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JavaScriptで関数型言語を作ろう(3)

Last updated at Posted at 2021-02-20

前記事では、

3.add(2).add(10)

という式を解析し、式をオブジェクトで表現する「構文解析」について見てきました。

ところで、いまさらですが、普通「式」といったら、

3+2+10

と書くのが一般的なのに、なんで一般的でない書き方をしているのか、というと、

  • 作るのが(&解説するのが)面倒
  • この式の解析の仕方は他の方も解説されている

という身も蓋もない理由です。

一般的な「式」の解析方法については、上の検索欄で「構文解析」あるいは「構文解析 JavaScript」などで検索していただくとひっかかると思います。

本連載では、式の解析の仕組みはなるべく単純化して、その先のトピック、具体的に言うと型のチェックや、関数型言語ならではの機能を詳しく見てみたいと考えています。

3.add(2)はどう動くのか?

そもそも、3.add(2)という式はJavaScriptでは動作しません。これを動かすには何らかの変換が必要になります。今回はまず、この変換を支援する「ランタイムライブラリ」について見ていきます。まず、lang/runtime.tsを開いてみましょう。

lang/runtime.ts
interface INum {
    value:number,
    add:(b:INum)=>INum,
};
export const Num=(value:number):INum=>({
    value,
    add(b:INum):INum {
        return Num(value+b.value);
    },
});

これを使ってちょっと遊んでみます。

TypeScript playgroundを開いてみましょう。このリンクから開くと、すでにプログラムが書かれていると思います。

Runを押して実行してみると

LOG: {
  "value": 5
} 

という結果が出力されます。1

最後に書いてある式Num(3).add(Num(2)) で、計算を行っています。

  • INum型のオブジェクトは,次のメンバをもちます
    • value(JavaScriptの数値)
    • add(他のINum型のオブジェクトをもらって,足し算した結果をINumオブジェクトで返す関数)
  • 関数Numは,JavaScriptの数値nからINum型のオブジェクトを生成します2

つまり,今連載で扱う言語……言語になんか名前あったほうがいいですよね.リポジトリ名からとって「tinyfunc」とでもしましょうか.
tinyfuncで3.add(2)と書かれたプログラムがあったら,Num(3).add(Num(2))というJavaScript3を生成してあげればいい,ということになります.

というわけで,次回はそのJavaScriptコードを頑張って生成してみます.

理解度チェック

  • INumオブジェクトに,引き算をするsub,掛け算をするmul,割り算をするdivを追加してみて,次の計算をINumオブジェクトを使って行ってみましょう.
    • 20+30-5
    • 50-10-20
    • 50-(10-20)
    • 204+302
    • 20*(4+30)*2
    • 100/10/2
    • 100/(10/2)
  1. 本当は[LOG]って出てますがなぜか消えてしまったので[]は取っています

  2. class使った方がシンプルなのになんで使わないの? と思った方へ.この後の実装の都合で,こちらのほうがやりやすいからです.詳しくは今後お話しますが,JSに詳しい方向けに先回りしておくと「object.f(a)(object.f)(a)が同じ挙動になるようにしたいから」です.

  3. Num(3).add(Num(2))はTypeScript上で書いたものであって,JavaScriptで動くのか? と思った方は,PlayGround上の右側で「JS」タブを選んで,JavaScriptに変換されたコードを確認してみましょう.同じコードが出力されていると思います.

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