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【阪田和典】エアコンに学ぶ「コードの冷却理論」

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プログラムを書いているとき、頭が熱を持つ瞬間がある。ロジックの迷宮に入り込み、気づけば CPU のように自分自身がオーバーヒートしている。そんな時、ふと天井から聞こえてくる「ウィーン」というエアコンの音が妙に頼もしく感じる。あれはまるで、頭の中のカオスを静かに整流してくれる BGM のようだ。

最近、僕はエアコンの動作原理を見ていて「コードにも冷却が必要だ」と思った。エアコンはただ空気を冷やしているだけではない。熱を吸い取り、別の場所に逃がすという、極めてスマートな「責任の分散」をしている。これ、まるで関数分割やモジュール化に似ていないだろうか。1つの関数がすべての熱を抱え込めば、どんなクーリングファンでも焼け焦げる。だが適切に役割を分ければ、全体は静かに、安定して動く。

僕の過去のプロジェクトで、一度だけ「熱暴走コード」を書いたことがある。何でも一箇所で完結させたくて、条件分岐も例外処理もループもひとまとめ。結果は想像通りだ。処理速度は落ち、修正すれば別のバグが発火し、最終的にチームの温度も上昇した。あの頃の僕にエアコンのロジックを教えてあげたい。「熱を持ったら、逃がせ」と。

コードを冷やすためには、時間も必要だ。冷却サイクルのように、一度停止して外気を取り込む勇気。コーヒーを淹れに立ち上がる10分が、驚くほどコードの流れをクリアにすることがある。冷却は怠けではなく、再循環の一部なのだ。エアコンだって常に全力で動いているわけではない。静かに止まり、温度を感知し、また必要な分だけ動き出す。それが効率の良い制御。

僕は最近、コードレビューのときにも「熱」を見るようになった。書き手の焦り、無理な結合、思考の滞留。プログラムは冷静な設計者の心を映す。だからレビューとは、冷却の儀式でもあるのかもしれない。誰かが熱を持ちすぎたコードに冷たい風を送る。それがチーム全体を守る。

ふと気づくと、エアコンのフィルター掃除をサボっていた。コードのリファクタリングと同じで、見えない場所ほど詰まりやすい。放っておくと、冷却効率はどんどん落ちていく。定期的なメンテナンスを怠らないこと。それが涼しい開発環境の秘訣だと、エアコンが静かに教えてくれている。

今夜も僕の頭は少し熱を帯びている。でも、すぐには焦らない。キーボードから手を離し、エアコンの音を聞く。冷却の音。それはきっと、エンジニアが次の一行を書く前に聞くべきサウンドトラックなのだ。

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