はじめに
AWS は柔軟で便利な一方、気付かないうちにコストが膨らみやすいサービスです。
特に、EC2・EBS・RDS・AWS Backup の組み合わせは、
「設定の重複」によって無駄な料金が発生しやすいポイントでもあります。
本記事では、実際の運用現場で行った調査内容をもとに、“AWS コスト削減チェックポイント” をまとめました。
- これから AWS のコスト最適化を始めたい
- 設定が複雑で把握しきれていない
- バックアップ周りが特に高額になっている
という方の参考になれば幸いです。
1. EC2 のコスト削減ポイント
EC2 は AWS の中で最もコストを消費しやすいサービスです。
まずは以下の項目をチェックします。
✔ 不要インスタンスが稼働していないか
- 停止中でも EBS のストレージ料金は発生します
- 役割が不明なインスタンスが稼働していないか棚卸しする
- Auto Scaling の残骸がないか確認
✔ スペックが大きすぎないか(リサイズ可能)
CloudWatch の CPU・メモリ・NetworkIn/Out を確認し、
“常に余裕がある” 場合はサイズダウンを検討できます。
例:
t3.large → t3.medium
m5.large → m5.medium
EBS の過剰 provision に注意
- gp2 → gp3 へ移行すると 最大20〜30% のコスト削減
- Provisioned IOPS (io1/io2) が必要か再確認
- 未アタッチ(孤立)EBSの有無をチェック
補足:EBS ボリュームタイプ比較(sc1 / gp2 / gp3)
AWS の EBS は用途に応じて複数の種類がありますが、
コスト削減・パフォーマンス最適化の観点では以下 3 種類を把握しておくと便利です。
【EBS ボリュームタイプ比較表】
| 種類 | 性能 | コスト | 主な用途 | 補足説明 |
|---|---|---|---|---|
| sc1(Cold HDD) | 低い | 最安 | アクセス頻度の低いデータ、ログ保管、バックアップ | 容量単価は最安だが、IOPS・スループットは低くシステムディスクには不向き |
| gp2(General Purpose SSD) | 中程度(容量に比例) | やや高め | 旧環境で多く利用。現在は 非推奨(gp3へ移行推奨) | IOPS が「容量依存」ため、必要 IOPS のために過剰容量を作るケースが多い |
| gp3(最新推奨)General Purpose SSD) | 高い(IOPS・スループット調整可) | 最も安価(gp2比で最大20〜30%削減) | Webサーバ・アプリ・DB などほぼ全用途 | IOPS とスループットを容量と独立して設定でき、コスパ最強の標準ストレージ |
2. EBS スナップショットの削減ポイント
スナップショットは 残り続ける ため、放置するとすぐにコスト化します。
✔ 不要スナップショットの棚卸し
バックアップ設定の重複により、「1日3回スナップショットが作られていた」などのケースは実務で非常によくあります。
チェックすべきポイント:
- 不要な AMI がスナップショットを保持し続けていないか
- backup-plan が複数あり、同じEC2を二重バックアップしていないか
- 7日保持 → 14世代 → 21世代 → 28世代… と増殖していないか
✔ AMI → スナップショットの依存関係
AMI を削除しても スナップショットが残る場合があります。
削除前に依存関係を必ず確認します。
3. RDS のコスト削減ポイント
RDS のコスト源は主に以下です:
- インスタンスサイズ
- ストレージ容量
- スナップショット世代
- マルチAZ構成
ここではスナップショット・バックアップ観点を中心に解説します。
✔ RDS 自動バックアップを理解する(PITR 対応)
RDS 自動バックアップには以下が含まれます:
- 毎日の自動スナップショット
- トランザクションログ(PITR用)
これにより、任意の過去時刻(秒単位)に復元可能です。
保持期間:1〜35日
→ 多くの現場では 7日で十分
✔ AWS Backup スナップショットとの重複に注意
RDS には以下2つのバックアップ方式があります:
| 種類 | PITR対応 | 用途 |
|---|---|---|
| RDS | 自動バックアップ | ✔ データ復旧、時刻復元 |
| AWSBackup | スナップショット | ✘ イメージとしてのバックアップ |
2つが同時に動いていると、スナップショットが二重で増え続けます。
実際にあった例:
自動バックアップ:7世代
AWS Backup:7世代
合計14世代(×複数インスタンス)で高額化
👉 結論
RDS のデータ復旧が目的なら「RDS 自動バックアップだけ」で十分。
AWS Backup の RDS 対象を外すことで、大幅な削減効果があります。
4. AWS Backup のコスト削減ポイント
AWS Backup は強力ですが、使い方を間違えると高額化します。
RDS を Backup 対象にすべきか?
AWS Backup のスナップショットは PITR 非対応のため、
RDS 自動バックアップの完全な代替にはなりません。
AWS Backup が必要になるのは以下の場合:
- Vault Lock(削除防止)を使いたい
- 別リージョンコピー(DR対策)が必要
- アカウント間バックアップ
- 監査強化(CloudTrail統合)
上記を使わないなら、
RDS の AWS Backup は停止しても問題ありません。
✔ バックアッププランの重複に注意
よくあるミス:
- 「cm-msp-backup-rule」
- 「backup-plan-xxxx」
など複数プランで 同じリソースを二重バックアップ してしまうパターン。
RDS で1日3個スナップショットができてしまう、EC2で21世代になってしまう などはここが原因。
✔ 継続するなら “本来の強み” を活かすべき
AWS Backup の強みは以下:
- Vault Lock(WORM) → ランサムウェア対策
- 別リージョンコピー → DR
- 成功/失敗レポート → 運用可視化
- アカウント間バックアップ → 障害・内部不正対策
これらを使わない運用は ただのコスト増 になるため注意。
6. まとめ(全体チェックリスト)
AWS コスト削減で見るべきポイントを最後に整理します。
✔ EC2
- 不要インスタンスがないか
- リサイズ可能か
- EBS が多すぎないか
- AMI/スナップショットの整理
✔ EBS
- 孤立ボリュームの有無
- gp2 → gp3 変換
- 過剰スナップショット削除
- バックアッププラン重複なし
✔ RDS
- RDS 自動バックアップの保持日数は適正か
- PITR が必要な場合は自動バックアップ必須
- AWS Backup と役割が重複していないか
- 不要スナップショット削除
✔ AWS Backup
- バックアッププランの重複がないか
- RDS の対象は本当に必要か → 不要なら外す
- Vault Lock や別リージョンコピーの活用可否
- コスト=(スナップショット容量 × 世代数)に注意
AWS のコスト削減は 「むやみに削る」ではなく、
「役割の重複をなくす」 のが最大のポイントです。
本記事の内容が、自社環境のコスト最適化の参考になれば幸いです。