私はプロジェクトの下請けとして働くことが多いです。そのため、お客様との会議で「不明なこと」があったとき、調査・検証をお願いされる立場にあります。
作業の延長線上にあることが多いため、こちらも基本的には快諾します。─── で、そういうながれでタスクをもらうとき、相手から期限を指定されないことが多々あります。
これは「指定しづらい」からでしょう。突発的にうまれたタスク、ということもあります。むこうもこちらにどれくらいの余裕があるのか分かりませんので、「じゃあこれ、明日には回答ください」といいづらいのです。
そういうとき、かわりに「いつ終わりそうですか?」と聞かれます。
さて、これはなんとも答えにくい質問です。
「分かったら連絡します」をやめたかった
会議中に「不明なこと」があり、技術検証を依頼されたとします。その内容はすくなくとも「未知」なワケですから、それがいつ終わるかは私にもわかりません。もちろん、おおよその見込みはありますが、はっきりと期限をいうのはとても怖い。
それで、つい「なにか分かったら連絡します」とか、「情報をみつけたら連絡します」とか、そういうことばで場をにごしてしまいます。
これには、いつも申し訳ない気持ちでいました。
なぜ申し訳ないと思っていたのか。お客様はそれでは困ってしまうからですよね。ある調査が終わらないと次のステップに進めない ─── そんな状況はよくあります。
極端なことをいうと、AWS で実現できるかわからないのに、AWS の環境(テナント)を購入しておいてくれとはお願いできません。動作確認をして、AWSで実現できることがわかってから、お客様に環境を準備いただく。そんなステップがあるはずです。
"直近の作業に影響しないもの" であれば、「なにか分かったら連絡します」のような曖昧な期限でもよいのかもしれません。しかし、それでも「いつまでに終わりそうか」がわからない状態は、お客様にとって不安、あるいはリスクになります。
本当なら、そうしたストレスを与えるべきではないでしょう。
ただ、こちらとしても「明日には回答します!」とは言いたくないんですよ。それはとても勇気がいる宣言です。やってみて、うまくいかないことが起こる可能性もあります。
それで言い切ることもできず、「どう答えてあげるのがいいんだろうな……」とモヤモヤしていました。しかし、先日こんな記事を読み、代わりとなることばのヒントを得たのです。
任されたタスクについて「いつ終わりそうですか?」と聞かれても、その時点ではわからないことはよくある。
この時、「うーん、まだ何とも言えないですね」みたいに答えるのは悪くはないけれど、セットで「いつ終わらせるつもりで進めていくか」を伝えられるほうがいい。
たとえば、「まずは今日いっぱい調査してみてから報告しますね。その結果次第ではありますが、いったん来週いっぱいくらいで終わらせるつもりで考えていきます」みたいな感じ。
出典:Konifar's ZATSU.「"いつ終わるか" は答えられなくとも、"いつ終わらせようと考えているか" は答えられるようにする」(2025/9/25)- https://konifar-zatsu.hatenadiary.jp/entry/2025/09/25/211731
結論として、「"いつ終わらせようと考えているか" は答えられるようにする」は有効です。であれば、それを最低ラインにとどめず、実際にきちんと「伝えてあげる」のがよいでしょう。
Microsoft からの回答メールがコレ
ところで、みなさんは Microsoft に問い合わせたとき、どのようなメールが返ってくるかご存じでしょうか。
たいてい、こんなメールが届きます。
カズマ 様
いつもお世話になっております。
日本マイクロソフトの 〇〇 でございます。再度調査にお時間をいただきありがとうございます。
(……)
恐れ入りますが、もうしばらくお待ちいただけますと幸いです。
調査の進捗に関わらず、〇月〇日(曜)までに一度ご連絡させていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。--
日本マイクロソフト株式会社
Microsoft Power Platform / Dynamics 365 サポート担当
非常にありがたい一文があることに、気がついたでしょうか?
「調査の進捗に関わらず、〇月〇 日 (曜) までに一度ご連絡させていただきます。」
これのことです。
こんなにうれしいことがあります。
- 上司もしくはお客さんに、状況を共有しやすい。
- 今後の作業スケジュールや方針が立てやすくなる。
- 連絡がこない場合に、リマインド・催促がしやすい。
こんな具合です。
上司「例の件、いつごろわかりそう?」
私 「いま問い合わせ中で。まだ回答が来てなくて…」
上司「だから、その回答はいつ来るの?」
私 「……。えーと、わかりません…」
上司「わかりません、って(呆れ)……じゃあ、いまはいつ来るか分からない回答を待ってるってこと?」
私 「すみません。あらためてメールを確認したら一次回答の予定日が書いてありました。いったん明日連絡いただけるようです。」
上司「そうなの?じゃあ、明日の回答を待ってもいいかもね。それで解決するならスケジュールどおりだし、まだ分からないようだったらスケジュールを見直そうか」
私「分かりました!」
上司「お客さんにもそう伝えておいて」
私「はい!」
~次の日~
私「(回答こない……)」
私「せかしてるみたいで申し訳ないけど、今日までに連絡くれるって書いてあったし、催促してみようかな」
私「催促したっていう事実も大事だしな。催促はしてるんですけどねーって上司には(お客さんにも)報告しよう。」
上司「(回答が遅くなってるってことは、"難易度が高い" 可能性があるな。いちおうリスクとして上にも共有しておくか。)」
--
次回の連絡日が共有されるだけで、こんなに動きやすくなります。
コミュニケーションが整理され、心理的な安心感もあります。
ボールが宙に浮いた状態を防ぐことになるからです。
とにかく期限を伝えればよろしい
話は冒頭の「なにか分かったら連絡します」についてです。
このような事例をみて、私はもう「なにか分かったら連絡します」をつかっていません。代わりに「一次回答は〇日までにさせていただきます」と回答するようにしています。
お客様から依頼されるタスクは、私が Microsoft に問い合わせをしているようなものだと考えれば、期限を提示するのがベストだと思ったのです。
では、実際にその回答に代えてみてどうなったか。
途端に仕事がスムーズに回りはじめ、あきらかに空気が変わりました。
相手に安心感をあたえ、ボールをもらう。
リスクを管理し、スケジュール遅延の予兆も引きうける。
そういうことをしていると、次に同じ場面になったとき「じゃあ、明日には一次回答のご連絡をさせていただきますね」というだけで議題が終わるようになります。
会議がスムーズに進むようになり、会議の回数も減ってきます。それで、生産的な作業の時間が増えたりするのです。本当に次の日に回答が出せてしまうくらいの作業時間を確保することができたりします。
また、「3日はかかるだろうな」とお客様が思っていたとします。そこに、私が「このあと対応し、明日には一次回答を差し上げますね」といったら、どう思われるでしょう。
それは「期待以上」なワケでして、顧客感動 ─── 顧客の期待を遥かに超え、感動させること ─── をあたえることができます。さまざまなメリットがありますが、個人の名指しでリピートをもらえることが増えます。「〇〇さんがアサインされるなら」といわれるようになります。下請けの、いち個人としてこれ以上ないよろこびです。
もし、あなたがその期限に間に合うか不安だったら、前提条件をつけまくればいいです。(まぁ、書けばかくほど高級ではなくなりますが)
・一次回答として連絡します。
・調査結果に関わらず連絡します。
・その結果次第では、詳細な調査に入ります。
・情報が見つからない場合もあります。
─── とにもかくにも、期限を伝えることです。
私も、いまだに「いつ終わるか言い切る」ことには抵抗があります。
やはり怖いです。けれど、その怖さによって「これも責任のある仕事、ということか」と奮い立ったりもします。リターンはそれなりに高いと感じます。
やはり、仕事において「言い切るひと」は強すぎるのです。
以上です。