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「Code for 選挙」あれこれ-その2(松戸支部)

Last updated at Posted at 2018-12-02

2018/11/18松戸市議選の投票が行われ、投票率は前回の37.74%から36.19%へと-1.55%の微減。年初あたりからテクノロジーのチカラで投票率アップに寄与できないかと試行錯誤してきたが残念な結果に終わってしまった。まぁそんなにうまく行くわけないか。
2018_suii.png
元データ
とはいえ得るものは多かった。この場で共有することで来年に控える統一地方選などで同様のことをやってみたい方のヒントになれば幸いである。(やりたい人にはタイミングがあえば説明に伺いますよー)

はじめに

仕事の波やら何やらでまとまった時間が取れないうえに何をやったら良いかも見通せておらずCode for 選挙のみんなに呼びかけながら作業を進めることが難しかったので、技術者ではない自分ができることをやるしかない状況だった。ちなみに私のスキルはgithubはブラウザからしか触れないレベルと言ったら分かって頂けるだろうか。それで開き直ってひたすら自分でやった結果、ブログ記事を書いたりエクセルを使えるくらいのスキルがあればたぶん大丈夫でほぼ無料で使えるものばかり、という技術スタックになったと思う。

やったこと

「数字で見る松戸市議選」シリーズ記事の発信

松戸は東京に隣接し、いわゆる千葉都民が多い土地柄。投票率を見ても年代では20代から50代の現役世代、性別では男性の投票率が低い。こういった方々を念頭に地域の選挙に関心を持ってもらうきっかけづくりを狙いとして、選挙の1カ月ほど前から「数字で見る松戸市議選」シリーズ記事を1日1件ほどのペースでtwitterで発信し、ブログにもまとめた。(「DIO選挙プロジェクトまつど」メンバーの別の方が記事を見やすくまとめてくれたものはこちら)投票5日後の2018/11/23(金)AM10時現在でアクセスの多かった順にいくつか挙げてみる。

第1位 時間帯別投票率(締切2時間前の18時現在)

アクセス数:1512
時間帯別投票率(締切2時間前の18時現在)
元記事
投票率は1-2時間ごとに15分遅れ程度でリアルタイムに近い形で速報として以下のように公表された。
投票率速報_20181118
これを見ながら手動で2018年の時間帯別投票率を発表の都度転記し、前2回との推移差をGoogle spread sheet上で視覚化したもの。時間的に前回より投票率が低下しそうなことがおおよそ判明した頃で、結果が出る直前の記事がいちばん関心が高かった。

第2位 立候補者ビューアー

アクセス数:1248
立候補者ビューアー
元記事
Airtableを使って立候補者一覧を元にフィルター、ソート、グループ化といった操作を簡易的にできるようにしたもの。(PCでの閲覧用)
立候補届出状況選挙公報、選挙ポスターといった紙での見せ方中心の情報提供では数が増えると並び替えや横比較が難しいので、納得のいく候補者選びがなかなかできない。また立候補者が選挙公報に書いている内容は自分の書きたいことが最優先になっており、そこに書かれていないことは当然ながら広報を見ているだけではまったく分からない。そのためひとり選ぶ決断をすることが難しく、結果的にとりわけ無党派層の投票率低下の一因になっているのでは?政策やスタンスの分析まではできないが、党派、年齢、性別といった自明な属性で候補者のことを理解したり絞り込んだりするのに使ってもらうことを目指した。告示後に公開された選挙公報についてはテキスト化する時間が無かったため画像として候補者ごとに切り出してこの表の中に埋め込んだ。
なお、この表はスプレッドシートでデータを準備すればそこからのコピペで簡単に作れる。1点残念なのはいちばん使いやすい表形式のグリッドビューがスマホに対応していない点。

第3位 町名別投票所ビューアー

アクセス数:801
町名別投票所ビューアー
元記事
これもAirtableを利用。投票習慣の無い方は割と投票ハガキどこにやったっけとなりがちだが、実は投票ハガキを無くしても手ぶらで投票所に行って用紙に記入すれば投票できる。
そんな時にこのビューアーで自分の住所(町丁目)をもとに、選挙当日にどの投票所に行けば良いかを探すことができる。

(以下、類似の記事は省略)

第6位 立候補者事務所別選挙公報マップ

アクセス数:463
kouhosha_office.png
元記事
立候補者の事務所所在地にピンを置き、マップ上で立候補者の選挙公報や属性情報を閲覧できるようにしたもの。選挙公報は全体がPDF画像として公開されているため、特定の候補者の分を見るには順にめくるしかなく、属性で選んだり並べたりすることが極めて難しい。ここでは地理的に馴染みのあるご近所の候補者がどんな人か見てもらうことを意図してマップ上に可視化した。

第8位 期日前投票所マップ(関連情報つき)

アクセス数:389
kijitumae_tohojo.png
元記事
期日前投票所での投票期間、投票ハガキが無くても投票できることを添えてマップ上に可視化し、ピンから写真や駐車場情報も見られるようにした。

第10位 議員政務活動費の使用率

アクセス数:368

元記事
内訳には感じるところもあったが主観的な評価はさておき、ひとり月5万の政務活動費をどれだけ使っているかを可視化した。会派により使用率の差がみられ、いわゆる野党的な会派ほど使用率が高かった。

第11位 議員提出議案内訳

アクセス数:334

元記事
分かっている人には自明のことかもしれないが野党単独提出での可決はゼロ。一般には分かりにくい会派の与野党の位置づけを可視化することで、投票時に候補者の会派が持つ意味付けを認識してもらうことを意図した。国政のように政党が政権を持つわけではないので与野党という言い方は正確ではないが保守系と革新系のカラーは歴然。

第18位 一般質問要約一覧

アクセス数:238

元記事
議会だより記載の一般質問要約を転記し、表形式で提供したもの。候補者の政策やスタンスを理解するための重要な情報だが、この要約であっても情報量が多すぎるため、見せ方はさらに工夫する必要がある。

投票所はあっちプロジェクト(お手伝い)

IMG-5691.JPG
mabashi3.png
投票所はあっちプロジェクトで用意してくれている柔らかめのキャッチコピー付きのカラフルな矢印を街角に貼ったり持って立ったりして投票があることを思い出してもらおうとするもの。DIO選挙プロジェクトまつどの別の方が中心となって矢印パネルを作成したり、店舗や個人宅にお願いして貼らせて頂いたりした。準備は結構たいへんで、6月の市長選では結局間に合わず今回がはじめての実施となった。場所は前回投票率が全100箇所中93位(31.11%)であった馬橋集会所をターゲットとし、期日前投票期間中(投票日は11/18、期日前投票は11/12-17)11/14頃から7箇所に矢印とOSMベースの案内地図を貼らせて頂いた。ちなみに実際にやったのは私ではなく全て別の方。
結果は馬橋集会所の投票率が31.65%と前回比では+0.54%の微増(投票率自体は全97箇所中88位ながら増減では8位) :) 因果関係の証明は難しいが、全体的な投票率が低下した中、増減内容を男女別に見ると女性が-0.12%(+15人)に対して男性は+1.22%(+48人)と男性の伸びが見られた。もしかしたら千葉都民に相当する方々が通勤の行き帰りに目に留めてくれたのだろうか。この結果はもう少しこの活動を続けてみたいという気にさせてくれるものであった。

その他

せんきょCAMPまつど

 告示の3週間ほど前に他団体が主催したイベントでDIO選挙プロジェクトまつどは共催的に参加(私は不参加)。市議(立候補表明は公式にはできないタイミング)と市民の対話の場。その効果等は把握していないが、選挙にかかわらずこのような対話を続けていくことが投票率の向上につながるのではないか。

選挙割

 参加店舗を募って投票した人に何らかのサービスを還元する仕組み。還元する内容は店舗が自由に設定。居酒屋であればつまみを1品サービス等。投票時にもらえる「投票済証明書」を参加店舗で提示すればサービスが受けられる。今回は他団体の方がfacebookを中心に参加店舗を募って実施していた。こちらも利用者状況等は把握していないが、お祭りムードを盛り上げたり、街の話題としての広がりに効果はあるのでは。なお、カタカナのセンキョ割は登録商標なので勝手には使えない。

使ったツールまとめ

  • Wikidata  利用は必須ではないが作業開始時の基礎データ収集や最終データの集約用に適している。刻々と変化する情報はspread sheetでやったほうが便利。詳細は別途まとめ予定。
  • Wikimedia commons  投票所の写真置き場として利用。投票区などポリゴンデータも置けるのだが、今回はデータ入手できず。
  • OpenStreetMap  まずは投票所(学校、市民センター、公民館など)のマッピング。現地調査の際には写真撮影必須。住宅街では目印が少ないのでマンション/アパート名、会社の看板などが重要。投票所までの経路が分かりにくいところも多いので歩行者経路は重要。大きな施設では入り口を示すことも必要。
  • uMap  当日投票所や期日前投票所の案内地図を作成。投票所ごとの投票率、選挙事務所ごとの立候補者情報など可視化ツールとしても利用。
  • maps.me  OSMベースの地図・経路検索アプリmaps.me用にOSMデータを整備して、投票所の経路検索ができることを目指した。が、経路整備が間に合わず次回のお楽しみとした :)
  • Airtable  データを表形式で登録し、表やカード形式でデータを閲覧、検索できるサービス。(使ったことないけど)たぶんkintoneみたいなイメージ。表はいくつでも登録でき(手動登録でも、スプレッドシートからのコピペでも可。無料サービスはレコード数1200件まで)各表の左端列は自動的にその表のキー項目となり、トランザクションの表とマスターや区分の表を分けて、マスター参照して名称表示する、といったことが全てコードを書くことなしにブラウザからのUI操作で可能。 表にはビューを設定して共有URLを取得できる。一般利用者は共有URLをブラウザで開くとデータが表やカード形式で表示され、ソフトウェアを意識せずにフィルター、ソート、グループ化といった簡単なデータ操作ができる。iframeでウェブサイトへの埋め込みも可能。 スクラッチで検索サイトやアプリを作ろうとすると、条件を指定して1件ずつ選ぶような作りこみを割としがちだが、このツールのように最初にずらっと全体を見せておいて、そこから絞り込むI/Fはとても使いやすかった。
  • Google spread sheet  データの整備と共有に不可欠。今回は視覚化ツールとしてもグラフ機能を多用させてもらった。
  • blogger ポータルサイトとしてWordpressはもちろん良いんだけど、セキュリティアップデート等々サーバー管理が必要になってしまうので、そのあたりを意識せずにすむように出来合いの無料ブログサービスの中から、比較的スクリプトの利用制限が緩くて(iframeやある程度のscript可)広告も無いbloggerを選んだ。
  • twitter  情報発信の形態として、自分に地域の政治に関する知見があまり無かったことと、主観的な意見は控えたかったため、じっくり系の読み物は避けてtwitterで事実を中心に短く情報発信する方針とした。

ふりかえり

良かったこと

  • 何よりも地域の多様なメンバーと一緒に活動できたことが良かった。そういえばまだあまりちゃんとした自己紹介を相互にしていないのだが、職業、性別、年齢等々、多様なメンバーで、たいへん面白かった。
  • データの共有ができた。以前から選挙に関わる活動をしていたメンバーもいたが、従来それぞれで集めていた立候補者の情報をspread sheetに書き込むことにして、直接立候補者に聞いたり、facebookで市民からの情報提供を受けたり、ちらしから集めたり、立候補者のブログやツイッターで見つけたり、様々な情報源からの情報を集約・共有することができた。その結果、立候補届け出締切より先に立候補者の一覧は出揃っていた。
  • 効果測定はアクセス数程度でしかできないが、数字を元にグラフ等で視覚化して客観的な情報を分かりやすく提供することはある程度できた。告示日から投票日まで7日間という短い中で、立候補者の一覧や選挙公報もAirtableを使ってある程度わかりやすく伝えることができた。

課題

  • データ収集の面では、議会だよりや選挙公報といったPDFからの文字起こしにかなり手をとられた。会議録はテキスト化されているのだが、公開が遅い(議員任期中最終となる2018/9月議会の議会録について、「議会だより」の中で要約が公開されたのが市議選18日前の2018/11/1会議録に至っては市議選が終わって1週間経った2018/11/25現在でも未公開)という手続き的な課題と、内容が膨大であるが検索しやすい形になっていないため、読み込むのに膨大な時間を要する、という技術的な課題がある。
  • 今回、情報提供の形式については立候補者情報などの閲覧や検索のしやすさに力を入れたが、制度的な面で、やはりどう考えても今回のような下記スケジュール感では市民が立候補者のことを十分に知るための時間が無さすぎる。
    • 2018/11/11 立候補締切、告示、選挙運動解禁、選挙ポスター掲示開始
    • 2018/11/12 立候補届出一覧の公開、期日前投票の開始
    • 2018/11/13 選挙公報公開
    • 2018/11/17 選挙運動終了、期日前投票終了
    • 2018/11/18 投票
  • 技術面ではAirtableのグリッド形式ビューがスマホから閲覧できない点が残念であった。

気づき

地方政治は面白い

地元の議会や選挙のことについて調べたり詳しい人に話を聞いたりするのは初めての経験だったが、だんだん分かってくるとこれが面白い。こういった活動に関わること自体が投票率向上につながるだろうなぁと実感。まぁそんな人はそう多くは無いと思うけど。

活動方針の話

政党や候補者の好き嫌いはどうしても出てしまうが、そういった議論を公開の場で始めたら負け。エンドレスな局地戦が始まってしまう。Code forとしてやるべきはウィキペディアの編集方針のように、客観的な情報提供、両論併記、出典を示す、といった形だろうと思う。

人間系の話

選挙や政治というとても泥臭い分野の活動なので、オンラインやリアルでトンデモ系の人々と出会う機会も多く、techieなメンバーだけだとかなりツライと思う。情報発信に際しては公職選挙法の知識も多少必要なので、ある程度地方政治に詳しい人や議会ウォッチャー的な人たちとの連携は不可欠。

今後のTODO

地域的に

  • 2019/4 県議選対応
  • 「投票所はあっち」継続、効果測定方法の検討
  • Wikidata項目の充実(投票所、議員、投票区)
  • Wikipedia記事の作成(投票所、議員)→特筆性で引っかかりそうなのでlocalwikiかなぁ
  • マッピングの充実
  • 継続的な活動(議会開催ごとの分かりやすい情報提供、対話会などの開催)
  • 文字起こしなど、分担できそうな作業をうまく分担する仕組み

全般的に

提言

今回の経験を踏まえ、機会あれば以下のような提言をして行きたい。
1. 選挙公報の公開早期化
 立候補者の自己紹介兼選挙公約である選挙公報は立候補届出の締切日まで公開されない。実際にはそれからさらに印刷などの準備があるようで告示日の2,3日後にようやく公開・配布される。従って市民は選挙執行日までの実質4,5日で公報を入手し、全候補者(今回は59名)の中からひとりを選ぶ検討をしなければならない。選挙当日が不都合で期日前投票をする人にとってはもっと短い時間しかない。既に特定の支持者や支持政党がある人はあまり悩まなくてすむが、これから選ぼうとする人にとっては自分の1票にふさわしい候補者を選ぶ検討が十分にできないと投票に行く気にもなりづらい。ぜひ何らかの手立てで選挙公報をできるだけ機械可読な形式で早期に公開して頂きたい。
2. 議会録の公開早期化
 議会録は公式記録としての性質上、時間を掛けて何度か記録内容が精査された後に公開されるため、公開までにどうしても数ヶ月のスパンが生じてしまう。そのため、今回の例では9月議会の議会録公開が11/18の市議選投票に間に合わなかった。いちばんホットな直近の議会での質疑等が市民には知らされないまま選挙に望まなければならないのは明らかにおかしい。千葉市議会では会議録の正式版の前に暫定版を逐次公開している。市民への情報公開を考えるならば、内容訂正が行われ得る暫定版であったとしてもそれを早めに公開する意義は選挙にかかわらず極めて大きい。議会録作成事業者に相談して途中の版をもらいホームページに掲載するだけでできることだ。ぜひ多くの自治体でこのような暫定公開に取り組んで頂きたい。
3. 選挙結果の詳細公開
 選挙結果は市のホームページ上で得票数投票率が即座に公開され、状況把握にたいへん役立っているが、詳細なデータ、例えば年代別の投票動向をみようとすると選管に問合せたり、最終的にとりまとめられる選挙結果調の発行を待って、閲覧に赴かなければならない。これは非常にストレスフルで面倒である。でるだけ詳細なデータ(いわゆる生データ)をエクセルなどで処理しやすい形式で、選挙後直ちに公開して頂きたい。内容精査の手続きはあるとしても既にまとめた数字は公開済みであり、その元になった投票所(当日/期日前)別の時間帯別、性別のいちばん細かいデータを出すだけである。投票動向の分析には不可欠なデータであり、ぜひお願いしたい。
4. オープンデータ化
 選挙公報立候補届出状況(立候補者一覧)議会だより議会録といった、市民から見れば議員/立候補者のことを知るための基本的な情報について、今回あえて勝手に二次利用させて頂いた。しかしながら現状では明示的な利用規約が無いため、本来であれば電話等でいちいち問合せて利用許諾を得なければならない。これは全くナンセンスである。こうした公共性の高い情報は予めオープンデータとして明示的に二次利用等を許諾しておくべきである。選挙公報と議会だよりは独自に作成した文章や画像を含み著作物と考えられるため、その作成者に予めオープンデータとする旨を了解してもらう必要があるが、市民に広く伝える趣旨からしてこれはごく当然のことである。官民データ活用基本法に基づき全自治体でのオープンデータ化が推進されている中、選挙結果と併せぜひホームページ上にCC BY 4.0政府標準利用規約2.0等の条件で使える旨明記して、オープンデータとして頂きたい。
また、別の方経由で投票区の境界を示すポリゴンデータについて、手書きでも良いので頂けないか選管に問い合わせたところそのようなデータは現状ないとの返事を頂いた。投票区は投票率の分析を行う上でとても重要な要素であり、投票率の高低で投票区のエリアを色分けしたりするとその地理的な分布を分かりやすく視覚化することもできる。まずは手書きの境界線からでも構わないのでぜひデータを公開して頂きたい。

<「Code for 選挙」あれこれ-その1 | 「Code for 選挙」あれこれ-その3(Wiki*)>

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