iOSとAndroidのプロセスとバックグラウンドタスク
こんにちは。iOSとAndroidのプロセスやバックグラウンドタスクの違いを解説します。
① プロセス管理の基本
iOSの場合
- 1アプリ=1プロセスが原則。
- アプリがバックグラウンドに入った後、一定の短い猶予期間（通常約5秒）後には自動的にSuspend（中断）状態になります。また、メモリ圧迫時には即座にプロセスがTerminate（終了）されます。
- プロセスはlaunchdという仕組みで管理されます。
launchdとは
launchdはAppleが開発したプロセス管理用デーモンで、macOSやiOSで使われています。起動時から常駐し、システム全体のプロセスの起動、監視、管理を担当します。launchdがプロセスのライフサイクルを統一的に管理することで、プロセスの起動や再起動を迅速かつ効率的に行うことが可能です。アプリがクラッシュした場合やシステムリソースが限界に達した場合には、launchdがプロセスを適切に終了させ、システム全体の安定性を維持します。
Androidの場合
- Linuxベースのため、アプリはZygoteプロセスからforkされ、複数プロセス化も可能。
- メモリ圧迫時には優先度（OOM adj）が低い順にkillされます。
- 状態管理はForeground、Visible、Service、Cachedなど細分化されています。
② バックグラウンド実行モデル
iOSのバックグラウンドタスク
- BGAppRefreshTask: 数十秒で完了するタスク（例: ニュースの取得）。
- BGProcessingTask: 長時間処理（数分以上）に対応。充電中でWi-Fi接続が基本（例: DBのメンテナンス、機械学習処理）。
- Push通知（content-available）: 30秒程度の短いバックグラウンド処理。
- Background URLSession: 大容量データのバックグラウンド転送。
Androidのバックグラウンドタスク
- Foreground Service: 通知が必須で、長時間実行可能（例: 音楽再生、フィットネスアプリ）。
- WorkManager: 一定の条件（充電中、アイドル状態など）での定期的処理（例: 定期的なデータ同期）。
- JobScheduler: OSが最適なタイミングで実行を管理するジョブ。
- AlarmManager: 正確な時刻での実行が必要なタスク（例: アラーム、リマインダー通知）。
③ 生存時間とOSの介入条件
iOSの生存時間
- バックグラウンド移行後、約5秒間の猶予期間の後にSuspendされる。
- メモリが不足すると即座にSuspend状態のプロセスがTerminateされる。
Androidの生存時間
- Foreground Service以外は基本的に数分以内にkillされることが多い。
- バッテリー節約モード（Doze）になると、ネットワークやWake Lockが制限され、バックグラウンド処理は大きく制限される。
④ ユースケース別の推奨実装
音楽再生
- iOS推奨: BG Audio (
AVAudioSession) - Android推奨: Foreground Service (MediaPlayback)
定期的なデータ同期
- iOS推奨: BGAppRefreshTask
- Android推奨: WorkManager
長時間の計算処理
- iOS推奨: BGProcessingTask
- Android推奨: WorkManagerまたはForeground Service
正確な時間通知
- iOS推奨: Push通知またはCalendar通知
- Android推奨: AlarmManager
ファイルアップロード
- iOS推奨: Background URLSession
- Android推奨: WorkManager（setExpedited推奨）
⑤ クロスプラットフォーム設計のコツ
-
再試行可能なサーバ設計
- OSがいつタスクを実行するか予測不可能なため、冪等性と再試行トークンを必ず実装する。
-
ユーザ可視性
- Androidは通知表示が必要で制限が多く、iOSは通知不要だが制限時間が短いことを考慮。
-
バッテリー効率の実測
- 各OSの公式ツール（iOS: energy log、Android: Battery Historian）でバッテリー消費を確認。
-
SDK抽象化層の導入
- FlutterやReact Nativeなどのクロスプラットフォームの場合、プラットフォーム固有APIはネイティブ層でラップし、安定化を図る。
🔑 まとめ：押さえておきたいポイント
- プロセス管理: iOSは即時Suspend、Androidは優先度管理で段階的kill。
- バックグラウンド処理: 長期タスクは両OSとも特定条件下のみ。短期的な処理が基本。
- APIの正しい選定がアプリ品質を左右するため、ユースケースに応じたベストプラクティスを守る。
これを押さえるだけで、モバイルアプリ開発でありがちなトラブル（突然killされる、動作が不安定など）を回避できます。ぜひプロジェクトで活用してみてください！