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FDE(Forward Deployed Engineer)の台頭と、AI時代の新卒エンジニアが歩むべき道

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はじめに

「AIがコードを書くようになれば、エンジニアは不要になるのか?」

最近、どこへ行ってもこの議論になります。CursorやGitHub Copilotの進化を見れば、確かに「仕様通りのコードを書く」という作業自体の価値が、限りなくゼロに近づいているのは間違いありません。

しかし、逆説的ですが、「AIがコーディングする時代だからこそ、FDE(Forward Deployed Engineer)的な動きができるエンジニアの価値は暴騰する」と私は考えています。

なぜなら、コーディングのコストが下がるほど、ビジネスのボトルネックは「どう作るか(How)」から、「現実世界のカオスをどうコードに落とし込むか(Translation)」へとシフトするからです。

今回は、パランティア社などが提唱するFDE(前線配置エンジニア)という概念を補助線に、AI時代に求められるエンジニアの役割と、これからキャリアをスタートさせる新卒エンジニアが取るべき生存戦略について整理してみたいと思います。

「動くコード」はコモディティ化する

まず前提として、AIによって「プロトタイプを作るコスト」は劇的に下がりました。
これまで3日かかっていたデモアプリの実装が、AIを使えば3時間で終わる。そんな世界がすでに到来しています。

こうなると、顧客に対して「技術力があります(難しいコードが書けます)」というアピールだけでは、差別化ができなくなります。
画面の裏側にあるロジックがどれだけ優れていようと、顧客からすれば「それ、AIでも書けるものでしょ?」と見なされるリスクがあるからです。

では、AIに代替できない「エンジニアの価値」とは何でしょうか?
それは、「文脈を理解して、曖昧な現実を解釈する力」と「現場の責任者として、結果を約束する力」です。

すべてのビジネスには「ラストワンマイル」の断絶がある

FDEの重要性は、なにも巨大なエンタープライズや政府機関に限った話ではありません。数千万円、あるいは数百万円規模のB2Bビジネスであっても、構造は同じです。

SaaSやパッケージソフトは「汎用的な80点」を提供しますが、顧客の現場には必ず、それでは解決できない「固有の業務フロー」や「歪なデータ構造」が存在します。
この「残り20%の断絶」を埋めない限り、システムは定着しません。

AIは「きれいな仕様」を与えればコードを返しますが、現場の「カオス」を整理し、「A部署とB部署の利害調整」を行い、「本当に必要な機能は何か」を定義することはできません。

決裁者にとって、システム導入は失敗できない投資です。最後に見るのは機能表ではなく、「何かあった時に、こいつなら逃げずに最後までやり切ってくれるか」という、目の前の人間に対する信用です。

Zoomやチャットボット越しではなく、現場に飛び込み、顧客の顔を見て、膝を突き合わせて議論する。
そういった「ウェットな人間関係」を土台にビジネスを動かせるエンジニアだけが、AIを武器として使いこなせるのです。

「AI以上の実装力」はいらない。「翻訳者」になれ

AI時代において、人間がAIよりも速く正確にコードを書くことは、もはや不可能です。そこに勝負を挑む必要はありません。

求められるのは、「AIと現実世界の翻訳者」としての能力です。

AIは「文脈(Context)」を読むのが苦手です。
「この書き方だと、将来の保守で困る」「このライブラリは、顧客のセキュリティ要件的にNGだ」。こうした現場特有の文脈を理解し、AIが出してきたアウトプットに対して「責任を持つ」のがFDEの仕事です。

AIは平気で嘘をつきますし、責任を取ってくれません。
もしシステムが止まった時、顧客に頭を下げるのはあなたです。

「AIが書いたので分かりません」と言うエンジニアに価値はありません。
「AIに書かせましたが、私が中身を検証し、責任を持って担保しています」と言えるかどうか。
この「責任」の所在こそが、AIとエンジニアの決定的な境界線になります。

新卒エンジニアの「成長のパラドックス」と生存戦略

ここで深刻な問題になるのが、「これからキャリアを始める新卒エンジニアはどう育つべきか」です。

ベテランは過去に「自分の手で書き、バグに苦しんだ経験」があるからこそ、AIのコードの良し悪し(翻訳の精度)を瞬時に判断できます。しかし、最初からAIがある新人は、どうやってその「目利き力」を養えばいいのでしょうか?

安易に「AIに書いてもらって完成」を繰り返していると、「動くものは作れるが、中身がわからない」というブラックボックスを抱えたエンジニアになってしまいます。これからの新卒エンジニアが取るべき戦略は、以下の2点に集約されます。

1. 「なぜ動くのか」への執着と、学習用コーディング

AIにコードを書かせるのは構いません。しかし、「なぜこのコードで動くのか」「なぜこの書き方が選ばれたのか」を、他人に説明できるレベルまで読み解く必要があります。

レビュー力とは、単なる知識ではなく「筋力」です。
業務ではAIを使って効率化しても構いませんが、学習のフェーズでは、意識的にAIを封印して「自分の手で書く」時間を持つべきです。
「ここでこの書き方をすると、後でバグりそうだ」という勘所は、実際に自分でロジックを組み、失敗し、修正するというプロセス(=書くこと)を経て初めて身につきます。

2. 「ドメイン知識」への投資

コード(How)の生成コストが下がる分、浮いたリソースを「顧客のビジネス(What/Why)」の理解に充てるべきです。
AIが苦手なのは、「文脈」を理解することです。関わる人たちの政治、投資に至る背景、決済者の理解などに加え、会計、物流、医療、製造現場のルール。顧客と同じ言語で話せるようになればなるほど、「翻訳者」としての精度は上がり、AIに的確な指示が出せるようになります。

AI時代でも変わらない「時間の使い方」の差

AIを使えば、仕事は早く終わります。8時間かかっていた実装が、2時間で終わるかもしれません。
ここで、「残りの6時間をどう使うか」で、残酷なまでの差がつきます。

多くの人は「仕事が早く終わった」と休み、プライベートの時間に充てるでしょう。それは悪いことではありません。
しかし、頭一つ抜けるエンジニアは、その浮いた時間を使って「あえてAIを使わずにコードを書く訓練」や、新しい技術のキャッチアップに時間を投じています。

  • Aさん:AIを使って仕事を効率化し、定時で帰ってリラックスする。
  • Bさん:AIを使って仕事を効率化し、浮いた時間で基礎力向上のための「練習(自力実装)」を続ける。

1年後、両者の「レビュー力(目利き)」には埋めがたい差が生まれています。
Aさんはいつまでも「AIが書いたコードの真偽」に不安を持ち続けますが、BさんはAIを完全に手足として支配できるようになります。

「他人が休んでいる間に、どれだけ学習に時間を投下できるか」。
ツールがいかに進化しようとも、結局のところ、プロフェッショナルとしての実力差は「地道な鍛錬の総量」で決まる。
これは昔から変わらない、普遍的かつ残酷な真理なのです。

まとめ:「High Tech」には「High Touch」が必要だ

シリコンバレーには昔から「High Tech, High Touch」という言葉があります。技術が高度になればなるほど、人間的な触れ合い(High Touch)の価値が高まるという意味です。

AIという究極の「High Tech」が普及する今、それを現場に届けるラストワンマイルを担う「High Touch」なエンジニア、つまりFDEの重要性はかつてないほど高まっています。

これからの時代の優秀なエンジニアとは、AIよりもすごいコードが書ける人ではありません。

「AIという強力なエンジンを使いこなし、出力された内容に責任を持ち、顧客の顔を見てビジネスを動かせる人」。

そんな「責任ある翻訳者」こそが、AI時代の覇権を握るのではないでしょうか。

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