文系エンジニアがCISSP合格から28日でCCSPも合格した話
TL;DR
- 先月 CISSP 合格体験記 を書いた文系エンジニアが、合格の28日後に CCSP(Certified Cloud Security Professional。ISC² のクラウドセキュリティ資格)にも合格しました。勉強時間は前回と同じ1日平均30分です。
- 勝因は、CISSP のときに Claude Code で自作した問題演習アプリをほぼコピペで CCSP 用に転用できたこと。今回はテキストを何周もせず、1周だけ解いて、あとは「間違えた問題だけ」を集中的に潰しました。
- この記事で一番言いたいのは、AI の使い方は一度覚えて終わりではなく、使っているうちに自分の側が上達していくということです。前回は「AI はボトルネック解消に使え」と書きましたが、今回はその続編です。
なお、合格してから知ったのですが、CCSP は 2026年8月1日に試験のアウトライン(出題範囲)が改訂されるそうです。現行の問題集で対策できるのは7月中の受験までなので、手持ちの教材で受けようと思っている方は駆け込みをおすすめします。自分は何も知らずに滑り込んでいました。
前回のあらすじと自己紹介
大学は英文科、セキュリティの実務経験ほぼゼロの文系エンジニアです。詳しい自己紹介は前回の記事に書いたので省略しますが、3か月かけて CISSP に合格したのが2026年6月13日でした。
この28日間で肩書きに変化はありません。実務経験が5年に満たないので、CISSP も今回の CCSP も当面は Associate of ISC2 のままです。正会員への昇格は2027年4月の見込みで、それまでは「合格しただけの人」です。正直に書いておきます。
なぜ休まずに CCSP を受けたのか
理由は勢いです。CISSP の知識が頭に残っているうちに、間を開けて忘れてしまう前にさっさと取ってしまおうと思いました。ISC² の公式サイトに「CISSP と CCSP を両方持つといい」という趣旨の記載があったのも後押しになりました。
前述のアウトライン改訂は、合格後この記事を書いている今になって知りました。結果的に改訂1か月前の駆け込み受験になりました。
CCSP とはどんな試験か
CCSP は ISC² が運営するクラウドセキュリティの認定資格で、6つのドメイン(クラウドの概念と設計、データセキュリティ、インフラ、アプリケーション、運用、法務とコンプライアンス)から出題されます。2025年10月から CAT(Computer Adaptive Testing。回答の正誤に応じて次の問題の難度が変わる適応型テスト)形式になり、100〜150問を最大3時間で解きます。合格ラインは 1000点満点中700点。日本語で受験できます。
CISSP 持ちにとって気になるのは「どれくらい知識を流用できるか」だと思います。実際に受けた感触では、知識がそのまま生きるというより、考え方のフレームワークが流用できるという印象でした。「経営者の視点で考える」「技術より契約とガバナンスで解く」という CISSP の思考回路はそのまま通用します。アメリカの法律もお馴染みの顔ぶれが出てきます。一方で、クラウド固有のソリューションやサービスモデルまわりは新しく身につける必要がありました。
28日間の学習戦略
学習リズムは CISSP のときと同じで、1日平均30分、50問です。教材は公式問題集1冊(全850問。ドメイン別600問と模擬試験2回分250問)だけ。ここも前回と同じです。
変えたのは回し方です。
| CISSP のとき | CCSP(今回) | |
|---|---|---|
| 問題集の周回 | 何周も回した | 1周だけ |
| 2周目の代わり | 全問をもう一度 | 間違えた問題だけを重点的に復習 |
| 弱点の把握 | 感覚 | 回答データの集計から特定 |
| 模試の位置づけ | 仕上げの確認 | 誤答を分析して直前対策に変換 |
1周目の正答率は69.6%でした。CISSP の蓄積があってこの数字なので、このときは少し焦りました。ただ、全問をもう一周する時間はありません。(というよりは、資格勉強飽きたのでさっさと終わらせたかった)
そこで2周目はやらず、アプリの「誤答のみモード」で間違えた問題だけを解き直し、模擬試験の誤答は1問ずつ「なぜ間違えたか」を分析してチートシート(後述)に集約しました。
数字の推移だけ載せておきます。
- 1周目(試験9日前まで): 69.6%
- 模擬試験1(試験7日前): 82.4%(42分で完走)
- 模擬試験2(試験3日前): 79.2%(34分で完走)
- 前日解き直し: 模試1 96.0%、模試2 96.8%
模擬試験2の 79.2% を見たときは「CISSP の蓄積があってこの程度か」と正直へこみました。
ただ、仕事終わりの疲れた状態で、1問16秒というほとんど投げやりなペースで解いた数字でもあったので、「本番で丁寧に読めば大丈夫」と判断して深追いせず、誤答の分析だけやって寝ました。この「へこんだ数字を条件込みで解釈する」のも、回答データが手元に全部残っているからできたことです。
Cloudflare KVに学習データを蓄積していたので、Claude Codeでそれを一緒に分析しながら作戦を練りました。
学習アプリ、続編
前回記事の本題は「学習におけるボトルネック解消のため、Claude Code で問題演習アプリを自作した」ことでした。今回の本題はその続編、作ったアプリは資格が変わっても使い回せるという話、さらには、AIの使い方も上達していった話です。
移植はほぼコピペで終わった
CISSP 版のアプリ一式をコピーして、CCSP の問題データを流し込んだら、その日のうちに動きました。フラグ機能、進捗のクラウド同期、間隔反復(SRS)といった中核機能はすべてそのまま動きます。手を入れたのは UI の見た目の微調整くらいで、開発らしい開発は後述の新機能だけです。
問題データの取り込みは前回から少しアップデートしました。
OCR一発勝負ではなく、サブエージェントを利用するようにしました。
今回は構成を少し進化させて、問題文と解答をOCRライブラリで抽出するエージェントとは別に、正答レターだけを独立に抽出するエージェントを走らせ、両者を突合して不一致の問題だけ原本画像を私が目視確認する形にしました。
抽出と検証を別のコンテキストに分けるやり方で、最近よく聞く「敵対的レビュー」的なサブエージェント活用の練習編としてちょうどよかったです。
CISSPの勉強のときとくらべて、殆ど一発で、かなり間違いの少ない取り込みが実施できました。
新機能1: 聞き流し音声(自分専用ラジオ)
今回いちばんの新機能です。苦手トピックの解説台本を Claude Code に書かせ、OSS の音声合成エンジン(AivisSpeech)で MP3 化して、全6ドメイン分をアプリに内蔵しました。スマホのロック画面から操作できる、自分の弱点だけを流し続けるラジオです。
作った動機は不純で、散歩中に聞くコンテンツが枯渇していたからです。私は株式会社pedanticが運営する YouTube チャンネル群(ゆる言語学ラジオなど)が好きすぎてほぼ全動画を消化してしまい、「次に聞くものを探して YouTube をスクロールし続ける」という本末転倒な時間を過ごしていました。
自分専用ラジオを作ってからは「とりあえずこれを聞いておけばいい」ので、選ぶという手間そのものが消えました。
効果のほどは、めちゃくちゃ有用だったとまでは言いませんが、これから解く範囲の予習と解いた範囲の復習にちょうどよく、1本が短いので細切れ時間が拾えました。やってみて分かったのは、合成音声の品質より台本の中身が効くということです。自分の誤答データを知っている Claude Code が書く台本は、市販の音声教材と違って「私が間違えるポイント」だけを話してくれます。
新機能2: チートシート(覚えられないものリスト)
もう一つの主力が、アプリ内に置いた1枚もののチートシートです。ITIL のプロセス群、ISO 27001 ファミリーの番号、監査基準の系譜といった「理解ではどうにもならない暗記系」と、模擬試験の誤答分析を全部ここに集約しました。
運用は単純で、間違えた問題について Claude Code と「なぜ間違えたか、どう区別すればよかったか」を相談し、その結果をチートシートに追記していくだけです。紙のノートと違ってアプリを開けば必ずそこにあるので、直前期は「アプリを開く、チートシートを眺める、誤答モードを解く」の三角形だけで回っていました。
記録関連でいうと、この資格勉強もですが、グローバルでの取り組みとして、OKFでどんどん情報を蓄積していく枠組みを作ってみたりしていました。
ISO 番号はこれのおかげで当日ある程度自信を持って臨めました。ITIL は最後まで自信が持てませんでしたが、少なくとも模試で間違えたパターンは考えれば解ける状態にはなりました。
ちなみに Claude が作ってくれた暗記用の語呂合わせみたいなのは、参考にはしたものの正直あまりピンときませんでした。最終的には自分で調べて、ロジックに納得がいくまで整理し直して覚えています。AI が出したものをそのまま飲み込むより、納得できるまで自分で咀嚼する方が結局速い、というのは学習全般に言えそうです。
事件: Cloudflare の無料枠から警告メールが来た
試験3日前、Cloudflare から「KV(Key-Value ストア。回答データの同期先に使っています)の1日あたり書き込み上限の90%に達した」という警告メールが届きました。
調べると、1問解くたびに進捗とセッション位置を几帳面にクラウドへ書き込む実装になっていて、模擬試験125問を高速で解くと書き込みが数百回単位で積み上がる構造でした。無料枠は1日1,000回です。試験直前に同期が止まると困るので、その晩のうちに Claude Code とセッション同期を60秒間隔のスロットルに変更し、起動時の全件同期も5分間隔に間引いて、書き込み量を概ね半分にしました。本格的な対策(データ構造の集約)は試験後の宿題として、応急処置だけで乗り切っています。試験勉強をしていたはずが、いつのまにかレートリミット対応をしている。個人開発とはそういうものだと思います。
試験当日
当日の朝は4時に起きました。軽い朝食とシャワーのあとチートシートを眺め、早朝の電車を乗り継いで大阪の会場ビルに着いたのが6時40分ごろ。ここで想定外が待っていました。
ビルの正面入口は8時まで開きません。 私の予約枠は朝8時開始です。地下の入口からエレベーターで上がる必要があるのですが、場所が分かりにくいうえにエレベーター自体が7時ごろまで動かず、しばらく地下で行き場を失ってうろうろしていました。ようやく会場フロアに着いてもテストセンターの開場前で、待合スペースもなく、20分ほど廊下を汗だくで徘徊。朝イチ枠を予約する方は、ビルの開館時間と入口を先に調べておくことを強くおすすめします。ちなみに8時枠の受験者は私ひとりで、試験室は伸び伸び使えました。
肝心の試験は、CAT 形式で100問、110分ほどで終了しました。出題内容には触れられませんが、体感の難易度は率直に言って「難しい」でした。チートシートで対策したような、覚えていれば即答できる問題は少なく、考えさせる問題が中心。考えてもよく分からない問題や、勉強しきれていなかった用語も出てきました。クラウドを使ったソリューションというのがまだ完全に染み付いてないのもあり、CISSP のときより自信がなかったかもしれません。最後の1問を解き終えて、結果表示の前に挟まるアンケートに顔をしかめながら回答していました。
そして退室時に渡された紙に「合格」の文字。模擬試験の誤答分析で「考えれば解ける状態」まで持っていったのが、即答できない問題の多い本番で効いたのだと思います。
これから受ける人へ
CCSP を受けるか迷っている CISSP 合格者へ。 今どき業務でクラウドに触れないことはほとんどないので、おすすめできます。知識の被りを期待しすぎないほうがいいとは思いますが、オーバーラップは多いですし思考のフレームワークは流用できるので、立ち上がりは確実に速いです。
順番は CISSP が先がいいと思います。CISSP で作った「経営者視点で解く」土台の上に、クラウド固有の知識を載せる方が素直です。
ただ、クラウドにもっと特化したいという場合はCCSPを受けたり、AWS等ベンダー資格に先に取り組んでもよさそう。
受験時期について。 冒頭に書いたとおり、2026年8月1日にアウトラインが改訂されます。この記事が出るころに現行版で対策している方は、7月中の受験を検討してください。
最後に: AI の使い方は上達する
前回の記事で「AI は思考の代行ではなく、ゴール達成のボトルネック解消に使うと人間を底上げする」と書きました。28日経って、この考えには続きができました。
今回の28日間で、私は同じアプリを使い回しただけではありません。回し方が変わりました。がむしゃらに周回する代わりに誤答データに基づいて計画を立て、その計画自体を Claude Code と相談しながら日々調整し、問題データの検証にはサブエージェントの突合構成を組みました。どれも前回はやっていなかった、あるいはできなかったことです。
つまり、AI に何かを任せるという行為自体に習熟がある、ということです。道具は同じでも、データの持たせ方、任せる単位の切り方、検証の挟み方が上手くなると、同じ1日30分から取り出せるものが増えていきます。学習という営みの運用が少し上達できたかな?と思います。
資格はいったんここで一息つこうかなと思っています。CCSP の受験料は599米ドル(税別)で、CISSP の749米ドルよりは優しいとはいえ、円安の今はかなりの出費です。会社の補助はごく少額なので、このペースで受け続けると破産しそうです。
今後やりたいこと
業務で出てくるクラウド関連の言葉がちょっとわかるようになってきて嬉しい!
次は生成 AI を使ったペネトレーションテストやレッドチーミングのような、手を動かす側の練習を Claude Code と一緒にやっていくつもりです。
来年には正会員になれる見込みなので、それまでに「合格しただけの人」を卒業できるように引き続きゆるく勉強していきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。どなたかの駆け込み受験の役に立てば幸いです。
