Claudeに3つのサブエージェントにそれぞれ人格を持たせて多角的に投資について議論させてみた
はじめに
何かにつけて判断を行う際、人間が判断すると様々な要因でバイアスがかかってしまうので都合の良い解釈に偏りがちですよね。
特に資産運用になると
「今は米国株が強いから100%米国株でいいかな」
「最近株価が下がってるし、一旦売った方がいいかも」
みたいなことよくあると思います。
そんなとき、客観的な視点で議論してくれる相手がいたら便利だと思いませんか?
そこで、Claudeに3つの異なる人格(エージェント)を持たせて、投資判断を多角的に評価させる仕組みを作りました。
GitHub: https://github.com/hiroelza/aurum
なぜ作ったか
投資判断を1つの視点だけで決めると、こんな問題が起きます:
- 統計だけ見る → 高リスク投資に偏る
- 税制だけ見る → 節税優先で投資効率が悪化
- 感情だけで決める → タイミングを見誤る
そこで、3つの視点で議論させることで、バランスの取れた判断ができるようにしました。
3エージェントの役割
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哲学エージェント - 投資原則との整合性を評価
- 低コスト・インデックス投資
- 全世界分散
- 長期保有、市場タイミングを取らない
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統計エージェント - 過去データに基づく分析
- 期待リターンとボラティリティ
- モンテカルロシミュレーション
- 達成確率の計算
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税制エージェント - 税制上の最適性を評価
- NISA、iDeCoの活用
- 税制優遇の最大化
- 売却タイミングの税務判断
実際の使用例
ケース1: 米国株100%のポートフォリオは妥当か?
私: 「米国株100%のポートフォリオはどう思いますか?」
哲学エージェント(6点):
「全世界分散が原則なので、米国一極集中はリスクが高い。ただし、米国市場の流動性と透明性は評価できる。」
統計エージェント(8点):
「過去50年のデータでは、米国株は年率7-10%のリターン。ボラティリティは高いが、長期保有なら統計的に有利。」
税制エージェント(9点):
「NISA枠内なら非課税。為替差益も非課税対象。税制上の問題はない。」
総合評価: 7.7点
判断: 許容範囲だが、全世界株式への分散を推奨
ケース2: 積立を一時停止すべきか?
私: 「株価が下がってるので、積立を止めた方がいいですか?」
哲学エージェント(2点):
「市場タイミングを取らないのが原則。積立停止は投資哲学に反する。」
統計エージェント(3点):
「過去データでは、下落時に積立を続けた方が平均取得単価が下がり、長期リターンが高い。」
税制エージェント(5点):
「積立停止による税制上のデメリットは少ないが、NISA枠の使い残しがもったいない。」
総合評価: 3.3点
判断: 積立停止は推奨しない。むしろ買い増しのチャンス。
技術的な仕組み
Claude Code の設定
.claude/agents/ にエージェント定義を配置するだけです。
.claude/
├── agents/
│ ├── investment-advisor-hayato.md # 哲学エージェント
│ ├── investment-researcher.md # 統計エージェント
│ └── investment-advisor-japanese.md # 税制エージェント
└── CLAUDE.md
各エージェントには、以下を記述します:
- 役割(哲学・統計・税制)
- 評価基準
- 参照すべきデータ(
INVESTMENT_PROFILE.mdなど)
統計計算のバックエンド
複雑な統計計算(モンテカルロシミュレーション、達成確率)はPythonで自動化しています。
Claudeが「統計的な分析が必要」と判断すると、自動的にPythonスクリプトを実行します。
セキュリティ対策
個人の金融情報は .gitignore で除外しています。
INVESTMENT_PROFILE.md
python/config/personal.py
sources/profile/
outputs/
うまくいった点
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感情的な判断を防げた -
下落時に「売りたい」と思ったとき、統計エージェントが「過去データでは逆効果」と冷静に指摘してくれた -
偏った判断を避けられた -
税制だけ見て判断しそうになったとき、哲学エージェントが投資原則を思い出させてくれた - 議論の過程が残る - 「なぜこの判断をしたか」が記録されるので、後で振り返れる
失敗した点・次に活かしたいこと
-
エージェント間の議論が浅い → 実装完了 ✅
- 3ラウンド構造化議論プロトコルを実装
- 並列評価(公平性)とラウンド間相互作用(議論性)を両立
- ファシリテーターは進行管理のみ(内容に介入しない)
- 数値の根拠が不明確 - 「8点」の根拠をもっと明示的に出力する仕組みが欲しい
まとめ
3つのエージェントに議論させることで、感情に流されない投資判断ができるようになりました。
資産運用に限らずと迷ったときに、冷静な視点で評価してくれるのが便利です。
興味があれば、ぜひ試してみてください。
GitHub: https://github.com/hiroelza/aurum
免責事項
このツールは投資助言ではありません。すべての投資判断は自己責任で行ってください。