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Fortranの面倒なことはユーザスニペットにやらせよう

Last updated at Posted at 2019-11-30

概要

VSCodeのユーザースニペットの機能を利用して,Fortranの変数宣言等を簡略化しました.

使用環境

  • Visual Studio Code 1.40.1
  • Modern Fortran Extension 2.1.1

VSCodeのユーザースニペット

VSCodeには,コードの断片とそれに対応する記述子を登録しておき,記述子を入力するだけで対応するコード断片を呼び出すことができます.
VSCodeでは,VSCodeが認識しているファイル形式ごとに,ユーザースニペットの設定を記述します.まずは,Fortranのソースファイルを認識させるために,Modern Fortran拡張をインストールしておきましょう.

VSCodeのメニューバーから,ファイル→基本設定→ユーザースニペットと辿ると,VSCodeが認識しているファイル形式の一覧が出てきます.

その中から,FortranFreeFormを選択すると,FortranFreeForm.jsonが作られます.

FortranFreeForm.json
{
	// Place your snippets for FortranFreeForm here. Each snippet is defined under a snippet name and has a prefix, body and
	// description. The prefix is what is used to trigger the snippet and the body will be expanded and inserted. Possible variables are:
	// $1, $2 for tab stops, $0 for the final cursor position, and ${1:label}, ${2:another} for placeholders. Placeholders with the
	// same ids are connected.
	// Example:
	// "Print to console": {
	// 	"prefix": "log",
	// 	"body": [
	// 		"console.log('$1');",
	// 		"$2"
	// 	],
	// 	"description": "Log output to console"
	// }
}

FortranFreeForm.json(というか新規のユーザースニペットファイル)にはコメントが書かれており,それによると,記述するのは以下の4項目です.

  • スニペットの識別名
  • 記述子
  • 変換されるコード断片
  • スニペットの説明文

識別名は,他のスニペットと重複していなければよいだけなので,識別名はスニペットの説明文と同じとしておくと楽でしょう.

Fortranで登録しておいた方がよいスニペット

Fortranは,配列の取扱いが柔軟であるため,プログラムの実行部分は比較的楽に記述できます.
一方で,型宣言などの宣言部は,非常に長々と書く必要があり,肝心の数値計算のアルゴリズムを記述する前に疲れてしまいます.

手続きの名前と仮引数を書いた後,絶対に欠かすことのできないimplicit noneを書き,仮引数の型宣言を書きます.Fortranは,属性を付与することで変数の特徴(静的変数である,動的割付である,手続き内で読込専用である,など)を指定します.また,Fortranの型名にも,安全でない方言(real*4, real(4)など)が蔓延しています.Fortran2008からは標準で型名が定められましたが,それがreal(real32)と長く,さらにreal32というパラメータを使うにはiso_fortran_envモジュールをuseする必要があるなど,雪だるま式に記述量が増えていきます.

これらのような,言ってしまえば数値計算の本質に関わらない所は,スニペットに登録して簡略化してしまいましょう.
以下のような項目を登録しておくと便利です.

  1. implicit none
  2. Fortranの組み込みモジュールのuse
  3. 型宣言
  4. 名前付きの構文

implicit none

implicit noneは,FortranをFortranたらしめている,最も重要な記述です.本来は標準でimplicit noneが有効になっているべきですが,FORTRANとの後方互換維持のために,そうはなっていません.そのため,数ストロークで入力できるように,スニペットとして登録しておきます.

	"Disable implicit typing": {
		"prefix": "imp",
		"body": [
			"implicit none"
		],
		"description": "Disable implicit typing"
	}

Fortranの組み込みモジュールのuse

Fortranでは,モジュールをuseする際,組み込みのモジュールに対しては,intrinsicを付けることで,ユーザ定義のモジュールと区別をしています.また,モジュール名もiso_c_bindingieee_arithmetic等,それほど長くはないですが,打ちにくい名前になっています.
これらもスニペットに登録することで,入力の簡略化が測れます.useあるいはus+1文字くらいが適切でしょう.

	"Using iso_fortran_env module": {
		"prefix": "usf",
		"body": [
			"use,intrinsic :: iso_fortran_env"
		],
		"description": "Using iso_fortran_env module"
	},
	"Using iso_c_binding module": {
		"prefix": "usc",
		"body": [
			"use,intrinsic :: iso_c_binding"
		],
		"description": "Using iso_c_binding module"
	}

型宣言

integer(int32)real(real32)等は,個別にスニペットに登録しておくと,入力効率が劇的に改善します.
i4r4などとして登録しておき,allocatable属性付きの宣言は,記述子にaを足す,などと独自のルールを決めるとよいでしょう.

	"Declaration of binary32": {
		"prefix": "r4",
		"body": [
			"real(real32)"
		],
		"description": "Declaration of binary32"
	},
	"Declaration of binary64": {
		"prefix": "r8",
		"body": [
			"real(real64)"
		],
		"description": "Declaration of binary64"
	},
	"Declaration of 4-bytes-integer": {
		"prefix": "i4",
		"body": [
			"integer(int32)"
		],
		"description": "Declaration of 4-bytes-integer"
	}

名前付きの構文

Fortranでは,do構文やif構文,block構文などに名前を付けることができます.Fortran拡張をインストールすると,各構文に対するスニペットが利用できるようになりますが,名前付きの構文に関しては用意されていません.特に名前付きblock構文に関しては,スニペットを用意して簡単に利用できるようにすることで,コードの可読性が劇的に向上します.

このとき,$から始まる特殊な記述を用いると,簡単に記述できます.$1,$2,...をコード断片に記述しておくと,記述子がコード断片に変換された後,$1が書かれた場所にカーソルキーが移動します.tabキーで$2, $3...と移動していきます.$0は最後にカーソルが来ます.
ラベル付きの記述(${1:ラベル})も可能です.

	"named do constructor": {
		"prefix": "ndo",
		"body": [
			"${1:name} : do $2 = $3, $4",
			"    $0",
			"end do ${1:name}"
		],
		"description": "named do constructor"
	},
	"named block constructor": {
		"prefix": "nblock",
		"body": [
			"${1:blockname} : block",
			"    $2",
			"end block ${1:blockname}"
		],
		"description": "named block constructor"
	}

ユーザスニペットを使った効果

ユーザスニペットを設定したことで,記述がどれくらい簡略化できるか,簡単なプログラムで確認してみます.

ユーザスニペット設定前

ユーザスニペットを設定する前は,Modern Fortran拡張によって,programdoの入力を簡略化できています.しかし,intrinsicが入力候補に出てこなかったり,real64のように,入力候補に出てはくるが,結局残り1文字まで入力しなければならないなど,今一な感じがします.また,名前付きdo構文には対応していません.

ユーザスニペット設定後

ユーザスニペット設定後は,useの記述,型名,名前付きdo構文が簡単に入力できていることが確認できます.

まとめ

FortranはOS以前に誕生したプログラミング言語の後継であり,モダンな言語と比較して,後方互換のために様々な制約があります.そういった面倒くさいところは,ツールを使って解決しましょう.

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