本記事は Claude Code と一緒に調べ、書きました。公式の発表と報道の確認、表の作成、文章の校正に使っています。何を試すかの判断と、試した結果の記録、内容の最終的な確認は筆者が行いました。
2026年10月23日、Meta が AI エージェント「Muse」を日本で提供し始めました。9月に北米で先行した Muse が、北米の外で初めて広がる地域が日本です。Meta 日本法人の発表は、こちらです。
Muse の公式サイトと、9月の北米での発表(日本語版)です。
提供開始の当日に、日本の Muse を実際に使いました。発表の内容を整理し、試した結果と、気になったデータの扱いを書きます。試したのは各 1 回で、再現性は確かめていません。
Muse の使われ方と安全設計は、以前の記事にまとめています。
先に結論
- 日本の Muse は、iOS、Android、muse.ai から使えます。多くの基本機能は無料です。有料プランは、アプリの画面で見ると、パワーが月 2,799 円(週 5 億トークン)、マキシマムが月 13,990 円(週 30 億トークン)でした。初日に少し使っただけで、無料の利用枠の表示は 13% になり、無料のままで使い続けられるかは、ぎりぎりだと感じました。無料の枠の大きさは公表されていませんが、北米の解説では週 1 億トークンとされていて、それが日本でも同じなら、パワーは無料の 5 倍です。対象の年齢と、対応する言語は、発表に書かれていません。
- 日本で最初から使えるのは、主にテキストでのやり取りです。音声、アバター、Muse 独自のメールアドレスは、日本での提供を別途案内するとされました。
- 試した結果は、Amazon での購入が止まり、メルカリの検索は動き、映画の予約は座席の選択までは進んだが、最後の決済が通らず、予約は完了しませんでした。
- 作業の画面は、利用者が見られます。ブラウザの操作は、1 手ごとに画面を見て進める形に見え、時間がかかります。映画の予約は、依頼から 1 時間たっても操作の途中でした。
- 頼んでいない提案が、会話の中には届きましたが、プッシュ通知としては届きませんでした。
- 初日の X の投稿(36 件)でも、頼んでいない提案、遅さ、学習の既定がオンであることが、私の試行と同じように報告されていました。
- 今の行動の多くは確認メールとして残るので、メールボックスの連携だけで、好みや購買の情報の大半を把握できそうに思えます。それだけに、連携の許可は重いものです。
- 履歴の調べや好みの推定を代わりにやってくれる良さはあり、メールと連携したユーザの理解は、精度が高いと感じました。ただ、外部のサイトと連携して作業を進める部分は、技術が好きな私にはわくわくするものの、人がやれば数分で済む作業に 1 時間ほどかかりました。一般の人の体感としては、今の速度では日常的に使い続けるのは難しいと感じました。
- AI の改善にデータを使うことを、利用者が拒否できる設定があります。補足の利用規約の書き方から、初期の状態は利用が許可された状態と読めます。
用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| エージェント | 利用者の代わりに、調べる、下書きする、予約する、買うといった作業を、自分で進める AI |
| Muse Secure VM | 利用者ごとに隔離した、専用の仮想マシン(クラウドの中の仮想のコンピューター) |
| Sentinel | Muse の本体とは別に動き、外部への通信と外部サービスとの連携を管理する見張り役のエージェント |
| コネクタ | AI を外部のサービス(Gmail、Googleカレンダーなど)につなぐ連携 |
| ブラウザ操作 | エージェントが、利用者に代わってウェブサイトを開き、入力や購入を進めること |
| LLM、VLM | LLM は、文章を読み書きする大規模な AI。VLM は、画像も読める LLM |
| DOM | ウェブページの HTML の構造を、プログラムが扱える形にしたもの |
| 3D セキュア | オンラインのカード決済で、カード会社が本人確認のために、追加のコード入力などを求める仕組み |
発表の内容
Meta 日本法人の発表と、それを伝える報道から、分かることを整理します。
- 開始日: 2026年10月23日(日本時間)
- 入口: iOS アプリ、Android アプリ、muse.ai
- 料金: 多くの基本機能は無料。サブスクリプションのプランがあるが、発表には名称、価格、利用量が書かれていない。アプリの画面では、パワーが月 2,799 円で週 5 億トークン、マキシマムが月 13,990 円で週 30 億トークンで、どちらも Muse Wonder で動く(私が確認)。トークンの量は、北米の Power(月 20 ドル)と Max(月 100 ドル)と同じ
- できること: メッセージで頼むと、計画を立てて作業を進めます。ブラウザ操作やフォーム入力も代行します。時間がかかる作業は、アプリを閉じたあとも続きます。メールの送信や商品の購入のような承認が要る場面で、通知が届きます
- 連携: Gmail、Googleカレンダー、Instagram、Stripe、Shopify、Trip.com、Agoda、Klook。日本のサービスは、メルカリ、マネーフォワード ME、チケットぴあとの連携を「進める」とされ、開始時点の機能と時期は書かれていません
- 日本で別途案内とされたもの: 音声モード、表情のあるアバター(英語のみ)、Muse 独自のメールアドレス
- 今後: 11 月から、Meta の眼鏡型の端末でも使える予定(日本経済新聞)
安全の説明は、次のとおりです。利用者ごとに隔離された専用の仮想マシンで動き、Sentinel がインターネットへのアクセスを管理します。Muse は、パスワードと支払い方法を確認できません。メールの送信や購入の前には、利用者に確認します。操作の履歴を確認でき、接続するアプリとアクセスの範囲は、いつでも変更と解除ができます。
日本のサービス 3 社との連携について、日本経済新聞は、3 社のサービスを Muse から使えると書いています。Meta の発表は「進める」という表現で、開始時点で何ができるかは、書かれていません。
試した結果
2026年10月23日に、日本語で依頼して試しました。いずれも 1 回ずつです。
| 試したこと | 結果 |
|---|---|
| Amazon での購入を頼む | 作業用のブラウザでも、Amazon のエラーのページのままで、進められなかった |
| メルカリで商品を検索させる | 作業用のブラウザが開き、商品のページを見て情報を集め、価格と状態で候補をまとめた |
| 過去のメールから好みを分析し、映画を推薦して、座席を選び、決済まで進める | 推薦と座席の選択までは進んだ。決済は、Muse が 2 回試みて(1 回目は有効期限切れのカード番号で、2 回目は 3D セキュアで)失敗し、最後は私の操作に引き継がれたが、3D セキュアを通せず、予約は完了しなかった |
| 頼んでいない先回りの提案 | 映画の予約の話題に関連する情報が、会話のメッセージとして届いた。プッシュ通知としては届かなかった |
| リマインダーなどの通知の仕組みを尋ねる | 内容を作るのは Muse、通知として届けるのはシステム側、と説明された |
Amazon
Amazon での購入を頼むと、Muse は作業用のブラウザを開き、画面の右側の作業状況のパネルに様子を出しました。そのうえで、次のように説明しました。
「ただ、正直にお伝えすると、そのブラウザでも Amazon は今も『ご迷惑をおかけしています!』のエラーページのままです。場所の問題というより、私側のブラウザ経由では Amazon に弾かれている状態なので、引き継いでも同じ画面になる可能性が高いです。」(Muse の応答)
時間を置いて Muse が再試行するか、急ぐ場合は、利用者自身のブラウザで注文履歴から「もう一度買う」で購入するのが確実だ、とも案内されました。
米国では、9月20日に、Amazon が Muse による代理購入を止めたと報じられました。GeekWire によると、Amazon は、Meta が事前に連絡せず、エージェントが名乗らずに閲覧している、と指摘しました。日本での結果は、この遮断が続いていることと矛盾しませんが、同じ原因だと確かめたものではありません。Muse の説明は Muse 自身の応答で、Amazon の公式な説明ではありません。
メルカリ
メルカリで商品を検索させると、Muse は作業用のブラウザでメルカリの商品のページを開き、商品の情報欄まで画面を送りながら、情報を集めました。ページ送りも、私の画面ではなく、Muse の内部のブラウザで行われました。
結果として、調べた出品はすべて販売中、新品未使用、送料込みだったと、容量ごとに最も安い出品を挙げました。一部の出品で容量の記載に食い違いがあるので、購入前に商品の説明と出品者の評価を確認するよう添え、価格と在庫は調べた時刻のものと示しました。
メルカリとの連携は「進める」段階と発表されていますが、この検索は、連携ではなく、ブラウザの操作で行われました。
映画の予約
次の順で頼みました。
- 過去のメールの履歴を分析し、今日、映画館で公開される映画を予約したい
- 過去の映画の予約のメールと決済完了のメールから、よく行く映画館、よく取る座席の位置、時間、好きな映画の傾向を分析させる
- チケットぴあの宣伝の情報もふまえて、作品を推薦させる
- 予約の画面に進ませ、事前の分析にもとづいて空いている座席を探させる。隣にすでに予約が入っている座席は避け、1 席あけるよう頼む
- 座席が確定したら、決済に進む
Muse は、メールの履歴から映画館と座席と時間と作品の傾向を取り出し、推薦に使いました。座席は、隣の席が予約済みなら 1 席あける、という条件に合う席を示し、埋まっていたときの代わりの席も示しました。ここまでは動きました。
1 回目は、最初の決済まで進みましたが、有効期限の切れたカード番号を使ったため、失敗しました。Muse は、自分で決済をやり直しました(リトライ)。2 回目は、決済のあとの 3D セキュアまで進みました。認証のメールが届くと、Muse が、私の操作なしに、そのメールを自分で拾って、コードを自分で入力しました。入力のあとが通らず、失敗しました(私の見たところです)。最後は、Muse が、私がスマホで操作する手順を案内して引き継ぎました。劇場のサイトを開いてログインし、作品と回を選び、座席と券種を選んで、カードで 3D セキュアのコードの入力まで進む、という内容です。私は案内どおりに 3D セキュアまで進みましたが、通りませんでした。原因は確かめていません。予約は完了しませんでした。
先回りの提案
映画の予約の途中で、頼んでいない提案が、Muse から会話のメッセージとして届きました。今夜見る映画に関連して、その作品の展示がちょうど翌日から始まること、入場の特典、数日後のトークショーのことが書かれ、「トークショーのチケット状況を調べて」と「もう知っているので大丈夫」の 2 つの選択肢が付いていました。内容の正確さは確かめていません。
この提案は、プッシュ通知ではなく、通常の会話のメッセージとして届きました。アプリを開いていないときに、スマホの画面へ知らせる動きではありません。
通知の仕組みを Muse に尋ねると、内容を作るのは Muse で、設定したスケジュールになると Muse が起動して Gmail やカレンダーを確認し、文章を組み立てる、と答えました。そのメッセージを、アプリが開いていないときにスマホへプッシュ通知として出すのは、Muse のシステム側の仕組みで、Muse 自身が任意のタイミングでプッシュ通知を送るのではない、という説明でした。私の感触でも、任意のタイミングで通知を送ることはできず、リマインダーのような予定に乗せると届くようでした。この説明は Muse(AI)自身の応答で、Meta の公式の説明ではありません。
初日の X の反応
提供初日の日本語の X の投稿を、Grok の検索で 36 件集めて読みました。投稿の時刻は 10 時台から 16 時台に限られるので、初日の全体ではなく、昼から夕方の様子です。件数は検索の割り当てによるもので、X 全体の分布ではありません。表示回数も、最も多い投稿で 1,200 回ほどと小さいです。
| 分類 | 件数 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 使ってみた報告 | 15 | 好意的なものが多い。不満は、遅さ(2 件)と、カレンダーの日付を正しく扱えない(1 件) |
| 第一印象、期待、不安 | 5 | 日本の作品の著作権の扱いへの批判、複数のエージェントに全権限を渡す危うさ |
| プライバシーと連携の許可 | 10 | 学習の既定がオンなので、まずオフにするべきという投稿、Meta を信用できないので連携しない、という投稿 |
| ほかの製品との比較 | 6 | dots、Grok Bot、Cue、Gemini と並べる。Muse の強みは、Instagram、Facebook、Messenger との連携と見る投稿が多い |
投稿ごとに、Muse に肯定的か、否定的か、それ以外かを、私が読んで分けました。
| 立場 | 件数 | 理由の内訳 |
|---|---|---|
| 肯定 | 15 | 用事の具体例 5、連携 3、先回り 3、使いやすさ 2、そのほか 2 |
| 否定 | 11 | プライバシーと Meta への信用 6、著作権 3、製品の出来(遅さ、日付)2 |
| それ以外 | 10 | ほかの製品との比較 4、学習の設定をオフにする助言 3、そのほか 3 |
肯定の投稿は、ほとんどが具体的な用事を挙げています。否定の投稿は、製品の出来より、プライバシーと Meta への信用が中心でした。否定の 11 件のうち、実際に使ったうえでの評価だと分かるのは、遅さと日付への不満の 2 件だけです。プライバシーの 6 件のうち 2 件は「連携が怖い」「使わない」と明言していて、残りの 4 件と著作権の 3 件は、使ったかどうかが書かれていない一般論や印象でした。否定の多くは、使っていない人の外からの印象と読めます。
私の試行と重なる点が 3 つありました。
- 頼んでいない提案: Gmail を連携しただけで、フリマのメールから探していた商品を特定し、売り切れだったので同じ商品のほかの出品を提案してきた、来月更新のサブスクを知らせてきて解約までできた、といった報告が 3 件ありました。私が受けた映画の関連情報の提案と、同じ型です
- 遅さ: 「ブラウザ作業が遅い」「反応は遅め」という投稿が 2 件ありました
- 学習の既定: 規約を読んで、学習の設定が最初からオンだったのでオフにすべき、という投稿が 3 件ありました。そのうち 1 件は、つないだ Gmail やカレンダーの情報も対象に入り、オフにすると過去のやり取りにもさかのぼって効く、と書いています。私は、この 2 点を規約で確かめられていません
好意的な報告には、生活と仕事の具体的な用事が多く、メルマガの配信の解除を頼むと、解除のリンクが見つからず、問い合わせのメールを作って、送信の前に許可を求めてきた、という例もありました。初日の範囲では、批判より、試して用事が片づいた報告のほうが多い印象です。ただし、件数が少ないので、世間の評価として扱える水準ではありません。
時間のかかり方
映画の予約は、依頼から 1 時間ほどたっても、操作の途中でした。非同期で任せられるので、待つこと自体は苦になりませんが、遅さは気になりました。
作業中の画面には、そのときの操作の名前(「商品の情報欄へスクロールする」など)と、その時点の画面の縮小表示が 1 つ出ていました。操作の履歴の一覧は、私が見た範囲では出ていませんでした。画面を見て、次の操作を決める形で動いているように見えます。
1 手ごとに判断が入るなら、所要時間は、1 手にかかる時間と、手数の積で決まります。たとえば、1 手に 10 秒かかり、360 手つながれば、1 時間になります。この 10 秒と 360 手は、説明のための仮定で、実測ではありません。今回は、1 手の時間も、手数も、測っていません。
私の推察では、画面の画像を VLM で読んで、どこを押すかを判断しているか、ページの HTML の構造(DOM)を LLM が読んで、次の操作を考えているか、のどちらかが 1 手ごとに働いています。そう考えれば、この時間のかかり方はもっともだと思いました。ただし、これは推察です。どちらの方式かは、外からは確かめにくく、遅さの主因がこの 1 手ごとの判断なのかも、切り分けられていません。見張り役の確認、決済の失敗のやり直し、承認の待ち、サーバー側の順番待ちも、候補です。1 手の時間と手数は、今の画面からは数えられません。操作の履歴が見えないためで、測る手段は確かめていません。
この考えが正しければ、作品、日時、座席、決済、確認と、ページの遷移が多い予約の流れは、手数が増えて遅くなり、途中で失敗する機会も増えます。 以前の記事で、北米の利用者の X の投稿 198 件を読んだとき、日用品の買い物のように自分でやれば数クリックで済む用事では、承認や待ち時間がかえって増え、「自分でやったほうが早い」と言われていました。今回の遅さは、これと同じ構造に見えます。時間はかかるが判断は単純な用事は任せて喜ばれ、すぐ済む用事は自分でやったほうが早い、という分かれ方です。詳しくは、以前の記事の「喜ばれる用事と、かえって面倒になる用事」の節にあります。
データの扱い
Muse は、Gmail やカレンダーを読み、ブラウザで予約や購入まで行います。その情報が、Meta の AI の改善に使われるのかを、Meta の発表、安全の技術ブログ、補足の利用規約から整理しました。
- 学習への利用: 対話と、ツールを呼び出した記録が、モデルの学習に使われる場合があります。学習の前に、主要な個人を特定できる情報を取り除く処理を行います
- 既定の設定: Meta の発表は、利用者が拒否できるとだけ書き、既定がオンかオフかを書いていません。補足利用規約は、設定のデータコントロールで、いつでもこのライセンスをオプトアウトできる、と書いています。拒否を選ぶ方式の文面なので、初期の状態は、利用が許可された状態と読めます。これは文面からの私の推論で、アプリの画面で確かめたものではありません
- 接続したサービスのデータ: 補足利用規約の利用者コンテンツのライセンスは、リンクしたサービスからのコンテンツも対象に含みます。Gmail の本文やカレンダーの予定が、学習に使われるかは、規約も発表も、明示していません
- 広告: 会話と、仮想マシンの中のデータは、Meta の広告のシステムと共有しないとされています。ただし、Muse がウェブを閲覧して予約するなどの操作が、間接的に、表示される広告に影響する場合がある、と書かれています
- Meta の従業員のアクセス: 運用の方針で制限されますが、サポート、安全の確保、運用に必要なときは、アクセスを妨げないとされています。Meta も見られなくする専用の暗号化環境(Muse Confidential VM)は、2026年中に提供する予定で、現行の仮想マシンには、まだ入っていません
- 日本の個人情報保護の法令への対応: 発表にも補足利用規約にも、記載がありません
学習の既定がオンで、利用者がオフにする方式は、個人向けの AI で広く見られます。ただし、Muse はメールとカレンダーを読み、予約や購入まで行うので、学習の対象になりうる対話と操作の記録の中に、メールの内容や、予定、取引の中身が入りえます。個人を特定できる情報を取り除いても、何を買った、どこに行ったといった中身は残りえます。
利用者ができる対処は、設定のデータコントロールで学習への利用をオフにする、メールの接続を読み取りだけにする(読むだけか、送信までかを選べると、Meta が説明しています)、接続するアプリを必要なものに絞る、の 3 つです。オフにする前の過去の分に、効果が及ぶかは、確かめていません。
メールボックスが持つ情報の大きさ
試して気づいたことがあります。今の私たちの行動は、ほとんどがネットの作業に結びついていて、買い物、映画やコンサートの予約、旅行、サブスクリプション、カードの利用通知は、確認のメールとして届きます。行動の履歴や購買の履歴が、メールボックスに残っています。そのため、Gmail とカレンダーをつなぐだけで、好み、行動、購買といった個人の情報の大半を、把握できるのではないかと思いました。映画の予約で、映画館、座席の位置、時間、作品の傾向を、過去のメールから取り出せたのは、その例です。
メールに出ない情報もあります。メッセージアプリでの会話、メールではなくアプリの通知で受け取るカードの明細、現金での買い物、位置情報などです。人によって、メールの描く像の濃さは違うはずです。ただ、メールと連携したユーザの理解は精度が高いと感じたので、メールボックスの連携が、個人の情報を把握するための入口として大きい、という見方は、外れていないと思います。
それだけに、最初に求められる Gmail とカレンダーの連携の許可は、重い許可です。次のデータの扱いの節で書くように、学習への利用の既定や、接続したサービスのデータの扱いを、確認してから許可するのがよいと思います。一方で、この許可をしないと、Muse の良さはほとんど受けられません。重い許可ですが、ほぼ必須の許可だと思います。許可できないのであれば、そもそも Muse を入れるべきではない、というのが私の考えです。
私の見立て
次は、ここまでの事実から私が考えたことで、確かめたものではありません。
- 米国で出た、サイトに止められる問題を、日本も持ち込んでいると思いました。Muse の通販は、一般のサイトをブラウザで操作する場面が多く、サイトが拒否すると止まります。日本でも、Amazon は止まりました
- 日本向けの連携 3 社は、この問題を補う方向だと思います。ただ、今回、メルカリの検索は、連携ではなく、ブラウザの操作で動きました
- 映画の予約は、履歴の調べ、好みの推定、座席の選択という、人がやると面倒な手順を Muse が進め、最後の決済を利用者に渡す形だと思いました。今回は、その決済を通せませんでした。しかも、人がやれば数分で済む作業を、Muse に任せると 1 時間ほどかかりました(もっと早くできた可能性はあります)。履歴の調べや好みの推定を代わりにやってくれる良さはあり、メールと連携したユーザの理解は、精度が高いと感じました。ただ、外部のサイトと連携して作業を進める部分は、技術が好きな私にはわくわくするものの、一般の人の体感としては、今の速度では日常的に使い続けるのは難しいと感じました
- 先回りの提案は、会話の中に出ました。アプリを開かなければ、気づけません。見回って知らせる形の製品とは、動き方が違うと思いました
確かめられていないこと
確かめられていないことは、確かめ方によって 3 つに分かれます。
今回は確かめていないが、操作を繰り返せば確かめられること
私が何度も試せば、確かめられることです。今回は各 1 回しか試していないので、確かめられていません。支払いを伴わないものと、伴うものに分けます。
支払いを伴わないもの(繰り返しても、リスクが小さい)
- Amazon のエラーが、遮断によるものか、一時的なものか。購入までは進めず、商品のページを開かせて、毎回止まるかを見る
- メルカリなどの検索で、情報を集められるか。通販サイトごとの違い
- 先回りの提案の頻度と、きっかけ(決まった時刻か、会話の文脈か)。話題を変えて試す
- 日本のサービス 3 社との連携が、使えるようになったか。アプリの画面で確認する
- 学習の既定の設定。アプリの画面で確認する
- 購入の手前までの所要時間(依頼から、決済の画面に着くまでの全体)。1 手ごとの時間は、今の画面からは数えられない
支払いを伴うもの(繰り返すと、カード会社に不正利用を疑われて、カードが止まるかもしれないと思ったので、試していません)
- 2 回目の決済(3D セキュア)が通らなかった原因。失敗を繰り返して調べることは、しない。1 回目の失敗の原因は、有効期限の切れたカード番号でした
- 購入の成功率。購入を何十回も試すことは、しない
- Muse が決済の完了を自分で行えるのか。映画の予約の画面が、どのサイトのものか(決済の画面に進むため)
- メルカリや Amazon 以外の通販で、購入まで進められるか
外部からは確かめようがないこと
システムの内部の仕組みで、利用者の操作では観測できません。
-
Muse が、有効期限の切れたカード番号を、どこから選んで使ったのか(劇場のサイトに登録されたカードか、メールの履歴からか)。Meta は、Muse は支払い方法を確認できないと説明していて、この説明との関係は、確かめていません
-
Muse が、3D セキュアの認証のメールを、私の操作なしに拾って入力できた仕組み。Meta は、メールの連携が 1 回限りのトークンを取り込みから外すと説明していて、認証のメールを Muse が拾えたこととの関係は、確かめていません
-
ブラウザの操作を、VLM で画面を読んで行っているのか、DOM を LLM が読んで行っているのか
-
遅さの内訳(1 手ごとの判断、見張り役の確認、順番待ちなど)
-
通知の仕組みの実装。Muse 自身の説明は、実装と違う可能性がある
-
Gmail の本文とカレンダーの予定が、実際に学習に使われるか。Meta の従業員が、実際にどこまで見られるか
-
メールを読む範囲を決める仕組み
公式に公開されていないこと
- 無料の利用枠の大きさ。対象の年齢と、対応する言語の公式な説明
- 日本のサービス 3 社との連携の中身と開始時期
- 日本の個人情報保護の法令への対応の説明
- 決済の仕組み(Stripe の Link など)が日本で使えるか
出典
確認日は、いずれも2026年10月23日です。
- Meta, 「Meta、パーソナルAIエージェント『Muse』を日本で提供開始」, 2026-10-23. https://about.fb.com/ja/news/2026/10/muse-personal-ai-agent-launches-in-japan/
- ITmedia NEWS, 「『Muse』日本で提供開始 MetaのAIエージェント、メルカリやマネフォ、ぴあと連携へ」, 2026-10-23. https://www.itmedia.co.jp/news/article/2610/23/2000002535/
- 日本経済新聞, 「メタのAIエージェント『Muse』、日本で開始 メルカリなどと連携」, 2026-10-23. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC22AFZ0S6A021C2000000/
- マイナビニュース TECH+, 「MetaがパーソナルAIエージェント『Muse』を日本で提供開始、メールや予約などを自律的に実行」, 2026-10-23. https://news.mynavi.jp/techplus/article/20261023-5178430/
- Meta, "Introducing Muse: The World's First Personal AI Agent Built for Everyone", 2026-09-08. https://about.fb.com/news/2026/09/introducing-muse-personal-ai-agent/(日本語版: https://about.fb.com/ja/news/2026/09/introducing-muse-personal-ai-agent/)
- Muse の公式サイト. https://muse.ai/
- Meta, "How We Built Safety Into Muse", 2026-09-08. https://research.meta.ai/blog/security-and-safety-for-ai-agents-our-approach-with-muse
- Meta, Muse 補足利用規約. https://muse.ai/terms
- GeekWire, "Amazon blocks Meta's Muse AI assistant in new standoff over agentic shopping", 2026-09-20. https://www.geekwire.com/2026/amazon-blocks-metas-muse-ai-assistant-in-new-standoff-over-agentic-shopping/