※この記事はAgileStudioに掲載した記事の転載です。
元記事:「ふりかえり、ただやってるだけになってない?」形骸化に気づいたチームが、ふりかえりを自分たちで育てるまでの試行錯誤(トナリノ)
「ふりかえり、ただやってるだけになってない?」
ふりかえりの場で、あるメンバーがそう口にしました。
今回ご紹介するのは、スクラムでふりかえりを続けていたとあるチームです。このチームは、ふりかえりが「ただの作業」になっているのではないかという問いに直面していました。
この記事は、その一言から動き出したチームの試行錯誤の記録です。
トナリノは、隣のチームの泥臭い試行錯誤をそのまま届けるコミュニティです。
様々なチームの「うまくいかなかったこと」「試してみたこと」「今の現在地」を記録しています。正解やTipsではなく、あるチームのリアルな試行錯誤をお届けします。
「ふりかえりが形骸化していないか?」──最初の問いかけ
言われてみると、思い当たる節がありました。
- Problemが出ても、深掘りをしないまま「では、Tryを考えましょう」と進めていた。Tryを実施しても、 効果を感じられない状態が続いた
- Problemの傾向として「自分が悪かった」という自責型になりがちで、「チームとしてできることは何か」という議論になりにくかった
- 「質の良いTryが出せていないのではないか」という感覚は、メンバーの間でなんとなく共有されていた
問いを受け止めたチームは、「じゃあ一度ちゃんと話してみよう」と時間を設けます。話し合いのなかで出てきたのは、不満より「なんとかしたい」という気持ちでした。そして、3人のメンバーが手を挙げます。「ふりかえりの改善、しばらく自分たちにやらせてほしい」と。そう申し出た3人を、チームのみんなが快く迎えてくれました。
「輪番制」が生んでいたもの
当時のチームは12人、1スプリントは2週間。ふりかえりのファシリテーターは、全員が持ち回りで担当する「輪番制」で運用していました。
MiroにはKPTのタイムテーブルやテンプレ、進行の記載も用意されており、誰でも進められる状態ではありました。アレンジも自由でした。しかし12人の輪番だと、1回担当したら次に順番が回ってくるのは 半年後 になります。
ファシリをやってみてイマイチだと感じた経験を、個人で深めることも、チームで話し合うことも、なかなか起きませんでした。「長いスパンの輪番制が、逆に自分ごとでなくなってたんだと思います」──あとから振り返ると、そういう構造だったのだとメンバーは言います。
試行錯誤①:「深掘りタイム」をつくってみた
有志の3人は、Miroのふりかえりカタログを参考にしながら改善の方法を探しました。しかし、チームの一番の困りごとである「Problemの深掘りができていない」を解決するのに刺さるフレームワークはなかなか見つかりません。
それなら自分たちでつくろう、と生まれたのが 「深掘りタイム」 です。
やり方は、深掘りしたいProblemを2つ選び、なぜなぜで会話を重ね、そこからTryを出すというもの。内容的にも時間的にもヘビーで、時間切れになることが多々ありました。
8回(約4ヶ月)ほど続けたのち、あることに気づきます。「これだけやったのに、スプリントゴールをまだ達成できていない」と。
Problemを掘ることに集中するあまり、チームの根本的な部分に対する問いが抜け落ちていました。
試行錯誤②:「理想のチーム」を可視化してみた
次に試したのは、ふりかえりの時間そのものを別物に変えるアプローチでした。
ふりかえりは通常、「今スプリントに起こったこと」を話す時間です。でもこのチームは、ふりかえりの出発点を「問題」から「理想のチーム像」に変えることにしました。テーマは 「スプリントゴールを達成できるチームって、どんなチーム?」 。
全員で「理想のチーム」と「今の自分たち」を書き出し、ギャップを見つけます。そこからTryを出し、「すぐできて効果が高い」ものから次のスプリントで実行。ふりかえりのたびに「できたか」を確かめながら繰り返す。未来を描き、現在地を測り、打ち手を選んで実行する──そのサイクルを毎スプリントで回しました。
前の「深掘りタイム」と決定的に違ったのは、 自分たちのできていることも認められる ことでした。課題だけを掘り続けてきた前のアプローチとは、チームの空気が変わりました。
「少しずつ理想のチームに近づいていく実感を、みんなでもてるようになった」とメンバーは語ります。6回ほどふりかえりを重ねた結果、最初に「できていない」と評価していた項目が、すべて「ある程度はできてる」「できてる」ゾーンに入りました。
KPTへの帰還、そして新たな気づき
試行錯誤を経て、チームは「今ならKPTもできるはず」という自信を持って、元のKPTに戻ります。
改めて使ってみると、KPTの軽量さと進めやすさを実感しました。ただ、使い込むほどに2つのことが気になりはじめます。
1つは、 KからTryにつながりにくい こと。Kには「うまくいったこと」と「続けたいこと」が混在しがちで、「よかったね」で終わることが多く、KからのTryが生まれにくくなっていました。
もう1つは、 Actionが明示されない こと。Tryを出しても具体的なActionまで落とし込む枠がなく、「ふりかえりはTryを決めて終わりではなく、具体的なActionまで落とし込むもの」ということがチームの共通認識になりにくいように見えました。
KPTを真剣に使おうとしたからこそ、見えてきた問いでした。
試行錯誤の先に見えてきたもの
そんなとき、チームのメンバーが偶然目にしたのが 「GKPTA」 というフレームワークを紹介した記事でした。
GKPTAは、KPTのKからG(Good)を独立させ、A(Action)の枠を加えたフレームワークです。感じていた2つの問いが、そのまま構造に組み込まれていました。
「良さそう、試してみよう!」──チームはGKPTAを採用します。
ファシリテーターの体制も変わりました。輪番制をやめ、「やりたい」と手を挙げた1人が担当するようになりました。そのメンバーは別の業務でチームを不在がちでしたが、だからこそ「ふりかえりには必ず戻ってきて貢献したい」と自ら買って出たそうです。
Tryの質も、Problemのとらえ方も、気づけば変わっていました。今、ふりかえりはチームにとって「良い時間」になっています。
「ふりかえり、うまくいってますか?」
「形骸化していないか?」というメンバーの一言から始まったこのチームの試行錯誤。最終的にたどり着いたのは、特定のフレームワークというよりも、「ふりかえりを自分たちで育てる」という姿勢でした。
あなたのチームのふりかえり、今どんな状態ですか?
「なんとなくKPTをやっているかも?」という感覚があるとしたら、このチームのように一度問い直してみることが、次のふりかえりを変えるきっかけになるかもしれません。
このチームの試行錯誤が、皆さんのチームへの「問い」になれば嬉しいです。
この記事は、「トナリノ」から生まれた試行錯誤の記録です。
様々なチームの泥臭い試行錯誤を、定期的に届けています。
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