Wordの差し込み印刷機能のようなもの
従来Affinity Publisherの一機能だったデータ結合機能は、Affinity by Canvaにも搭載されている。
Microsoft Wordで差し込み印刷機能を使ったことがある人であればどんな機能かは見当がつくだろうが、Affinityのデータ結合機能は画像ファイルも簡単に差し込み対象にできてしまう優れものである(なお、Wordでも画像の差し込み印刷はできるようだ)。
Affinityのデータ結合機能については公式マニュアルやCS5ブログなどで使い方が紹介されている。
V2までとAffinity by Canvaで若干操作の違いがあるため、簡単に解説したい。
差し込み用のデータを用意する
今回はサンプルとして、関数電卓のカタログを作ることにする。
まずはデータの作成。データソースとしてテキストファイル(プレーン、CSV、TSV)、JSONファイル、スプレッドシート(XLSX)が利用できる。
例えばLibreOffice Calcで以下のような表を作り、XLSX形式で保存する。

画像を差し込みたい場合、ファイルのパス名(絶対パスでも相対パスでも可)を記述する。
今回はimgフォルダを作ってその中に画像ファイルを入れることにした。
相対パス名だと頭に img\ を付けることになる(Windowsの場合。環境によって円記号に見えたりバックスラッシュに見えたりする。macだと区切りは / になるだろう)。
画像サイズは揃えておいた方がよいが、今回は実験を兼ねてサイズ・形式がバラバラなままで使うことにする。

カシオの商品写真はAVIF形式だったが、Affinity側が未対応であるため、クリップボードから新規作成→Affinity形式で保存し直した。
ドキュメント設定
RGBプリセットの場合マージンが設定されていないが、必要に応じてマージンを設定すると作業がやりやすいだろう。

データソースの指定
新規ドキュメントができたらレイアウトスタジオに切り替える。
ウィンドウ→レイアウト→データ結合と操作し、データ結合パネルを開く。

シンプルなパネルが現れるので、「データファイルを追加」ボタンを押す。

作成したXLSXファイルを開く。

ソースに選んだファイル名が表示され、パネルがこのような内容に変化する。

が、表パネルと同様、これは一部である。下部をドラッグすると…

実際にはこれだけの項目が入っている。
ここまで伸ばしておかないと必須の機能にたどりつけないので、基本的にはここまで伸ばしておく(邪魔になった時はパネル名をダブルクリックすると最小化できる)。
「高度なデータツール」ボタンを押すと、データの内容を見ることができる。
全データ正しく読み込めているか確認しよう。

なお、データソースのファイルを書き換えても自動更新されないことがある。
データを書き換えた後はリフレッシュボタンを押すとすぐに反映させることができる。
1ページに複数レコードを差し込みたい場合
1ページに1レコードを差し込む場合はこのままフィールド挿入・割り当て作業を始めてよいが、1ページに複数レコードを差し込みたい場合は予め1レコード分の領域を割り当てる必要がある。
この作業ではデータ結合レイアウトツールを用いる。

全体サイズを指定した後、ツールバーで分割数などを設定する(ツールバー右側は省略したが、レコードの起点も設定可能)。
なお、分割数は左が行数、右が列数で、アイコンは逆に思える。

テキストを差し込む
テキストはフレームテキストツールを使っても、アーティスティックテキストツールを使ってもよい(後者は基本的には折り返しができない)。
どちらに対してもフィールドを設定することが可能だ。

注意が必要なのは、1ページに複数レコードを差し込みたい場合で、データ結合レイアウト枠を選択した状態で上記のツールを使う必要がある。
正しく設定できた場合、レイヤーパネルではデータ結合レイアウトの1階層下に表示される。

もし下記のようにデータ結合レイアウト枠と同じ階層になってしまった場合、レイヤーパネルでサムネールをデータ結合レイアウト枠のレイヤー名へドラッグする(画像差し込み・QR差し込みの場合も同様)。


テキストが入力できる状況ができたら、「フィールドを挿入」→差し込みたいフィールド名を選ぶ。

フィールド名が<>で括られて表示される。

レコードをプレビューにチェックを入れると、実際の差し込みイメージが確認できる(1ページに複数レコードを差し込む場合でも、プレビューは全て同じものが表示される)。

画像を差し込む
画像の差し込みは、まずピクチャフレーム(長方形ツール/楕円ツール)で範囲を指定する。

ピクチャフレームをダブルクリックで選び(もし選べない場合はレイヤーパネルで選択)、「フィールドをバインド」→差し込みたいフィールド名を選ぶ。

設定が完了すると、フレームが×印からアイコンに変化する。

なお、小さい画像・大きい画像の扱いはツールバーのプロパティから設定できる。
自動サイズ変更が必要な場合は上2つのどちらかを選ぶことになるが、どちらもメリット・デメリットがある。

小さい画像は「最大サイズに合わせる」にすると見やすくなるが、

大きい画像は「最小サイズ」にしないと欠けてしまう。

残念ながら、縦横比を維持したまま小さい画像も大きい画像も長辺いっぱいという設定は無い(「サイズに合わせてストレッチ」は縦横比が変わってしまう)。
もちろん、画像枠サイズと画像のサイズを一致させ、プロパティは「なし」=スケーリングしないの設定が理想的であることは言うまでもない。
QRコードを差し込む
QRコードの差し込みは、QRコードツールで行う。
初期状態であれば、長方形ツールからQRコードツールに切り替えができる。
サブツールが有効であれば、長方形ツールをクリックすれば新しいツールボックスが出るので、QRアイコンを選択。
サブツールが無効であれば、長方形ツールを長押しすると以下のようにポップアップメニューが出るので、QRコードツールを選ぶ。

位置と大きさを設定したら、色も設定しておく(フィールド割り当て後はアイコン表示になってしまうため)。

QRコードのフィールド割り当ては、画像の時と同じく「フィールドをバインド」ボタンから設定することができる。
また、マニュアル記載のようにツールバーのデータボタンを押して「データ結合」を選んでもよい。


フィールドが割り当てられると、重なったアイコンの表示になる。

生成ボタンで差し込み完了
デザインが終わったら、データ結合パネルの「生成」ボタンを押せば、差し込み済みの新規ドキュメントとして作成される。
レコード範囲の設定や、同じレコードの繰り返しを指定することも可能。


1ページ複数レコードで枠を付ける方法
最後に、1ページ複数レコードでデータ結合機能を使う場合の仕切り線について。
データ結合レイアウトツールに枠線を付ける機能はない。
従って今回のカタログのように枠線が必要な場合、何らかの形で描画しなければならない。
一つはデータ結合レイアウトのセル枠内で長方形ツールを使う方法。
この場合ページの途中でレコードが終わるとそれ以降の枠線を描画せずに済むが、セル内の線となるため、内側が太く外周が細くなってしまう。


もう一つはデータ結合レイアウトツールの外で、表を描く方法。
この場合は外周も内側も同じ太さにできる(外周を太くすることもできる)が、途中でレコードが終わってしまってもページの最後まで枠線が描画される。


状況に応じて使い分けるとよいだろう。
ワープロソフト代わりにぜひお試しを
長々とスクショを連ねてしまったが、実際に操作してみるとさほど難しくはないはずである。
1ページ複数レコードの場合、データ結合レイアウトの内か外かだけに注意。
あとはデータ結合パネルだけで完結させることが可能だ。
位置合わせはWordよりも自由自在にできるため、帳票の枠内印刷にも活用できるだろう。
まずは一度試してみてほしい。