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Google Cloud のコスト削減で見落とされがちな「割引の二重構造」を整理する — CUD/SUD と請求代行は重複するのか?

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Last updated at Posted at 2026-06-18

はじめに

Google Cloud (GCP) のコスト削減で、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。

  • 確約利用割引 (CUD) を契約しているけど、請求代行を併用したら割引が重複して効かなくなるのでは?
  • 継続利用割引 (SUD) が自動で効いているなかで、リセラー経由にすると実際の節約額はどれくらいになるのか?
  • 「リセラーの公表割引率」と「実際の請求書に出てくる金額」の差はどこから生まれるのか?

私自身、自社サービス(Google Cloud の請求代行)を提供する立場で複数のお客様の請求書を見ていて、この「割引の二重構造」をきちんと整理した日本語の情報がほぼ存在しないことに気づきました。本記事では、CUD/SUD と請求代行の関係を、できるだけ具体的に解説します。

📝 立場の開示:筆者はクラウドコスト合同会社 (CloudCost) で Google Cloud / AWS の請求代行とコスト最適化サービスを担当しています。本記事では自社サービスにも軽く触れますが、競合各社の記述は公開情報に基づく事実ベースで書いており、特定のサービスを売り込む意図はありません。技術的な内容として読んでいただければ幸いです。また、公開情報や実務に基づいて得た知識・情報を元に書いていますが、もし何か誤りがある場合はご指摘お願いします。


TL;DR

Google Cloud の「割引」は実は 3 層構造になっています:

┌─────────────────────────────────────────┐
│ Layer 3: リセラー割引(請求代行)           │ ← 3〜15%
├─────────────────────────────────────────┤
│ Layer 2: 確約利用割引 CUD                 │ ← 最大 57%
├─────────────────────────────────────────┤
│ Layer 1: 継続利用割引 SUD(自動)       │ ← 最大 30%
├─────────────────────────────────────────┤
│ Layer 0: リスト価格                       │     
└─────────────────────────────────────────┘

重要なのは、Layer 1 → 2 → 3 の順で乗算的に適用されるということ。リセラーを使っても CUD/SUD は失効しません。ただし「最終的な節約率」は単純な足し算ではないので、正しく計算しないと過大評価しがちです。


Layer 1: 継続利用割引 (SUD) — 自動で効く割引

SUD は Compute Engine の VM を月の 25% 以上稼働させると自動的に効く割引です。設定は不要。請求書を見ても「SUD: ¥xxx 割引」と勝手に出てきます。

利用率   SUD割引率
25-50%   10%
50-75%   20%
75-100%  30%

具体的には、e2-standard-4 を 1 ヶ月(730 時間)フル稼働させた場合:

基本料金:           730h × $0.134/h = $97.82
SUD 30% 割引:                       -$29.35
SUD 適用後:                         $68.47

gcloud から確認するなら:

# 過去 30 日の Compute Engine SUD 割引額を BigQuery で確認
# (Cloud Billing Export を BigQuery に設定済み前提)

SELECT
  service.description AS service,
  SUM(cost) AS gross_cost,
  SUM(IFNULL((SELECT SUM(amount) FROM UNNEST(credits) WHERE type = 'SUSTAINED_USAGE_DISCOUNT'), 0)) AS sud_amount
FROM
  `[project].billing_export.gcp_billing_export_resource_v1_xxx`
WHERE
  _PARTITIONTIME >= TIMESTAMP_SUB(CURRENT_TIMESTAMP(), INTERVAL 30 DAY)
  AND service.description = 'Compute Engine'
GROUP BY service.description

ポイント:この割引はリセラーを使っても消えません。リセラー経由でも、Compute Engine 側で SUD が自動的に効きます。


Layer 2: 確約利用割引 (CUD) — コミット型割引

CUD は AWS の Savings Plans に似た仕組みで、1 年または 3 年の利用をコミットすることで、最大 57% の追加割引が得られます

CUD には 2 種類あります:

Resource-based CUD(リソース確約型)

特定の vCPU + メモリの組み合わせを確約。例えば「N2 マシン、東京リージョン、vCPU 100 個、メモリ 400GB」を 3 年確約、など。

# CUD の購入はコンソールまたは gcloud から
gcloud compute commitments create my-commitment \
    --plan=12-month \
    --resources=vcpu=100,memory=400GB \
    --region=asia-northeast1 \
    --type=general-purpose-n2

Spend-based CUD / Flexible CUD(金額確約型)

「Compute Engine に月 $1,000 使う」など金額ベースで確約。リソース構成の柔軟性が高い分、割引率はやや低め。

CUD と SUD は重複する?

ここが混乱しやすいポイント。CUD が適用されているリソースに対しては、SUD は適用されません。これは Google Cloud の仕様で、二重には効きません。

ケース 1: CUD のみ
  100 vCPU を 3 年確約 → CUD 50% 割引適用
  → SUD は適用されない

ケース 2: CUD + オンデマンド
  100 vCPU 確約 + 追加で 20 vCPU オンデマンド利用
  → 確約分の 100 vCPU: CUD 50% 割引
  → 追加 20 vCPU: SUD 自動適用(最大 30%)

つまり「ベースラインを CUD で確約 + ピーク分はオンデマンド + SUD」という構成が、コミットメントリスクを抑えつつ割引率を最大化できる定番パターンになります。


Layer 3: 請求代行(リセラー割引)— 実は CUD/SUD の「上」に乗る

ここが本記事の核心です。請求代行サービスを使うと、リセラー独自の割引(3〜15%)が適用されますが、この割引は CUD/SUD が効いた後の金額に対して適用されます

リスト価格:                $1,000
↓ SUD 30% (自動):          -$300
SUD 適用後:                $700
↓ CUD 部分は別途 CUD 適用 (省略)
最終的な Google からの請求: $700
↓ リセラー割引 5% (例):     -$35
利用者の実支払額:           $665

つまり、リセラー経由でも CUD/SUD は失効しないのがポイント。リセラーはあくまで「Google からの請求額」に対して上乗せ割引を提供しているだけです。

「割引率の二重カウント」に注意

ここで初心者がよくハマる罠:

❌ 「SUD 30% + CUD 50% + リセラー 5% で合計 85% 割引!」

これは間違いです。これらは乗算的に適用されるため:

正しい計算:
1 - (1 - 0.30) × (1 - 0.50) × (1 - 0.05)
= 1 - 0.70 × 0.50 × 0.95
= 1 - 0.3325
= 0.6675

→ 実質約 66.75% 割引(リスト価格から)

しかも実際は、SUD と CUD は同じリソースに対して二重には効かないので、SUD が効くリソースと CUD が効くリソースは別物として計算する必要があります。

実際の請求書での見え方

BigQuery にエクスポートした請求データで確認するならこんなクエリ:

-- 月別の「割引前 vs 各層の割引適用後」を可視化
SELECT
  DATE_TRUNC(usage_start_time, MONTH) AS month,
  SUM(cost) AS gross_cost,
  SUM(IFNULL((SELECT SUM(amount) FROM UNNEST(credits) WHERE type = 'SUSTAINED_USAGE_DISCOUNT'), 0)) AS sud,
  SUM(IFNULL((SELECT SUM(amount) FROM UNNEST(credits) WHERE type = 'COMMITTED_USAGE_DISCOUNT'), 0)) AS cud,
  SUM(IFNULL((SELECT SUM(amount) FROM UNNEST(credits) WHERE type = 'COMMITTED_USAGE_DISCOUNT_DOLLAR_BASE'), 0)) AS flex_cud,
  SUM(cost) +
    SUM(IFNULL((SELECT SUM(amount) FROM UNNEST(credits)), 0)) AS net_cost_before_reseller
FROM
  `[project].billing_export.gcp_billing_export_v1_xxx`
WHERE
  _PARTITIONTIME >= TIMESTAMP_SUB(CURRENT_TIMESTAMP(), INTERVAL 6 MONTH)
GROUP BY month
ORDER BY month DESC;

リセラー割引は Google の請求データには出てこない(リセラーが Google に支払った後に、お客様向けに別途請求する仕組みのため)ので、別途リセラーからの請求書で確認します。


実務でのチェックポイント

① 自社の利用構成を「3 層」に分解できているか

請求代行を検討するとき、ほとんどの記事は「割引率 ○%」だけで比較します。でも実際の節約額を見積もるには:

自社の月額 GCP 利用 = A
A のうち SUD 適用済み分 = B
A のうち CUD 適用済み分 = C
A のうちオンデマンド分 = A - B - C

リセラー割引の対象 = (A - 一部 Marketplace 等の対象外)

を整理する必要があります。BigQuery の請求エクスポートを SUD/CUD ごとに集計するクエリ(上記)を一度走らせると、自社がどの層でいくら節約しているかが可視化できます。

② Marketplace と OS ライセンスは大抵対象外

Google Cloud Marketplace で買った SaaS(Datadog、MongoDB Atlas など)や、Windows Server などの OS ライセンス料金は、ほぼ全てのリセラーで割引対象外です。自社の請求書で Marketplace 経由の割合が大きい場合、表示割引率と実質額の乖離が大きくなります。

-- Marketplace 経由の利用額を分離
SELECT
  CASE
    WHEN sku.description LIKE '%Marketplace%'
      OR service.description = 'Marketplace' THEN 'Marketplace'
    ELSE 'Standard GCP'
  END AS category,
  SUM(cost) AS total_cost
FROM
  `[project].billing_export.gcp_billing_export_v1_xxx`
WHERE
  _PARTITIONTIME >= TIMESTAMP_SUB(CURRENT_TIMESTAMP(), INTERVAL 30 DAY)
GROUP BY category;

③ Workspace は別契約

Google Workspace の利用料は GCP の請求とは別系統です。Workspace まで割引対象にしてくれるリセラーは限定的なので、Workspace を含めて節約したい場合は事前確認が必要。

④ CUD のコミット先がリセラー依存になる場合がある

リセラーによっては、CUD の契約名義がリセラー側になるケースがあります。リセラーを変更したときに CUD の引き継ぎができるか、解約時に CUD のコミット期間が残っていた場合の扱いはどうなるか、契約段階で確認が必要です。


まとめ

Google Cloud のコスト削減は「割引率 ○%」という単一の数字で語られがちですが、実態は SUD → CUD → リセラー割引の 3 層構造で、それぞれが独立して効きます。

請求代行サービスを評価する時に重要なのは:

  1. CUD/SUD が効いた後の金額に対して、リセラー割引がいくら追加で節約してくれるかを見積もる
  2. リセラー割引の対象外となるサービス(Marketplace、OS ライセンス、Workspace 等)の自社利用比率を把握する
  3. リセラー切り替え時の CUD コミット引き継ぎ条件を契約前に確認する

「割引率 15%」のリセラーと「割引率 3%」のリセラーで、Marketplace 比率が高い環境だと実質的に同じくらいの節約しかできない、というケースもあります。逆に、純粋な Compute / Storage / BigQuery 利用が中心の環境だと、表示割引率の差がそのまま効きます。

自社の請求書を BigQuery にエクスポートしている方は、上記のクエリで一度自社の「割引の3層構造」を可視化してみることをおすすめします。


関連リソース


弊社(クラウドコスト)はAWS・Google Cloudの請求代行を提供していますが、この記事はあくまで技術的な整理が目的です。

質問やフィードバックがあればコメントでお気軽にお願いします。

#GoogleCloud #GCP #BigQuery #コスト削減 #FinOps

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