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「Code for 選挙」あれこれ-その1

Last updated at Posted at 2018-05-13

Code for 選挙プロジェクトの活動範囲は国政選挙、地方選挙、データの標準化と整備、mySocietyとの国際連携など多岐に及ぶため現状は各人が目先でできることを進めている段階だが、どんなことをやっているのか私から見えている範囲だけでも逐次発信して行きたい。

1.目標

ひとことで言えば「投票率を上げよう」ということである。選挙にも行かずに天に唾するような言いっぱなしはやめようよ、ということだ。もちろん特定の政党を応援するものではなくテクノロジーを使って社会を良くしようというシビックテックな活動の一環である。しかしながら以前佐藤さんに頂いた指摘で目からウロコだったのだが、これは中立的なようでいて政治的には特定のポジションを取らざるを得ない活動でもある。なぜなら組織票を持つところは投票率が低いと概して当選しやすい、あるいは予測が立てやすいという面があり、こうした選挙方針には反するものであるからだ。変えたいと願う人が絶対正義ではなく、変えたくないと願う人がいることもまた認識しておく必要がある。
とはいえ、現状の選挙はあまりにもアナログで(意図的にそうしている面もある)結果として選挙で投票対象を決めるのに必要な情報に十分アクセスできない原因となっている。特に地方選。これについてはテクノロジーにより改善できそうなことが多々ありそうだ。当面の目標としては来年に控えている統一地方選に向けて、各地のCode forで類似の活動に興味を持ってくれそうな人への参考となりそうな事例を残して行ければと考えている。

2.DIO選挙プロジェクトまつど


Do It Ourselvesな社会をめざして千葉県松戸市で立ち上がったプロジェクトで、まずは2018年6月予定の市長選および11月予定の市議選に向けて市民に投票を呼びかけると同時に長期的には市民みずからが地域の運営に関わる社会にしていこう、というもの。私も地元ということで参加させて頂いている。複数のサブプロジェクトを計画しているが、今回は投票所はあっちプロジェクトを主に取り上げる。なお、私はこのプロジェクトにメンバーとして参加しているだけなので、本記事内の意見は全て個人的なものである。

3.投票所はあっちプロジェクトについて

3.1 背景

投票率を上げるにはどうしたら良いか。そう簡単にいく話ではないが、選挙に行く層が固定化されているとすれば、あまり選挙に行かない層はそもそも選挙があることや投票所の場所を知らなかったり、投票に行くつもりで投票ハガキを保管しないことも多いのではないだろうか。このプロジェクトは元々「投票所はあっち→」プロジェクトとして誰でも参加できるプラットフォームが用意されており、カラフルな矢印の看板(投票所案内板)を街中に貼りつけ、投票所までの道のりを案内するもの。やわらかくシンプルなコピーとイラストで、詳細な道案内というより気づきをもたらすリマインダーの側面が強い。その結果(直接の因果関係がどこまであるかの証明は難しいものの)投票率が上がった事例があるようだ。

今回は松戸でもこのプラットフォームを活用させて頂き、矢印の投票所案内板を街なかに配置しようとしている。

3.2 投票所

基本の一手として投票所のマップを作る活動はこれまでにも行われている。
例:市川市長再選挙 期日前投票所マップ(2018年4月22日実施版)
投票所の情報をオープンデータとして公開している自治体もあるが、松戸市ではこんな感じだったので、現地に行って写真を撮ったり位置を確認しつつ、にしたり、Wikidataに入力(作業中)したり、投票所近辺のOpenStreetMapを描いたりした。
期日前投票所については先の衆院選で投票日当日の悪天候が予測されていたため、足を運んだ人も多かったのではないか。従来の投票者層が投票する日が分散しただけで絶対数の増加につながっていないという声もあるようだが、人の集まるスーパーマーケットなどでの投票は間違いなく利便性が高いので案内を周知することで投票率向上につながる要素であるといえる。

3.3 投票所案内板をどこに置くか

松戸市には約100箇所の投票所があるが、DIO選挙プロジェクトまつどでは今回は2,3箇所に絞って実施し、投票率の増減という分かりやすい指標で効果を測ってみることにした。候補地の選定に際しては、前回の投票率が低かったり投票所を知らない人が多そうであったりと、効果が出やすいと考えられるところや、矢印案内板を貼らせてもらえそうなエリアを優先して検討した。

3.3.1 前回(2014年)市長選の投票所別投票率

2014年の選挙結果はとしては松戸市のサイトで公開されており、それを元にコロプレスマップ風にアイコンの色で数の大小を表現してみたのがこちら
2014Matsudo_sichosen2.png
赤から青へと投票率が増えている様子を示してみた。小さい茶色の丸は期日前投票所を示す。

松戸市は南西部の江戸川に近いところに市役所や松戸駅を擁する中心部があり、全般的には中心部で投票率が高く、周辺部で低い傾向が見られた。

3.3.2 松戸市投票率偏差値(H26-H29平均)

一方、中期的な傾向を見るために国政選挙も含めて投票率を偏差値に換算して分布をみてみたものがこちら(データはDIO選挙プロジェクトまつどの別の方が作成したもの)。
2014Matsudo_sichosen3.png
前回市長選単体とは数字の区切りがやや異なるため配色はやや異なって見えるが、濃淡はあれども全体的な傾向は似た状況である。国政選挙と地方選挙で傾向が多少違う投票所もあることにはあるが、いずれにしても赤色やオレンジで示されている投票率の低い投票所で試してみる予定である。

3.3.3 分析

選挙における争点、住民のプロフィール、歴史的・地理的な地域のカラーなど、投票率を左右しそうな要因はいろいろあると思われるが、マップに落とすと地理的な側面から見えてくるものがある。例えば2014年市長選で3番目に投票率が低かった投票所「プロムナード北松戸集会所」とその投票区のエリアをマップ上に可視化したものが下記
2014Matsudo_sichosen4.png
青い矩形:投票区
黄緑のピン:投票所
赤い線:投票所に向かう導線の候補

投票区の矩形内を見ると、西側には大きな工場、北側に戸建て住宅とマンションが少々、南東に複数棟の大型マンションがある。よって有権者はおおよそ北側と東側に分布していることが推定される。しかしながら矩形の南北方向の距離は直線で約850mあり投票所は南端に配置されているために、北端からは1km近い距離を歩かなければならない。車で行こうにも投票所はマンション内にあり、マンション住民以外の人が駐車できるスペースは無い。
また、投票区の南側にJR北松戸駅、北側にJR馬橋駅があるのだが、投票区北側の住民からは馬橋駅の方が近いため、通勤・通学時にはそちらを使っていると推定される。

個人差や地域差はあるにしても現代の日常生活で1km歩いて移動する機会は少なく、また普段通いなれた経路でなければ道がよく分からないケースもあるだろう。そのため、投票所の場所が分からなかったり、場所が分かっていても距離の遠さから投票に行くことを敬遠している人もいることが予想される。投票ハガキは受け取った時点で行くつもりで保管しておかないと紛失してしまうのは容易である。
従って、矢印の案内板で選挙があることを注意喚起したり、投票所のおおよその方向を示すことはリマインダーとしても有効なのではないかと考えられる。(ハガキは無くても投票できる)

ただし、現地調査したところ、赤い導線の経路には矢印案内板を貼らせてくれそうなところがあまり見当たらなかったため、今回の試行対象として別の投票区を再検討中である。(2018/5/13現在、馬橋及び常盤平地区が有力)

3.4 課題

オープンデータや情報公開の視点では割と課題の宝庫である :) 例えば投票区のポリゴンデータがあれば(少なくとも手書きででもあれば)選挙に関する多様な分析に使える。今回はひとまず現状ベースで作業を進めているが、市長選が終わった時点で課題については整理して改善要望をまとめていきたい。

つづく

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