A判やB判の縦横比は1:√2である
ここのところAffinityの話題ばかり取り上げていたので、今日はAffinityから離れた小ネタ。
みなさんも、A判やB判の縦横比が $ 1:\sqrt2 $ になっていることはご存知のことと思う。
この縦横比になっていると、面積を半分にした時(長辺2つ折り、A判やB判では1つ数字が大きくなる)にも縦横比 $ 1:\sqrt2 $ が維持されるのである。
で、ふと考えた。
$1$ 、 $\sqrt2$ と来たら、次は $\sqrt3$ では…。
(のび太のハッとした様子のキャプ画像、画像省略)
行送り√3の法則?
$\sqrt3$ になっていそうなもの、それは行送りである。
いちおう印刷用語集を引いておくと、「文章内における行の中心から次の行の中心までの長さ」になる。
この定義によると、行送りは前行の文字下半分(縦書きなら左半分)と次行の文字上半分(同右半分)が含まれるため、2行の文字サイズが等しい場合、行間は行送りから文字サイズを引いた値になる。
で、この行送りが、例えばワープロソフトのデフォルトで $\sqrt3$ → 文字サイズの約 173 % になっているのではないかということである。
なお、今回検証するのはあくまでデフォルト=A4縦置き・1段組み・10.5 pt の時の行送りであり、行長や文字サイズが変われば最適な行送りの値も変わってくる(行長が短ければ行送りは小さくてよく、逆に行長が長ければ行送りを多めに取る必要がある)。
Wordがビンゴ…意図的なのか?
早速Microsoft Wordのデフォルトを確認してみよう。
なお手持ちのPCに入っているWordが2010と2013しかなかったため、この2バージョンでしか検証をしていない。最新バージョンはデフォルトが変わっている可能性がある。
Word 2013でページ設定を開くと…

行数 36、行送り 18 pt である。
文字サイズは 10.5 pt。

ということは、 18 ÷ 10.5 = 1.714 = 約 171 %
ほぼ $\sqrt3$ と言ってよさそうである。
ただしこの設定、どうやらきりのよい行送り 18 pt で計算しているらしく、下部に余白ができてしまう。
36 行の方を基準に、用紙サイズと余白から最大限行送りを取った場合の試算もやってみる。
用紙の縦が 297 mm、上余白 35 mm、下余白 30 mmなので、1行目から最終行までの長さは
297 - 35 - 30 = 232 mm
これを 36 行で割ると
232 ÷ 36 ≒ 6.444 mm (*1)
10.5 pt の文字のサイズは、1 インチ(25.4 mm) = 72 pt より、
10.5 ÷ 72 × 25.4 ≒ 3.704 mm (*2)
(*1) を (*2) で割ると 1.739.. = 約 174 % となる。
$\sqrt3$ に非常に近い値が出た。
ここで、上記の計算だと1行分の行間を余計にカウントしているのではとツッコミを受けそうだが、Wordの場合は便箋のようなグリットで行数指定配置が行われるため、1行目の上と最終行の下の余白という形でこの行間が含まれる形となる。結果的にこの計算でよいと考える。
この 36 行や行送り 18 pt というデフォルトが日本語版のWordだけなのか海外も含めてなのか、はたまた$\sqrt3$ を意識して定められたのかはわからないが、とにもかくにも$\sqrt3$に近い行送り値となっていることは確かである。
デフォルトで使っている限り、私達は $ 1:\sqrt2 $ の紙の中に $\sqrt3$ を見ていたことになるわけだ。
なお、国産ワープロソフトで有名な一太郎は 40 字 40 行というデフォルト値のため、こちらは行送りが約 160 % となっている。


さらに、国産DTPソフトであるパーソナル編集長の場合。
デフォルトのマージン値が上: 17.00 mm、下: 12.00 mm、左: 11.60 mm、右: 11.60 mmという時点ですでに異質だが、文字サイズが 10.0 pt、行送りは 150 % となっている。

ということで、$\sqrt3$ の法則化には至らず。ちと残念。
√3と二分四分
$\sqrt3$ = 約 173 % と非常に近い値として、行送り 175 % = 行間が文字サイズの4分の3というのがある。
行間二分四分なんて言われ方をすることもあり、本文組みでもわりと使われる行間のようだ。
$ 1:\sqrt2:\sqrt3 $ と二分四分、偶然にしてはよくできている。
