0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

大学職員のためのMicrosoft 365利活用ガイドブック

Posted at

第1章 はじめに - Microsoft 365で変わる大学業務

1.1 このガイドブックの目的と使い方

ガイドブックの目的

このガイドブックは、大学で働く一般職員(事務職、教務職など)の皆さんが、Microsoft 365(以下、M365)を活用して日々の業務を効率化するための実践的な手引きです。

「M365は導入されているけれど、メールとOneDriveしか使っていない」
「Forms?Power Automate?名前は聞いたことがあるけど、何ができるのかわからない」
「紙の申請書や押印が多くて、業務が非効率だと感じている」

このような悩みを抱える職員の方々に向けて、M365の豊富なツール群を大学業務の具体的なシーンで活用する方法を、わかりやすく解説します。

このガイドブックの特徴

1. 業務シーン別のユースケース形式
「このツールにはこんな機能がある」ではなく、「この業務にはこのツールを使う」という実践的なアプローチで解説しています。

例:

  • 出張申請をペーパーレス化したい → Forms + Power Automate
  • 学生アンケートを効率的に実施したい → Forms + Excel自動集計
  • 部署間でファイルを共有したい → SharePoint + Teams

2. IT専門知識は不要
プログラミングやサーバー管理の知識がなくても、画面操作だけで実現できる内容を中心に扱います。

3. すぐに実践できる具体例
「サンプル申請フォーム」「入力例」「よくあるつまずきポイント」など、明日からすぐに使える情報を豊富に盛り込んでいます。

このガイドブックの使い方

初めて読む方
第1章、第2章でM365の全体像を把握してから、興味のある業務シーン(第3章以降)をお読みください。

特定の課題を解決したい方
目次や付録Aの「業務シーン別ツール対応表」から、該当する章に直接ジャンプしてください。

段階的に導入したい方
第8章「活用を定着させるために」で、組織全体での導入ステップを解説しています。


1.2 Microsoft 365とは?

M365の概要

Microsoft 365は、マイクロソフトが提供するクラウドベースの業務支援サービス群です。従来のOfficeアプリ(Word、Excel、PowerPoint)に加えて、コミュニケーション、情報共有、業務自動化のための多彩なツールが統合されています。

主な特徴

  • クラウドベース: インターネット接続があればどこからでもアクセス可能
  • 常に最新: 自動アップデートで新機能が随時追加
  • 連携性: 各ツールがシームレスに連携し、データが一元管理される
  • セキュリティ: 多層防御、データ暗号化、アクセス制御などの高度なセキュリティ

従来の働き方との違い

従来の働き方 M365活用後
紙の申請書を手渡しで回覧 Webフォームで申請、自動で承認者へ通知
メールにファイルを添付して共有 クラウド上で共同編集、常に最新版
会議室予約を紙の台帳で管理 カレンダーでリアルタイム予約
アンケートを紙で配布・手集計 Webアンケートで自動集計・グラフ化
部署ごとにファイルサーバー管理 組織全体で一元管理、検索も容易

M365で実現できること(大学業務の視点)

業務のペーパーレス化
出張申請、物品購入、休暇届などの紙業務を電子化し、押印プロセスを削減できます。

情報共有の円滑化
部署を超えたプロジェクトチーム、教職員間のファイル共有、業務マニュアルの一元管理が可能になります。

業務の自動化
定型的なデータ入力、承認通知メール、リマインダー送信などを自動化し、人的ミスを削減できます。

データドリブンな意思決定
アンケート結果のリアルタイム集計、可視化により、迅速な現状把握と改善が可能になります。


1.3 大学業務が抱える課題とM365による解決

大学職員の皆さんが日々直面している課題と、M365による解決策を整理します。

課題1: 紙と押印に依存した業務プロセス

現状の問題点

  • 申請書の印刷、手書き記入、押印のための出勤
  • 承認者が不在だと処理が止まる
  • 過去の申請を探すのに時間がかかる
  • 紙の保管スペースが必要

M365による解決

  • Forms: Web申請フォーム作成
  • Power Automate: 承認フローの自動化、メール通知
  • SharePoint: 申請履歴のデジタル保管、高速検索

効果

  • 在宅勤務でも申請・承認が可能
  • 処理時間の短縮(平均50-70%削減)
  • 書類探しの時間削減
  • ペーパーレス化によるコスト削減

課題2: 部署間の情報共有が非効率

現状の問題点

  • メール添付でファイル共有→容量制限、バージョン混乱
  • 「最新版はどれ?」「誰が持っている?」の問い合わせが頻発
  • 部署ごとに情報が孤立し、組織横断プロジェクトで苦労

M365による解決

  • SharePoint: 部署共有フォルダ、ドキュメントライブラリ
  • Teams: プロジェクトチーム専用の情報共有スペース
  • OneDrive: 個人ファイルとチーム共有の使い分け

効果

  • 常に最新版のファイルにアクセス
  • 同時編集で作業効率向上
  • 情報の一元化、検索性向上

課題3: アンケート業務の手間

現状の問題点

  • 紙アンケートの印刷、配布、回収
  • 手作業での集計、入力ミス
  • 結果分析に時間がかかり、フィードバックが遅れる

M365による解決

  • Forms: アンケート作成、Web配布
  • Excel: 回答の自動記録、リアルタイム集計
  • Power BI: 高度な可視化(オプション)

効果

  • 印刷・配布・回収作業の削減
  • 集計の自動化、即座に結果確認
  • 回答率の向上(URLやQRコードで簡単回答)

課題4: 業務ノウハウの属人化

現状の問題点

  • 手順書が個人のPCに保存され、探せない
  • 担当者退職時の引継ぎ資料が不十分
  • 同じ質問が何度も発生

M365による解決

  • SharePoint: 業務マニュアル専用サイト
  • OneNote: 共有ノートブックでナレッジ蓄積
  • Teams: FAQ、よくある質問の共有

効果

  • いつでも最新の手順書にアクセス
  • 引継ぎの負担軽減
  • 組織全体でのノウハウ共有

1.4 本ガイドで扱うツール一覧

このガイドブックで主に扱うM365ツールを紹介します。各ツールの詳細な機能は第2章で解説します。

コアツール(必ず使う)

Microsoft Forms

  • Webフォーム・アンケート作成ツール
  • 申請書、アンケート、イベント申込などに使用
  • プログラミング不要、ドラッグ&ドロップで作成可能

Power Automate

  • 業務自動化ツール(ワークフロー作成)
  • 承認フロー、データ転記、通知メールの自動化
  • ノーコードで自動化を実現

SharePoint Online

  • チーム用ファイル共有・コラボレーションサイト
  • ドキュメント管理、ポータルサイト構築
  • アクセス権限管理、バージョン管理

Microsoft Teams

  • チャット、Web会議、ファイル共有の統合プラットフォーム
  • プロジェクトチーム運営の中心
  • SharePointと連携したファイル管理

OneDrive for Business

  • 個人用クラウドストレージ
  • 個人ファイルの保存、他者との共有
  • デバイス間の同期

Excel Online / Excel

  • 表計算、データ分析
  • Formsと連携した自動集計
  • クラウドでの共同編集

サポートツール(用途に応じて使う)

Planner

  • タスク管理・プロジェクト管理ツール
  • カンバンボード形式で進捗可視化
  • Teams連携でタスク共有

OneNote

  • デジタルノート
  • 会議議事録、アイデアメモ
  • 共有ノートブックで情報蓄積

Outlook

  • メール、予定表、連絡先管理
  • 会議室予約、予定調整
  • Teamsと連携したWeb会議

Power BI(オプション)

  • データ可視化・BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
  • アンケート結果の高度な分析
  • ダッシュボード作成

ツール選択の考え方

各業務に対して「どのツールを使うか」は、第2章の「M365ツールマップ」と、付録A「業務シーン別ツール対応表」で詳しく解説します。

原則

  • シンプルな業務には、シンプルなツールを(Forms単体など)
  • 複雑なワークフローには、複数ツールを組み合わせる(Forms + Power Automate + SharePoint)
  • 段階的に導入し、徐々に高度な活用へ

第1章のまとめ

この章では、M365の全体像と、大学業務での活用の意義を理解していただきました。

重要ポイント

  1. M365は単なるOfficeソフトではなく、業務効率化のための統合プラットフォーム
  2. 大学特有の課題(ペーパーレス化、情報共有、アンケート、ナレッジ管理)をM365で解決できる
  3. IT専門知識がなくても、業務シーンに合わせてツールを選び、活用できる

次の章では
第2章で、各ツールの特徴と「何をどう使うか」のツールマップを詳しく解説します。


第2章 M365ツールマップ - 何をどう使う?

この章では、M365の各ツールについて「どんな時に、何を使うか」を明確にします。業務シーン別のツール選択ガイドとして活用してください。

2.1 申請・承認業務に使うツール(Forms、Power Automate)

Microsoft Forms の役割

何ができるか

  • Web申請フォームの作成(出張申請、物品購入、休暇届など)
  • 質問の種類:テキスト入力、選択肢、日付、ファイルアップロード
  • 条件分岐(回答内容に応じて次の質問を変える)
  • 回答の自動収集(Excel形式で保存)

大学業務での活用例

  • 教員の出張申請フォーム
  • 物品購入依頼フォーム
  • 休暇・欠勤届
  • 会議室予約申請
  • 研究費使用申請

Formsが適している場面

  • 紙の申請書をそのままWeb化したい
  • 申請内容を一元管理したい
  • プログラミングなしで短時間で作りたい

Formsだけでは難しいこと

  • 複雑な承認フロー(複数段階の承認)→ Power Automateと組み合わせる
  • 承認者への自動通知 → Power Automateと組み合わせる
  • 申請状況の追跡 → SharePointと組み合わせる

Power Automate の役割

何ができるか

  • 承認ワークフローの自動化
  • フォーム回答時の自動処理(メール送信、データ転記)
  • 承認/却下に応じた条件分岐
  • SharePoint、Teams、Outlookとの連携

大学業務での活用例

  • 出張申請の承認フロー(申請→課長承認→部長承認)
  • 承認完了時の申請者への自動通知メール
  • Forms回答をSharePointリストに自動登録
  • 定期的なリマインダーメール送信

Power Automateが適している場面

  • 「申請→承認→完了」の流れを自動化したい
  • 承認者が複数段階ある
  • 承認状況をメールで通知したい
  • 手作業でのデータ転記を削減したい

組み合わせパターン

Forms(申請)
  ↓
Power Automate(承認フロー)
  ↓
SharePoint(履歴保存) + Teams(通知)

実際の業務フロー例:出張申請

従来の紙ベース

  1. 職員が紙の出張申請書に記入
  2. 上司に手渡しで提出
  3. 上司が押印して総務課へ
  4. 総務課で承認、ファイリング

M365活用後

  1. 職員がFormsで出張申請を入力(氏名、日程、目的地、予算)
  2. 送信ボタンを押すと、Power Automateが起動
  3. 自動で上司にメール通知(承認/却下ボタン付き)
  4. 上司が承認するとSharePointに記録、申請者に完了メール
  5. 却下の場合は理由とともに申請者に通知

削減できる時間

  • 申請者:紙探し、記入、提出の手間 → 約10分削減
  • 承認者:不在時の処理遅延解消 → 平均1-2日短縮
  • 総務:データ入力、ファイリング → 1件あたり5分削減

2.2 アンケート・調査に使うツール(Forms、Excel)

Forms をアンケートで使う

アンケート機能の特徴

  • 匿名回答の設定が可能
  • 回答の自動集計(グラフ表示)
  • Excel形式での詳細分析
  • QRコード生成で配布も簡単

質問タイプ

  • 選択肢(ラジオボタン、チェックボックス)
  • テキスト(短文、長文)
  • 評価(リッカート尺度:5段階評価など)
  • 日付、時刻
  • ファイルアップロード(レポート提出など)

大学業務での活用例

  • 学生満足度調査
  • 授業評価アンケート
  • オープンキャンパス参加者アンケート
  • 教職員研修の事後アンケート
  • イベント参加申込(アンケート + 申請の両方)

Excel との連携

自動集計の仕組み

  1. Formsで作成したアンケートの「回答」タブで「Excelで開く」をクリック
  2. OneDrive上にExcelファイルが自動生成
  3. 回答がリアルタイムで追加される
  4. Excel上でピボットテーブル、グラフ作成が可能

分析の例

  • 5段階評価の平均値計算
  • 自由記述のワードクラウド化(外部ツール連携)
  • 部署別、学年別などの集計
  • 経年比較(過去のアンケートとの比較)

活用Tips

  • Formsの集計画面でも基本的なグラフは見られるが、詳細分析はExcelで
  • 複数のアンケートを一つのExcelにまとめて比較分析も可能
  • Power BIを使えばダッシュボード化(視覚的レポート)も実現

2.3 情報共有・ファイル管理に使うツール(SharePoint、OneDrive、Teams)

OneDrive、SharePoint、Teams の使い分け

大学職員が最も混乱しやすい「ファイルをどこに保存するか」を整理します。

用途 使うツール 保存場所の例 共有範囲
個人の作業ファイル OneDrive 自分だけが使う資料、下書き 原則自分のみ(共有も可)
部署内の共有ファイル SharePoint 部署の規程、マニュアル、共有資料 部署メンバー全員
プロジェクトチームのファイル Teams(内部はSharePoint) プロジェクト資料、議事録 チームメンバーのみ
学内ポータル・全体共有 SharePoint(サイト) 学内規程、様式集、FAQ 全職員

OneDrive for Business

特徴

  • 個人専用のクラウドストレージ(通常1TB)
  • PCとの自動同期(ローカルでも使える)
  • 他者との共有も可能(リンク送付)

使うべき場面

  • 自分の作業中の文書(報告書の下書きなど)
  • 個人的な資料(研修メモ、TODO管理)
  • 一時的な共有(「このファイルだけ見てほしい」)

共有方法

  • ファイルを右クリック → 共有 → リンクを送信
  • 編集可能 or 閲覧のみを選択
  • 有効期限、パスワード設定も可能

SharePoint Online

特徴

  • チーム・部署単位のファイル共有サイト
  • フォルダ構造 + メタデータ(タグ付け)管理
  • バージョン履歴(過去の版に戻せる)
  • アクセス権限の細かい制御

使うべき場面

  • 部署の正式文書(規程、マニュアル、様式)
  • 全員が参照する資料(業務手順書、FAQ)
  • 長期保存が必要なファイル
  • 組織全体での情報ポータル

SharePointサイトの種類

  • チームサイト:部署、委員会など特定グループ向け
  • コミュニケーションサイト:全学向け情報発信(お知らせ、ニュース)

ドキュメントライブラリ

  • SharePointの中核機能
  • フォルダでファイルを整理
  • メタデータ(カテゴリ、作成日、担当者など)で検索性向上
  • バージョン管理で「誰が、いつ、何を変更したか」を追跡

Microsoft Teams

特徴

  • チャット + Web会議 + ファイル共有の統合
  • チーム(組織・プロジェクト単位)とチャネル(トピック単位)で整理
  • Teamsで共有したファイルは、実際にはSharePointに保存される

使うべき場面

  • プロジェクトチームでの日常的なやり取り
  • 部署内のコミュニケーション拠点
  • Web会議 + チャット + ファイル共有を一体で管理

Teamsのファイル管理

  • 各チャネルに「ファイル」タブあり
  • アップロードしたファイルは自動でSharePointに保存
  • Word、Excelを直接Teams上で共同編集可能

OneDrive、SharePoint、Teamsの関係

OneDrive    :個人のロッカー(自分専用)
SharePoint  :部署の書庫(組織で管理)
Teams       :会議室 + 書庫(プロジェクト専用、中身はSharePoint)

2.4 タスク・プロジェクト管理に使うツール(Planner、Teams)

Microsoft Planner

特徴

  • カンバンボード形式のタスク管理ツール
  • タスクカードを「未着手」「進行中」「完了」などのバケット(列)で管理
  • 担当者、期限、進捗状況を視覚的に把握

使うべき場面

  • プロジェクトのタスク進捗管理
  • 複数人での作業分担
  • 委員会活動のTODO管理
  • イベント準備のチェックリスト

基本操作

  1. プランを作成(例:「オープンキャンパス準備」)
  2. バケット(列)を作成(例:「準備中」「確認待ち」「完了」)
  3. タスクカードを追加(例:「パンフレット印刷」「会場予約」)
  4. 担当者と期限を設定
  5. 進捗に応じてカードを移動

Teams連携

  • Teamsのタブに Planner を追加可能
  • チャットしながらタスク状況を確認
  • タスク完了時にTeamsで通知

Plannerの活用例:大学イベント準備

プラン名:「2024年度オープンキャンパス」

バケット(列):
- 企画中
- 準備中
- 確認待ち
- 完了

タスクカード例:
- 「プログラム案作成」(担当:山田、期限:4/15)
- 「会場予約」(担当:佐藤、期限:4/20)
- 「学生スタッフ募集」(担当:田中、期限:5/10)

2.5 その他の便利ツール(OneNote、Power BI、Outlook連携)

OneNote

特徴

  • デジタルノートブック
  • セクション、ページで階層的に整理
  • テキスト、画像、手書きメモ、音声を統合
  • 共有ノートブックで複数人で編集

大学業務での活用例

  • 会議議事録の共有ノートブック
  • 業務引継ぎノート
  • プロジェクトのアイデアメモ
  • 研修メモの蓄積

SharePointとの使い分け

  • SharePoint:正式な文書、ファイル保管
  • OneNote:走り書き、メモ、アイデア、議事録

Power BI(オプション)

特徴

  • データ可視化・BI ツール
  • Excelデータ、Formsデータをインタラクティブなダッシュボード化
  • リアルタイム更新

使うべき場面

  • アンケート結果を経営層に視覚的に報告
  • 学生データ、入試データの分析
  • 予算執行状況のダッシュボード化

注意点

  • 高度な機能のため、まずはForms + Excelから始めるのが推奨
  • IT部門やデータ分析担当者と連携して活用

Outlook予定表とTeamsの連携

Outlookでできること

  • 会議室予約(リソース予約)
  • Teams会議の自動リンク生成
  • 空き時間の確認(スケジュール調整アシスタント)

Teams会議の設定方法

  1. Outlookで新しい会議を作成
  2. 「Teamsミーティング」ボタンをクリック
  3. 会議リンクが自動生成され、招待メールに記載
  4. 参加者はリンクをクリックするだけでWeb会議に参加

会議室予約

  • Outlookで新しい会議を作成
  • 「場所」欄で会議室を検索・選択
  • 空き状況を確認して予約

2.6 業務シーン別 ツール選択フローチャート

実際の業務で「どのツールを使えばいいか」を判断するフローチャートです。

Q1: 紙の業務をデジタル化したい

申請・承認が必要?

  • YES → Forms + Power Automate(承認フロー)
    • 例:出張申請、物品購入、休暇届
  • NO → Forms単体
    • 例:シンプルなアンケート、イベント申込

Q2: ファイルを共有したい

誰と共有?

  • 自分だけ、または一時的に特定の人 → OneDrive
  • 部署全体、長期的に管理 → SharePoint
  • プロジェクトチーム、チャットも必要 → Teams

編集する?

  • 共同編集が必要 → SharePoint or Teams(Word/Excel Onlineで同時編集)
  • 閲覧のみ → SharePoint(閲覧権限で共有)

Q3: プロジェクトを管理したい

タスク管理が中心?

  • YES → Planner(+ Teams連携)
    • 例:イベント準備、委員会活動

コミュニケーションが中心?

  • YES → Teams(チャット + ファイル + Web会議)
    • 例:部署間連携プロジェクト、リモート会議が多い

両方必要?

  • Teams + Planner の組み合わせ
    • Teamsのタブに Planner を追加

Q4: アンケートを実施したい

回答の匿名性が必要?

  • YES → Forms(匿名設定をON)
    • 例:授業評価、職員満足度調査
  • NO → Forms(通常設定)
    • 例:イベント参加申込(氏名・連絡先が必要)

詳細な分析が必要?

  • YES → Forms + Excel(詳細集計)
  • さらに高度 → Forms + Excel + Power BI

2.7 段階的な導入ステップ

M365ツールは多機能ですが、すべてを一度に使いこなす必要はありません。以下の3ステップで段階的に導入するのが成功のコツです。

ステップ1:基礎ツール(1-3ヶ月目)

まず使い始めるツール

  • Forms(アンケート、簡単な申請)
  • OneDrive(個人ファイルのクラウド化)
  • Teams(部署内チャット、Web会議)

目標

  • 紙のアンケートを1つFormsに置き換える
  • メール添付を減らし、OneDriveリンク共有に慣れる
  • 1つの部署・委員会でTeamsを試験運用

ステップ2:業務効率化(4-6ヶ月目)

次に取り組むツール

  • SharePoint(部署の共有フォルダ整備)
  • Power Automate(簡単な承認フロー)
  • Planner(プロジェクトタスク管理)

目標

  • 部署の共有ファイルをSharePointに移行
  • 1つの申請業務でPower Automateの承認フローを構築
  • イベント準備などでPlannerを活用

ステップ3:組織全体への展開(7ヶ月目以降)

さらに高度な活用

  • SharePoint(全学ポータルサイト)
  • Power Automate(複雑なワークフロー、定期実行)
  • Power BI(データ分析ダッシュボード)

目標

  • 組織全体でツール活用が定着
  • 業務マニュアル、ナレッジベースが充実
  • データドリブンな意思決定が可能に

第2章のまとめ

この章では、M365の各ツールの役割と、業務シーンに応じた選び方を解説しました。

重要ポイント

  1. 申請・承認: Forms + Power Automate で紙業務を電子化
  2. ファイル共有: OneDrive(個人)、SharePoint(組織)、Teams(プロジェクト)を使い分け
  3. アンケート: Forms + Excel で自動集計
  4. タスク管理: Planner で視覚的に進捗管理
  5. 段階的導入: 基礎ツールから始めて、徐々に高度な活用へ

次の章では
第3章から、具体的な業務シーン別の詳しい活用方法を解説します。まずは最優先課題である「紙業務のデジタル化」から始めます。


第3章 紙業務のデジタル化 - 申請・承認をペーパーレスに

この章では、大学で最も多い「紙と押印」の業務を、M365を使ってデジタル化する具体的な方法を解説します。

この章で扱うユースケース

  1. 出張申請・承認フローを電子化する
  2. 物品購入申請をデジタル化する
  3. 休暇申請と勤怠管理を効率化する
  4. 会議室予約システムを整備する

3.1 出張申請・承認フローを電子化する

3.1.1 業務の課題と解決イメージ

現状の課題

  • 紙の出張申請書を印刷し、手書きで記入
  • 上司が不在だと承認が止まる
  • 総務課での最終承認まで数日かかる
  • 過去の申請を探すのに時間がかかる
  • 申請状況が見えない(今どこで止まっているか不明)

M365活用後の姿

  • Webフォームで出張情報を入力(5分で完了)
  • 自動で上司にメール通知、メール上で承認/却下
  • 承認完了後、SharePointに自動保存
  • 申請者に完了メールが自動送信
  • 申請履歴はSharePointで検索可能

効果の試算(月30件の出張申請がある場合)

  • 申請者の時間削減:1件10分 × 30件 = 5時間/月
  • 承認者の処理時間短縮:1件5分 × 30件 = 2.5時間/月
  • 総務の入力・ファイリング削減:1件5分 × 30件 = 2.5時間/月
  • 合計:月10時間の削減

3.1.2 Formsで申請フォームを作成する

ステップ1:Formsを開く

【画面】Microsoft 365ホーム画面(office.com)から「Forms」アイコンをクリック

ステップ2:新しいフォームを作成

  1. 「新しいフォーム」ボタンをクリック
  2. フォームのタイトルを入力:「出張申請フォーム」
  3. 説明を入力:「出張の申請を行います。必要事項を入力して送信してください。」

【画面】フォーム作成画面

ステップ3:質問を追加する

出張申請に必要な質問を順番に追加します。

質問1:申請者情報

  • 「新規追加」→「テキスト」を選択
  • 質問:「氏名」
  • 「必須」をONにする

質問2:所属部署

  • 「新規追加」→「選択肢」を選択
  • 質問:「所属部署」
  • 選択肢:
    • 総務課
    • 教務課
    • 学生課
    • 入試課
    • キャリア支援課
    • 図書館
    • その他
  • 「必須」をONにする

質問3:出張期間(開始日)

  • 「新規追加」→「日付」を選択
  • 質問:「出張開始日」
  • 「必須」をONにする

質問4:出張期間(終了日)

  • 「新規追加」→「日付」を選択
  • 質問:「出張終了日」
  • 「必須」をONにする

質問5:出張先

  • 「新規追加」→「テキスト」を選択
  • 質問:「出張先(都道府県・市区町村)」
  • 「長い回答」をOFF(短文でOK)
  • 「必須」をONにする

質問6:出張目的

  • 「新規追加」→「テキスト」を選択
  • 質問:「出張目的」
  • 「長い回答」をON(詳細記述のため)
  • 「必須」をONにする
  • 例:「○○大学との連携協議」「△△学会への参加」

質問7:交通手段

  • 「新規追加」→「選択肢」を選択
  • 質問:「主な交通手段」
  • 選択肢:
    • 鉄道
    • 航空機
    • 自家用車
    • タクシー
    • その他
  • 「必須」をONにする

質問8:概算旅費

  • 「新規追加」→「テキスト」を選択
  • 質問:「概算旅費(円)」
  • 「必須」をONにする
  • サブテキスト:「交通費・宿泊費の合計概算を入力してください」

質問9:予算科目

  • 「新規追加」→「選択肢」を選択
  • 質問:「予算科目」
  • 選択肢:
    • 一般管理費
    • 教育研究費
    • 学生支援費
    • その他
  • 「必須」をONにする

質問10:備考

  • 「新規追加」→「テキスト」を選択
  • 質問:「備考(任意)」
  • 「長い回答」をON
  • 「必須」をOFF

ステップ4:フォーム設定を調整

  1. 右上の「設定」(歯車アイコン)をクリック
  2. 「回答を1回に制限する」→OFF(同じ人が複数回申請可能)
  3. 「送信後のメッセージ」をカスタマイズ
    • 「申請を受け付けました。承認者に通知されます。」

【画面】設定画面

ステップ5:プレビューで確認

  1. 「プレビュー」ボタンをクリック
  2. 実際に入力してみて、わかりやすさを確認
  3. 必要に応じて質問の順序を入れ替え(ドラッグ&ドロップで可能)

完成したフォームの保存

  • Formsは自動保存されるため、特別な操作は不要
  • フォームのURLをコピーしておく(後でPower Automateで使用)

3.1.3 Power Automateで承認フローを構築する

ステップ1:Power Automateを開く

【画面】Microsoft 365ホーム画面から「Power Automate」をクリック

ステップ2:フローを作成

  1. 左メニューから「作成」をクリック
  2. 「自動化したクラウドフロー」を選択
  3. フロー名:「出張申請承認フロー」
  4. トリガーを選択:「Microsoft Forms」の「新しい応答が送信されるとき」
  5. 「作成」ボタンをクリック

【画面】フロー作成画面

ステップ3:トリガーを設定

  1. 「フォームID」のドロップダウンから「出張申請フォーム」を選択

【画面】トリガー設定画面

ステップ4:回答の詳細を取得

  1. 「新しいステップ」をクリック
  2. アクションを検索:「Forms」→「応答の詳細を取得」を選択
  3. 「フォームID」:先ほどと同じフォームを選択
  4. 「応答ID」:動的なコンテンツから「応答ID」を選択

【画面】応答の詳細取得画面

ステップ5:承認アクションを追加

  1. 「新しいステップ」をクリック
  2. アクションを検索:「承認」→「承認を開始して結果を待機」を選択
  3. 承認の種類:「承認/拒否 - 最初に応答」
  4. タイトル:「出張申請の承認依頼」
  5. 割り当て先:承認者のメールアドレス(例:上司のメールアドレス)
    • ※組織によって変える場合は、動的に設定も可能
  6. 詳細:以下のように動的コンテンツを組み合わせる
申請者:{氏名}
所属:{所属部署}
出張期間:{出張開始日} ~ {出張終了日}
出張先:{出張先(都道府県・市区町村)}
目的:{出張目的}
交通手段:{主な交通手段}
概算旅費:{概算旅費(円)}円
予算科目:{予算科目}
備考:{備考(任意)}

【画面】承認設定画面(動的コンテンツの選択方法を示す)

ステップ6:承認結果による分岐を設定

  1. 「新しいステップ」をクリック
  2. 「条件」を選択
  3. 条件設定:
    • 左側:動的コンテンツから「結果」を選択
    • 中央:「次の値に等しい」
    • 右側:「Approve」(承認)

【画面】条件分岐の設定画面

ステップ7:承認された場合のアクション(はいの場合)

7-1:SharePointに記録

  1. 「はいの場合」ボックス内で「アクションの追加」をクリック
  2. 「SharePoint」→「項目の作成」を選択
  3. サイトのアドレス:SharePointサイトのURLを入力
    • 事前に「出張申請管理」リストを作成しておく(後述)
  4. リスト名:「出張申請リスト」
  5. 各フィールドに動的コンテンツを設定:
    • タイトル:{氏名}の出張申請({出張開始日})
    • 申請者:{氏名}
    • 所属部署:{所属部署}
    • 出張開始日:{出張開始日}
    • 出張終了日:{出張終了日}
    • 出張先:{出張先(都道府県・市区町村)}
    • 出張目的:{出張目的}
    • 概算旅費:{概算旅費(円)}
    • 承認日:{承認日時}
    • 承認者:{承認者のメールアドレス}

7-2:申請者に承認完了メールを送信

  1. 「アクションの追加」をクリック
  2. 「Office 365 Outlook」→「メールの送信(V2)」を選択
  3. 宛先:{回答者のメール}(動的コンテンツ)
  4. 件名:「【承認完了】出張申請が承認されました」
  5. 本文:
{氏名} 様

出張申請が承認されました。

【申請内容】
出張期間:{出張開始日} ~ {出張終了日}
出張先:{出張先(都道府県・市区町村)}
概算旅費:{概算旅費(円)}円

承認者:{承認者の表示名}
承認日時:{承認日時}

出張後は速やかに旅費精算を行ってください。

----
このメールは自動送信されています。

【画面】承認時のメール設定画面

ステップ8:却下された場合のアクション(いいえの場合)

  1. 「いいえの場合」ボックス内で「アクションの追加」をクリック
  2. 「Office 365 Outlook」→「メールの送信(V2)」を選択
  3. 宛先:{回答者のメール}
  4. 件名:「【却下】出張申請が却下されました」
  5. 本文:
{氏名} 様

出張申請が却下されました。

【申請内容】
出張期間:{出張開始日} ~ {出張終了日}
出張先:{出張先(都道府県・市区町村)}

【却下理由】
{承認者のコメント}

詳細は承認者にお問い合わせください。

----
このメールは自動送信されています。

ステップ9:フローを保存してテスト

  1. 右上の「保存」ボタンをクリック
  2. 「テスト」ボタンをクリック
  3. 「手動」を選択して「テスト」を開始
  4. Formsで実際に申請を入力してテスト
  5. 承認メールが届くか、承認/却下が正しく動作するか確認

【画面】フローのテスト画面

3.1.4 SharePointで申請履歴を管理する

ステップ1:SharePointリストを作成

  1. SharePointサイトにアクセス
  2. 「新規」→「リスト」を選択
  3. 「空白のリスト」を選択
  4. リスト名:「出張申請リスト」
  5. 「作成」をクリック

【画面】SharePointリスト作成画面

ステップ2:列(フィールド)を追加

デフォルトの「タイトル」列に加えて、以下の列を追加します。

  1. 「列の追加」→「1行テキスト」
    • 列名:「申請者」
  2. 「列の追加」→「選択肢」
    • 列名:「所属部署」
    • 選択肢:総務課、教務課、学生課、入試課、キャリア支援課、図書館、その他
  3. 「列の追加」→「日付と時刻」
    • 列名:「出張開始日」
  4. 「列の追加」→「日付と時刻」
    • 列名:「出張終了日」
  5. 「列の追加」→「1行テキスト」
    • 列名:「出張先」
  6. 「列の追加」→「複数行テキスト」
    • 列名:「出張目的」
  7. 「列の追加」→「数値」
    • 列名:「概算旅費」
  8. 「列の追加」→「1行テキスト」
    • 列名:「承認者」
  9. 「列の追加」→「日付と時刻」
    • 列名:「承認日」

【画面】列追加の画面

ステップ3:ビューを作成(見やすく表示)

  1. 「すべてのアイテム」ビューの右にある「...」→「このビューの編集」
  2. 表示する列を選択:
    • タイトル、申請者、所属部署、出張開始日、出張終了日、出張先、概算旅費、承認日
  3. 並べ替え:「承認日」の降順(新しいものが上)
  4. フィルター(オプション):必要に応じて所属部署でフィルター可能に

【画面】ビュー設定画面

ステップ4:Power Automateと連携

  • 前述のPower Automateフロー(3.1.3 ステップ7-1)で、このリストに自動登録される設定をする

活用方法

  • 承認済み申請の一覧確認
  • 部署別、月別の出張状況の集計
  • Excelにエクスポートして予算管理
  • Power BIと連携してダッシュボード化(オプション)

3.1.5 運用のポイントとトラブルシューティング

運用開始前の準備

  1. テスト運用

    • 少人数(1-2部署)で1か月間試験運用
    • フィードバックを収集し、フォームや承認フローを調整
  2. マニュアル作成

    • 申請者向け:フォームの入力方法(画面キャプチャ付き)
    • 承認者向け:承認メールの操作方法
  3. 説明会の実施

    • 職員向け説明会で操作をデモンストレーション
    • Q&Aセッションで不安を解消

よくある質問とトラブル対処

Q1:承認メールが届かない

  • 承認者のメールアドレスが正しいか確認
  • 迷惑メールフォルダを確認
  • Power Automateのフロー実行履歴でエラーを確認

Q2:間違って申請してしまった

  • Forms送信後は修正不可
  • 再度正しい内容で申請し、備考欄に「再申請」と記載
  • または承認者に直接連絡して却下してもらう

Q3:承認者が休暇で不在の場合

  • 代理承認者を設定する(Power Automateで承認者を複数設定可能)
  • または条件分岐で「部長が不在の場合は副部長へ」などの設定

Q4:フォームの質問を変更したい

  • Formsは随時編集可能
  • ただし、Power Automateで使用している項目を削除すると、フローがエラーになるので注意
  • 新しい質問を追加した場合は、Power Automateのフローも更新

応用Tips

複数段階承認(課長→部長)

  • Power Automateで承認アクションを2つ連続で追加
  • 1段階目:課長の承認
  • 2段階目:部長の承認(課長承認後に実行)

金額による承認ルート分岐

  • 条件分岐で概算旅費が50,000円以上の場合は部長承認も必要、といった設定が可能

申請状況の通知

  • Teams チャネルに申請通知を自動投稿
  • 総務課のTeamsチャネルで全申請を可視化

3.2 物品購入申請をデジタル化する

3.2.1 申請フォームの設計ポイント

物品購入申請は出張申請と似た構造ですが、以下の点が異なります。

特有の項目

  • 購入物品名・仕様
  • 数量
  • 単価・合計金額
  • 購入先(業者名)
  • 納期希望
  • 予算科目・予算残高確認

Formsで作成する質問例

  1. 申請者情報(氏名、所属部署、連絡先)
  2. 物品情報
    • 物品名
    • 仕様・型番(複数行テキスト)
    • 数量(数値)
    • 単価(数値)
    • 合計金額(数値、または自動計算を期待する説明)
  3. 購入理由(複数行テキスト)
  4. 購入先候補(テキスト、または見積書を添付)
  5. 納期希望(日付)
  6. 予算科目(選択肢)
  7. 見積書の添付(ファイルアップロード)
    • Formsの「ファイルアップロード」質問タイプを使用

【画面イメージ】Formsのファイルアップロード質問

フォーム設計のコツ

  • 金額は「単価 × 数量」で計算されることを説明テキストで明記
  • 予算科目は選択肢で統一(入力ミス防止)
  • 見積書は必須にするか、任意にするかを組織ルールに合わせる

3.2.2 Teams通知で承認を促進する

Power Automateで、申請時にTeamsチャネルに通知を投稿することで、承認を促進できます。

Teams通知の追加手順

  1. Power Automateフローで「新しいステップ」を追加
  2. アクション選択:「Microsoft Teams」→「チャネルにメッセージを投稿する」
  3. Team:総務課のチーム
  4. Channel:「物品購入申請」チャネル(事前に作成)
  5. Message:
【新規申請】物品購入申請

申請者:{氏名}({所属部署})
物品名:{物品名}
合計金額:{合計金額}円
納期希望:{納期希望}

承認依頼メールを確認してください。

【画面】Teamsチャネル投稿の設定

メリット

  • 承認者が見落とさない
  • チーム全体で申請状況を共有
  • 「この申請、急ぎですか?」などのコミュニケーションがTeams上で可能

3.2.3 予算管理との連携Tips

SharePointリストで予算管理

  1. SharePointリストに「予算科目別予算額」列を追加
  2. Power Automateで、申請金額が予算残高を超える場合に警告メールを送信

具体的な設定例

Power Automateの条件分岐で:

  • 「合計金額」が「予算科目の残高」を超える場合
  • 申請者と承認者の両方に「予算超過の可能性あり」メールを送信

Excelでの予算管理連携

  • SharePointリストをExcelにエクスポート
  • ピボットテーブルで予算科目別の集計
  • 月次での予算執行状況レポート作成

3.3 休暇申請と勤怠管理を効率化する

3.3.1 Formsで休暇申請フォームを作る

フォームの質問構成

  1. 申請者情報(氏名、所属部署)
  2. 休暇の種類(選択肢)
    • 年次有給休暇
    • 特別休暇
    • 病気休暇
    • その他
  3. 休暇期間
    • 開始日(日付)
    • 終了日(日付)
    • または「半日休暇」の選択肢
  4. 半日休暇の場合(条件分岐で表示)
    • 午前休 / 午後休
  5. 休暇日数(数値)
    • 自動計算が難しい場合は申請者が入力
  6. 理由(複数行テキスト、任意)
  7. 緊急連絡先(テキスト、任意)

【画面】条件分岐の設定例(「半日休暇」を選択した場合のみ午前/午後の質問を表示)

条件分岐の設定方法

  1. 「休暇期間」の質問で「...」メニュー→「分岐」を選択
  2. 「半日休暇」が選択された場合、次の質問へジャンプ
  3. それ以外の場合は、別の質問へジャンプ

3.3.2 Excelへの自動記録と集計

Power Automateでの自動記録設定

  1. トリガー:Forms「新しい応答が送信されるとき」
  2. アクション:Excel「表に行を追加」
    • ファイル:OneDrive上の「休暇申請記録.xlsx」
    • テーブル:「休暇データ」
  3. 各列に動的コンテンツを設定
    • 申請日、申請者、所属部署、休暇種類、開始日、終了日、日数

【画面】Excelテーブルへの行追加設定

Excel側の準備

  1. OneDriveに「休暇申請記録.xlsx」を作成
  2. シート1を「休暇データ」に名前変更
  3. 1行目に列見出しを作成:
    • 申請日、申請者、所属部署、休暇種類、開始日、終了日、日数、残日数
  4. 見出し行を選択して「テーブルとして書式設定」
  5. テーブル名を「休暇データ」に設定

【画面】Excelテーブルの作成方法

集計シートの作成

同じExcelファイルに「集計」シートを追加し、以下の集計を行う:

  1. 個人別の有給休暇取得日数

    • SUMIF関数で申請者別に集計
    =SUMIFS(休暇データ[日数], 休暇データ[申請者], "山田太郎", 休暇データ[休暇種類], "年次有給休暇")
    
  2. 月別の休暇取得状況

    • ピボットテーブルで月別・部署別に集計
  3. 部署別の取得率

    • グラフで可視化

3.3.3 年次有給休暇の残日数管理

残日数の管理方法

方法1:SharePointリストで管理

  1. SharePointに「職員マスタ」リストを作成
  2. 列:氏名、所属部署、有給付与日数、有給取得日数、有給残日数
  3. Power Automateで休暇申請が承認されたら、このリストの「有給取得日数」を更新
  4. 「有給残日数」列は計算列で自動計算

方法2:Excelで管理

  1. 「職員マスタ」シートを作成
  2. 列:氏名、付与日数、取得日数、残日数
  3. 「取得日数」はVLOOKUP関数で「休暇データ」シートから参照
  4. 「残日数」は「付与日数 - 取得日数」で計算

残日数不足時の警告

Power Automateで条件分岐を追加:

  • 申請日数が残日数を超える場合
  • 申請者に「有給休暇の残日数が不足しています」メールを送信
  • 承認者にも通知

3.4 会議室予約システムを整備する

3.4.1 Outlookカレンダーでの予約管理

Outlookの「会議室リソース」機能を使った予約システムです。

ステップ1:会議室リソースの設定(IT部門作業)

  1. Microsoft 365管理センターで会議室リソースを作成
  2. 会議室名:「第1会議室」「第2会議室」など
  3. 設備情報を登録:収容人数、プロジェクター有無など

ステップ2:職員による予約方法

  1. Outlookで「新しい会議」を作成
  2. 件名:「○○委員会」など
  3. 日時を設定
  4. 「場所」欄で会議室を検索
    • 「第1会議室」と入力→候補が表示される
    • 選択すると空き状況が表示される
  5. 参加者を追加
  6. 「送信」で予約完了

【画面】Outlookでの会議室予約画面

ダブルブッキング防止

  • Outlookは自動でダブルブッキングをチェック
  • 「会議室が空いていません」と警告が表示される
  • 「スケジュールアシスタント」で空き時間を確認可能

3.4.2 SharePointカレンダーとの連携

Outlookだけでなく、SharePointカレンダーでも会議室予約を可視化できます。

SharePointカレンダーの作成

  1. SharePointサイトで「新規」→「リスト」→「イベント」を選択
  2. リスト名:「会議室予約カレンダー」
  3. カレンダービューで表示

Power Automateで連携

  1. トリガー:Outlook「新しいイベントが作成されたとき」
  2. 条件:イベントの場所に「会議室」が含まれる場合
  3. アクション:SharePointリスト「会議室予約カレンダー」に項目を追加

メリット

  • Web上で誰でも会議室予約状況を確認できる
  • 部署ごとの予約状況を色分け表示
  • 月次での会議室利用率レポート作成

3.4.3 二重予約を防ぐ運用ルール

技術的対策

  1. Outlookのリソース設定で「自動承認」をOFF
  2. 会議室管理者が手動承認(重要会議を優先)
  3. または先着順で自動承認

運用ルール

  1. 予約ルール

    • 予約は2週間前から可能
    • 定期予約は1か月前までに申請
    • キャンセルは前日までに
  2. 優先順位

    • 全学行事 > 委員会 > 部署会議 > その他
  3. マニュアル整備

    • 会議室予約の手順書(画面キャプチャ付き)
    • よくある質問(FAQ)

第3章のまとめ

この章では、紙業務のデジタル化について、4つの具体的なユースケースを解説しました。

実装した内容

  1. 出張申請:Forms + Power Automate + SharePointで完全ペーパーレス化
  2. 物品購入申請:Teams通知で承認促進、予算管理との連携
  3. 休暇申請:Excel自動記録で集計作業を削減、残日数管理
  4. 会議室予約:Outlookリソース機能で二重予約を防止

導入効果(試算)

  • 紙の印刷・ファイリング作業:80%削減
  • 承認処理時間:平均50%短縮
  • 過去データの検索時間:90%削減
  • 年間コスト削減:印刷費、保管費、人件費で数十万円規模

次のステップ
これらの仕組みを1つずつ導入し、職員に慣れてもらいましょう。最初は出張申請など頻度の高い業務から始めるのがおすすめです。

次の章では
第4章で、アンケート業務の効率化について詳しく解説します。


第4章 アンケート業務の効率化 - 作成から集計まで自動化

この章では、大学で頻繁に行われるアンケート業務を、Microsoft Formsを活用して効率化する方法を解説します。

この章で扱うユースケース

  1. 学生アンケートをFormsで実施する
  2. 授業評価アンケートを実施する
  3. イベント参加申込フォームを作る

4.1 学生アンケートをFormsで実施する

4.1.1 アンケート設計の基本

紙アンケートとの違い

項目 紙アンケート Formsアンケート
配布・回収 手渡し、回収箱 URLまたはQRコード送信
回答時間 授業中など限定的 いつでもどこでも
集計 手作業で入力 自動集計、リアルタイム
回答率 配布数に依存 リマインド送信で向上
コスト 印刷費、人件費 ほぼゼロ
データ分析 Excel手入力後 即座にExcelで分析可能

アンケート設計の5つのポイント

  1. 目的を明確にする

    • 何のためのアンケートか
    • どんな改善に活かすか
    • 回答者に目的を伝える
  2. 質問数を絞る

    • 回答時間の目安:5-10分
    • 質問数:10-20問が適切
    • 必須項目は最小限に
  3. 質問の順序を工夫

    • 易しい質問から始める
    • 関連する質問をグループ化
    • 自由記述は最後に
  4. 選択肢を適切に設定

    • 5段階評価(リッカート尺度)が一般的
    • 「その他」の選択肢を用意
    • 「わからない」「該当なし」も必要に応じて
  5. プライバシーに配慮

    • 匿名性の説明
    • 個人情報の取り扱い明記
    • 任意回答と必須回答の区別

4.1.2 Formsでの質問作成(選択式、記述式、評価スケール)

実例:学生満足度調査アンケート

学生生活全般の満足度を測る基本的なアンケートを作成します。

ステップ1:新しいフォームを作成

  1. Microsoft Formsを開く
  2. 「新しいフォーム」をクリック
  3. タイトル:「2024年度 学生満足度調査」
  4. 説明:
この調査は、皆さんの学生生活の質を向上させるために実施します。
回答は匿名で、統計的に処理され、個人が特定されることはありません。
所要時間:約5分
ご協力をお願いいたします。

【画面】フォームタイトルと説明の入力

ステップ2:基本情報の質問を追加

質問1:学年

  • 質問タイプ:「選択肢」
  • 質問:「あなたの学年を選択してください」
  • 選択肢:
    • 1年生
    • 2年生
    • 3年生
    • 4年生
    • その他(大学院生、編入生など)
  • 必須:ON

質問2:所属学部

  • 質問タイプ:「選択肢」
  • 質問:「所属学部を選択してください」
  • 選択肢:(大学の学部に合わせて設定)
    • 文学部
    • 法学部
    • 経済学部
    • 理工学部
    • その他
  • 必須:ON

ステップ3:満足度評価の質問を追加

Formsの「評価」質問タイプを使用します。

質問3:授業内容の満足度

  • 質問タイプ:「評価」
  • 質問:「授業内容全般について、満足度を教えてください」
  • 評価の種類:「星」を選択
  • レベル数:5
  • または「数値」を選択し、1-5の5段階評価
  • ラベル:
    • 1 = とても不満
    • 5 = とても満足
  • 必須:ON

【画面】評価質問の設定画面

質問4-8:その他の満足度項目

同様に「評価」タイプで以下の質問を追加:

  1. 「教員の指導について、満足度を教えてください」
  2. 「施設・設備(教室、図書館、食堂など)について、満足度を教えてください」
  3. 「学生支援(奨学金、就職支援など)について、満足度を教えてください」
  4. 「課外活動(サークル、イベントなど)について、満足度を教えてください」
  5. 「学生生活全般について、満足度を教えてください」

ステップ4:選択式の詳細質問

質問9:利用頻度の高い施設

  • 質問タイプ:「選択肢」(複数選択可能にする)
  • 質問:「よく利用する施設を選択してください(複数選択可)」
  • 選択肢:
    • 図書館
    • 食堂・カフェテリア
    • 学生ラウンジ
    • PCルーム
    • 体育館・運動施設
    • その他
  • 「複数の回答」をON
  • 必須:OFF

質問10:改善してほしい点

  • 質問タイプ:「選択肢」
  • 質問:「最も改善してほしい点を1つ選択してください」
  • 選択肢:
    • 授業内容・カリキュラム
    • 施設・設備
    • 学生支援体制
    • 課外活動の充実
    • キャンパスの環境
    • その他
  • 必須:OFF

ステップ5:自由記述の質問

質問11:具体的な改善提案

  • 質問タイプ:「テキスト」
  • 質問:「大学に対する改善提案や要望があれば、自由にお書きください」
  • 「長い回答」をON
  • 必須:OFF

【画面】長い回答のテキスト質問設定

質問12:良かった点

  • 質問タイプ:「テキスト」
  • 質問:「本学の良い点、気に入っている点があれば教えてください」
  • 「長い回答」をON
  • 必須:OFF

ステップ6:フォーム設定の調整

  1. 右上の「設定」(歯車アイコン)をクリック
  2. 重要な設定項目
    • 「回答を1回に制限する」→ ON(重複回答防止)
    • 「回答を記録する」→ 匿名の場合はOFF
    • 「開始日と終了日」→ 回答期間を設定
    • 「回答の受付を停止する」→ 期限後に自動で締め切り
  3. 「送信後のメッセージ」をカスタマイズ:
    • 「ご回答ありがとうございました。皆様の声を大学運営の改善に活かしてまいります。」

【画面】フォーム設定画面

4.1.3 回答の収集と自動集計

回答URLの配布方法

方法1:URLをメールで送信

  1. Formsの「回答を収集」ボタンをクリック
  2. 「リンク」を選択
  3. 「短縮URL」を有効にする
  4. URLをコピー
  5. 学生向けメールに記載して一斉送信

方法2:QRコードで配布

  1. Formsの「回答を収集」ボタンをクリック
  2. 「QRコード」を選択
  3. QRコードをダウンロード
  4. 掲示板に掲示、または授業で配布する資料に印刷

【画面】QRコード生成画面

方法3:Teams、SharePointに埋め込み

  • Teamsのチャネルに投稿
  • SharePointのニュースページに埋め込み
  • 学内ポータルサイトにリンク掲載

リアルタイム集計の確認

  1. Formsの「回答」タブをクリック
  2. 回答数がリアルタイムで表示される
  3. 質問ごとのグラフが自動生成される
    • 選択式:円グラフ、棒グラフ
    • 評価:平均値と分布
    • 自由記述:一覧表示

【画面】リアルタイム集計画面(グラフ表示)

回答の促進テクニック

  1. リマインドメール送信

    • 期限1週間前、3日前、前日に送信
    • Power Automateで自動送信も可能
  2. 回答率の可視化

    • 「現在の回答率:45%」などを掲示
    • 目標回答率(例:70%)を設定
  3. インセンティブ(オプション)

    • 回答者に図書カードなどの抽選
    • ただし匿名性との兼ね合いに注意

4.1.4 Excelでのデータ分析とグラフ化

Excelへのエクスポート

  1. Formsの「回答」タブで「Excelで開く」をクリック
  2. OneDrive上にExcelファイルが自動生成される
  3. ファイル名:「2024年度 学生満足度調査 (回答).xlsx」
  4. 回答がリアルタイムで追加される

【画面】Excelで開く操作

Excelファイルの構造

列A 列B 列C 列D 列E ...
ID 開始時刻 完了時刻 メール 名前 学年
1 2024/4/1 10:00 2024/4/1 10:05 - - 1年生
2 2024/4/1 11:00 2024/4/1 11:07 - - 2年生
  • 回答1件が1行
  • 質問1つが1列
  • データがどんどん追加される

基本的な集計

1. 回答数のカウント

=COUNTA(A2:A1000)  // 回答数

2. 学年別の集計

  • ピボットテーブルを作成
  • 行:学年
  • 値:カウント
  • 学年別の回答者数が集計される

【画面】ピボットテーブルの作成手順

3. 満足度の平均値計算

=AVERAGE(H2:H1000)  // H列が「授業内容の満足度」の場合

4. 学部別・学年別のクロス集計

  • ピボットテーブルで高度な分析
  • 行:学部
  • 列:学年
  • 値:満足度の平均
  • 「どの学部の何年生が満足度が低いか」が可視化される

グラフの作成

1. 満足度項目の比較(レーダーチャート)

  1. 各満足度項目の平均値を計算
  2. データ範囲を選択
  3. 「挿入」→「グラフ」→「レーダー」
  4. どの項目が弱いかが視覚的にわかる

【画面】レーダーチャートのサンプル

2. 学年別満足度の推移(折れ線グラフ)

  • 横軸:学年
  • 縦軸:満足度平均
  • 学年が上がるにつれて満足度が変化する傾向を分析

3. 自由記述のワードクラウド(外部ツール)

  • 自由記述の列をコピー
  • テキストマイニングツール(無料サイトなど)に貼り付け
  • よく出る単語を可視化

分析レポートの作成

レポートに含める内容

  1. 調査概要(期間、対象、回答数、回答率)
  2. 基本統計(学年別、学部別の回答者分布)
  3. 満足度の全体傾向(各項目の平均値、グラフ)
  4. クロス集計分析(学部別、学年別の違い)
  5. 自由記述の主要意見(カテゴリ分けして整理)
  6. 改善提案

Excelテンプレートの活用

  • 次回以降のアンケートのために、集計・グラフのテンプレートを保存
  • データ範囲を更新するだけで、グラフが自動更新される仕組みを構築

4.2 授業評価アンケートを実施する

4.2.1 匿名設定と回答者情報の扱い

授業評価アンケートは、学生が教員に対して率直な意見を述べるため、完全な匿名性が重要です。

完全匿名アンケートの設定

  1. Formsの「設定」を開く
  2. 「回答を記録する」→ OFF
    • これにより、メールアドレスや名前が記録されない
  3. 「回答を1回に制限する」→ OFF
    • 匿名の場合、誰が回答したか追跡できないため、重複防止が難しい
    • または、学生番号の一部(下4桁など)を任意で入力してもらい、重複チェック

【画面】匿名設定の画面

匿名性の説明を明記

フォームの説明欄に以下を記載:

このアンケートは完全に匿名です。
個人が特定されることは一切ありません。
率直なご意見をお聞かせください。

匿名性を保ちつつ重複回答を防ぐ方法

方法1:授業コード + 座席番号

  • 質問に「授業コード」「座席番号(当日)」を追加
  • 重複チェック時に使用
  • ただし完全匿名ではなくなる可能性

方法2:ワンタイムURL(高度)

  • Power Automateで学生ごとに一意のURLを生成
  • 一度使用したら無効化
  • 技術的に難易度高め

方法3:運用ルールで対処

  • 授業時間内に一斉に実施
  • その場で回答完了を確認
  • 重複の可能性は低い

4.2.2 分岐ロジックの活用

授業評価アンケートでは、回答内容に応じて次の質問を変える「分岐ロジック」が有効です。

分岐ロジックの活用例

質問1:この授業の出席率は?

  • 選択肢:
    • 90%以上
    • 70-89%
    • 50-69%
    • 50%未満

分岐設定:

  • 「50%未満」を選択した場合 → 質問2へ
  • それ以外 → 質問3へジャンプ

質問2(分岐先):出席率が低い理由は?

  • 選択肢:
    • 授業内容に興味が持てなかった
    • 授業の進度についていけなかった
    • 時間割の都合
    • その他
  • この質問は出席率が低い学生のみに表示される

【画面】分岐ロジックの設定画面

分岐ロジックの設定方法

  1. 質問の右上「...」メニューをクリック
  2. 「分岐」を選択
  3. 各選択肢に対して、次に表示する質問を指定
  4. 「次のセクションへ」または「特定の質問へ」を選択

その他の分岐活用例

  • 「授業の難易度」が「難しすぎる」→「どの部分が難しかったか」の詳細質問
  • 「教科書は役立ったか」が「いいえ」→「その理由」を詳しく聞く
  • オンライン授業の場合 →「通信環境」「視聴デバイス」の追加質問

4.2.3 集計結果の可視化(Power BI連携)

授業評価アンケートの結果を経営層や教員に報告する際、Power BIでダッシュボード化すると効果的です。

Power BIとは

  • Microsoft の BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
  • データをインタラクティブなダッシュボードに可視化
  • リアルタイム更新、フィルター機能、ドリルダウン分析が可能
  • Microsoft 365に含まれる(一部機能は有料)

FormsからPower BIへのデータ連携

ステップ1:Excelファイルの準備

  1. FormsからExcelにエクスポート(前述)
  2. OneDrive上に保存

ステップ2:Power BIでデータを読み込む

  1. Power BI Desktop(無料アプリ)をダウンロード
  2. 起動して「データを取得」→「Excel」を選択
  3. OneDrive上のExcelファイルを選択
  4. 必要なテーブルを選択して「読み込み」

【画面】Power BIでのデータ読み込み

ステップ3:ダッシュボードを作成

1. 満足度の平均値カード

  • 視覚化:「カード」
  • フィールド:「授業内容の満足度」の平均値
  • 大きく表示される数値カード

2. 項目別満足度の棒グラフ

  • 視覚化:「集合棒グラフ」
  • 軸:満足度項目(授業内容、教員の指導、教材など)
  • 値:平均値
  • どの項目が高評価/低評価かが一目でわかる

3. 学部別の満足度比較

  • 視覚化:「積み上げ横棒グラフ」
  • 軸:学部
  • 値:満足度の分布(5段階評価の各割合)

4. 自由記述のワードクラウド(カスタムビジュアル)

  • Power BIの「AppSource」からワードクラウドをインポート
  • 自由記述フィールドを選択
  • よく出る単語が大きく表示される

【画面】Power BIダッシュボードのサンプル

ステップ4:インタラクティブ機能の活用

  • スライサー(フィルター)を追加
    • 学部、学年、授業科目でフィルタリング
    • 「理工学部の1年生の評価だけを見る」といった分析が可能
  • クロスフィルタリング
    • 棒グラフの1つをクリックすると、他のグラフも連動して更新

ステップ5:Power BI Serviceで共有

  1. Power BI Desktopで作成したレポートを保存
  2. Power BI Service(Web版)にサインイン
  3. レポートを「発行」
  4. 共有リンクを教職員に送付
  5. ブラウザで閲覧可能

Power BI活用のメリット

  • Excelより視覚的でわかりやすい
  • リアルタイム更新(データソースが更新されると自動反映)
  • 複数のアンケート結果を統合して分析
  • 経営層への報告資料として説得力が高い

注意点

  • Power BI Desktopの操作には学習が必要
  • まずはExcelでの集計に慣れてから、段階的に導入
  • IT部門や分析担当者と連携して構築

4.3 イベント参加申込フォームを作る

4.3.1 参加者情報の収集項目設計

オープンキャンパス、セミナー、説明会などのイベント参加申込をFormsで受け付ける方法です。

アンケートとの違い

項目 アンケート イベント申込
目的 意見収集 参加者管理
匿名性 匿名が多い 実名・連絡先必須
回答後の処理 集計・分析 参加確認、リマインド
データ活用 改善施策 当日の受付、フォローアップ

イベント申込フォームの必須項目

基本情報

  1. 氏名(姓・名)
  2. フリガナ(セイ・メイ)
  3. メールアドレス(確認メール送信先)
  4. 電話番号(緊急連絡用)

属性情報(イベントによる)
5. 学年(高校生の場合:1年、2年、3年)
6. 学校名
7. 保護者の参加有無
8. 興味のある学部・学科

参加情報
9. 参加希望日時(複数日程がある場合)
10. 参加人数(本人含む)
11. 希望するプログラム(キャンパスツアー、模擬授業など)

その他
12. 大学を知ったきっかけ(広報効果測定)
13. 質問・要望(自由記述、任意)
14. 個人情報の取り扱いへの同意

フォーム作成例:オープンキャンパス申込

質問1-4:基本情報

  • 氏名(テキスト、必須)
  • フリガナ(テキスト、必須)
  • メールアドレス(テキスト、必須)
  • 電話番号(テキスト、必須)

質問5:学年

  • 選択肢:高校1年生、高校2年生、高校3年生、既卒、保護者、その他
  • 必須

質問6:参加希望日

  • 選択肢:
    • 6月15日(土)
    • 6月16日(日)
    • 7月20日(土)
    • 7月21日(日)
  • 必須

質問7:参加人数

  • 数値入力
  • 「本人を含めた参加人数を入力してください」
  • 必須

質問8:興味のある学部

  • 選択肢(複数選択可):
    • 文学部
    • 法学部
    • 経済学部
    • 理工学部
    • まだ決めていない
  • 必須OFF

質問9:希望するプログラム

  • 選択肢(複数選択可):
    • キャンパスツアー
    • 模擬授業
    • 入試説明会
    • 個別相談
    • 学食体験
  • 必須OFF

質問10:本学を知ったきっかけ

  • 選択肢:
    • 高校の先生からの紹介
    • 進学情報誌
    • Webサイト
    • SNS
    • 友人・先輩からの紹介
    • その他
  • 必須OFF

質問11:質問・要望

  • 長いテキスト
  • 任意

質問12:個人情報の取り扱いへの同意

  • 選択肢:
    • 同意する
    • 同意しない
  • 必須
  • 説明:「いただいた個人情報は、オープンキャンパスの運営および大学からのご案内にのみ使用し、第三者に提供することはありません。」

4.3.2 自動返信メールの設定

申込完了後、自動で確認メールを送信します。

Power Automateでの自動返信設定

ステップ1:フローを作成

  1. Power Automateで「自動化したクラウドフロー」を作成
  2. トリガー:「Microsoft Forms - 新しい応答が送信されるとき」
  3. フォームID:「オープンキャンパス申込フォーム」を選択

ステップ2:回答の詳細を取得

  1. アクション追加:「Forms - 応答の詳細を取得」
  2. フォームID、応答IDを設定

ステップ3:確認メールを送信

  1. アクション追加:「Office 365 Outlook - メールの送信(V2)」
  2. 宛先:{メールアドレス}(動的コンテンツ)
  3. 件名:「【申込完了】オープンキャンパスのお申込みを受け付けました」
  4. 本文:
{氏名} 様

オープンキャンパスへのお申込みありがとうございます。
以下の内容で受け付けいたしました。

【申込内容】
参加日:{参加希望日}
参加人数:{参加人数}名
興味のある学部:{興味のある学部}
希望プログラム:{希望するプログラム}

【当日のご案内】
日時:{参加希望日} 10:00-15:00
受付場所:本館1階エントランス
持ち物:特にありません
服装:自由

【お問い合わせ】
○○大学 入試広報課
TEL: 03-1234-5678
Email: nyushi@example.ac.jp

当日お会いできることを楽しみにしています。

----
このメールは自動送信されています。

【画面】自動返信メールの本文設定

リマインドメールの送信(オプション)

イベント3日前に自動でリマインドメールを送信する仕組みも構築可能です。

ステップ1:SharePointリストに申込者を記録

  • Power Automateで、申込時にSharePointリストに登録
  • 列:氏名、メール、参加日、参加人数

ステップ2:スケジュール実行フローを作成

  1. トリガー:「スケジュール - 繰り返し」(毎日実行)
  2. SharePointリストから、3日後にイベントがある人を抽出
  3. その人たちにリマインドメールを送信

4.3.3 参加者リストの管理とフォローアップ

参加者リストの作成

ExcelまたはSharePointで管理

  1. FormsからExcelにエクスポート
  2. 必要な列を整理:
    • 受付番号(自動採番)
    • 氏名
    • フリガナ
    • メールアドレス
    • 電話番号
    • 参加日
    • 参加人数
    • 興味のある学部
    • 申込日時
    • 受付状況(未受付/受付済み)

【画面】参加者リストのExcel例

当日の受付に活用

方法1:印刷した名簿でチェック

  • Excelから印刷
  • 受付時に手動でチェック

方法2:タブレットで電子チェック

  • SharePointリストで管理
  • タブレットで閲覧し、参加確認列にチェック
  • リアルタイムで受付状況を共有

方法3:QRコードで自動受付(高度)

  • 申込時に参加者ごとに一意のQRコードを発行
  • 当日、QRコードをスキャンして自動受付
  • Power Appsで受付アプリを構築

フォローアップ

イベント後のアンケート送信

  1. イベント終了後、参加者リストのメールアドレス宛てに
  2. 「オープンキャンパスアンケート」のURLを送信
  3. 満足度、改善点を収集

入試出願への誘導

  • 参加者に対して、出願時期にリマインドメールを送信
  • 「オープンキャンパスにご参加いただいた方へ」という特別なメッセージ

データ分析

  • オープンキャンパス参加者のうち、何%が出願したか
  • どの学部への興味が高かったか
  • 申込のきっかけ(広報効果測定)

第4章のまとめ

この章では、アンケート業務の効率化について、3つの具体的なユースケースを解説しました。

実装した内容

  1. 学生アンケート:Forms作成から、Excelでの集計・グラフ化まで完全自動化
  2. 授業評価アンケート:匿名性の確保、分岐ロジック、Power BI可視化
  3. イベント参加申込:自動返信メール、参加者リスト管理、フォローアップ

導入効果(試算)

  • 紙アンケートの印刷・配布・回収:100%削減
  • 手作業での集計時間:90%削減(500件のアンケートで約20時間→2時間)
  • 回答率の向上:平均20-30%向上(いつでもどこでも回答可能)
  • リアルタイム分析:即座に傾向を把握し、迅速な改善施策

活用のコツ

  • アンケートは質問数を絞る(10-20問)
  • 匿名性が必要な場合は設定を確実に
  • 自動返信メールで回答者の安心感を高める
  • Excelでの基本集計に慣れてから、Power BIに挑戦

次の章では
第5章で、情報共有とファイル管理について詳しく解説します。


第5章 情報共有とファイル管理 - 部署を超えた連携

この章では、SharePoint、Teams、OneDriveを活用した情報共有とファイル管理の方法を解説します。

この章で扱うユースケース

  1. SharePointでファイル共有基盤を構築する
  2. Teamsでプロジェクトチームを運営する
  3. 業務マニュアルをSharePointで一元管理する

5.1 SharePointでファイル共有基盤を構築する

5.1.1 ドキュメントライブラリの作成

SharePointのドキュメントライブラリは、部署やチーム全体でファイルを共有・管理するための中核機能です。

従来のファイルサーバーとの違い

項目 従来のファイルサーバー SharePoint
アクセス 学内ネットワークのみ インターネット経由でどこからでも
共同編集 困難(排他制御) リアルタイムで複数人が同時編集
バージョン管理 手動でファイル名変更 自動でバージョン履歴を保存
検索 ファイル名のみ ファイル内容も検索可能
権限管理 フォルダ単位 フォルダ、ファイル、項目単位で細かく設定
モバイル対応 限定的 スマホ、タブレットで閲覧・編集

ドキュメントライブラリ作成手順

ステップ1:SharePointサイトにアクセス

  1. Microsoft 365ホーム画面から「SharePoint」をクリック
  2. 既存のチームサイトを開く、または新規サイトを作成
    • 「サイトの作成」→「チームサイト」を選択
    • サイト名:「総務課」「教務課共有」など
    • プライバシー設定:「プライベート」(メンバーのみ)または「パブリック」(組織全体)

【画面】SharePointチームサイトの作成画面

ステップ2:ドキュメントライブラリを作成

  1. サイトのホームページで「新規」→「ドキュメントライブラリ」をクリック
  2. 名前:「共有資料」「規程集」「プロジェクト資料」など
  3. 説明:ライブラリの用途を記載
  4. 「作成」をクリック

【画面】ドキュメントライブラリ作成画面

ステップ3:ファイルをアップロード

方法1:ドラッグ&ドロップ

  • エクスプローラーからファイルをドラッグしてライブラリにドロップ
  • 複数ファイルを一括アップロード可能

方法2:アップロードボタン

  • 「アップロード」→「ファイル」または「フォルダー」を選択
  • ファイルを選択してアップロード

方法3:OneDrive同期

  • 「同期」ボタンをクリック
  • ローカルPCとSharePointが自動同期
  • エクスプローラーで普通のフォルダーのように使える

【画面】ファイルアップロードの3つの方法

5.1.2 フォルダー構造とメタデータ設計

効率的なファイル管理のためには、適切なフォルダー構造とメタデータの活用が重要です。

フォルダー構造の設計原則

原則1:階層は3階層まで

  • 深すぎる階層は探しにくい
  • 例:
    総務課共有/
      ├─ 規程・マニュアル/
      │   ├─ 学内規程/
      │   └─ 業務マニュアル/
      ├─ 会議資料/
      │   ├─ 2024年度/
      │   └─ 2023年度/
      └─ プロジェクト/
          ├─ システム更新/
          └─ 業務改善/
    

原則2:年度・日付でフォルダーを分ける

  • 「2024年度」「2023年度」と明確に区切る
  • または「YYYY-MM(2024-04)」形式

原則3:「その他」フォルダーは作らない

  • 何でも入れてしまい、整理されなくなる
  • 明確なカテゴリを設定

大学業務に適したフォルダー構成例

教務課の例

教務課共有/
  ├─ 規程・様式/
  │   ├─ 履修規程/
  │   ├─ 成績管理規程/
  │   └─ 申請様式集/
  ├─ 授業運営/
  │   ├─ 2024年度前期/
  │   ├─ 2024年度後期/
  │   └─ 時間割/
  ├─ 学生対応/
  │   ├─ 履修相談/
  │   └─ 成績関連/
  └─ 委員会資料/
      ├─ 教務委員会/
      └─ カリキュラム委員会/

メタデータの活用

メタデータ(列)を追加することで、フォルダー構造に頼らずに情報を整理できます。

メタデータ列の追加方法

  1. ドキュメントライブラリで「列の追加」をクリック
  2. 列のタイプを選択:
    • 選択肢:部署、カテゴリ、承認状態など
    • 日付:作成日、更新日、有効期限
    • 人またはグループ:担当者、承認者
    • テキスト:キーワード、説明

【画面】列の追加画面

メタデータの例

列名 タイプ 選択肢の例
文書種別 選択肢 規程、マニュアル、議事録、報告書
所管部署 選択肢 総務課、教務課、学生課
承認状態 選択肢 下書き、承認待ち、承認済み
有効期限 日付 (該当する場合)
担当者 人またはグループ (SharePointユーザーから選択)

メタデータのメリット

  • 柔軟な検索:「承認済みの規程を全て表示」など、複数条件で絞り込み
  • ビューのカスタマイズ:メタデータでグループ化、フィルター
  • フォルダー数の削減:部署別フォルダーを作らず、メタデータで分類

5.1.3 アクセス権限の設定

SharePointでは、サイト、ライブラリ、フォルダー、ファイル単位で細かくアクセス権限を設定できます。

権限レベルの種類

権限レベル できること
フルコントロール 全ての操作(削除、権限変更含む)
編集 ファイルの追加、編集、削除
投稿 ファイルの追加、編集(削除は不可)
読み取り 閲覧のみ(編集、削除不可)
制限付き閲覧 特定のファイルのみ閲覧

サイト全体の権限設定

  1. SharePointサイトの右上「設定」(歯車)→「サイトの権限」
  2. 「メンバーの招待」をクリック
  3. ユーザーまたはグループを追加
  4. 権限レベルを選択(編集、読み取りなど)
  5. 招待メッセージを送信

【画面】サイト権限の設定画面

フォルダー・ファイル単位の権限設定

特定のフォルダーやファイルだけ、一部のユーザーに限定したい場合:

  1. フォルダーまたはファイルを選択
  2. 「...」メニュー→「アクセス権の管理」
  3. 「権限の継承を停止」をクリック(親の権限から独立)
  4. ユーザーを追加または削除
  5. 権限レベルを設定

【画面】フォルダー個別の権限設定

大学業務での権限設計例

教務課SharePointサイト

  • サイト所有者(フルコントロール):教務課長、システム担当者
  • メンバー(編集):教務課職員全員
  • 閲覧者(読み取り):他部署職員(規程集など参照のみ)

特定フォルダーの制限

  • 「人事情報」フォルダー:課長のみ編集可能、他の職員は閲覧不可
  • 「委員会資料」フォルダー:委員のみ閲覧可能

セキュリティのベストプラクティス

  1. 最小権限の原則:必要最低限の権限のみ付与
  2. グループ管理:個人ではなく、グループ(「教務課メンバー」など)で権限設定
  3. 定期的な権限レビュー:退職者、異動者の権限を確認・削除
  4. 外部共有の制限:学外への共有は慎重に、必要に応じて無効化

5.1.4 バージョン管理と共同編集

バージョン管理の有効化

SharePointでは、ファイルの変更履歴を自動で保存できます。

ステップ1:バージョン管理を有効にする

  1. ドキュメントライブラリで「設定」(歯車)→「ライブラリの設定」
  2. 「バージョン設定」をクリック
  3. 「バージョン履歴の作成」→「はい」を選択
  4. 保存するバージョン数を設定(例:50バージョン)
  5. 「OK」をクリック

【画面】バージョン設定画面

バージョン履歴の確認

  1. ファイルを選択
  2. 「...」メニュー→「バージョン履歴」
  3. 過去のバージョンが一覧表示される
  4. 「復元」をクリックすると、過去の版に戻せる
  5. 「削除」で不要なバージョンを削除

【画面】バージョン履歴画面

バージョン管理のメリット

  • 誤って上書きしても、過去の版に戻せる
  • 「誰が、いつ、何を変更したか」が明確
  • 複数人での編集作業も安心

共同編集(Co-Authoring)

Word、Excel、PowerPointファイルをSharePointに保存すると、複数人が同時に編集できます。

共同編集の使い方

  1. SharePointのドキュメントライブラリでファイルをクリック
  2. Webブラウザー上でOffice Onlineが起動
  3. 他のユーザーも同じファイルを開く
  4. リアルタイムで互いの編集が反映される
  5. 右上に「編集中のユーザー」アイコンが表示される

【画面】共同編集中の画面(複数ユーザーのカーソル表示)

共同編集のルール

  • 同じ箇所の同時編集:後から保存した内容が優先
  • 競合の通知:競合が発生すると通知され、どちらを採用するか選択
  • チャット機能:Word Online などでコメント機能を使って相談

活用シーン

  • 複数人での報告書作成
  • 会議議事録のリアルタイム記録
  • プロジェクト計画書の共同編集

5.2 Teamsでプロジェクトチームを運営する

5.2.1 チームとチャネルの作成

Microsoft Teamsは、チャット、Web会議、ファイル共有を統合したコラボレーションツールです。

Teamsの基本構造

チーム(組織・プロジェクト単位)
  ├─ 一般チャネル(デフォルト、全メンバー参加)
  ├─ チャネル1(トピック別)
  ├─ チャネル2
  └─ プライベートチャネル(限定メンバー)

チームの作成手順

ステップ1:新しいチームを作成

  1. Teamsアプリを開く
  2. 左側メニュー「チーム」→「チームに参加、またはチームを作成」
  3. 「チームを作成」をクリック
  4. テンプレート選択:「最初から」を選択
  5. プライバシー設定:
    • プライベート:招待されたメンバーのみ参加(推奨)
    • パブリック:組織の誰でも参加可能

【画面】チーム作成画面

ステップ2:チーム名と説明を入力

  • チーム名:「2024年度オープンキャンパス準備」「システム更新プロジェクト」など
  • 説明:チームの目的を明記

ステップ3:メンバーを追加

  1. メンバーの名前またはメールアドレスを入力
  2. 役割を選択:
    • 所有者:チーム設定の変更、メンバー追加・削除が可能
    • メンバー:投稿、ファイル共有が可能
  3. 「追加」をクリック

【画面】メンバー追加画面

チャネルの作成

チャネルは、トピック別の会話スペースです。

ステップ1:チャネルを追加

  1. チーム名の横にある「...」→「チャネルを追加」
  2. チャネル名:「企画」「広報」「当日運営」など
  3. 説明:チャネルの用途
  4. プライバシー:
    • 標準:チームメンバー全員が参加
    • プライベート:招待された一部メンバーのみ

【画面】チャネル作成画面

大学業務でのチーム・チャネル設計例

オープンキャンパス準備チーム

チーム:2024年度オープンキャンパス準備
  ├─ 一般(全体連絡、重要事項)
  ├─ 企画チャネル(プログラム内容の検討)
  ├─ 広報チャネル(告知、SNS運用)
  ├─ 学生スタッフチャネル(学生スタッフとの連絡)
  └─ 当日運営チャネル(受付、誘導、タイムテーブル)

システム更新プロジェクトチーム

チーム:学務システム更新プロジェクト
  ├─ 一般(プロジェクト全体の連絡)
  ├─ 要件定義チャネル
  ├─ 開発チャネル
  ├─ テストチャネル
  └─ 予算・契約(プライベートチャネル、管理職のみ)

5.2.2 ファイル、会話、タブの活用

会話(チャット)機能

投稿の基本

  1. チャネルを選択
  2. 「新しい会話」ボックスに入力
  3. @メンション機能で特定の人に通知
    • 例:「@山田さん 資料の確認をお願いします」
  4. 「送信」ボタンをクリック

【画面】チャネルでの会話投稿

会話のベストプラクティス

  • スレッド返信を活用:元の投稿に「返信」することで、話題が整理される
  • 件名を明確に:「【確認依頼】資料について」など、わかりやすい件名
  • 重要な投稿は保存:投稿の「...」→「このメッセージを保存」

ファイル共有

Teamsのファイルタブは、実際にはSharePointに保存されています。

ファイルのアップロード

  1. チャネルの「ファイル」タブをクリック
  2. 「アップロード」→ファイルを選択
  3. またはドラッグ&ドロップ

ファイルの共同編集

  1. ファイル名をクリック
  2. Teams内でOffice Onlineが起動
  3. 複数人で同時編集可能

チャット内でのファイル共有

  • 会話ボックスの下にある「ファイル添付」アイコンをクリック
  • OneDriveまたはPCからファイルを選択
  • 会話と一緒にファイルが投稿される

【画面】ファイル共有の方法

タブのカスタマイズ

チャネルにタブを追加することで、よく使うツールやファイルに素早くアクセスできます。

タブ追加の手順

  1. チャネル上部の「+」ボタンをクリック
  2. 追加するタブの種類を選択:
    • Excel:特定のExcelファイルを常に表示
    • Planner:タスク管理ボードを表示
    • Forms:アンケートを表示
    • SharePoint:SharePointページを埋め込み
    • OneNote:共有ノートブック
    • Website:外部サイトを表示

【画面】タブ追加画面

活用例:オープンキャンパス準備チーム

「企画」チャネルのタブ構成

  • ファイル:企画書、タイムテーブル
  • Excel:参加申込者リスト(リアルタイム更新)
  • Planner:企画タスクボード
  • OneNote:アイデアメモ

「当日運営」チャネルのタブ構成

  • ファイル:当日マニュアル、配置図
  • Excel:受付チェックリスト
  • Forms:当日アンケートフォーム

5.2.3 外部ゲスト(非常勤講師等)との連携

Teamsでは、学外の人(非常勤講師、委託業者など)をゲストとして招待できます。

ゲストアクセスの有効化(IT部門作業)

  1. Microsoft 365管理センターで「Teams」→「ゲストアクセス」を有効化
  2. 組織のポリシーに応じて制限を設定

ゲストの招待方法

ステップ1:チームにゲストを追加

  1. チームの「...」→「メンバーを追加」
  2. ゲストのメールアドレスを入力(@gmail.com などでも可)
  3. 「ゲスト」として追加されることを確認
  4. 招待メールが送信される

【画面】ゲスト追加画面

ステップ2:ゲストがアクセス

  1. ゲストは招待メールを受信
  2. リンクをクリックしてMicrosoftアカウントでサインイン
    • Microsoftアカウントがない場合は、その場で作成
  3. Teamsにアクセス可能

ゲストの制限事項

  • チームの作成、削除はできない
  • 組織全体のディレクトリは見えない
  • 招待されたチームのみアクセス可能
  • ファイルの閲覧・編集は可能

ゲスト利用の活用例

非常勤講師との連携

  • チーム:「2024年度 ○○科目」
  • メンバー:常勤教員、非常勤講師(ゲスト)、教務課職員
  • 活用:授業資料の共有、成績入力の連絡、質問対応

外部委託業者との連携

  • チーム:「学務システム更新プロジェクト」
  • メンバー:大学職員、システム業者(ゲスト)
  • 活用:進捗報告、仕様確認、ファイル共有

セキュリティ上の注意

  • ゲストには必要最小限の情報のみ共有
  • プロジェクト終了後は、ゲストアクセスを削除
  • 機密情報を含むチャネルは、ゲストを除外

5.3 業務マニュアルをSharePointで一元管理する

5.3.1 マニュアルライブラリの構築

業務マニュアルをSharePointで一元管理することで、「誰がどこに保存したかわからない」問題を解決します。

マニュアルライブラリの設計

ステップ1:専用SharePointサイトの作成

  1. SharePointホームで「サイトの作成」→「コミュニケーションサイト」
  2. サイト名:「業務マニュアルポータル」
  3. 説明:「全部署の業務マニュアル・手順書を集約」
  4. デザインテーマを選択

【画面】コミュニケーションサイトの作成

ステップ2:ドキュメントライブラリを作成

  1. 「新規」→「ドキュメントライブラリ」
  2. 名前:「業務マニュアル」
  3. フォルダー構造:
業務マニュアル/
  ├─ 総務課/
  │   ├─ 人事関連/
  │   ├─ 経理関連/
  │   └─ 施設管理/
  ├─ 教務課/
  │   ├─ 履修管理/
  │   ├─ 成績管理/
  │   └─ 時間割作成/
  ├─ 学生課/
  │   ├─ 奨学金/
  │   ├─ 学生支援/
  │   └─ 課外活動/
  └─ 共通/
      ├─ システム操作/
      └─ 問い合わせ対応/

ステップ3:メタデータ列を追加

マニュアルを探しやすくするため、以下の列を追加:

列名 タイプ 説明
文書種別 選択肢 業務マニュアル、操作手順書、FAQ、様式
所管部署 選択肢 総務課、教務課、学生課、共通
対象者 選択肢 新任職員、全職員、特定部署のみ
最終更新者 (自動)
最終更新日 日付 (自動)
承認状態 選択肢 下書き、レビュー中、承認済み
キーワード テキスト 検索用のタグ

【画面】メタデータ列の設定

マニュアルのアップロード

  1. 既存のWordやPDFのマニュアルをアップロード
  2. メタデータを入力(部署、文書種別など)
  3. ファイル名の命名規則を統一
    • 例:「[教務]履修登録操作マニュアル_v1.0.pdf」

5.3.2 検索性を高める工夫(タグ、メタデータ)

検索機能の活用

SharePointは強力な検索機能を持っています。

基本検索

  • サイト右上の検索ボックスにキーワードを入力
  • ファイル名だけでなく、ファイルの中身も検索される
  • Word、Excel、PDFの本文も検索対象

フィルター機能

  • 検索結果画面で、メタデータによる絞り込みが可能
  • 例:「履修」で検索 → 「所管部署:教務課」でフィルター

【画面】検索とフィルター画面

キーワード(タグ)の活用

マニュアルにキーワードを付与することで、検索性が向上します。

キーワードの付け方

  • 「履修登録、学生、新入生、システム操作」
  • 「奨学金、JASSO、申請手続き、書類」
  • カンマ区切りで複数のキーワードを設定

ビューのカスタマイズ

よく使う検索条件をビューとして保存できます。

例:新任職員向けビュー

  1. 「すべてのドキュメント」ビューを複製
  2. フィルター:「対象者 = 新任職員」
  3. 並べ替え:「最終更新日」降順
  4. ビュー名:「新任職員向けマニュアル」

例:部署別ビュー

  • 「総務課マニュアル」ビュー:所管部署 = 総務課
  • 「教務課マニュアル」ビュー:所管部署 = 教務課

【画面】カスタムビューの作成

ナビゲーションの工夫

SharePointページでマニュアル案内を作成

  1. 「新規」→「ページ」
  2. レイアウト:「ホーム」を選択
  3. セクションを追加:
    • 「新任職員の方へ」:新任向けマニュアルへのリンク
    • 「部署別マニュアル」:部署ごとのフォルダーリンク
    • 「よくある質問」:FAQ集へのリンク
  4. Webパーツを追加:
    • 「クイックリンク」:よく使うマニュアルへの直リンク
    • 「ドキュメントライブラリ」:最近更新されたマニュアル一覧

【画面】SharePointページの編集画面

5.3.3 更新フローと承認プロセス

業務マニュアルは常に最新の状態を保つことが重要です。

マニュアル更新フローの設計

ステップ1:更新担当者の明確化

  • 各マニュアルに「更新担当者」列を追加
  • 担当者が定期的に内容を見直し

ステップ2:更新通知の自動化

Power Automateで、更新から6か月経過したマニュアルの担当者に通知を送る。

フローの作成

  1. トリガー:「スケジュール - 繰り返し」(毎月1日)
  2. SharePointリストから、最終更新日が6か月以上前のアイテムを取得
  3. 更新担当者にメール送信:「マニュアルの見直しをお願いします」

【画面】更新通知フローの設定

ステップ3:承認プロセスの設定

マニュアルを新規作成・更新した際に、承認者のチェックを受ける仕組み。

Power Automateでの承認フロー

  1. トリガー:SharePointリスト「ファイルが作成または変更されたとき」
  2. 条件:承認状態 = 「レビュー中」
  3. アクション:承認依頼を課長に送信
  4. 承認された場合:承認状態を「承認済み」に更新
  5. 却下された場合:担当者に修正依頼メールを送信

【画面】承認フローの設定

バージョン管理の活用

  • SharePointのバージョン管理(5.1.4参照)を有効化
  • 過去のバージョンをいつでも参照・復元可能
  • 「誰が、いつ、どこを変更したか」の履歴が残る

マニュアルの廃止プロセス

古くなったマニュアルは、削除ではなく「アーカイブ」フォルダーに移動。

  1. 「アーカイブ」フォルダーを作成
  2. メタデータに「廃止日」列を追加
  3. 廃止されたマニュアルは、検索結果に表示されないようフィルター設定

第5章のまとめ

この章では、情報共有とファイル管理について、3つの具体的なユースケースを解説しました。

実装した内容

  1. SharePointファイル共有基盤:ドキュメントライブラリ、メタデータ、権限管理、バージョン管理
  2. Teamsチーム運営:チーム・チャネル構造、ファイル共有、タブ活用、外部ゲスト連携
  3. 業務マニュアル一元管理:マニュアルライブラリ、検索性向上、更新フロー、承認プロセス

導入効果(試算)

  • メール添付でのファイル共有:80%削減
  • 「最新版はどこ?」の問い合わせ:90%削減
  • ファイル検索時間:平均5分→30秒(90%短縮)
  • リモートワーク対応:場所を問わずファイルアクセス可能

活用のコツ

  • フォルダー階層は3階層まで、それ以上はメタデータで管理
  • Teamsはプロジェクト単位で作成、長期チームと短期チームを使い分け
  • マニュアルは定期的な見直しと承認プロセスで品質維持
  • 権限管理は「最小権限の原則」、グループ単位で設定

次の章では
第6章で、業務効率化のさらなる工夫(Planner、Power Automate応用)について詳しく解説します。


第6章 業務効率化のさらなる工夫

この章では、Planner、Power Automateなどを活用した、さらなる業務効率化の方法を解説します。

6.1 Plannerでタスクを見える化する

6.1.1 プランとタスクの作成

Microsoft Plannerは、カンバンボード形式でタスクを管理するツールです。

プランの作成

  1. Planner アプリを開く
  2. 「新しいプラン」をクリック
  3. プラン名:「オープンキャンパス準備」など
  4. プライバシー設定を選択
  5. メンバーを追加

バケット(列)の作成

  • バケット = タスクをグループ化する列
  • 例:「未着手」「進行中」「確認待ち」「完了」
  • または業務フェーズ別:「企画」「準備」「実施」「振り返り」

タスクの追加

  1. バケット内の「+」をクリック
  2. タスク名を入力
  3. タスクをクリックして詳細を設定:
    • 担当者
    • 期限
    • 優先度(緊急、重要、普通)
    • チェックリスト
    • 添付ファイル
    • コメント

6.1.2 担当者・期限・進捗の管理

担当者の割り当て

  • タスクに複数の担当者を設定可能
  • 担当者には通知が送られる
  • 「自分のタスク」ビューで、自分が担当するタスクのみ表示

期限管理

  • 期限が近づくとタスクが色で警告(黄色→赤)
  • 「スケジュール」ビューでカレンダー表示
  • 期限切れタスクを一覧で確認

進捗の更新

  • タスクを別のバケットにドラッグ&ドロップで移動
  • チェックリストの進捗率が自動計算
  • 「グラフ」ビューで全体の進捗を可視化

6.1.3 Teams連携でのタスク共有

TeamsにPlannerタブを追加

  1. Teamsチャネルで「+」→「Planner」を選択
  2. 既存のプランを選択、または新規作成
  3. チャネル内でタスクボードを共有

メリット

  • チャットしながらタスクを確認
  • タスク完了時にチャネルに通知
  • ファイル、会話、タスクが一か所に集約

6.2 Power Automateで定型作業を自動化する

6.2.1 自動化できる業務の見極め方

自動化に適した業務の特徴

  • 定型的(毎回同じ手順)
  • 頻度が高い(週1回以上)
  • ルールが明確(if-then で表現できる)
  • 手作業だと時間がかかる、ミスが発生しやすい

自動化の優先順位

  1. 高頻度 × 簡単な作業:即効性あり(例:フォーム回答のExcel転記)
  2. 低頻度 × 複雑な作業:ミス防止(例:年次の集計レポート)
  3. 高頻度 × 複雑な作業:大きな効果(例:承認フロー)

6.2.2 実例1:Formsデータの自動転記

シナリオ
Formsで収集したデータを、SharePointリストやExcelに自動転記する

フローの構成

  1. トリガー:「Forms - 新しい応答が送信されるとき」
  2. アクション:「Excel - 表に行を追加」または「SharePoint - 項目の作成」
  3. 動的コンテンツで各質問の回答をマッピング

効果

  • 手作業での転記ミスを削減
  • リアルタイムでデータ蓄積

6.2.3 実例2:定期リマインドメールの送信

シナリオ
毎月1日に、全職員に「月次報告の提出」リマインドを送信

フローの構成

  1. トリガー:「スケジュール - 繰り返し」(毎月1日 9:00)
  2. アクション:「Office 365 Outlook - メールの送信」
  3. 宛先:配布リストまたはSharePointリストから取得
  4. 本文:テンプレート化したメッセージ

応用

  • 条件分岐で、未提出者のみにリマインド
  • SharePointリストから提出状況を確認

6.2.4 実例3:承認完了時の自動通知

シナリオ
出張申請が承認されたら、総務課のTeamsチャネルに通知

フローの構成

  1. トリガー:「SharePoint - 項目が変更されたとき」
  2. 条件:「承認状態」が「承認済み」に変わったとき
  3. アクション:「Teams - チャネルにメッセージを投稿」
  4. メッセージ内容:申請者、出張先、日程などを動的に挿入

効果

  • 承認状況をチーム全体で共有
  • 次の処理(旅費精算など)へスムーズに移行

6.3 その他の効率化Tips

6.3.1 OneNoteで会議議事録を共有する

共有ノートブックの作成

  1. OneNote アプリを開く
  2. 「新しいノートブック」→「共有ノートブック」
  3. OneDriveまたはSharePointに保存
  4. メンバーを招待

議事録のテンプレート

  • 日時、参加者、議題、決定事項、ToDo、次回予定
  • テンプレートを保存しておき、毎回コピーして使用

Teamsタブに追加

  • TeamsチャネルにOneNoteタブを追加
  • 会議中にリアルタイムで議事録を記入
  • 複数人で同時編集可能

6.3.2 Outlookのルールと予定表活用

メールの自動振り分け

  1. Outlook の「ルール」機能
  2. 特定の送信者からのメールを自動でフォルダー振り分け
  3. 重要メールにフラグを自動設定

予定表の共有

  • 部署の予定表を共有して、会議調整を効率化
  • 「空き時間情報」で他人のスケジュールを確認
  • 定期的な予定(週次ミーティングなど)を設定

6.3.3 メールからタスクへの変換

Outlookのタスク機能

  • メールを「タスク」に変換
  • 期限を設定してリマインダー
  • 完了したらチェック

To Doアプリとの連携

  • Microsoft To Do で一元管理
  • Planner、Outlook、Teamsのタスクを統合表示

第6章のまとめ

この章では、業務効率化のさらなる工夫について解説しました。

実装した内容

  1. Planner:タスク管理の可視化、Teams連携
  2. Power Automate応用:データ転記、リマインド、承認通知の自動化
  3. その他Tips:OneNote議事録、Outlookルール、タスク管理

活用のコツ

  • 小さな自動化から始めて、徐々に複雑なフローへ
  • チーム全体でツールを統一して、情報を集約
  • 定期的に自動化フローを見直し、改善

次の章では
第7章で、セキュリティと運用のポイントについて解説します。


第7章 セキュリティと運用のポイント

M365を安全に運用するためのセキュリティと運用管理について解説します。

7.1 情報セキュリティの基本

基本原則

  1. 機密性(Confidentiality):許可された人のみがアクセス
  2. 完全性(Integrity):データが改ざんされない
  3. 可用性(Availability):必要な時にアクセスできる

職員が守るべきルール

  • 強固なパスワードの設定(12文字以上、複雑な組み合わせ)
  • 多要素認証(MFA)の有効化
  • 共有リンクの有効期限設定
  • 不審なメール(フィッシング)への注意
  • デバイスのセキュリティアップデート

7.2 アクセス権限の考え方

最小権限の原則

  • 必要最低限の権限のみ付与
  • 「全員に編集権限」は避ける
  • 定期的な権限レビュー(年1回以上)

権限の階層

所有者(フルコントロール)
  ↓
編集者(ファイル編集可)
  ↓
閲覧者(読み取りのみ)
  ↓
アクセス不可

グループベースの権限管理

  • 個人ではなく、グループ(部署、委員会)に権限を付与
  • 人事異動時の権限変更が容易

7.3 外部共有時の注意点

外部共有の設定

  • SharePoint、OneDriveの外部共有は、組織ポリシーに従う
  • 「組織内のみ」「特定のドメインのみ」などの制限

共有リンクの種類

  • 組織内のユーザー:学内のみアクセス可能
  • 特定のユーザー:指定した人のみ
  • リンクを知っている全員:危険、機密情報には使わない

有効期限とパスワード

  • 共有リンクに有効期限を設定(例:7日間)
  • 重要なファイルはパスワード保護

7.4 データ保管とバックアップ

OneDrive、SharePointのバックアップ

  • Microsoft 365は自動バックアップ機能あり
  • ただし、削除から93日以内のみ復元可能
  • 重要データは定期的にローカルにもエクスポート

削除ファイルの復元

  • 「ごみ箱」から93日以内なら復元可能
  • サイトコレクション管理者は「第2段階のごみ箱」からも復元可能

ランサムウェア対策

  • OneDriveの「ファイルの復元」機能
  • 過去30日間の任意の時点に一括復元

第7章のまとめ

M365を安全に運用するためのセキュリティポイントを解説しました。

重要ポイント

  1. 強固なパスワードと多要素認証
  2. 最小権限の原則、グループベース管理
  3. 外部共有は慎重に、有効期限設定
  4. 定期的なバックアップと復元手順の確認

次の章では
第8章で、M365活用を組織に定着させるための方法を解説します。


第8章 活用を定着させるために

M365の活用を組織全体に定着させるための実践的なアプローチを解説します。

8.1 段階的な導入ステップ

フェーズ1:試験導入(1-3か月)

  • 対象:1-2部署
  • ツール:Forms、OneDrive、Teams基本機能
  • 目標:基本操作の習得、課題の洗い出し

フェーズ2:部分展開(4-6か月)

  • 対象:全部署の一部業務
  • ツール:SharePoint、Power Automate(簡単なフロー)
  • 目標:業務プロセスのデジタル化、効果測定

フェーズ3:全面展開(7-12か月)

  • 対象:組織全体
  • ツール:全機能
  • 目標:組織文化の変革、継続的改善

重要な成功要因

  • 経営層のコミットメント
  • 現場の声を反映(ボトムアップ)
  • 小さな成功体験の積み重ね

8.2 職員研修の進め方

研修プログラムの設計

レベル1:基礎研修(全職員対象)

  • M365の概要、ログイン方法
  • OneDriveでのファイル保存
  • Teamsでのチャット、Web会議
  • 所要時間:2時間

レベル2:実務研修(部署ごと)

  • Forms でのアンケート作成
  • SharePoint でのファイル共有
  • 業務シーンに即したハンズオン
  • 所要時間:半日

レベル3:応用研修(推進担当者向け)

  • Power Automate でのフロー作成
  • Planner でのプロジェクト管理
  • 所要時間:1日

研修の工夫

  • 録画して、いつでも復習できるようにする
  • マニュアルだけでなく、実際に操作させる
  • 質問タイムを十分に設ける

8.3 よくある質問(FAQ)

Q1:M365とOffice 365の違いは?
A:Office 365は旧名称で、現在はMicrosoft 365に統一されています。

Q2:OneDriveとSharePointの使い分けは?
A:OneDriveは個人用、SharePointはチーム・部署用です。詳しくは第2章を参照。

Q3:Teamsが重い、遅いのですが?
A:不要なチームから退出、キャッシュのクリア、ネットワーク環境の確認を。

Q4:間違ってファイルを削除してしまいました
A:ごみ箱から93日以内なら復元可能です。第7章参照。

Q5:Formsで作ったアンケートのURLが長すぎます
A:Formsの設定で「短縮URL」を有効にできます。

Q6:Power Automateのフローがエラーになります
A:フローの実行履歴でエラー内容を確認。動的コンテンツの設定ミスが多いです。

8.4 トラブルシューティング

問題:ログインできない

  • パスワードを忘れた → セルフサービスパスワードリセット
  • アカウントがロックされた → IT部門に連絡
  • 多要素認証ができない → 電話番号、アプリの再設定

問題:ファイルが開けない

  • 権限がない → 所有者に閲覧権限を依頼
  • ファイルが破損している → バージョン履歴から過去の版を復元
  • アプリが対応していない → Web版で開く

問題:同期エラー(OneDrive)

  • ネットワーク接続を確認
  • OneDrive の同期を一時停止→再開
  • OneDrive アプリを再起動

問題:Teamsで音声が聞こえない

  • デバイス設定(マイク、スピーカー)を確認
  • ブラウザーの権限設定を確認
  • Teamsアプリを再起動

第8章のまとめ

M365活用を組織に定着させるためのポイントを解説しました。

重要ポイント

  1. 段階的な導入で、無理なく浸透
  2. 研修は基礎→実務→応用の3段階
  3. FAQとトラブルシューティングを整備
  4. 継続的な改善とフィードバック

終わりに
M365は単なるツールではなく、働き方を変革するプラットフォームです。このガイドブックを参考に、皆さんの大学での業務効率化を実現してください。


付録

付録A:M365ツール対応表(業務シーン別)

業務シーン 使うツール 参照章
出張申請の電子化 Forms + Power Automate + SharePoint 3.1
物品購入申請 Forms + Power Automate + Teams 3.2
休暇申請と集計 Forms + Excel 3.3
会議室予約 Outlook + SharePoint 3.4
学生アンケート Forms + Excel 4.1
授業評価アンケート Forms + Power BI 4.2
イベント参加申込 Forms + Power Automate 4.3
ファイル共有基盤 SharePoint 5.1
プロジェクトチーム運営 Teams 5.2
業務マニュアル管理 SharePoint 5.3
タスク管理 Planner + Teams 6.1
定型作業の自動化 Power Automate 6.2
会議議事録 OneNote + Teams 6.3

付録B:用語集

Microsoft 365(M365)
マイクロソフトが提供するクラウドベースの業務支援サービス群。

Forms
Webフォーム・アンケート作成ツール。

Power Automate
業務自動化ツール(ワークフロー作成)。

SharePoint
チーム用ファイル共有・コラボレーションサイト。

Teams
チャット、Web会議、ファイル共有の統合プラットフォーム。

OneDrive
個人用クラウドストレージ。

Planner
タスク管理・プロジェクト管理ツール。

OneNote
デジタルノートブック。

Power BI
データ可視化・BIツール。

ドキュメントライブラリ
SharePointでファイルを保存・管理する場所。

メタデータ
ファイルに付与する属性情報(部署、カテゴリなど)。

バージョン管理
ファイルの変更履歴を自動保存する機能。

共同編集(Co-Authoring)
複数人が同時にファイルを編集できる機能。

承認フロー
Power Automateで作成する、申請→承認→完了の自動処理。

付録C:参考リンク集

Microsoft 公式サイト

Forms

Power Automate

SharePoint

Teams

セキュリティ

コミュニティ


おわりに

このガイドブックでは、大学職員の皆さんが日々の業務でMicrosoft 365を活用するための実践的な方法を解説しました。

このガイドブックで学んだこと

  • M365の全体像と各ツールの役割(第1-2章)
  • 紙業務のデジタル化(第3章)
  • アンケート業務の効率化(第4章)
  • 情報共有とファイル管理(第5章)
  • 業務効率化のさらなる工夫(第6章)
  • セキュリティと運用(第7章)
  • 組織への定着方法(第8章)

次のステップ

  1. まずは1つのユースケースから始めてみる
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
  3. 部署内で共有し、横展開する
  4. 継続的に改善し、新しい活用方法を探る

M365は常に進化しています。新機能が追加され、より便利になっていきます。このガイドブックを起点に、皆さん自身でも新しい活用方法を発見し、大学業務の効率化と質の向上を実現してください。

フィードバックをお待ちしています
このガイドブックへのご意見、ご質問、改善提案があれば、ぜひお寄せください。皆さんの声が、次の改訂版をより良いものにします。

大学職員の皆さんの業務効率化と、学生・教員へのより良いサービス提供の一助となれば幸いです。


【使用ガイド】
このガイドブックは、実務で即活用できるよう、各章が独立して読めるように構成されています。目次から必要な章に直接ジャンプして、実践してください。

【レビューポイント】

  1. 実際の業務に即した内容になっているか
  2. 画面キャプチャ(【画面】マーク)を適宜追加する
  3. 組織固有の用語や部署名を実際の名称に置き換える
  4. セキュリティポリシーが組織のルールと合致しているか確認

【次のステップ】

  1. このガイドブックを部署内で共有
  2. 実際にハンズオンで試してみる
  3. 成功事例を蓄積し、組織全体に展開
  4. 定期的にガイドブックを更新
0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?