この記事は、適応型ソフトウェア開発 アドベントカレンダー 2024 の 17日目です。
複雑適応系(チーム)をどのように組み立てるか
適応型ソフトウェア開発において、チームという言葉は使わない。
職能横断型の集団が1つの目的を共有する生命体として、「複雑適応系」という言葉を用いる。
複雑適応系
複雑適応系について詳しくはこちらの記事を参考に見てもらえると嬉しい。
複雑適応系を形成するカギになる思想
ここが最も大切なポイントだった。
我々にとって、目的を達成することは確かに大切である。
ただし、大きな前提がある。
それは、 必ず生きて帰還すること だ。
生きて帰還する
刹那的に目的を達成することが重要ではない。
我々は何度もいろいろな課題に直面するし、そのたびに適応・変化を求められる。
遠足がいい例だ。
きちんと家に帰るまでが遠足。
山登りもそうだ。
安全に下山するまでが登山。
プロジェクトも言わずもがなだ。
確実にリリースし、安全に家に帰宅することが最重要である。
我々は仕事をするために生きてはいない。
生きるために仕事という手段を用いて、お金を得ているだけのことだ。
仕事で死んではいけない。
ここをはき違えると、到底カオスに向き合うことができなくなってしまう。
これが最も重要なモチベーションだった。
必ず生きて帰る生命体であれ
どんなに苦しい環境下でも楽しさやモチベーションを失ってしまったら、生きることがつらくなる。
そんな状態では適応活動など不可能である。
そのため、複雑適応系の形成をするときには、皆のモチベーションの根源を確認する作業から始めた。
各々にとっての報酬の確認
複雑適応系という生態系に集められているのは専門性を持つ「人間」である。
人間である以上、「自分の気持ち」を少なからず持っているはずだ。
しかし、その自分にとってのエゴや報酬の形は全く形が違う。
例えば、文字通り「金銭」が報酬として動ける者もいるし、「時間」が報酬であってほしいものもいる。
また、「次の仕事」だったり、社会的存在証明を求めているものもいる。
複雑適応系に属するにあたり、各々がどんな報酬を求めているのかを把握することで、お互いが同じ生命体だが別の種族であることを把握することが大切だった。
そうしないと、1つの種別による正義を押し付け合ってしまい、戦争が起こり、生きて帰ることができなくなる。
そうなってくると、目的達成に向けた圧倒的適応活動や変化などできないからだ。
各々のインプットとアウトプットの確認
生命体である以上それを構成する機能に与えるインプット・アウトプットを理解する必要がある。
生物の内臓1つとっても同じ構造である。
例えば、肝臓だ。
肝臓にブドウ糖をインプットすると、グリコーゲンをアウトプットする。
そのような働きがあり、次の内臓はグリコーゲンをインプットとして、別のアウトプットを作ることができるのだ。その連続が生命活動であり、うんこである。
この構造をうまく勘違いしてみると、複雑適応系の専門職もインプットとアウトプットが存在するはずだ。
お互いがどんなものをインプットしてもらえたら、何をアウトプットする余地があるのかを把握しあうことで、相互に連携することが初めて可能になる。
この期待値調整を行うことも重要だった。
プライベートに関する会話
プライベートに関する会話は実はとても難しいものだ。
極論仕事中にその話をする必要性すらない。
しかし、このプライベートな会話こそ複雑適応系では重要なものであると位置づけた。
それはどうしてか。
このプライベートな情報開示をすることで、お互いが「人間」であることを認識し、お互いに優しくなれるからだ。
このやさしさが生命体を絶対に生きて帰ることができるものに進化させることができる。
まとめ
この3つのカギになる重要なものを大切にし、圧倒的な適応力を生み出すための豊かな人間関係を作り上げるのだ。
良いものは、良い関係性から生まれてくるものである。