はじめに
AWS を使っていると、「どのインスタンスタイプを選べばいいのだろうか…?」という悩みにぶつかったことはないでしょうか。
- m5? m6i? m7g?
- c6i の “C” って何?
- t3 と t4g の違いは?
- WordPress を動かすなら?
- メールサーバなら?
そして、「なんとなくm系にしておけばいいでしょ?」で終わってしまうこともあるのではないでしょうか。
この記事では “EC2 選定方法” についてまとめたいと思います。
クラウド初心者、AWS運用者、コスト削減担当、どなたでも参考になればと思います。
1. EC2 インスタンスタイプは “思想” で選ぶ
AWSのインスタンスは 用途に最適化されたファミリ構造になっています。
全体像を記載します。
■ インスタンスファミリの大分類
| 大分類 | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 汎用(General Purpose) | m5 / m6i / m7g / t3 / t4g | CPUとメモリのバランスが良い |
| コンピューティング最適化(Compute Optimized) | c5 / c6i / c7g | CPU性能重視 |
| メモリ最適化(Memory Optimized) | r5 / r6i / r7g | メモリ重視・DB向け |
| ストレージ最適化 | i3 / i4i | 高速I/Oが必要な用途 |
| 高速ネットワーク / HPC | hpc6a / hpc7g | 科学計算・大規模分散処理向け |
この記事では よく使われる m / c / t に絞って解説します。
2. m / c / t の違いを一番簡単に言うと?
簡単にまとめるとこうなります。
| ファミリ | 一言でいうと | 向いている用途 |
|---|---|---|
| m 系(汎用) | 迷ったらコレ | Web、アプリ、WP、API |
| c 系(CPU 特化) | CPU を高回転で回す仕事向き | バッチ、API、大量処理 |
| t 系(バースト) | 軽いけど安くしたい時 | 小規模Web、管理画面、メール |
3. それぞれの詳細特性
ここからは実際の選定の知識をまとめます。
■ m 系(m5, m6i, m7g)
👉 「汎用」= Web/アプリのスタンダード
- CPUとメモリのバランスがよい
- ネットワーク帯域も安定
- WordPress・業務システムなど幅広い用途に最適
📌 向いているケース
- Webサーバ(Apache/nginx)
- PHP / Python / Node アプリ
- 中規模API
- WordPress(小〜中規模)
- 常時安定して動かしたいアプリ
📌 搭載CPU(例)
- m6i → Intel Ice Lake(3.5GHz)
- m7g → Arm(Graviton3:高性能で低コスト)
■ c 系(c5, c6i, c7g)
👉 CPU特化=「計算する仕事」に強い
- CPUコアの性能が強い
- メモリは同じクラスの m 系より少なめ
- APIサーバやバッチ・解析処理に向く
📌 向いているケース
- バッチ処理(画像変換、ログ解析)
- AI前処理(CPU実行部分)
- 高トラフィックAPI
- JSONパースが重いバックエンド
📌 搭載CPU(例)
- c6i → Intel Ice Lake
- c7g → Graviton3(Arm)
■ t 系(t3 / t4g)
👉 バースト型=「普段軽いが時々重くなる」用途に最適
- 通常は低消費 → とても安い
- 必要な時だけCPUバースト(短時間)
- 小規模サイト/メールサーバで大人気
📌 向くケース
- 小規模WordPress
- 管理画面・社内ツール
- メールサーバ(Postfix/Dovecot)
- Cron実行用
- 検証環境
📌 注意点(CPUクレジット)
- 長時間CPUを使い続けると 性能が落ちる
- 「常時高負荷」の用途には不向き
4. どの様に使い分ける?
実案件でよく使う判断基準を整理しました。
※あくまで参考値としてご利用ください。
■ ① CPU平均利用率で判断する
| CPU平均 | 選択 |
|---|---|
| 30%超え | c 系(CPU特化) |
| 10〜30% | m 系 |
| 10%未満 | t 系 or m 系 |
■ ② メモリの使用量
| メモリ使用 | 推奨 |
|---|---|
| 1〜4GB | t / c |
| 4〜16GB | m / c |
| 16GB以上 | m / r |
■ ③ 負荷の性質(常時 or ピーク型)
| 負荷 | 推奨 |
|---|---|
| 常時負荷 | m / c |
| 時々ピーク | t |
| データ処理が重い | c |
| Webアクセス中心 | m |
■ ④ コスト優先度
| コスト優先 | 選択 |
|---|---|
| 最安 | t 系 |
| バランス | m 系 |
| 性能重視 | c 系 |
5. T 系(t3 / t4g)の CPU クレジットをわかりやすく
t 系はバースト型インスタンスなので、CPUクレジットの理解は非常に重要です。
■ どのような仕組み?
- CPUを使わないと クレジットが貯まる
- 必要な時だけ一気に使える
- 使い切ると CPU が制限される
→ 「軽いけど時々重い」用途に向く
■ よくある間違い
- WordPressを t3.nano で動かして「遅い」と言われる
- バッチ処理を t3.small で動かす
- 常時CPUを使うAPIを t 系にしてしまう
t 系は正しく使うとコスパは良いですが、間違えると一気に遅くなるので注意が必要です。
6. m / c / t のコスト比較(ざっくり目安)
ap-northeast-1(東京)の例(時間単価)
| 型番 | vCPU | メモリ | 価格 |
|---|---|---|---|
| t3.medium | 2 | 4GB | 約 $0.0544 |
| t3.large | 2 | 8GB | 約 $0.1088 |
| m6i.large | 2 | 8GB | 約 $0.124 |
| m6i.xlarge | 4 | 16GB | 約 $0.248 |
| c6i.large | 2 | 4GB | 約 $0.107 |
→ t 系はコスパ重視、m 系は安定、c 系は処理性能。
7. まとめ
最後に “早見表” を記載させていただきます。
- 安定してWebを動かしたい → m 系
- 画像処理・バッチ・APIを高速化 → c 系
- 軽いWebや管理ツールを安く → t 系
- CPU平均10%以下なら t 系でOK
- WordPressは m 系が最適(小規模なら t 系も可)
- メトリクスを見れば答えはほぼ決まる
おわりに
インスタンスタイプ選定は「種類が多くて難しい」と思われがちですが、
負荷の性質(CPU・メモリ・ピーク)を見ることで答えが出てくると思います。
この記事が、日々のEC2運用・コスト最適化の一助になれば幸いです。