問題
以下の不等式を表す領域を座標平面上に図示せよ.
\log_y x < \log_x y
(2016 茨城大)
解法 1
真数および底の条件より、
- $x>0$ かつ $x \neq 1$ かつ $y>0$ かつ $y \neq 1$
$\log_y x$ を $t$ とすると、不等式は、
t < \frac{1}{t}
と表せる。これに、$t^2$(明らかに正)をかける。
\displaylines{
t^3 < t \\
t^3-t < 0 \\
t(t^2-1) < 0 \\
t(t-1)(t+1) < 0 \\
t<-1 , \quad 0<t<1 \\
\log_y x<-1 , \quad 0<\log_y x<1 \\
}
さらに、$\log$ を外していくが、このとき、底が $1$ であるときを境に不等号が反転することに注意する。
- $0<y<1$ のとき、
\displaylines{
\log_y x<-1 \Leftrightarrow x>\frac{1}{y} \Leftrightarrow y>\frac{1}{x} \\
0<\log_y x<1 \Leftrightarrow 1>x>y
}
- $1<y$ のとき、
\displaylines{
\log_y x<-1 \Leftrightarrow x<\frac{1}{y} \Leftrightarrow y<\frac{1}{x} \\
0<\log_y x<1 \Leftrightarrow 1<x<y
}
最終的に、以下の図が得られる。
ややこしい
この解法では、かなりややこしい場合分けが必要になります。
座標変換を利用して、これを場合分けなし(本質的にはあまり変わりませんが)で解いてみます。
解法 2
\displaylines{
p = \ln(x) \\
q = \ln(y)
}
なる座標系を考える。このとき、与えられた条件は、
\displaylines{
\log_y x < \log_x y \\
\frac{\ln{x}}{\ln{y}} < \frac{\ln{y}}{\ln{x}} \\
\frac{p}{q} < \frac{q}{p}
}
と整理できる。なお、$x \neq 1$ および $y \neq 1$ から、$p \neq 0$ および $q \neq 0$ は保証される。
両辺に $p^2q^2$(明らかに正)を乗じて、
\displaylines{
p^3q < pq^3 \\
p^3q-pq^3 < 0 \\
pq(p^2-q^2) < 0 \\
pq(p+q)(p-q) < 0
}
を得る。
このとき、左辺の正負は、$p,q,p+q,p-q$ の $4$ つの因数にどれだけ負の数があるかによって決まる。具体的には、負の数が偶数個ならば正、そうでないときは負である。
各因数を満たす領域は以下のようになる。
これらを重ね合わせ、領域が重なる個数をカウントし、奇数個の領域に色をつけた図が以下になる。
つまり、$pq$ 平面における図は以下である。
さて、$pq$ 平面の座標系を $xy$ 平面の座標系に変換する。
\displaylines{
p = \ln{x} \\
q = \ln{y}
}
より、
\displaylines{
x = e^p \\
y = e^q
}
という逆変換がとれる。
これは、$p,q\in(-\infty<0) \cup (0<\infty)$ を $x,y \in (0<1)\cup(1<\infty)$ に写す連続写像である。
また、各直線(広義の曲線)は、
\displaylines{
p=0 \Leftrightarrow x = e^0 = 1 \\
q=0 \Leftrightarrow y = e^0 = 1 \\
p=q \Leftrightarrow e^p = e^q \Leftrightarrow y = x \\
p=-q \Leftrightarrow e^p = e^{-q} \Leftrightarrow y = \frac{1}{x} \\
}
と変換され、以下の図のようになる。
こんな変換、他に何に使うの
両対数グラフ で使います。