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「あいつはひとりでも大丈夫」と会議を任される新人。会議中のふるまいが秀逸だった。

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新人なのに、会議をまかされるひとがあります。観察していると、会議でのふるまいに共通している点がみられます。それは、会議中にうかつな、不用意な発言をせず、分からないことは分からないままで持ち帰ることができるひとです。

つまり、

「本件について、持ち帰らせてください」

「社内の有識者に確認します。また連絡します」

「詳細を確認のうえ、後日回答とさせてください」

これを言えるひとが、会議を任せてもらえるのです。


逆に、「あいつをひとりで会議に出させるわけにはいかない」といったひとがあります。これは新人にかぎりません。私のような無能中堅も対象になります。

どんなひとがそうなのか。すぐに回答を出さないと、と焦って「~だと認識してます」「~だと思われます」のような、曖昧なことを言う無能です。

これでは回答になっていません。

お客さんが欲しいのは、「できるか / できないか」のどちらかだからです。「~だと思う」だと「(質問に回答しろよ)結局どっちなの?」と思われてしまいます。

それで、「本当にできるの?」と詰められて、「あ、いや、わかりません…すみません」としどろもどろになってしまうのです。「(はぁー)じゃあ調べておいて」と言われてしまい、信用できないというレッテルを貼られてしまいます。

あたりまえです。分からないことを無理に答えようとする人よりも、すこし時間がかかっても正しい回答を出してくれる方がお客様も安心します。


これが、個人であればまぁいいですが(よくはない)、ひとりで会議に参加している場合は「この会社は信用できない」になってしまいます。これは困ったものです。


打ち合わせで一番大切なこと

打ち合わせで一番大切なことは、ウソを言わないことです。

「多分こうだけど」な内容はうかつに発言せず。分からないことは取り繕わず、「分かりません」と正直にいうことです。で、そのためになんの能力が必要かというと、”勇気”と、”自制心”です。


そう、まず勇気が必要なんですよ。

その場で「分かりません」「持ち帰ります」と正直に言うのは勇気がいります。場を止めてしまう不安、相手に頼りなく思われるかもしれない不安、あるいは自分の評価が下がるかもしれない不安───こうしたプレッシャーがあります。

相手に一瞬でも「弱く見られるかもしれない」という想いを無視して、誠実であろうとする姿勢を支える力です。


次に自制心です。

人はつい「その場を丸く収めたい」「自分をよく見せたい」という気持ちから、根拠の薄い推測を口にしがちです。その誘惑に打ち勝って、正直さを優先しなければなりません。

ノータイムですぐに回答が出せることをカッコいいと思っているひとは危険です。そういうひとに限って「たぶん」ですとか、「おそらくは」のような不要な修飾語をつけてしまうものです。

これは最悪です。回答に自信がないのがまるわかりです。そういう想いはいとも簡単に見破られてしまいます。(というより、ただ透けて見えてるだけなんですが)


あと、「ちょっとは知ってるアピール」もしないことです。それで「すこし触ったことあるんですけど、たぶんできると思います」みたいなことを言ったって、誰も幸せになりません。強いていうなら言った本人が不幸になります。


--


じつは、その優秀な新人から、会議のテクニックをきいています。(恥を忍んで聞きに、とはとてもいいません。教えを請いにいきました。立場は関係ありません。)

前提として、知識武装はしていけ、とのことです。

そのうえで、20%分かる、50%分かる、80%分かる、くらいの「持ち帰ります」の言いかえパターンを持っておくことが重要だというのです。

───冒頭のこれらのことです。

「本件について、持ち帰らせてください」

「社内の有識者に確認します。また連絡します」

「念のため確認のうえ、後日回答とさせてください」


さらに、このようなことを言っていました。

「べつに持ち帰ることは悪いことじゃないんですよね。その場で回答しても、会議が終わってから2時間後に正しい情報を回答しても、同じことですから。

というより、逆に正しい回答を言い切らないと、ほとんど状況は動かないワケじゃないですか?それで、結局調査ごとが増えていくんですよね。

私の場合、80%くらい確かだろうと思っていても持ち帰ることもあります。そういうときは「間違ったら連絡します。」って言うんですけどね。これは言い得ですよ(笑)別にあってたら連絡しなくても向こうは気にしませんし。

まぁ、全部が「持ち帰ります」だったら、それはそれで相手を不安にさせちゃうんですけどね。あと、「言い切り」というリスクもありますよね。そのリスクを負わずして影響力を得ることは無理だと思ってるので、それはいいんですけど。」


うーん、強い。


言い切るひとは強すぎる

そもそも、言い切るひとが強すぎます。

仕事に不確定情報はいりませんからね。お客様が欲しているのは「確かな情報」です。すこし時間がかかっても、持ち帰ってもらって「回答はこれです!」とビシッと言ってもらったほうがありがたいはずです。


「慎重に判断すべき問題ですね」

「意見交換が必要だと思います」

「あくまで可能性です」

───など、こんな煮え切らない「慎重に見えるだけ」の意見は、新人さんのいうとおり、ほとんど状況を動かしません。回答になっていないからです。


すこし話がかわりますが、「システムエンジニアの仕事の本質は?」という議論があったとき、しばしば「不確実性を消すことが仕事」と結論づけられることがあります。

そもそも、私たちのソフトウェア開発という仕事の本質は何でしょうか。
それは、突き詰めれば 「不確実性を段階的に減らしていく活動」 です。

 ・企画: 「何を作るべきか」という不確実性を減らす活動
 ・技術調査: 「どう作るべきか」という不確実性を減らす活動
 ・設計: 「どのように組み合わせるか」という不確実性を減らす活動
 ・実装とテスト: 「意図通りに動くか」という不確実性を減らす活動

プロジェクトが始まった当初、私たちの前には「未知」という広大な霧が広がっています。
私たちの仕事は、その霧の中に一本ずつ旗を立て、道を切り開き、安全な領域を広げていく、いわば地図作りのようなものです。

出典:Zenn.「「進捗どうですか?」が怖くなくなる思考法 - 「作業ログ」から「未来の地図」へ」(2025/07/04)- https://zenn.dev/coconala/articles/progress-report-refactoring


「進捗報告」と「ソフトウェア開発」というキーワードのある記事ですが、この内容は多くの(いろんな)エンジニアが納得できる内容なのではないでしょうか。

分からないことは持ち帰って、きちんと回答する。そうやってひとつずつひとつずつ不確実性を潰していく、そうやって進捗を出し、議論を進め、プロジェクトの重要人物になっていくことが大事だと思います。


会議を任させる=出世する

議論する必要もなく、上司が忙しい時に「とりあえず話だけでも聞いてきますよ!」と会議を任せられる部下はありがたい存在です。

複数のプロジェクトを兼任する上司にとって、1時間の会議は「そんなに時間とれねぇよぉ」と言わずとも思われていることが多いからです。

もし、その負担をなくせるとしたら?

部下にひとりで会議に出てもらって、それで問題なければ?

会議をスムーズに終わらせ、必要な情報と宿題を「持ち帰って」これたら?


会議を任せたくなるでしょう。


これは部下にとっても悪い話ではありません。もし、案件の体制がワーカー、リーダー、マネージャーだった場合、リーダーに会議を任されたワーカーは、ワンランク上がって、実質的にリーダー的な立ち位置で活躍できることになります。

その実績が認められれば、たやすく昇進することもできるでしょう。

すでに述べたつもりではありますが、上司から「無責任なことやウソは言わない」と信頼され、お客さんからも「ごまかさないという基本的な正直さ(誠実さ)がある」と信頼されているワケですから、評価は高いはずです。


間違ったことを伝えるデメリットの方が圧倒的に大きい。

誠実であれ。


以上です。

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