ある上司は、毎日30分の進捗報告会(夕会)を設定しました。
しかし、1日の進捗なんてたかがしれています。日によっては「今日は別件対応があり、プロジェクトの進捗はまだありません。」ということもあります。進捗がないと、その会議はまるごとムダな時間に感じました。
ある上司は、進捗報告用のグループチャットをつくりました。
「1日の終わりに進捗を共有してください。」───メンバーは普段からこまかい作業報告をしていたため、グループチャットに"あたらしい情報"が出てくることはありませんでした。定時を過ぎてからコピペで作成する文章、これもムダに感じていました。
ある上司は、毎朝「やることリスト」を共有するよう指示しました。
そもそも弊社には朝礼があり、その日の作業内容をみんなに共有する場があります。ですので、「やることリスト」は朝礼で言ったことを文章に書きおこす作業になります。ただの "追加の作業" でしかなく、朝の貴重な時間をムダにしているな、と思っていました。
ところが、上司はこれを「無駄」とは考えていませんでした。
現場の状況がみえなくなる
さて、私のような無能にも(勤続8年目にしてようやく)はじめての部下ができました。そして、私も、冒頭でふれた「メンバーがムダだと感じることをもとめてしまう上司」になってしまったのです。
上司が定例会やグループチャットで、やたらと進捗を確認したがる理由───それが、ようやくわかってきました。まだまだ新米ではありますが、今日はなんとかそれを言語化しようとおもいます。
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上司になると、プロジェクトの管理に時間を使わなければいけません。たとえば、さらに上の上司への報告や、お客様との会議の調整などです。こうした業務は、直接プロジェクトの進捗に関わるものではありません。
───で、そういうことをしていると、いとも簡単に、そして急に、現場がやっていることが見えなくなるときがあるのです。
作業の内容や作業にかぎった話ではありません。
現場の「気持ち」が見えなくなってしまうのです、
メンバーが、私にやってほしいと思っていることはあるのか、ないのか。
メンバーどうしの連携はうまくいっているのは、ギクシャクしているのか。
メンバーは「やる気」に満ちているのか、「不安」を抱えているのか、それとも「困っている」のか。
私にとって、これは大きな不安の種でした。
「報告は Slack ですませろ」「状況は Teams に書いておけばいい」という風潮は、確かに現場にとっては心地よいものです。
しかし、それが成立するのは、上司が部下を完全に信頼しているという、極めてレアな環境にかぎられるのだと思います。現実には、多くの上司が不安をかかえながら仕事をしているのではないでしょうか。
だからこそ、「会って話す」というアナログな手段は、いまでも有効なのです。上司は会話をすることで安心します。逆に会話が減ると、会議やグループチャットで過剰に介入するようになります。
合理的ではないかもしれない
上司は不安なのです。
会議によって進捗を管理するやりかたは、稼働時間を使うだけで効率の悪い管理にみえるかもしれません。ただ、それが正解かどうかではなく、必要だからやるしかないのです。
部下のための会議ではありません。
上司のための会議なのです。
こういうと、「じゃあせめて、会議じゃなくて個人でやってくれ」と思われるひとがいるかもしれません。
それはまた別の問題がおきます。
個別に話を聞こうとすると、今度は「私のことを、信頼してないんですか?」といわれる(思われる)のです。
だからこそ、会議やグループチャットといった"みんなの場"が必要になるわけです。
- 一斉に話を聞くことができます。
- 全員が揃っている安心感もあります。
- メンタルや健康状態も把握できます。
(……。もちろん、ひとりひとり聞くのは面倒という正直な理由もあるのですが。)
───以前、マネジメントの本質が書かれた本を流し読みしたときに、同じようなことが書いてあった気がします。そのときは「ふーん」と思っていましたが、これは想像以上に面倒です。
お願いがあって
ここで重要なのは、会議は上司のためのものであるという事実を、部下側も理解しておくことです。
会議が面倒くさい?
なにも話すことがない?
資料をつくるのが手間?
───それ、全部わかっています。
なので、すみません。自分の裁量や自由を保つためのコストだと思って、会議に付きあってあげてください。
上司の不安を解消するために、積極的に話しかけてあげてください。上司が不安を感じていない組織は、きっと働きやすいはずです。
以上です。