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【2026年10月】Gemini 4 Argonがリリース!出力1Mトークンのlong decode・導入価格$2/$10・移行で外す設定まとめ

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はじめに

2026年10月13日、Google が Gemini 4 Argon(モデルID gemini-4-argon)を公開しました。9月30日に先行発表があり、このときは Fairwind Program を通じて、信頼できるサイバー防御の担当者だけが使えました。10月13日からは Gemini API の有料枠(Google AI Studio、Android Studio)で使えるようになり、Gemini アプリと Search の AI Mode は Google AI Pro / Ultra の加入者向けに始まっています。Google AI Ultra の加入者は、AI Studio と Google Antigravity でも試せます。Google Cloud では翌14日に提供が始まりました。

Google はこのモデルを、複雑なソフトウェア開発、法務や金融の業務、サイバー防御、長い多段階のタスク向けのフロンティアモデルと位置づけています。要点は4つです。

  • 価格は入力 $2 / 出力 $10 per 1M tokens の導入価格で、2026年11月30日まで。12月1日から $4 / $20 の倍額になる
  • 入力・思考・出力が 1,048,576 トークンのウィンドウを共有する。通常の1回の出力は最大 65,536 トークンで、long decode を使うと1リクエストで最大 1,048,576 トークンまで生成できる
  • Google がモデルカードに載せた19項目のベンチマークのうち、14項目で最高値(同値を含む)。ただし Terminal-bench 4.0 などは Claude Opus 5.5 や GPT-6 Astra のほうが上
  • Gemini 3 系から移すときは、temperature 系パラメータが無視され、明示的キャッシュが使えず、thinking_level: "minimal" もない。64K を超える出力は background 実行が前提になる

Gemini 3 系を API で使っているチーム向けに、移行で引っかかりそうな箇所を中心にまとめます。数値と仕様は、2026年10月15日時点の Google の公式ドキュメントに基づいています。


モデルスペック

項目 Gemini 4 Argon
モデルID gemini-4-argon(Stable のみ)
先行発表 2026年9月30日(Fairwind Program 経由で信頼できるサイバー防御者向け)
一般提供 2026年10月13日
入力 テキスト・画像・動画・音声・PDF
出力 テキストのみ
コンテキストウィンドウ 1,048,576 tokens(入力・思考・出力で共有)
最大出力(通常) 65,536 tokens
最大出力(long decode) 1,048,576 tokens(入力を引いた残りまで)
知識カットオフ 2026年3月(モデルカードの記述は「Gemini 4」の知識カットオフ。分野によっては情報が古い可能性があるとも書かれている)
thinking low / medium / high。デフォルトは medium
アーキテクチャ 大規模でスパースな Mixture-of-Experts(モデルカード)
提供チャネル Gemini API(有料枠)、Google AI Studio、Android Studio、Gemini アプリ(Google AI Pro / Ultra)、Search の AI Mode、Google Antigravity(Google AI Ultra 加入者)、Google Cloud
利用オプション Batch API / Flex / Priority

機能の対応状況

Gemini API のモデルページにある一覧です。

機能 状況
Function calling / Structured outputs 対応
Search grounding / Grounding with Google Maps / URL context / File search 対応
Code execution 対応
Agentic video understanding 対応(デフォルトは static。移行ガイドでは一般提供と記載)
Computer use 対応(Preview)
Caching 暗黙的キャッシュのみ対応。明示的キャッシュは非対応
Live API / Image generation / Audio generation 非対応

価格

Gemini API の料金ページの内容です。単位は 1M tokens あたりの USD で、出力は思考トークンを含みます。

Tier 項目 〜2026/11/30 2026/12/1〜
Standard 入力 $2.00 $4.00
出力 $10.00 $20.00
キャッシュ入力 $0.10 $0.20
Batch / Flex 入力 $1.00 $2.00
出力 $5.00 $10.00
キャッシュ入力 $0.05 $0.10
Priority 入力 $3.60 $7.20
出力 $18.00 $36.00
キャッシュ入力 $0.18 $0.36
  • Free tier は対象外(料金ページでは Not available)。料金ページには Google AI Pro プランも対象外という注記がありますが、Gemini アプリでは Pro 加入者にも提供されています。API の話とアプリの話で対象が違うのだと思いますが、公式には説明がありません
  • Grounding with Google Search / Google Maps は、Standard と Priority で月5,000リクエストまで無料(Gemini 3 以降のモデルで共有)。超えた分は $14 / 1,000 です
  • 招待制のプライベートプレビュー Contributor tier も料金ページにあり、価格は Batch / Flex と同じです。ただし入力データが製品改善に使われます
  • 暗黙的キャッシュは、4,096 トークン以上のプロンプトでデフォルトで有効です。ヒットした入力は 95% 引きになります

12月1日の切り替えは単純に倍です。たとえば入力 100万トークン・出力 10万トークンのリクエストは、導入価格なら $2 + $1 = $3、12月以降なら $4 + $2 = $6 になります。本番の見積もりは12月以降の単価で組んでおくほうが安全です。


主要な新機能・変更点

1. 入出力で1Mを共有する構造と long decode

Gemini 4 Argon は、入力・思考・出力が 1,048,576 トークンのウィンドウを1つ共有します。入力と max_output_tokens の合計がウィンドウを超えると、出力の上限は残りの容量まで自動で切り詰められます。

1回の出力は、通常は最大 65,536 トークンです。それを超えて書かせるのが long decode で、モデルIDを変えただけでは有効になりません。仕組みは API によって違います。

Interactions API(background 実行)

background: true と store: true を付け、max_output_tokens を 65,536 より大きくします。サーバーが最大 64K トークン単位の「ホップ」を繰り返し、各ホップが model_output ステップとして追加されます。全文は、そのテキストを結合して得ます。公式ページの例(コード例は Apache 2.0 ライセンス)を、プロンプトとコメントだけ日本語にしたものが次のコードです。

import time
from google import genai

client = genai.Client()

# background=True と、65,536 を超える max_output_tokens が long decode の条件
interaction = client.interactions.create(
    model="gemini-4-argon",
    input="素数定理の厳密な証明を、省略せずに書いてください。",
    background=True,
    generation_config={"max_output_tokens": 262144, "thinking_level": "high"},
)

# 完了するまでポーリングする
while interaction.status in ("in_progress", "queued"):
    time.sleep(5)
    interaction = client.interactions.get(id=interaction.id)

# 各ホップの model_output を結合して全文にする
text = "".join(
    c.text
    for step in interaction.steps if step.type == "model_output"
    for c in step.content if c.type == "text"
)
print(text)
print("Status:", interaction.status)
print("Usage:", interaction.usage)
  • 実行時間は最大24時間。超えると failed になる
  • max_output_tokens を使い切ると incomplete で終わる。モデルがまだ思考中だった場合は、本文が空のことがある。上限を上げるか thinking_level を下げるのが対処として考えられる
  • ストリーミングするなら stream: true にして、interaction.created のID と各イベントの event_id を保存しておく。切れたら last_event_id を付けて interactions.get で再接続する
  • background: false で 65,536 を超える値を指定すると 400 になる

generateContent

上限に達してまだ続きがあるとき、finish_reason: CONTINUATION と continuation_token が返ります。最新の SDK では automatic_continuation がデフォルトで有効で、SDK がホップを自動でつないで1つの応答にします(Python は google-genai 2.30.1 以上、JavaScript は @google/genai 2.29.1 以上)。自分でループを書くときは、元の contents・system_instruction・tools・generation_config を毎回同じに送り、最新の token だけを付けます。途中の出力を contents に足してはいけません。

共通の注意

  • max_output_tokens は思考と出力の合計です。8,192 のような小さい値だと思考の途中で止まります
  • 課金は全ホップ分です。思考だけで終わったホップも含みます。繰り返し送られる入力は暗黙的キャッシュで 95% 引きです
  • usage の入力トークン数は各ホップの合計なので、実際のコンテキストサイズより大きく出ます。コンテキストの圧縮などの判断に使わず、プロンプトのサイズと出力・思考のトークンを足して見積もります
  • OpenAI 互換のエンドポイントでは使えません

公式ページには、long decode を使うべきかを判断する表があります。次の用途は「使わない」側に分類されています。

用途 公式の理由
チャット、Q&A、要約、分類、抽出 32K トークンよりずっと手前で終わる
「70万語の本を書いて」のような長さの指定 モデルは長さの目標に従わない
短いターンを多数繰り返すエージェント ターンごとの大きな出力で、共有ウィンドウがすぐ埋まる
入力が上限近いプロンプト 出力に使えるのは 1,048,576 から入力を引いた分だけ
レイテンシが大事なリクエスト 数分かかることがある

2. thinking_level は3段階

low / medium / high で、デフォルトは medium です。公式の使い分けは次のとおりです。

  • low: 単純なタスクと、コストを重視する処理。軽い思考で足りる分析や文章作成にも使える
  • medium: 複雑なコードやエージェント用途を含む、ほとんどのタスク
  • high: 複雑な推論、難しい数学・科学、最も難しいコードやエージェントのタスク。長い出力では long decode と相性がいいとも案内されている

そのうえで公式は、3段階すべてで評価して、品質の基準を満たす最も低いレベルを選ぶよう勧めています。

# 公式ページの例(Apache 2.0)のモデル名を gemini-4-argon に置き換えたもの
curl -X POST "https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/interactions" \
  -H "x-goog-api-key: $GEMINI_API_KEY" \
  -H 'Content-Type: application/json' \
  -d '{
    "model": "gemini-4-argon",
    "input": "有名な物理学者を3人挙げて、それぞれの主な業績を教えて",
    "generation_config": {
      "thinking_level": "low"
    }
  }'

thinking_level: "minimal" は Gemini 4 Argon にありません(Gemini 3.6 Flash などにはあります)。thinking_level と thinking_budget は、同時に指定しないよう long decode のページに注意書きがあります。

思考の要約が必要なら generation_config で "thinking_summaries": "auto" を指定します。デフォルトでは最終出力しか返りません。要約は空のことがあるので、summary が空や欠落でも動くように書きます。

3. 会話の状態はサーバー側で持つのが基本

マルチターンや function calling の状態は、store: true と previous_interaction_id でサーバーに持たせる前提になっています。公式ドキュメントのタイトルを見ると、generateContent 側のページには「Legacy」と付いています。

ステートレスで自前管理するなら、受け取った thought ブロックを変更せずに毎回そのまま送り返す必要があります。Google Search など組み込みツールの結果に付く署名も同じです。履歴を圧縮したり間引いたりしている自作ハーネスは、ここで引っかかりやすいと思います。ステートフルなら署名はサーバーが管理します。

4. エージェント系

  • Agentic video understanding が一般提供になりました
  • Managed Agents の Antigravity agent が Gemini 4 Argon に対応しました。公式のコード例では、agent に antigravity-preview-09-2026 を指定しています
  • Computer use は Preview です

5. Gemini アプリと Antigravity

Google のブログによると、Gemini アプリでは次のことができるようになりました。

  • チャット画面のトグルを「タスク」にすると、パソコンの前にいない間もタスクを進められる
  • 40以上のアプリ(Instacart、OpenTable、Adobe、Shopify など)と連携できる
  • macOS 版アプリから、Google Antigravity のエージェント型コーディング画面に切り替えられる

Antigravity は /goal などのスラッシュコマンドと、カスタムスキルを使ったマルチエージェントのループに対応しました。Google は社内の数値として、Antigravity を使うチームでエージェントによるコード提出が35%以上増え、ロールバックがほぼ3分の1減ったと説明しています。第三者による検証ではありません。

6. サイバー対策と Fairwind Program

Google Cloud のブログによると、Gemini 4 Argon にはサイバー対策が入っていて、ペネトレーションテストや悪用(エクスプロイト)のような攻撃的なタスクはブロックされます。防御側の能力は、CodeMender で脆弱性を見つけて直す使い方や、自社のセキュリティハーネスとの組み合わせで引き続き使えるとのことです。

サイバー対策を外した Argon は、9月30日の発表では「信頼できる防御者と Google の社内チーム」向けとされていました。Fairwind Program はその受け皿で、Google Cloud のブログは、政府、重要インフラ、サイバーセキュリティのパートナーに向けた限定アクセスの取り組みと説明しています。10月13日の発表では、数百社のパートナーを追加する拡大を始めたとあり、申し込みは随時(rolling basis)受け付けています。

安全性の評価は、モデルカードの Frontier Safety Framework の項にあります。サイバーセキュリティと生物分野は、重要能力レベル(CCL)に達している可能性を排除できないという判定です。Google はそのうえで安全性ケースを作り、安全対策(safeguards)を適用した状態のリスクは CCL を下回ると評価しました。モデル自体が CCL 未満と断定されているわけではありません。制御喪失のうちステルスと状況認識の項目は、15問の課題に14問合格し、残留リスクの評価で TCL を下回るとしています。

プロンプトインジェクションは、Gray Swan の間接プロンプトインジェクションのベンチマークで首位で、15回の適応的攻撃での攻撃成功率は 0.7% だそうです。ツールを持たせる運用では気になる数字ですが、自分のシステムで同じ値になる保証はないので、入力の検証や権限の絞り込みは別に必要です。

既知の制限として、モデルカードはハルシネーションが起こりうること、応答の遅延やタイムアウトがときどき出ること、知識カットオフが2026年3月で分野によっては情報が古いことを挙げています。


ベンチマーク

モデルカードに載っている、Google が公表した評価です。比較対象は GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、Claude Opus 5.5 で、太字は各行の最高値、「—」はモデルカードに数値がない項目です。

カテゴリ ベンチマーク Argon GPT-6 Astra Fable 5.1 Opus 5.5
ナレッジワーク Vals Index 68.9% 63.1% 65.8% 67.0%
AutomationBench 51.3% 41.4% 31.4% 42.5%
Vals Finance Agent v2 65.4% 53.5% 58.9% 58.6%
Harvey Legal Agent Benchmark 19.6% 5.4% 6.7% 3.8%
エージェント型コーディング DeepSWE v1.1 77.9% 74.1% 67.4% 74.2%
FrontierSWE v2 55.0% 65.5% 56.3% 62.3%
Vibe Code Bench 91.9% 89.6% 90.3% 90.3%
Terminal-bench 4.0 57.4% 58.2% 57.9% 66.4%
MLエンジニアリング PostTrainBench 45.3% 44.3% 40.2% 49.3%
科学・数学 Terminal-Bench Science 0.1 57.6% 68.1% 52.6% 63.3%
LABBench 2 88.8% 85.4% 68.6% 73.1%
RiemannBench 76.0% 72.0% 65.6% 69.6%
長文脈 GraphWalks(128k以下、BFS F1) 99.7% 98.7% 91.4% 90.6%
GraphWalks(256k〜1M、BFS F1) 84.2% 71.8% 65.0% 66.8%
コンピュータ操作 Agent's Last Exam(合格率) 39.5% 34.2% — 38.2%
OSWorld-2.0(オフラインサブセット、部分点) 69.2% 72.6% — —
マルチモーダル理解 Chartography 71.6% 71.0% 46.2% 66.3%
LVBench 91.7% 87.5% 79.7% 83.7%
サイバーセキュリティ CWE-bench v1 68.0% 68.0% 58.0% 67.0%

19項目のうち、Argon が最高値(同値を含む)なのは14項目です。上回られているのは次の5項目です。

  • FrontierSWE v2、Terminal-Bench Science 0.1、OSWorld-2.0: GPT-6 Astra が上
  • Terminal-bench 4.0、PostTrainBench: Claude Opus 5.5 が上

Argon が強く出ているのは、ナレッジワーク系、長文脈、マルチモーダルです。特に GraphWalks の 256k〜1M は 84.2% に対して次点が 71.8% と、差が大きい項目です。逆に、ターミナルを操作し続ける系の評価(Terminal-bench 4.0)では、Opus 5.5 に約9ポイント離されています。

評価条件

Google が公開している評価資料(Model evaluation の PDF)に、評価の方法が載っています。表を読む前提になる点を挙げます。

  • Argon のスコアは、特に断りがなければ pass@1 です。資料の「Single attempt」の設定では、多数決も並列のテスト時計算も使いません。結果は Gemini API の最高の thinking 設定で出していて、小さいベンチマークは複数回の平均を取っています
  • Argon 以外のモデルの数値は、特に断りがなければ各社の自己申告値です。GPT-6 Astra、Fable 5.1、Opus 5.5 は、最大の thinking(推論)設定の結果を載せ、ない場合は入手できる最良の結果を使ったとのことです
  • 出所は項目ごとに違います。
    • Vals Index、Vals Finance Agent v2、Harvey Legal Agent Benchmark は Vals AI から。AutomationBench は Zapier の公式の公開リーダーボード(非公開セットの結果)から
    • DeepSWE v1.1、Terminal-bench 4.0、Terminal-Bench Science 0.1 の Argon は Google の自前計算で、他のモデルは公開リーダーボード(DeepSWE の Fable 5.1 と Opus 5.5 はシステムカード)の値。Terminal-Bench Science 0.1 の Argon は、検証のタイムアウトを6倍にして計算している
    • PostTrainBench v1.1、LABBench2、GraphWalks、LVBench は、Google が自前で計算した値。PostTrainBench は OpenCode ハーネスで、H100 を1枚、10時間の予算で動かしている
    • FrontierSWE、Vibe Code Bench、RiemannBench、Chartography、CWE-bench v1 は公開リーダーボードの値
    • Agent's Last Exam と OSWorld 2.0 の Argon は自前計算。GPT-6 Astra と Opus 5.5 の Agent's Last Exam は公開リーダーボード、OSWorld 2.0 の GPT-6 Astra は公式ブログの値
  • 表の「—」の理由も資料にあります。Agent's Last Exam の Fable 5.1 は公開リーダーボードにないため載せていません。OSWorld 2.0 は、Anthropic が online と offline を合算した結果しか出していないため、Anthropic のモデルの値を載せていません
  • OSWorld 2.0 の Argon は、1回の試行を3回実行した最大値です
  • LVBench は動画のフレーム数が揃っていません。Gemini は 1 FPS、GPT-6 Astra は 800 フレーム、Fable 5.1 は 300 フレーム、Opus 5.5 は 600 フレームです。資料はこの差を API の制約によるものとしています
  • 資料の対象は2026年9月時点のベンチマークで、結果は2026年10月時点のものです

条件が揃っていない比較なので、順位の差を額面どおりには受け取れません。とくに Terminal-bench 4.0 は、Argon だけが自前計算で、他のモデルは公開リーダーボードの値です。

数字を読むときの注意

  • Harvey Legal Agent Benchmark は、Argon が 19.6% で首位ですが、次点でも 6.7% です。絶対値で見ると、まだ難しいベンチマークだとわかります
  • 発表記事には、Gamow Labs の非公開評価(RareBench 57%、LabBench 52.2%)や、ERQA 87% といった数字もあります。非公開の評価は、他の人が再現できません
  • 評価資料のグラフ(結果の図)は画像で、本文から数値を読み取れませんでした。この記事の数値はモデルカードの表に載っているものです

自分の用途で選ぶなら、公開ベンチマークの順位より、手元のタスクで low / medium / high を振って試した結果のほうが当てになります。


API移行時の注意点

Gemini 3 系から移すときの確認項目です。公式の「What's new in Gemini 4 Argon」にある移行チェックリストを元に、他のページの記述を足しています。

1. max_output_tokens を見直す

デフォルトと上限は 65,536 です。公式の目安は次のとおりです。

用途 目安
通常のタスク 65,536(デフォルト)か、未指定
既存アプリで 32K 未満を指定していた 少なくとも 32,768 に上げる
複雑な推論・コーディング 131,072 か 262,144(background: true と組み合わせる。入力を引いた残りが 1,048,576 まで)

公式は、Gemini 4 Argon が上限の多くを思考に使うことがあるため、明示的に指定しているなら少なくとも 32,768 を勧めています。max_output_tokens は思考も含む上限なので、小さいままだと、思考で使い切って回答が途切れます。

2. temperature / top_p / top_k を外す

公式のチェックリストの指示は「リクエストから削除する。指定しても無視される」です。無視されるので、設定したつもりで効いていない状態になりやすいところです。値を変えて出力のばらつきを調整していたコードは、thinking_level とプロンプトの側で調整する形に変えます。

3. 明示的キャッシュを削除する

cachedContents / caches.create は使えません。暗黙的キャッシュは 4,096 トークン以上のプロンプトでデフォルトで有効になり、ヒットした入力は 95% 引きになります。プロンプトの並び方など、キャッシュを効かせるコツは、確認した範囲の公式ドキュメントに記載がありませんでした。

4. thinking_level を選び直す

minimal は使えません。3段階すべてで評価して、基準を満たす最も低いレベルを選びます。thinking_budget を使っていたコードは、thinking_level を指定するときに併記しないようにします。

5. 64K を超える出力は background 実行にする

先述の long decode です。background: false のまま 65,536 を超える値を指定すると 400 になります。

6. HTTPクライアントのタイムアウトを延ばす

推奨値はページごとに書き方が違います。

  • 移行チェックリスト: HTTP クライアントのタイムアウトを少なくとも15分に設定する(難しいプロンプトは数分かかることがあるので、background 実行を使うか、タイムアウトを延ばす)
  • Interactions API の long decode: ストリームごとに HTTP の読み取りタイムアウトを15〜20分に設定する
  • generateContent の long decode: HTTP の読み取りタイムアウトを20分に設定する。非ストリーミング呼び出しでは、サーバーが10分で接続を閉じる

generateContent の非ストリーミングで長い処理を待つ使い方は、10分で切られる前提になります。長くかかる処理は background 実行かストリーミングで受けて、クライアントのタイムアウトは20分まで見ておくのが無難だと考えています(これは公式の記述ではなく、筆者の判断です)。

7. 会話の状態を previous_interaction_id で持つ

マルチターンと function calling の状態をサーバー側で保持する形が、公式の推奨です。ステートレスで運用するなら、前述の thought ブロックの再送を忘れないようにします。

8. 対応していない機能を確認する

  • Live API、画像生成、音声生成は非対応
  • Free tier では使えない
  • long decode は OpenAI 互換エンドポイントで使えない

9. 料金の切り替えを見積もりに入れる

2026年12月1日から、Standard で入力 $4 / 出力 $20 になります。long decode は全ホップの入力が課金されるので、長い出力を何度も走らせる使い方では、キャッシュのヒット率が請求額を左右します。


まとめ

Gemini 4 Argon は、入力・思考・出力を1つの大きなウィンドウで扱い、long decode で長い出力も出せるモデルです。導入価格は12月から倍になります。Google の評価では、ナレッジワーク、長文脈、マルチモーダルの項目が強く、ターミナル操作を長く続ける評価では他社が上でした。

Gemini 3 系から移すなら、次の順で確認すると漏れにくいと思います。

  1. temperature / top_p / top_k を外す。値を変えて調整していた箇所は、thinking_level とプロンプトで調整する形にする
  2. 明示的キャッシュ(cachedContents)を外す。暗黙的キャッシュは 4,096 トークン以上のプロンプトでデフォルトで効く
  3. thinking_level を low / medium / high で評価し直す。minimal は使えない
  4. max_output_tokens を見直す。思考込みの上限であることに注意する
  5. 64K を超える出力が要るなら、background: true と store: true で long decode を使う。全ホップ分の課金と、15分以上のタイムアウトを見込む
  6. 会話の状態を previous_interaction_id で持つ。自前管理なら thought ブロックを変更せずに返す
  7. 12月1日以降の価格(Standard で $4 / $20)で、コストを見積もり直す
  8. 自分のタスクで、現在使っているモデルと Argon を並べて測る

長い文書の分析、複数ファイルにまたがる変更、法務や金融のような文書中心の業務は、Google が得意な領域として挙げているので、試してみる価値はあります。ターミナルを長く操作するエージェントは、手元のタスクで Opus 5.5 などと比べてから決めるのがよさそうです。


参考リンク

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