ox Alpha も、そのうち誰かの正式モデルとして名前が付く可能性が高い。無料期間が閉じるタイミングと発表が重なるなら、8/27 前後がその日になります。
触る前に知っておくと損しない落とし穴
無料だからといって、そのまま本番のワークフローに差し込むと引っかかる箇所がいくつかあります。
max_tokens を小さくすると本文が空で返ることがあります。 推論モデルなので思考分のトークンが出力枠を食います。日本語の検証記事では 4000 以上が目安とされていました(https://data-engineering.jp/ox-alpha/)。上の curl で 8000 を置いたのはこのためです。
生成コードは見た目で通ったと判断しないでください。 OpenRouter 経由で 1 ファイル完結の HTML アプリを書かせた検証では、画面は完成しているように見えるのに、window.confirm() に渡す文字列の中で改行がエスケープされておらず、JavaScript が丸ごと動いていなかったそうです(https://www.fukuro-ai.tech/ox-alpha-openrouter-coding-test/)。静かに死ぬタイプの壊れ方がいちばん厄介です。
「無料枠のレート制限」の適用範囲がはっきりしません。 OpenRouter の無料モデルは 20 リクエスト/分、1 日 50 リクエスト(生涯クレジット $10 以上で 1000)という制限が文書化されていますが、これは「ID が :free で終わるモデル」に適用されると書かれています(https://openrouter.ai/docs/api-reference/limits)。Ox Alpha の ID は stealth/ox-alpha で :free が付きません。同じ枠に入るのかどうか、公式には明示されていません。
ベンチマークの数字は小さすぎるサンプルから来ています。 DeepSWE の 10 タスクで 80% を出して GPT-5.6 や Claude Fable 5 を上回った、という話が出回っていますが、元は 10 件で試行回数もモデルごとに揃っていません(https://x.com/AGTPinsights/status/2090720619083989328)。別の人が opencode-go の 25 タスクで回した表では、Ox Alpha は 100% 通過したものの、所要時間では grok-4.5 や deepseek-v4-flash の後ろで 3 位でした(https://x.com/gosrum/status/2091121214312046720)。「万能で最強」ではなく「無料の割にちゃんと戦える」が実態に近いと思います。
窓が細くなっていく感じは、触っていると分かります。試したいことはまだ残っているのに、期限のほうが先に来る。
おわりに
正体が誰であっても、手元でやることは変わりません。無料のうちに自分の課題を投げて、自分のところで速いか正しいかを見る。それだけです。
面白いのは、正体を突き止めた手口のほうでした。スタックトレースを吐かせる、エラーコードを他社ホストと比較する、トークナイザーの分割数を 30 個の入力で照合する。どれも特別な設備は要らなくて、壊れたリクエストを 1 回投げるところから始まっています。ブラックボックスの外側からでも、ここまで削れるものなんだな、と。
自分の実測のほうは 1 回ずつしか回していないので、速度についてはまだ何も言えていません。もう少し投げてみます。窓が閉じるまで、あと数日。
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今回モデルを走らせた OpenCode を含む、複数 CLI で同じスキル棚を共有する構成の話です。
📎 図解版・関連リンクをまとめたページがあります:
https://ishizakahiroshi.com/articles/2026/2026-08-23_ox-alpha-free-routes/
※ ヘッダー画像とインフォグラフィックは AI(画像生成)で作成しています。
※ 本文の挿絵も AI(画像生成)で作成しています。
書いた人: ishizakahiroshi
群馬の北部で、保護猫2匹と暮らす、在宅エンジニア(何でも屋)
https://ishizakahiroshi.com/
https://github.com/ishizakahiroshi
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