国連スマート地図グループでは、「伝習」によって実践コミュニティを拡大していきたいと思っています。「伝習」のプロセスで重要な要素と思われる①理念、②実演、③説明のバランスについて、このエントリーでは考えてみたいと思います。私たちは、ウェブ地図の知識やスキルを伝え合う「伝習」を実践するためには、これらの要素のバランスを取ることが重要だと考えています。
我々の国連スマート地図グループは、理念として「より良い世界のためにウェブ地図を開かれたものに保つ」というビジョンを持っています。また地理空間情報の運用において、未来を見据え新技術を試みるというミッションを定義しています。私たちは伝習を通じてこの理念を実現し、拡大しようとしています。
実演(デモンストレーション)は伝習をインパクトある形で具体化する重要な手段であると思っています。実際の場面で行動や手法を示すことで、学習者は直感的な理解を得ることができます。しかし、実演だけでは学びは困難です。説明する気がないならば、実演の成果が広く伝わるということはありません。実演者も、自分が何を実演したのか早々に忘れてしまうことでしょう。実演には、説明が随伴するべきでした。
説明は実演の背後にある理論や原則を明確にし、より深い理解を促進することができるはずです。学習者がなぜその行動や手法が有効なのかを知ることで、より広範な応用力を身につけることができます。また、実演者も、自分の行動や手法を振り返ることができ、さらに高いレベルの応用力を身につけることができるでしょう。実演者と学習者がそれぞれのレベルにおいて成長を遂げることにより、伝習が成立し、実践コミュニティがその存在価値を持ち、それによって持続することになります。
私自身は説明をするよりも次の実演に移りたい性格が強いので、これまで説明が十分ではなかったと反省しています。そこで、説明を効率的に作り出すために、実演の振り返りを熱いうちに大規模言語モデルに入力していくことで、説明を生成してみるというアイディアを取り入れることにしました。これにより、実演から得たフィードバックや洞察を高速に言語化し、より具体的な説明を学習者に提供できる可能性があると思っています。実際には、生成した説明に大幅に手を入れて、それをさらに大規模言語モデルに校正してもらう、といった対話的なプロセスを用いることになると思います。
これまで行ってきた数々の実演を反省する中で、私は説明の不足が伝習の失敗と実践コミュニティの不完全さに繋がっているという仮説を持つことができました。実演の振り返りを通じて得られるフィードバックや経験を大規模言語モデルに入力し、適切な説明を生成してみたいと思います。これによって、実演の意図や背景をより明確にし、学習者に深い洞察を提供することができるのではないかと思います。
伝習の道の中で、理念・実演・説明のバランスを保つことが重要であると思います。私たちは伝習を通じて知識やスキルを伝え合う際に、このバランスを意識し続けたいと思います。我々の理念に基づき、実演を通じて学びを具体化し、大規模言語モデルを活用して実演の振り返りから説明を生成し、技術の進歩につながる洞察を得ることができるのではないかと思います。
未来の地理空間情報運用のために、国連スマート地図グループは新技術に積極的に挑戦し、学びを進化させていきたいと思います。自己の学びのプロセスにおいて、理念・実演・説明のバランスを取りながら、より開かれたウェブ地図の実現に貢献しましょう。
国連スマート地図グループは常に新しい参加者を求めています。我々の活動には、https://github.com/unopengis/7/issues 等から参加いただくことができます。
追伸:最近の実演例です。
https://smb.optgeo.org/ipfs/QmdPqXGTh1hLdkkPqjLdaJFG1rA8c3UEtUbx1e95pLvtTG/#12.06/-1.4501/-48.46749
Raspberry Pi 4B上のIPFSノードに全世界をカバーしたベクトルタイルをホストして分散ウェブ技術でウェブ地図を実現しています。今後、これについて説明を生成することを考えると良いのだろうと思っています。