この記事でわかること
- AIコーディングエージェントを 人の承認つき で開発プロセスに入れるための OSS「Agentic SDLC Framework」の概要
- 自分のマシンで コマンド1つ で試用環境を立ち上げ、架空のサンプルプロジェクトで1件の変更を G1 → G8 まで通す手順
- 試用結果(数値のみ)をフィードバックする方法
本記事は v0.2.1(2026-10-12 リリース)時点の内容です。プラットフォームは自動テスト済みですが、まだ実案件では使われていません。だからこそ、試していただいた方の結果が一番の材料になります。
なぜ作ったのか
AIエージェントにコードを書かせること自体は、もう難しくありません。難しいのは次のような点です。
- 誰が「この変更でよい」と判断したのか、後から説明できるか
- エージェントが計画外のファイルを触ったり、予算を使い切ったりしたときに止まるか
- 作った本人(人でもエージェントでも)が、自分の成果物を承認していないか
- 顧客に「AIをどう使ったか」を証跡つきで示せるか
Agentic SDLC Framework は、これを ハンドブック(人のプロセス) と プラットフォーム(それを強制するシステム) の2つで解決しようとするプロジェクトです。コードは MIT、ドキュメントは CC BY 4.0 で公開しています。
- リポジトリ: https://github.com/hoanghainh1188/agentic-sdlc-framework
- CLI(npm): https://www.npmjs.com/package/agentic-sdlc-cli
仕組みをざっくり
1件の変更(intent)は、8つのゲートを順に通ります。
| ゲート | 内容 | 主な判断者 |
|---|---|---|
| G1 | 目的・範囲・リスク | Person A(オーナー) |
| G2 | 仕様(受入基準が必須) | Person A/High 以上は Person B |
| G3 | 計画(変更してよいパス) | Person B |
| G4 | 実行の境界(登録済みエージェント、権限、予算) | ポリシー/High は人 |
| G5 | 計画外の変更・予算超過の検知 | 自動+エスカレーション |
| G6 | CI・セキュリティスキャン | 自動+人 |
| G7 | PR レビューとマージ(GitHub 上で人が行う) | Person B |
| G8 | リリース承認と証跡パックの封印 | Person B |
ポイントは次のとおりです。
- リスクで自律度が変わる:Low/Medium はエージェントが変更まで、High は提案のみ(コードは書き換えない)、Critical はエージェントを動かさない。
- 作った人は承認できない(2+N 体制)。エージェントもマージ権限を持ちません。
- エージェントはサンドボックス内で動き、外部への通信は LLM ゲートウェイ(LiteLLM)とパッケージプロキシだけ。本物の API キーは持たず、実行ごとに上限つきの仮想キーが発行されます。
-
すべての判断は追記専用の監査ログ(テナントごとのハッシュチェーン)に記録され、
sdlc audit verifyで改ざんを検知できます。 - トークン・コストは実行単位で計測され、80% で警告、100% で停止します。
構成は Docker Compose で、Temporal、PostgreSQL、OpenBao(シークレット管理)、SeaweedFS、Valkey、LiteLLM、OpenHands(エージェント)などを組み合わせています。
試してみる
必要なもの
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| マシン | macOS または Linux、Docker(Compose v2.24 以上) |
| メモリ | API モデルなら 16GB、ローカルモデル(Ollama の gpt-oss:20b)なら 32GB
|
| ディスク | 空き 30GB 程度 |
| ツール | Node.js 24、pnpm 10、OpenSSL 3、Git |
| GitHub | アカウント2つ(Person A と Person B。1人で試す場合は2つ目のアカウントで代用可) |
| モデル | Ollama の gpt-oss:20b、または上限を設定した Anthropic の API キー |
手順の流れ
詳しい手順は TRIAL.md にあります。流れは次のとおりです。
- サンプルリポジトリ(受注・在庫管理の架空アプリ)を fork し、
mainを保護する - 自分専用の GitHub App を作る(
pnpm github-app:createが manifest から作成します) - 設定ファイルを1つ書く(fork、App、モデル、2つの GitHub アカウント)
- コマンド1つで立ち上げる
git clone https://github.com/hoanghainh1188/agentic-sdlc-framework.git
cd agentic-sdlc-framework
git checkout v0.2.1
corepack enable && pnpm install
pnpm trial:up --settings ~/trial-settings.yaml
trial:up は最初にパスフレーズを聞き、20〜40分ほどで、OpenBao の初期化、データベース、プラットフォーム、テナント、2人のユーザー、プロジェクト、エージェント登録までを済ませます。OpenBao の鍵は使い捨てで、アンシール用の鍵シェアはパスフレーズで暗号化して保存されるので、再起動後も pnpm trial:start で戻れます。
状態の確認
pnpm doctor # デプロイの状態と、問題ごとの直し方
pnpm sdlc doctor # ログインとAPIの確認
タスクを流す
| 順番 | タスク | リスク | 期待される動き |
|---|---|---|---|
| 1 | T01 商品一覧の日本語ラベル | Low | G1 → G8 まで通る。エージェントが変更し、Person B がレビュー・マージし、リリースを承認 |
| 2 | T09 複数倉庫対応 | High | エージェントは 提案のみ。ブランチも PR も作らない |
| 3 | T10 5年以上前の受注の削除 | Critical | プラットフォームがエージェントの実行を 拒否(G4 で blocked) |
承認は GitHub の issue コメント(/approve G3 など)か CLI で行います。今どこで止まっていて誰が何をすべきかは、次のコマンドで確認できます。
pnpm sdlc next INT-2026-0001
フィードバックのお願い
試した結果は、次のコマンドで 数値とコードだけ のレポートにできます(プロジェクト名、人、リポジトリ、本文は含まれません)。
pnpm sdlc trial report --json > trial-report.json
中身を確認してから、リポジトリの issue テンプレート「Trial report」で送っていただけると、とても助かります。ゲートの待ち時間、トークン数、PR の差し戻し率などを集計し、ゲートや予算の調整に使います。
- うまく動かなかった点、わかりにくかったドキュメントも大歓迎です
- トークン、鍵、
.envの値、顧客データは絶対に貼らないでください
おわりに
「AIエージェントに任せる範囲」と「人が判断する点」を、手順書だけでなくシステムで強制するとどうなるか。その実験に付き合っていただける方を探しています。