1
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

なぜAffinity 3 by Canvaは無料になったのか

Last updated at Posted at 2025-11-01

Canva CEOの思い

日本時間2025年10月31日のCanva Keynoteで発表された、AffinityのCanva移行と実質無料化。

なぜAffinity by Canvaは無料になったのか。
その思いをCanva CEOのCameron Adams氏が動画で語っている。

冒頭から、「サブスクやロックイン、ペイウォールが当たり前に」…社名の言及こそしていないものの、サブスクの値上げを続けるAdobeを意識していることは間違いない。

それに続く、いくつかの言葉を抜粋してみると…

canva_affinity_future0.png

「私たちは、すべてのデザイナーが自分の技術を尊重するツールにアクセスする権利があると信じている」
「業界は門番的な対応から寛大な対応へと転換する必要がある」
「これはマーケティングの策略ではない。想像の自由に対する長期的な賭け」

高機能なツールを無料で誰もが使えるのであれば、クリエイターの裾野は広がる。
プロのクリエイターがAffinityを使うことで、Canvaを使うチームも増え、そのことは長期的に見れば自社の恩恵にもつながると考えているようだ。

値上げを続けるAdobe、生成AIにご執心?

一方、高機能なデザイン系のソフトで圧倒的な存在となっているAdobe。
Adobeの主力商品、Creative Cloudは近年毎年のように値上げをしている。

2022年4月:月額6480円→2024年3月:月額7780円→2025年8月:月額9080円と、3年で40%の値上げ。
学割ですら月額4180円となっている。

そんなAdobeは、米国時間で2025年10月28~29日(日本時間だと10月29~30日)にAdobe MAX 2025を開催した。
プレスリリースでは生成AIを全面に押し出している。

年に一度のこのイベント、クリエイターのみならず投資家へのPRの意味もあるはずだが、イベント直後に株価は下落している。
canva_affinity_future1.png
右から3番目の長い赤ローソク足が米国時間29日。この日株価は22ドル下落した。

長期で見てみると、最高値は2021年11月。
その後2022年は低迷したものの、復調して2024年2月にピーク。
以後は持ち直す時期もあったものの、2025年は下がる一方となっている。
canva_affinity_future2.png

※株価チャートはいずれもTradingView提供

奇しくもAdobe MAX2日目に当たる米国時間2025年10月29日にCNBCがAdobeのCEO、Shantanu Narayen氏にインタビューをしていたが、そこでは株価下落と製品ラインナップについて突っ込まれている。

「株価が(1年で)22%下落していることを認めなければ、視聴者に対して失礼だ。
御社の製品は世界最大手のマーケティング技術者にとっては絶対的に最高の製品だと私たちは知っていますが、低価格帯の製品が不足しているのではないか、あるいは中小企業にとっては高価すぎるのではないかという認識はありませんか。」
CNBCキャスターのこの質問に、Shantanu Narayen氏は
「ExpressとAcrobatを組み合わせたAdobe Expressがあり、その利用者は7億人を超え、爆発的に増加しています。」
と返すのが精一杯。あとはひたすらAIについて語り続けた。

Adobe ExpressはCanvaに近い位置づけのツールで、初心者でも手軽に使える反面、凝った編集作業には向かないアプリである。Affinityとは比較にならない。

高機能デザインツールを、方や無料で提供、方や廉価版すら出そうとせず値上げを続ける。
両動画のおりなすコントラストは残酷とすら思えてくる。

高機能なデザインツールをすべての人に開放すること

果たして、Canva CEOの思いはユーザーに届いているだろうか。

XでもAffinity実質無料化がトレンドニュース化していたが、「これを機にデザインを始めてみよう」「デザインする人が増えてほしい」といった投稿もちらほら見える。
出だしは上々と言えそうだ。

デザイン分野は比較的高価なアプリが多いため、これまでは無料で使える選択肢としてオープンソースのアプリ(GIMPやInkscapeなど)が受け皿となってきていた。
今後はそこにAffinityが割って入ることになる。

Affinityの実質無料化は、Adobeのみならず、オープンソースのアプリにとっても脅威となるかもしれない。
実際、もうGIMPは要らないというツイートも結構見られたが、利用者が減ってしまうことでオープンソースアプリの改良が滞ってしまう可能性も出てきそうだ。

そんな懸念を持ちつつも、Canvaの決断は非常に大きいと考える。
生成AIが隆盛し、出版も厳しい状況が続く環境下でクリエイターを育てることがいかに困難か。Canvaはそのことに気づいたのかもしれない。

アプリもさることながら、Canvaの戦略とAdobeの戦略、長い目で見た時にどちらが功を奏すのかにも注目していきたい。

(追記その1)
Affinity Forum CreoFora経由でJessica Hische氏の所感を見つけた。実質無料化の背景の一端が垣間見れる。

(追記その2)
上記で紹介したトレンドニュースにまとめられている投稿の傾向が11/2 12時時点で少し変化してきていて、次の投稿に対する反応が多数寄せられていた。

寡占は良くないという反応が中心である(Adobeに限らず、MicrosoftやGoogleに対しても)。
Affinity実質無料化はAdobe寡占状態からの脱却として期待されている側面もある。
Canva CEOが「想像の自由に対する長期的な賭け」と述べているが、ユーザーの期待を裏切ることなくAffinityの無料提供を続けてほしいと切に願う。

(追記その3)
Adobeは9月時点でこんな記事が書かれるほどの状態だったんだな。

AffinityとCanvaに関して、noteによい記事があったので紹介。

1
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
1
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?