最近、位相空間論を真面目に勉強し始めたので、書いておく。
を使って勉強している。
Heine-Borel の定理
$\mathbb{R}^n$ の部分集合 $A$ について、次の2つは同値である。
(1) $A$ はコンパクトである
(2) $A$ は $\mathbb{R}^n$ の有界な閉集合である
証明のスケッチ
- (1) ⇒ (2):
- コンパクトならば有界: 原点を中心とする開球の集合で開被覆を作ると、コンパクト性より最大半径の開球が取れるのでいえる
- コンパクトならば閉集合: 一般に、ハウスドルフ空間のコンパクトな部分集合は閉集合であることを示せる(後で示す)ので、それよりいえる
- (2) ⇒ (1):
- 補題として、 $\mathbb{R}^n$ の部分集合 $[-R, R] \times \cdots \times [-R, R]$ がコンパクトであることを示す
- $A$ は有界なので、 $A \subset [-R, R] \times \cdots \times [-R, R]$ となる $R$ を選ぶことができる
- 一般にコンパクト空間の閉集合はコンパクトであることを示せる(後で示す)ので、それよりいえる
準備
ハウスドルフ空間のコンパクトな部分集合は閉集合である
証明: $X$ をハウスドルフ空間、 $K$ を $X$ のコンパクトな部分集合とする。
$X \backslash A$ が開集合であることを示す。
$a \in X \backslash K$ を任意に取る。
任意の $b \in K$ について、 $a \ne b$ なので、 $X$ のハウスドルフ性より、
$$a \in U_{a, b}, b \in V_{a, b}, U_{a, b} \cap V_{a, b} = \emptyset$$
を満たす開集合 $U_{a, b}, V_{a, b}$ を取ることが出来る。このとき、 $ \{V_{a, b}\}_{b \in K} $ は、 $K$ の開被覆である。
$K$ はコンパクトなので、
$$K \subset \bigcup_{i=1}^{k} V_{a, b_i}$$
を満たす有限被覆が存在する。
$$U_a := \bigcap_{i=1}^{k} U_{a, b_i}$$
とおく。 $U_a$ は、 $X$ の開集合であり、 $a \in U_a$ と $U_a \subset X \backslash K$ を満たす。
よって、以下の開集合 $U$ を考えると、
$$
U := \bigcup_{a \in X \backslash K} U_a
$$
$U = X \backslash K$ であることが分かり、 $X \backslash K$ は開集合である。
ユークリッド空間はハウスドルフ空間である
証明: $a, b \in \mathbb{R}^n$ を任意に固定し、$U := U(a;d(a, b)/2), V := U(b;d(a, b)/2)$とおく。ここで、 $d(a, b)$ は $a, b$ 間の距離であり、 $U(x;r)$ は $x$ を中心とする半径 $r$ の開球である。このとき、$a \in U, b \in V, U \cap V = \emptyset$なので、ユークリッド空間はハウスドルフ空間である。
コンパクト空間の閉集合はコンパクト空間である
証明: $X$ をコンパクト空間、 $K \subset X$ を閉集合とする。 $K$ の $X$ における開被覆 $U = \{U_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ を任意に取る。このとき、 $X \backslash K$ は $X$ の開集合なので、 $U \cup (X \backslash K)$ は $X$ の $X$ における開被覆である。
$X$ はコンパクトなので、 $X$ の $X$ における有限被覆 $\{U_1, \cdots, U_k, (X \backslash K)\}$ を取ることができる。このとき、 $\{U_1, \cdots, U_k\} \subset U$ は、 $K$ の $X$ における有限被覆である。よって、 $K$ はコンパクトである。
1次元ユークリッド空間上の閉区間 [0, 1] はコンパクト空間である
背理法で示す。
$[0, 1]$ の開被覆 $\{U_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ が、その中のどのような有限個を用いても $[0, 1]$ を被覆できない(この条件を、 $[0, 1]$ を「(※)できない」と略記する)とする。
閉区間 $[a_i, b_i]$ が(※)できないとき、いずれかの少なくとも一方は、(※)できない。
- $[a_{i}, \frac{a_i + b_i}{2}]$
- $[\frac{a_i + b_i}{2}, b_i]$
このうち、(※)できない方(の一方)を $[a_{i+1}, b_{i+1}]$ とおく。
すると、(※)できない閉区間の減少列 $[0, 1]\supset [a_1, b_1]\supset \cdots$ が存在することがわかる。
また、 $i \rightarrow \infty$ で $b_i - a_i \rightarrow 0$ となる。
ここで、
$$c \in \bigcap_{i=1}^{\infty} [a_i, b_i]$$
を考える。 ($a_i \rightarrow c, b_i \rightarrow c\ (i \rightarrow \infty)$ に注意する)
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}$ は $[0, 1]$ の開被覆であった。
そのため、 $c \in U_{\lambda}$ となる $\lambda \in \Lambda$ が存在する。
$U_{\lambda}$ は $\mathbb{R}$ の開集合なので、
$$(c - \epsilon, c + \epsilon) \subset U_{\lambda}$$
を満たすある $\epsilon > 0$ が存在する。 $[a_1, b_1]$ は $c$ の1点集合に収束する閉集合の減少列なので、十分大きな $n$ を取ると、
$$[a_n, b_n] \subset U_{\lambda}$$
が成り立つ。これは、 $[a_n, b_n]$ が(※)できないということに反する。
背理法により、「(※)できない」が偽であることが示された。よって、 $[0, 1]$ はコンパクトである。
n次元ユークリッド空間上の閉区間 [0, 1] ✕ … ✕ [0, 1] はコンパクト空間である
上と同様の議論をn次元直方体に対して行えばよい。(証明略)
n次元ユークリッド空間上の閉区間 [-R, R] ✕ … ✕ [-R, R] はコンパクト空間である
同相写像 $f(\mathbf{x}): [0, 1] \times \cdots \times [0, 1] \rightarrow [-R, R] \times \cdots \times [-R, R] := 2R\mathbf{x}- R$ を考える。同相写像はコンパクト性を保存する。
定理の証明
(1) ⇒ (2)
$\mathbb{R}^n$ の部分集合 $A$ がコンパクトならば、 $A$ は有界閉集合であることを示す。
$$\{ U(\mathbf{0}, r) \}_{r>0}$$
は $A$ の開被覆である。ただし、 $U(\mathbf{0}, r)$ は原点を中心とする半径 $r$ の開球である。
$A$ はコンパクトなので、 $A$ は $U(\mathbf{0}, r_1), \cdots, U(\mathbf{0}, r_k)$ で有限被覆される。すなわち $A \subset U(\mathbf{0}, \max \{ r_1, \cdots, r_k \}$ であるため有界である。
ユークリッド空間はハウスドルフ空間である。ハウスドルフ空間のコンパクトな部分集合は閉集合である。よって、 $A$ は閉集合である。
(2) ⇒ (1)
$\mathbb{R}^n$ の部分集合 $A$ が有界閉集合ならば、コンパクトであることを示す。
$A$ は有界なので、 $A \subset [-R, R] \times \cdots \times [-R, R]$ となる $R$ を選ぶことができる。 $[-R, R] \times \cdots \times [-R, R]$ はコンパクトである。 $A = A \cap ([-R, R] \times \cdots \times [-R, R])$ は コンパクト空間 $[-R, R] \times \cdots \times [-R, R]$ の閉集合なので、コンパクトである。
証明終わり