はじめに
インフォシェア株式会社です。
この度弊社は、**経済産業省の「行政手続PaaS環境の導入実証・調査事業」に参画し、ローコード・ノーコードのツールを用いてアプリとWebのポータルサイトを構成することでDX(デジタルトランスフォーメーション)**を実現するプロジェクトを実施しました。
経済産業省における下記の2つの申請業務が、今回のプロジェクトを通してデジタル化されました。
後援名義申請:
各種イベント等で、経済産業省の後援名義を使用するための申請
オープンイノベーション促進税制申請:
オープンイノベーション促進の基準を満たす企業への出資を行った企業が行う税控除申請
プロジェクト全体の概要に関しては下記の記事をご覧ください。
→①経済産業省が進める、「行政手続きのデジタル化」とは。~ Gビズフォームの展開について~
情報をオープンに公開し行政でのDX推進のきっかけになっていくという本プロジェクトのコンセプトに基づいて。これまで8本の記事でみなさまに参考になる形でプロジェクトを紹介してきました。
Qiitaにおける本プロジェクトについての記事はひとまず今回で最後となります。
テーマは行政DX実現プロジェクト全体から学んだこと。
プロジェクトを円滑に進める
今回のプロジェクトでは、以下の特徴が見られました。
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短い時間で正確なコミュニケーションが出来るよう、本題に入る前の前段階を大切にした。
- 冗長な会議は行わない。その会議で「何を伝えたいのか」を双方がよく考えた上で会議体を持つ。
- 資料は「伝えたいことを明確にする」ために資料を作成する。定型にこだわったり、ただ空白を埋めるための意味のないことを書かない。
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円滑に、かつ対等なコミュニケーションとなるよう、双方が敬意を持って対応した。
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そのためには「ローコード、ノーコードとはなにか?」「なぜこのプラットフォームで合意したのか」の基本的な理解が不可欠。
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製品を変えるのではなく、業務の側を変革することも念頭に置いて決定した。
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互いに「思いや希望」をはばかることなく、自由な空気のもと伝え合った。感情を先行させるのではなく、技術を「共通言語」とし、「すべき、すべきではない論」を展開していった。
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これまでのやり方をただ踏襲するのではなく、必要最低限のところから作り始た。
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行政では、どうしても前例踏襲すべきとなるが、ことアプリケーション開発においては、拡張性、メンテナンス性、コスト、どの面からも前例踏襲はプラスにならないことを互いに理解していた。
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ベンダー側は選定された製品の特徴を十分に理解し、出来ること、できないことを早いタイミングで説明できるだけの知見を持っているのが望ましい。「ローコード、ノーコード製品」なのに、迷いが多くあると、通常開発とさほどスピード感は変わらない。
「そんなことは十分にわかっている!」とお叱りを受けそうですが、端的に表現すると、「お互いプロに徹して仕事を進め」ることが出来たので、短期間で、ある一定の成果を出すことが可能になりました。そこには、相手が「何を求めているか」を十分に汲んで、それを技術でどう表現することが出来るかをベンダー側も意識したことを付け加えさせてください。
プロジェクトの成果と学び
本プロジェクトは令和3年度前半まで続いていきますので、まだ総括するには早いかもしれません。このあとは、経済産業省の省内で他の業務を電子化するための「トレーニング」や「施策」を行っていきます。この先、どのような業務が電子化されていくのか、どのくらいの効果が出せるのか楽しみです!
今回のプロジェクトはアジャイルで、短いイテレーションを複数回実施していきました。
故スティーブ ジョブズ氏が「A lot of times, people don’t know what they want until you show it to them. (人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのか、わからないものだ)」と述べたとおり、短いサイクルで、とにかく ”物” を出しながら、希望に添った成果物を作成していくアジャイル手法は、これまでにはなかった利点が多くあります。
私たちのプロジェクトは、毎週一回の定例会を開催していましたが、毎回の定例会で「画面から」話をすることが出来ました。何ヶ月も時間をおいてから「いや、そうじゃない」では、時間もコストももったいないですよね。
実際に画面がプロトタイプで都度できあがり、ボタンの場所などを目にし、クリックしたときの動作を体験していくと「こうしたい、いや、これは別の方法で・・」といった具体的な会話が出来ます。
では、どんなプロジェクトにもアジャイル的なやり方が向いているのか、最高なのか? と尋ねられれば、それは否だと考えています。
すんなりアジャイルに出来たのは、今回のプロジェクトで利用する「サービス基盤」「技術」を明確にしていたから。それらの「特徴」を理解した上で、プロジェクトに入っていったからです。
ローコード、ノーコードは、諸刃の剣で、いざ「コードを書いて開発しなければならない」状態になったときに、コードがかけません。
つまり、実現する方法がなくなります。
そのため、**「そもそも出来ないようなことをやらない!」**これが非常に重要。
プロジェクトに向いている製品の選定、やることの選定、プロジェクトの進め方、これらいくつかの条件が綺麗にそろうと、コストパフォーマンスの高い、かつ、ストレスのない進行が実現できますね。改めての私たちの学びです!
今後について
前述の通り、「出来ないことはあきらめる、または別の方法を検討する」ことが重要です。が、しかし、常に「あきらめられる」わけでも、なかったことに出来るわけでもありません。
今回、多くのユーザーに利用していただくプラットフォームとしてPower Apps、Power Appsポータルを採用しましたが、ネガティブな要素がいくつかあり、その中にはどうしても解決が難しい物もありました。
(※この件に関しては、裏話的な技術記事を追加する予定です)
今後は、稼働が本格化していくため、継続的にアップデートをかけていく予定です。
クラウド技術の素晴らしいところ、特にSaaSに関しては、提供メーカー側が継続的にアップデートを実現し、これまでになかった新しい機能を追加していきます。せっかくクラウド製品を選択したのですから、今後予定されているアップデートや新機能も継続的に取り込みながら、カイゼンを加えていきます。
大きなところでは、省内で決済を得るためのワークフローで、どうしても「印刷物」が必要になりますが、Power Appsでは印刷にまつわる直接的な機能は準備されていません。しかし、2021年度には提供が予定されていますので、機能が提供されたら、実際に利用できるよう少しの変更を加えていく予定です。
総括:行政のDXはいかに行うべきか
DX全体についていえることですが、良い「先導」がいると、プロジェクトは明らかに良い方向に進めることが出来ます。
行政官は、IT系の知識が無い?
そうかもしれません。
ただ、今回の経済産業省の取り組みで私たちも初めて知ったのですが、全国規模の「行政官」たちが情報交換をおこなう行政官コミュニティーがあります!
そのコミュニティーでは、行政官も民間企業に勤務する技術者も参加して活発な意見交換が行われています。
このQiitaの記事を読んでくださっている皆様がそうであるように、少し情報収集の幅を広げてみたり、先人の知恵や経験を活用することにより、思っている以上に、上手なDX化を推進することが出来るかもしれません。
この一連の記事が、そのきっかけや気づきになれば幸いです。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました!
今後も、プロジェクトから学びがありましたら、共有をさせていただきたいと思います。
それでは!