本日も、ネットに流れるトピックから個人的に興味を引かれたものを拾っていきます。
AIの登場は不可逆であって、19世紀の内燃機関の登場と同じぐらいの社会へのインパクトがあると考えています。そういった中で仕事の内容も変化していくでしょうし、社会との摩擦も起きていくでしょう。
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エンジニア
AIとお仕事
この記事は、AI全盛時代における「バイブコーディング」とソフトウェアエンジニアの役割について、t-wada(和田卓人)氏が問題提起しつつ、「自分の手でコードを書くこと」の意味を掘り下げた内容です。
バイブコーディングなどAI活用によって開発生産性が上がった結果、本来は大規模・長期開発で露呈していた技術的負債やレビュー負荷、セキュリティリスクといった問題が、短期間で一気に顕在化するようになったと指摘する。しかし、それらは昔から存在していた構造的な問題であり、AIという強力な道具によって「顕在化が極端に早くなった」だけだと位置付ける。バイブコーディングはむしろ非エンジニア層にとっての革命であり、裾野が広がるほどプロフェッショナルなソフトウェアに求められる品質やインパクトは一層高くなるため、「エンジニアのためのものではない」と述べている。
AI時代の課題にも、TDDやDDD、制約理論、プロダクトマネジメントといった既存のソフトウェアエンジニアリングの知見は有効であり、「AI」と従来のプロセスをどう融合させるかが鍵だとする。現状は人間がAIをマイクロマネジメントしている段階だが、今後はより宣言的に自走させる方向に進むため、その迷走・暴走を抑えるガードレールとして「バージョン管理・テスティング・自動化」という三本柱の重要性が増すと強調する。AIとの協業は「ウォーターフォールのプロセスを15分で回し続ける」ようなもので、AIとの対話を通じて仕様を詰め、タスクを分割し、TDDでサイクルを回すのが現時点のベストプラクティスだと述べている。
設計は最初から正しくはできず、コードを書くプロセス自体が理解を深め、設計へのフィードバックを生むため、人間が自分の手で書く「オーガニック・コーディング」をあえて行う価値があると語る。研究結果なども踏まえ、AIは人や組織の能力を増幅する鏡であり、AIから引き出せる性能は人間側の能力に比例するため、「労力は外注できるが能力は外注できない」として、AIで進捗を上げるだけでなく自分の能力向上にもAIを活用すべきだとする。AIによってプログラミングスキルが不要になるどころか、理解できないものをレビューできない以上、むしろスキルの重要性は増しているという立場だ。
また「ジュニアエンジニア不要論」については、AIで代替できるからという説明は表向きにすぎず、実態は「人員を減らしたいからAIを言い訳にしているレイオフの方便だ」と批判する。10年スパンで見れば、現在のシニア層の多くは引退しており、AIに指示を出しソフトウェアを育てる役割を担う人材を育てなければ立ち行かないと指摘する。若手は新しいツールへの感度やフットワーク、アンラーニングすべきものの少なさなど強みが大きく、「AIに全賭け」ではなく「半分賭ける」くらいのスタンスで選択肢を狭めず、自分の手と頭を動かし、変化そのものを楽しむメンタルモデルが重要だと結んでいる。
Findyでは生成AIを無制限に導入し、エンジニアの肌感覚としては生産性向上が感じられた一方、Findy Team+のデータでは組織全体のプルリク数はほぼ横ばいで、AI活用の効果は限定的であることが判明した。 ハイスキル層ではAI併用でアウトプットが増える一方、ジュニア層では基礎CS知識やプロンプト力不足から手戻り増加・アウトプット減少が見られ、生産性の二極化とシニア層のAI疲れが新たな課題として浮上している。 このため、AI活用の可視化や人事・評価制度の見直し、ジュニアの基礎教育強化、一次情報の収集とビジネス理解の向上を通じて、AI駆動開発で組織全体の生産性と提供価値を高めていく必要性が強調されている。
本
新メンバーが早期にチームへなじみ活躍できるようにする「オンボーディング」について、必要性や失敗パターン、計画と体制、ドキュメント準備、コミュニケーションや1on1の進め方を体系立てて解説し、3カ月スケジュールに沿ったITエンジニア向け実践ノウハウをまとめた書籍です。
プログラミング
.NET
.NET一週間まとめ。
Unison
Unison 1.0は、言語本体・分散ランタイム・開発ワークフローが安定した最初のメジャーリリースであり、コードをテキストファイルではなくデータベースに保存し、内容ハッシュで定義を一意に管理する「1つの大きなアイデア」に基づく関数型言語です。 コードベース管理CLI「ucm」やGUIのUCM Desktop、コード共有のUnison Share、アプリをコードだけでデプロイできるUnison CloudとBYOCなどの周辺ツール群が整備され、型ベース検索や分散処理ライブラリ、MCPサーバーなども提供されており、今後はC FFIやレコード型強化、Cloudの観測性やエージェントコンピューティング基盤の拡充などがロードマップに挙げられています。
PostgreSQL
PostgreSQLのアーキテクチャは、リスナープロセス、サーバープロセス、ワーカープロセスのマルチプロセス構成で、共有メモリ域とプロセスメモリ域に分かれています。重要なログとしてチェックポイント処理、自動バキューム、TEMP落ちの3種類があり、これらはそれぞれデータの永続化、不要行の掃除、メモリ不足時のディスク利用を示します。チェックポイントは定期的に共有バッファをディスクに書き出し、自動バキュームはMVCCで生じる不要行を削除、TEMP落ちはwork_memを超えるソートやハッシュ操作で一時ファイルが作成されることを意味します。これらのログを読み解くことで、スロークエリの原因やパフォーマンスチューニングの方向性が明確になります。
GitHub
この記事では、はてながGitHub Actionsで利用するSelf-hosted runnerとGitHub-hosted runnerについて、CPUベンチマークを用いて性能比較を行い、Self-hosted runner(特にARMやローカルSSD付きEC2上のコンテナ)の方が多くのケースで高速であること、GitHub-hostedのubuntu-latest/ubuntu-slimは論理2コア構成や並列時のスループット低下などの特徴があることを示している。 また、1 Core/2 Coreそれぞれでsysbenchとstress-ngによる計測結果を整理し、GitHub-hostedのArm runnerはすでにGAで利用可能であるため、まずはArm runnerから移行することでジョブ高速化の近道になると結論づけ、Disk I/Oについては別記事で扱うと予告している。
UI
この資料は、UI 実装における「余白」を、単なる空きではなく情報をグルーピングし認知しやすくするための“意味ある空間”として扱うべきだと説いている。
内容の要点
- ゲシュタルト心理学のプレグナンツの法則(近接・閉合・類同・良い連続)を用いて、人は要素をまとまりとして知覚すること、そのために余白が重要だと説明している。
- SwiftUI では VStack/HStack の spacing、padding、Spacer という 3 つの手段で余白を表現でき、それぞれ「情報のグループ化」「枠との干渉を防ぐ内側の余白」「意味を持たない純粋な空きスペース」として使い分けるべきだと示している。
- タイトルとコンテンツ間 8pt、セクション間 20pt、コンテンツ同士 4pt のように一貫した余白ルールを設けることで、情報の階層と関係性が直感的に理解できる UI になると述べ、エンジニアはデザイン意図を理解して実装する責任があると締めくくっている。
エージェンティックコーディング・仕様駆動開発
このリポジトリは、Google の Gemini モデルをターミナルから利用できる「Gemini CLI」を、エージェント的なコーディング用途で使いこなすための約30個のプロ向けTIPS集です。
Gemini CLI のインストールと認証方法、対話・一括実行などの基本的な使い方を説明したうえで、GEMINI.md による永続コンテキスト、カスタムスラッシュコマンド、MCP サーバーによる外部サービス連携、メモ機能やチェックポイント/restore による安全な作業などの活用法が詳しく紹介されています。
さらに、@ でのファイル・画像参照、システム設定トラブルシュート、YOLOモードによる自動承認など、開発環境全体を AI エージェントとして操作するためのテクニックもまとめられており、Gemini CLI を日常の開発ワークフローに深く組み込むための「パワーユーザー向けガイド」となっています。
Googleの新サービス「Code Wiki」は、コードリポジトリ全体を自動解析し、変更のたびに常に最新状態へ更新される構造化ドキュメント(Wiki)を生成することで、既存コード読解という開発の大きなボトルネックを解消しようとする取り組みである。 生成されたWikiはコード構造や役割に基づき整理され、各セクションから関連ファイルやクラスへ即時にジャンプでき、Geminiによるチャット質問や自動生成されるアーキテクチャ図・クラス図・シーケンス図もコード更新に追従して再生成される。 これにより新規参加者やベテラン開発者が数分でコードを理解できる未来を目指し、今後はGemini CLI拡張を通じて社内のプライベートリポジトリにも対応し、レガシーコードなど社内コード理解の課題解決にも活用する計画が示されている。
この記事は、GitHub Copilotのカスタムエージェント向けにagents.mdをどう書けば効果的かを整理したベストプラクティス集です。 agents.mdではYAMLフロントマターでエージェントのメタデータや利用ツール、MCPサーバー連携などを設定し、本文でコマンド・テスト方法・プロジェクト構造・コードスタイル・Git運用・やってよい/ダメなことの6要素を具体的に示すことが重要だと説明しています。 また、曖昧・過度に万能な定義は失敗しやすいため、最小限の定義から始めて、実運用で起きた問題を都度ルールとして追記し、Issueテンプレート整備やエージェントへのIssue作成委譲も組み合わせながら段階的に育てていくことを推奨しています。
このスライドは、AnthropicのAI開発支援CLIツール「Claude Code」の入門として、概要・料金プラン・他ツールとの違いから、インストール方法やPlanモード、CLAUDE.md、スラッシュコマンド、Hooks、Subagents、MCP連携などのコア機能を体系的に紹介する。個人ではモデルとツールの特性理解やコンテキスト制御を重視し、チームではCLAUDE.md配布やHooks・Permissions・Sandbox・GitHub Actions・仕様駆動開発などで仕組み化して属人性を下げる方針を解説する。さらにClaude Skillsによる拡張や実験結果、AIツール時代の開発観(ツールは味方であり、サンクコストを恐れず乗り換えるべきなど)を共有し、「まず使って慣れ、特性を理解し、仕組みとして組み込もう」と促している。
AI
Gemini CLI から Looker と Looker 会話型分析を利用できるようになり、ターミナル上で Looker のデータやダッシュボードの参照・分析・生成が行えるようになったことを紹介している記事です。 具体的には、npm で Gemini CLI を導入し、GitHub 上の Looker/会話型分析拡張をインストールしたうえで、Looker API の認証情報や Google Cloud プロジェクトなどの環境変数を設定すれば、自然言語での高度なデータクエリやレポート作成がワークフローに統合できる手順と関連ドキュメントへのリンクが示されています。
論文・その他
このスライド資料は、機械学習の学習過程を「力学系」として捉え直すことで、勾配降下法などの最適化手法を微分方程式として統一的に理解しようとする内容です。特にホップフィールドネットワークや深い線形ネットワークを例に、エネルギー関数や損失関数が時間発展に対して単調に減少する「勾配流」として表現できることを示し、連続時間の式 ( \frac{dW}{dt} = -\nabla E(W) ) と離散時間の更新式 ( W_{k+1} = W_k - \eta \nabla E(W_k) ) が同じ枠組みで理解できることを強調しています。また、Saxe らの結果を用いて、深い線形ネットワークでは各特異値方向ごとに独立した2次元力学系が現れ、学習ダイナミクスが厳密に解析可能である点にも触れています。こうした視点により、現代的なディープラーニングの挙動を、安定点(アトラクタ)やエネルギー地形、連続時間の勾配流といった力学系の概念を使って直感的かつ理論的に説明できることが、この発表の主眼となっています。
ニューメキシコ大学とロスアラモス国立研究所の研究チームが、統計物理学の中核方程式「構成積分」の計算を、AIフレームワーク「THOR」により劇的に高速化した研究を報告している。
THORはテンソルネットワークと機械学習ポテンシャルを組み合わせ、高次元データを分解して扱うことで、従来は最新スパコンでも数週間かかった計算の一部を数秒で解くことに成功した。
銅やスズ、アルゴンなどでの検証では、ロスアラモスの最先端シミュレーションと同等の精度を保ちながら約400倍の計算速度を達成し、材料科学における相転移や高圧状態の解析を第一原理から効率的に行う道を開いたとされる。
この記事は、最新のAI研究を通じて「人と社会をどう映し出し、どう付き合っていくか」を概観したダイジェストです。
購買行動の実験では、データ収集の約1割を人間で行い、残りをLLMシミュレーションで補うことで、時間を大きく短縮しながらも高精度な結果が得られることが示されています。
また、個人の思考パターンを反映した「分身AI」同士に議論させ、その様子を観察することで、自分の衝動性や論理の飛躍などの癖に気づきやすくなる可能性が指摘されています。
モデル評価については「知能の高さ」ではなく「どれだけ多様なタスクを安定してこなせるか」という汎用性で測るべきだという提案がなされ、単一のテスト得点よりも複数タスクの総合性能が信頼できる指標になると論じられています。
一方で、AIエージェント同士の議論では、与えたペルソナによって意見の通りやすさが変化し、属性に応じたバイアスや内集団びいきが一貫して観測されるなど、社会的偏りの再現リスクも明らかになりました。
他者の心を読む能力を高めたLLMでは、論理推論よりも感情処理の活性が強まることが確認され、人間の「心の理解」と同様に感情的文脈が重要な役割を果たす可能性が示唆されています。
さらに、工場の長い作業手順を動画から教師なし学習で解析し、進捗や異常箇所を把握する技術や、LLMと論理プログラミングを組み合わせて税法の矛盾を機械的に洗い出す手法など、現場に直結する応用研究も紹介されています。
総じて、モデルのサイズそのものより、設計や運用の工夫、人間の判断原理や感情の取り込みが、AIを現実社会で「役に立つ形」で活かすうえで決定的になりつつあるという点が強調されています。
クラウド
Azure
2025/11/28 時点で公開された Azure 関連情報のうち、Microsoft Tech Community と Microsoft Developer Blogs から重要な記事を抜粋し紹介するエントリです。 .NET のバックグラウンドタスク設計、Azure PostgreSQL メンテナンス通知の活用、Azure 上での初めての AI ソリューション構築、SAP 連携、GitHub 監査ログの Defender 連携によるセキュリティ強化などが要点としてまとめられています。
セキュリティ
アサヒグループHDは2025年9月のサイバー攻撃について会見し、VPN装置の脆弱性を突かれたとみられる侵入経路を受けてVPN接続を廃止する方針を明らかにした。 攻撃者はデータセンター内の出荷管理などのサーバー群や端末37台のデータを暗号化・窃取し、既知の脆弱性を利用した可能性が高いと説明している。 同社はNIST準拠の診断やホワイトハッカーによる模擬攻撃などを実施していたが、その網をすり抜けられた形となり、日本企業で相次ぐVPN装置経由ランサム被害の一例となった。
認証認可
筆者が認証認可未経験からID基盤構築プロジェクトに参画するまでに辿った学習プロセスと、今学び直すならどう進めるかという「最短ルート」を紹介する記事です。最初はブログ記事でOAuthやOIDCの概要を掴み、Auth屋の同人誌などの書籍で全体像と本質的な背景理解を補い、その後にRFC6749やPKCE・DPoPなど各種仕様を読むことで「仕様が何の課題を解決しているか」を楽しみながら理解できるようになったと述べています。重要なのは全ての仕様を暗記することではなく、情報の取り方や仕様を読むコツと自信を身につけることであり、その結果としてOIDCを「一応知ってます」と言える状態になり、興味の赴くままにパスキーや他の認可仕様なども学び進められるようになるとまとめています。
OS
Linux
本記事は、Linux From Scratch 12.4 を題材に、既存ディストロに依存せずソースコードから Linux システムを構築する流れと、その背景にある仕組みを整理して解説している。LFS 本家は手順中心で分かりづらい箇所があるため、この記事ではビルド/ホスト/ターゲットの用語整理や、「見せかけのクロスコンパイル」が必要な理由、binutils・glibc・GCC を中心としたクロスツールチェーンの循環依存をどう断ち切るか、2回目の binutils/GCC ビルドでホスト依存を排除して chroot 環境へ移行する意味などを図や独自記法で丁寧に説明する。また、LFS と BLFS をまたいだ UEFI ブート設定時の注意点(カーネルバージョン差異や /boot 分割時のパス指定など)にも触れ、単に「手順をなぞる」のではなく、なぜその操作が必要かを理解しながら LFS に取り組むための補助資料として位置付けられている。
Ubuntu 26.04 LTS「resolute」のロードマップが公開され、2026年2月のFeature Freezeから4月23日の正式リリースまで、従来通りのLTSサイクルで開発が進むことが示された。 デスクトップ面ではGNOME 50採用、TotemからShowtime、System MonitorからResourceへの変更、NVIDIA GPU利用時のWayland性能改善や指紋リーダー対応強化などが予定されている。 Snap統合の改善による制約軽減と権限プロンプトの挙動見直し、App Centerへの各種ユーティリティ統合、アクセシビリティ全体の強化、WSLでのUbuntu Pro対応やTPMベースFDE拡張、authdによるクラウド認証拡張なども計画されており、堅実なLTS更新でありつつ将来のUbuntu Core Desktopも見据えた内容となっている。
ハードウェア
PC
老舗メカニカルキーボードメーカーCherryは巨額赤字で資本を毀損し、筆頭株主の支援で延命する深刻な財務危機にある。 ドイツ・アウエルバッハでのスイッチ生産を終了し、中国・スロバキア生産へ全面移管した結果、「Made in Germany」の実体は失われた。経営再建のため、ゲーミングを含む周辺機器部門かデジタルヘルス部門のいずれか一方の売却を検討しており、売却内容次第でCherryはコンシューマブランドから医療向けB2B企業へ軸足を移す可能性が高い。背景にはMX特許切れ後の中国スイッチメーカーの急成長と技術的逆転があり、かつての「Cherry MX=ゴールドスタンダード」は崩れ、市場主導権はアジア勢に移っている。